プロフィール

  •    宮本 一高         (みやもと かずたか)
                                        音楽ライターを目指しているものです。EAT MAGAZINEやDOLLなどで執筆をしておりました。おもにエモ、ハードコア、スクリーモ、メロディックパンクを中心に取り上げております。自分が感動した音楽を、積極的に紹介していきたいと思いますので、よろしくお願いします。 

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2018/04/21

World of Difference (ワールド・オブ・ディファレンス)  『DEMO』

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ワシントンDC出身のストレート・エッジ・バンドで、元MINDSET(マインドセット)のメンバーによる新バンド。18年に発表されたでも音源。マインドセットはCHAIN OF STRENGTH(チェイン・オブ・ストレングス)やYOUTH OF TODAY(ユース・オブ・トゥディ)の影響が強いユースクルー系ハードコアだった。

新バンドでは、MINOR THREAT (マイナースレット)直系のスピーディーでタイトなハードコアを中心に、ユース・オブ・トゥディから影響を感じるストップ&ゴーや、力強く熱いOiコーラスを合わせたサウンド。

バンドが変わっても、彼らの根幹となしているアティテュードに変わりはない。今作でもストレートエッジ思想は健在。歌詞の内容は、ドラッグや酒のせいで命や友達を失う自己破滅の怖さなど。欲望を捨て自己制御し、自制や節制の大切さと説いている。人を破滅させるドラッグや酒などへの怒りと、修道士のように、欲望を捨て、真理を追究していくストイックな姿勢がこのアルバムにはある。決して目新しさのないサウンドだが、熱い気持ちにさせる作品だ。

こちらからダウンロード可能

2018/04/12

Twitching Tongues (トゥィッチング・タングス) 『Gaining Purpose Through Passionate Hatred (ゲイニング・パーパス・スルー・パッショネイト・ヘイトレッド)』

Gaining Purpose Through Passionate HatredGaining Purpose Through Passionate Hatred
Twitching Tongues

Metal Blade 2018-03-08
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18年に発表された4作目。大手インディーレーベルであるメタルブレイドに移籍した前作は、土臭いサザンロックやストーナーロックをベースに、ハスキーなボーカルと、キリスト教の葬式音楽のような不吉で神秘的なオルガンの音を合わせた死の匂いが漂うサウンドを展開していた。

今作でもそのサウンド路線に変わりはない。前作との違いを挙げるのなら、厳かで緊迫した静謐な空気がなくなり、ストーナー度が増した作品に仕上がっている。

ヘヴィーで荒々しいギターを中心としながらも、静寂のためやハスキーで厳かな甘美のコーラスを加えたドラマティックな展開。そこには天国へと召されるような甘美な雰囲気を作り出している。

彼らの一貫してテーマである“死”のあり方や、死生観は今作でも掲げられている。前作まではキリスト教世界の死神や悪魔崇拝など、西洋独特の死生観がテーマであった。今作では日本の切腹など、多文化の独特な死生観を取り上げている。

そこにあるのは責任を取るための死。恐怖のない積極的な自殺。死をも恐れない勇敢な姿勢。死ぬための場所を探している武士道。西洋人から見れば奇異に映る死の形を、今作では取り上げているのだ。

ストーナー(酩酊状態)を死への陶酔と恍惚に導きだしたメタルサウンドは、相変わらず彼しかない独特な個性がある。今作もいい作品だ。

2018/04/06

Combust(コンバスト) 『Demo(デモ)』

Cover

ニューヨークはスタテン島を拠点としているハードコア・バンドの17年に発表された6曲入りのデモ。彼らもまたニューヨーク・ハードコアをこよなく愛し、その伝統を誇りにしているバンド。

そのサウンドは、Killing TimeやBreakdown直系の極悪ハードコア。ヒップホップの歌いまわしと、メタリックな要素は一切ないシンプルなギターが魅力のオールドスクールなハードコアだ。ニュースクール・ハードコアの先駆けとなるスローパートやOi、ヒップホップの要素を1割ほど加え、9割のベースとなるオールドスクールなハードコアに、エッセンスとして加えている。日本では極悪ハードコアと呼ばれた不良の匂いがするギャング系のサウンドだ。

彼らもまたKilling TimeやBreakdownと同様に、アウトサイダー的なスタンスで活動している。歌っている内容は、未来への不安や恐怖、パラノイアに、夢が壊れた悲惨さなど。だがそこには最悪な状況に立たされても生き残るために戦っていく闘争心、熱さがある。熱く燃え滾っているその精神がこのバンドの魅力なのだ。

こちらからダウンロード可能

2018/03/26

TONNY RETTMAN(トニーレットマン著) 『STRAIGHT EDGE (ストレートエッジ)』

Straight Edge: A Clear-headed Hardcore Punk HistoryStraight Edge: A Clear-headed Hardcore Punk History
Tony Rettman

Bazillion Points 2017-11-14
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ニューヨーク・ハードコアやデトロイト・ハードコア『Why Be Something That Youre Not』の著者として知られるトニーレットマンが、17年に発表したストレート・エッジ・シーン全般を紹介した本。

アメリカン・ハードコアの細分化されたジャンルのひとつとして知られるストレート・エッジ。この本では37年に渡るストレートエッジの歴史を、当事者の発言を引用する形式で執筆している。当時のシーンの裏側や、知られることのなかったエピソードや、実際の話とは異なる事実など、くまなく紹介している。

まずストレート・エッジとは、「喫煙をしない」「麻薬をやらない」「アルコールを飲まない」「快楽目的のセックスをしない」という基本理念を柱に掲げたパンク・ハードコアの思想だ。その始まりはティーンアイドル、マイナースレットのボーカルであったイアン・マッケイの発言から始まる。

この本でチャプター分けされ紹介されている内容を説明していくと、

WASTED YOUTH…ヒッピー・カルチャーやTHE BEATLES(ビートルズ)やTHE DOORS (ドアーズ)、THE ROLLING STONES (ローリング・ストーンズ)などの、60年代のロックバンドを象徴する「セックス、ドラッグ、ロックンロール」の価値観を否定するためのアンチ・テーゼとして、ストレート・エッジ思想が生まれた。

D.C.: SNEAKERS…当時10代であったIan MacKaye(イアン・マッケイ)が結成したバンド、THE TEEN IDLES(ザ・ティーン・アイドルズ)が、未成年でもライヴハウスに入る方法として未成年の手の甲にマジックでバツ印(×)印を付けることを提案。以来、手の甲のバツ印は、反アルコールと反ドラッグのシンボルとなった。

MINOR THREAT : STRAIGHT EDGE…MINOR THREAT(マイナー・スレット)が81年に発表したEP。『MINOR THREAT』のなかの“Straight Edge (ストレート・エッジ)”と、同年発表のEP『In My Eyes』のなかの“Out Of Step (アウト・オブ・ステップ)”との2曲から、ストレートエッジに対する思想やアティテュードが生まれた。歌詞の内容を説明すると、“ Straight Edge”ではと歌い、“ Out of step”ではと歌った。この歌詞によって、ストレート・エッジ思想が確立された。

BOSTON : THE KIDS WILL HAVE SAY…ボストン・ストレートエッジ・シーンについて。イアン・マッケイが単独で歌っていた内容を、ボストンでSSDやDYSなど複数のバンドが共鳴し、シーンとして確立した。ボストンではDCと違い、酒やクスリをやっているバンドを、暴力で強制的に排除するなど武闘派も多く、激しく体を動かす体育会系のようなシーンだった。

7 SECONDS : COMMITTED FOR LIFE…初期ストレートエッジからユースクルー・シーンへの橋渡しをした7 SECONDS(7セコンズ)。
OUTHERN CALIFORNIA : IN CONTROL…西海岸のストレートエッジの創始者として知られるUNIFORM CHOICE (ユニフォーム・チョイス)。

YOUTH OF TODAY : TAKE A STAND! …ストレートエッジをアメリカ全土に広めるきっかけとなったYOUTH OF TODAY(ユース・オブ・トゥディ)。7セコンズやユニフォームチョイスなど、各地で細々と活動していたストレートエッジ・バンドに連帯感を促し、ユース・クルーと呼ばれることになるシーンでまとめ上げた。ポジティヴで健全なストレートエッジとして、新しいライフスタイルを提示した。

SLAPSHOT : BACK ON THE MAP…メタル化したボストン・ハードコアに、もう一度昔のストレートエッジ・ハードコアの活気を取り戻すため、元NEGATIVE FX(ネガティヴFX)のメンバーによって結成されたSLAPSHOT(スラップショット)。

BOLD : JOIN THE FIGHT…JOGCORE(運動部コア)といわれたBOLD(ボールド)。友情、団結をテーマに、弱い自分をみつめ、勇気を振り絞り行動していくスタイルを提示。

YOUTH CREW STYLE : MORE THAN FASHION…ユース・クルーのファッションについて。

ORANGE COUNTY : WE’LL MAKE THE DIFFRENCE…オレンジカウンティ周辺の、ドギースタイルと呼ばれたストレートエッジのバンドたち。INSTEAD(インステッド)を筆頭に、ベジタリアンだったRAGE AGAINST THE MACHINE (レイジ・アゲインスト・ザ・マシーン)のZack de la Rocha (ザック・デ・ロチャ)が在籍していたバンドINSIDEOUT(インサイド・アウト)。なかでもCHAIN OF STRENGTH(チェイン・オブ・ストレングス)は、カリスマ性に富み、ストレートエッジ・アンセムのひとつとして数えられている“Ture Till Death(死ぬまで事実)”という曲を発表。

JUDGE : FED UP!…ドラッグによって崩壊した家庭に育ったJUDGE(ジャッジ)。心からドラッグを憎み、闘争的なアティテュードを持っていた。ポジティヴで健全だったストレートエッジ・シーンを暴力化し、全体主義化していった。

VEGETARIANISM : NO MORE…ユース・オブ・トゥディのRay Cappo (レイ・キャポ)がクリシュリナ教に改宗したことや、イアン・マッケイがベジタリアンであったこともあって、ストレート・エッジに菜食主義的な考えが加わった。ベジタリアンに辟易してストレート・エッジを辞めていく人もいた。

NO ONE CAN BE THAT DUMB : THE U.K.&EUROPE…オランダ出身でヨーロッパ初のストレート・エッジ・バンド、Larmについて。

HARDLINE : THE WAY IT IS…HARDLINE(ハードライン)というコミュニティーを作り、ストレートエッジをヴィーガン・ストレート・エッジにストイックに推し進めたVEGAN REICH(ヴィーガン・リッチ)とRAID(レイド)。

DESPERATE STATE : UMEA STRAIGHT EDGE…REFUSED(リフューズド)を中心としたスウェーデンのストレート・エッジ・シーン。

EARTH CRISIS : A FIRESTORM TO PURIFY…ヴィーガン・ストレートエッジ思想を全世界に普及させたEARTH CRISIS(アースクライシス)。メタルエッジのサウンドに、ヴィーガン・ストレートエッジ思想を載せたサウンドは画期的だった。アニマルライツ(動物権利)の歌詞と、コンピレーションの売り上げをシーシェパードなどに支援するなど、具体的に行動に出るバンドでも有名だった。

SALT LAKE CITY:IDENTITY CRISIS…97年にユタ州ソルトレークシティーでストレート・エッジを名乗る集団が酒屋やドラッグストアなどを襲撃した事件。日本で例えるならチーマーのような暴力行為を行う存在として、ストレートエッジがアメリカ全土に認識された。

YOUTH CREW REVIVAL : DO YOU REMEMBER HARDCORE ? …IN MY EYES(イン・マイ・アイズ)やBANE(ベイン)、TEN YARD FIGHT(テン・ヤード・ファイト)などのボストンのバンドたちによるユースクルー・リバイバル。80年代のユースクルー・サウンドをベースに90年代風にブラッシュアップさせたサウンドを提示。

EAST COAST 2000 : THE UNBREAKABLE… THE FIRST STEP(ザ・ファースト・ステップ)やDOWN TO NOTHING(ダウン・トゥ・ナッシング)、HAVE HEART(ハヴ・ハード)など、新世代のバンドたちによるユース・クルー・リバイバル。前者とは違い、メロディックな要素を加え、家族のきずなや友情を歌った健やかで健全なストレートエッジ。メジャーリーガーのピッチャーであるChristopher John Wilson(CJウィルソン)が、ストレートエッジであることを表明。プロレスラーのCMパンクもストレートエッジ・ソサエティーを作った。アンダーグランドなものであったストレートエッジが、一躍メインストリーム化した。

THE VALUE’S HERE : ASIA AND THE WORLD’S EDGE…日本と韓国のストレートエッジ・バンドについて。

BACK TO DC : BUILDING TOMORROW…約30年ぶりにワシントンDCで誕生したストレートエッジ・バンド、MINDSET(マインドセット)について。D.I.Yでベジタリアン。自分たちでツアーをブッキングし、Tシャツを作り、フェアトレードを無視し、庶民から搾取する大企業の靴は履かないという姿勢を貫いている。

と、以上のようにストレート・エッジ史の重大な出来事は、ほとんどすべて網羅している。イアン・マッケイの何気ない一言で始まったストレートエッジも、ベジタリアンから、アニマルライツ、天然由来の穀物しか食べないヴィーガンまでと、30年という時間を経るなかで、時には過激に、拡大解釈が進んだ。とくにソルトレークシティーでの事件は、正しいと信じて行動したものが、社会的な悪へと転換する格好の事例だったし、シーシェパードのような拳銃で発砲し船を沈没させる行為は、もはやテロとかわらないだろう。何にしても行き過ぎはよくないのだ。

いままで個人的にストレートエッジを遵守するひとは、長生きをするための健康志向なのか、それとも不良のすることを嫌う真面目な人間という捉えかたをしていた。だがこの本で酒やドラッグのせいで家族が崩壊し、心の底から酒とドラッグを憎んでいるストレート・エッジバンドもいる事実を知り、あらためて日本とは違うアメリカ社会の闇を考えさせられた。ユースクルーという一過性のムーブメントが過ぎ去り、ストレートエッジを辞めていくバンドが意外にも多いことや、酒やクスリまで手を出すニセ・エッジ・バンドもいることにびっくりさせられた。定義がはっきりしている思想だけに、その考えを10年、20年のその遵守するのは困難だといえるだろう。それほど人は弱い生き物なのだ。

個人的にこの本で一番面白かった部分は、日本であまり知られていないバンドでも、それぞれに異なるバックボーンや物語を持っているということ。その背景やバンドでなにを伝えたいのか、どんなサウンドを表現したいのかなどの細かいディティールを知ることによって、いままでとは違った音楽のように聴こえる。そのへんが○○に影響を受けてバンドを始め、二番煎じ、フォロアー的な意味合いが多かったメロディック・パンクやエモなどのシーンとの違いなのだ。

ストレート・エッジとは精神性を主とする考えなので、サウンド的な特徴が捉えづらいシーンでもある。だが映画『ザ・コープ』やシーシェパード、ベジタリアンなど、日本人に対して間接的ではあるが、広く知られている思想も珍しいといえるだろう。個人的にはEbullition Records(エボリューション・レコーズ)について、もっと紹介して欲しかったことが不満だが、ストレートエッジのいろいろな部分が知れ、個人的に楽しめた。ものすごく価値のある本なのだ。

2018/03/16

Dashboard Confessional (ダッシュボード・コンフェッショナル)  『Crooked Shadows (クロケット・シャドウズ)』

Crooked ShadowsCrooked Shadows
Dashboard Confessional

Fueled By Ramen 2018-02-08
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じつに9年ぶりとなる作品。このアルバムを語る前に、まずはChris Carrabba (クリス・ギャラハー)の活動から振り返りたい。09年に発表したアコースティックギター1本でシンプルに語り弾きをしたアルバム『Alter the Ending(アルター・ザ・エンディング)』を最後に、Dashboard Confessional(ダッシュボード・コンフェッショナル)の活動を休止した。10年10月にはデビュー作である『The Swiss Army Romance(ザ・スイス・アーミー・ロマンス)』のデラックス・バージョンの発表。『ザ・スイス・アーミー・ロマンス』の曲を完全再現したソロライヴを行った。同じく10年に、クリス・ギャラハーが初めて結成したハードコア・バンド、FURTHER SEEMS FOREVER (ファーザ・シームズ・フォーエバー)を再結成。12年に『Penny Black(ペニー・ブラック)』を発表。そして11年には、REMやArchers of Loaf(アーチャー・オブ・ローフ)やJohn Prine(ジョン・プランイン)などの往年のアーティストからマニアックなインディーロックアーティストまでをカヴァーしたクリス・ギャラハー名義のソロ活動を展開。11年からカントリーやフォークなどのルーツ・ミュージックを追求したTwin Forks(ツイン・フォークス)を結成。13年にEP、14年にLPを発表した。

ダッシュボード・コンフェッショナルの活動を休止し、色々な活動を展開していた理由には、おそらく様々な角度から音楽を見つめ直す必要があったのだろう。『ザ・スイス・アーミー・ロマンス』の再現ライヴでは、ダッシュボードコンフェッショナルを始めたころの痛々しい感情を思い出し、ファーザ・シームズ・フォーエバーの再結成では、バンドを始めたころの立ち向かっていく気迫などを取り戻した。そしてソロ活動では好きな曲をカヴァ―することによって、自分が音楽を好きになった理由を再認識した。ツインフォークでは、自らの魅力である透明でパッショナブルな美声を最大限に引き出し、まどろみや穏やかな幸せなど多幸感を表現してきた。ミュージシャンを続けていくために色々な感情を知る必要があったのだ。

とくに音楽の幅を広げたツイン・フォークでの活動は、肩の力を抜いた、いままでと真逆のスタイルで、自らの美声の生かし方を学び、多彩な感情を表現した。自らの可能性を最大限にまで広げたという意味では貴重な体験だったのだろう。その作品も素晴らしく、ミュージシャンとして円熟期を迎えているように思えた。

だがまたダッシュボード・コンフェッショナルの活動に戻ってきた。今回、復活した理由は、もう一度、エモいと呼ばれる熱い感情を取り戻したかったからだろう。クリス・ギャラハーはBillboardでのインタビューで、「これを言うのをあまり良くないが、ぼくはむかし自分が作ったアルバムのほうが好きだと認め始めたんだ。その理由も分かっている。他のミュージシャンを見ていると、アルバムを発表するたびに新しい音楽を取り入れ、モチベーションを維持している。時が経つにつれ、音楽へのこだわりは重要視されるが、歌詞の内容は希薄になっていく。人から聞いた話のひとつが歌詞は重要じゃないってことだった。ぼくはそう思わない。彼らの考え方は正しいのかもしれないけど、だからこそぼくは歌詞を重要視したい。新作はぼくにとって初期3枚くらいのころにすごく似た作品になるよ」。と語っていた。

そもそもダッシュボード・コンフェッショナルのバンド名は、“The Sharp Hint of New Tears(シャープ・ヒント・オブ・ニュー・ティアーズ)”という曲から生まれたもの。一人運転する車の中で、彼の告白を聞いたダッシュボート(車の精密機器)から、 "Dashboard Confessional"というネーミングを思い浮かんだという。そこでは失恋で感じる心が引き裂かれるような思いや、傷つけられたことによる恥辱など、生々しい経験が語られていた。倒れそうになりながらも歯を食いしばって前へ進んでいくエモい姿が魅力のアーティストであった。

そして9年ぶりとなる今作も今までのアルバム同様、熱い作品に仕上がっている。だが初期3作にあったような、心の痛みや裏切りといった悲しみに彩られた感情はそこにはない。『曲がった影』と名付けられた今作では、逃げることのできない影のようについて周る自分の人生の闘いについて歌っている。“We Are Fight(ウィー・アー・ファイト)”は自分の道を切り開く決意や人生との闘いを歌い、“About Us(アバウト・アス)”では恋の激しく燃える炎について歌っている。“Heart Beat Here”(ハート・ビート・ヒア)では、痛みや悲しみを乗り越え成長した現在の姿について歌っている。挫折や苦難という痛い経験を乗り越えてこそ、人間は成長ができる。そんな内容がテーマなのだろう。

苦難を乗り越えるという意味での熱さは健在だが、だからといってけっして過去の焼き直しになっているわけではない。前作はキーボードのキラキラメロディーをちりばめたビューティフルなギターロックが中心に、清流のような透明さと熱さのバランスの取れたサウンドだった。今作では、アコースティックギターのエモーショナルな語り引きも健在ながらも、The1975のようなインディーポップから、キャッシュ・キャッシュのようなディスコエモなどの、トレントを取り入れている。過去の魅力を保持しながらも新しい要素を加えている。

ギャラハー自身、若いころの気持ちを取り戻そうと躍起になっているというレビューもある。だが個人的にはけっしてノスタルジーになっていないと思う。なぜなら過去の傷口を掘り返し、思い出にすがるような内容ではないからだ。現在の心境を赤裸々に綴った歌詞には、リアリティーがあり、真実の声が伝わってくる。正直に言って、“Hands down(ハンズ・ダウン)”や“SCREAMING INFIDELITIES(スクリーミング・インフィデリティ―ス)”などの過去の名曲を超える曲は今作にはない。だがそれらの曲と比べて遜色がないほどクオリティーの高い作品に仕上がっている。ダサいと思われようと前へ進んでいく泥臭い熱血漢。いまだに彼がエモレジェントとして呼ばれている理由なのだ。

2018/02/02

Greg Graffin(グレッグ・グラフィン) 『MILLPORT(ミルポート)』

MillportMillport
Greg Graffin

Imports 2017-03-09
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Bad Religion(バッドレリジョン)のボーカリストであるGreg Graffin(グレッグ・グラフィン)が17年に発表した3作目となるソロアルバム。デビュー作の『アメリカンリージョン』はアコースティックギターとピアノを中心に、シンプルな構成で、破局や孤独などパーソナルな内容で大人のほろ苦い感情を歌った作品だった。2作目の『Cold As The Glayコールド・アズ・ザ・クレイ』はカントリーやトラッド・フォークなど、グレッグ自身が幼いころに聴いて育ったアメリカのルーツ・ミュージックに回帰した作品だ。

そして今作も前作同様のメンバーであるBrett Gurewitz(ブレッド・ガーヴィッツ)がプロデュースを担当し、ドラッド・フォークやカントリーなどのアメリカルーツ・ミュージックが中心の作品だ。ただ前作と違う点はグレッグが多感な時期に影響を受けたCrosby Stills Nash & Young(クロスビー・スティルズ ナッシュ&ヤング)のようなフォークロックな曲もある。アコースティックギターギターで、バッド・レリジョンの激しさとは真逆な、穏やかな感情で軽快に歌っている。

悲しみや哀愁や切なさなどが漂って前々作や前作と比べると、今作では雪解けの春を迎えたような穏やかな温かさ牧歌的な明るい曲が多い。どうやら農地の美しい風景にインスピレーションを受け、この作品が作られたようだ。グレッグ自身は、宗教の欺瞞に対する怒りや、破局などの悲しみや心が引き裂かれるような思い、その反対にある人がうらやむ栄光も手にしている。いろいろな経験をしている人物なのだ。人間関係で生じる軋轢や争いにいささか疲れているのかもしれない。一息入れたいそんな思いを農地という長閑さメタファーに置き換え、平穏を感情を歌っているように思えた。だれもが休息を必要としているのだ。そんな思いを感じる作品だ。

2018/01/24

REAGAN YOUTH( レーガン・ユース) 『COMPLETE YOUTH ANTHEMS FOR THE NEW ORDER 』

The Complete Youth Anthems forThe Complete Youth Anthems for
Reagan Youth

Cleopatra 2016-03-31
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80年から90年にかけてニューヨークで活動していたアナーコパンク・バンドの16年に発表された全作品を網羅したコンプリート盤。ここに収録されている作品は、83年と84年に発表された作品をまとめた『Volume1』と解散することが決まったあとに録音された『Volume2』の両作品をまとめたCDが一枚、98年に発表されたライヴ盤『Live&Rare』と、84年にレコーディングされた未発表の7インチEPが2枚、CDと7インチレコードを合わせた計4枚、全69曲が収録されている。そこにブックレットと缶バッチが付いた内容だ。

ニューヨーク出身の彼らだが、その存在は異彩を放っていた。アルバムジャケットのKKKの儀式とナチスに忠誠を誓うヒットラーの写真には、逆説的で皮肉な意味が込められていた。一見保守色の強い政治思想に思えるが、実際には反人種主義、社会主義、アナーキズムな思想を掲げていた。彼らはロナルド・レーガンの政策が、キリスト教の権威とアメリカ保守主義、レイシストたちと共通していること自らの持論を述べ、メインテーマとして取り上げていた。彼らの名曲である“Reagan Youth(レーガン・ユース)”では、私はレーガンという一人称で始まり、平和のために異教徒や共産主義を殺すと恫喝し、レーガンの野望と政治政策の恐ろしさを歌っている。彼らがDead Kennedys (デッドケネディーズ)ほど話題にならなかった理由は、ある種のユーモアや冷笑、嘲笑といった要素がなかったからだ。モノトーンの不気味なジャケットからはクラスの影響が強く、まさにクラスのアメリカ版というバンドだった。それとぱっと見右寄りの思想に思える分かりづらい皮肉に満ちたアティテュードを持っていた。個人的にはややインパクトに欠けたその2点が、彼らがそれほど話題にならなかった理由に思える。

肝心の内容だが、レコーディング曲が収録された『Volume1』では、スピーディーなハードコアな曲から、多彩なメロディーフレーズが特徴的なパンクまで、じつに色々な要素を感じる。とくにクラスやダムドからの影響を色濃く感じ、そこに多彩なメロディーフレーズやスピーディーなハードコアなどをちりばめている。そしてライヴ盤である『Live&Rare』は、勢いや迫力を重視している。とくに面白いのが“レーガン・ユース”という曲。メロディーフレーズが印象的な曲だが、メロディックな要素が一切ない。バリバリと音が割れるノイズギターやブンブンうねるベースの重低音を中心に勢いと迫力のあるライヴを展開している。自らが抱える怒りをリズムに刻み、扇動し過激な方向に周囲を煽っていくライヴには、ロナルド・レーガンと共和党を徹底的に嫌い、戦っている姿が生々しく映しだされている。アルバムとはまた違った魅力のある素晴らしいライヴ作品なのだ。

そんな彼らの活動もレーガンが辞任した89年からモチベーションが下がり、90年に解散する。そして93年にはボーカルのDave Rubinstein (デイヴ・ルビンスタイン)が自殺し、永遠に復活することがないと思われた。だが16年後の06年に、もうひとりの中心メンバーであるギターのPaul Bakija(ポール・ベイキア)を中心に活動を再開する。現在も彼らのモチベーションは失われていない。あまり話題にならないバンドだったが隠れた名盤といえる作品だ。


2017/12/19

VA GIVE ME BACK COMPILATION (ゲット・ミー・バック・コンピレーション)

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08年に発表されたコンピレーションアルバム。発売元であるEBULLITION RECORDS(エボリューション・レコーズ)といえばオーナーであるケントがストレート・エッヂに対して尋常でないこだわりを持っていることで知られている。自らがヨーロッパまで足を運び、徹底した現場主義で選び抜かれたバンドのみコンピレーションアルバムに収録。ストレートエッヂに対する尋常でないこだわりをもったレーベルとして有名だ。

そのケントがコンピレーションアルバム第一弾として発表をしたのがこの作品。ここではストレートエッヂに対して、全く触れられていない。だがInternational P.E.A.C.E. Benefit Compilation(インターナショナル・ピース・ベネフィット・コンピレーション)やStone To Mark a Fire(ストーン・トゥ・マーク・ア・ファイヤ)などのハードコア界のコンピレーションアルバムに匹敵するほど、歴史的な価値を持つ名盤なのだ。

ここで取り上げているテーマは、ジェンダーフリーや同性愛者の権利、フェミニズム運動など。性差別を受けている者たちが、平凡な市民生活を送るため、権利獲得を目的とされたベネフィットコンピレーションアルバムなのだ。32ページにわたる小冊子には、ジェンダー問題に関する記事やエッセイが掲載されている。なお売り上げは、ゲイやレズビアンなどの団体と、コンドームなどの避妊薬や乳がんやHIV検査などを無料で行っている非営利団体『プランドペアレントフッド(Planned Parenthood)』、男性に暴力を振るわれた女性が緊急避難できるシェルターサービスの、3箇所に寄付されている。

ここで収録されているのは、BORN AGAINST(ボーン・アゲインスト)、DOWNCAST(ダウンキャスト)、STRUGGLE(ストラグル)、SPITBOY(スピット・ボーイ)、ECONOCHRIST(エコノクライスト)、Seein' Red(シーイン・レッド)、BIKINI KILL(ビキニ・キル)、END OF THE LINE(エンド・オブ・ザ・ライン)、Amenity(アメニティー)、Man Lifting Banner(マン・リフティング・バナー)といったバンドたち。エボリューション・レコーズのXXX SOME IDEAS ARE POISONOUS(XXX・サム・アイデアズ・アー・ポイズネス)やILLITERATE COMPILATION(リトルレイト・コンピレーション)などのコンピレーションアルバムとは違い、ボーン・アゲインストやビキニ・キルなど、有名なバンドたちが参加している。

Riot Grrrl(ライオットガール)というパンクバンドのフェミニズム運動の中心人物であったビキニ・キルは、ロカビリー調のパンクナンバーで、生きていくために援助交際をしている女性の心情を歌い、男女平等やジェンダーフリーを訴えつけているサンフランシスコの女性アナーコパンク・バンドのスピットボーイは、パーティーで男性に性的嫌がらせを受けたことについて歌っている。ニューヨークハードコアの裏番長といわれるボーン・アゲインストは、容姿だけですべて判断する美女コンテストを痛烈に批判し、LOCUST(ロカスト)やRETOX(リトックス)の中心メンバーでも知られるJustin Pearson(ジャスティン・)が在籍するサンディエゴのSTRUGGLEは、マッチョイムズの男性が女性よりも優れていると錯覚し、性的虐待や差別をすると歌っている。そしてレーベルオナーでありケント率いるダウンキャストは、ゲイやレズヒアンなどの同性愛は、自己表現のひとつであり、彼らの愛の形を否定すれば、自分たちが愛を知らない人間だと訴えている。どのバンドもジェンダーフリーに対する見解や感情論、主張も異なるが、性差別に対して解消する必要があるという部分では共通しているのだ。

当時、激情コアの始祖的な存在のバンドが収録され、音楽的にも最先端のバンドが収録されていた。ハードコアの定義のひとつに“行動を起こす”という信念がある。そういった意味では、まさしくハードコアらしいコンピであるし、ジャンダーフリーという価値観を提示した意味では、ものすごく価値のある作品なのだ。

2017/12/13

SECT (セクト)  『NO CURE FOR DEATH (ノー・キュア・フォー・デス)』

No Cure for DeathNo Cure for Death
Sect

Southern Lord 2017-11-23
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ヴィーガン・ストレートエッヂ思想を掲げるハードコアバンドの2作目。あいかわらずブレることのない信念を貫き、尋常でない怒りに満ちた熱いサウンドを展開している。

今作でも前作同様のバリバリの轟音を立てるノイズ系ハードコアを踏襲している。だが前作よりも破壊力と激しさと強度が増し、よりパワーアップしている。基本的にはミディアムテンポのハードコアと、怒涛のブラストビートのドラムに、スピーディーでパワーヴァイオレンスな曲が交互に入れ替わる展開。それにしてもものすごいギターの音圧とノイズの嵐の轟音だ。そして怒りの言葉を吐き捨てる雷のような怒声に満ちたボーカル。スローテンポな曲では、怒りの言葉が鮮明に伝わるようじっくりと聴かせ、スピーディーな曲ではギターの音圧とノイズの津波が体全体に被いかぶってくるような圧倒的な音の迫力がある。

そこにあるのは尋常でない怒り。怒りの根源にあるのは、彼らのヴィーガン・ストレートエッヂ思想に対するこだわりのせいなのかもしれない。彼らの考えるストレートエッヂ思想とは、地域性や歴史、信仰する理由によって考え方がかなり異なるものだという。ポップでおおらかな部分もあるという。それに比べヴィーガンは、人間だけが利益になることを嫌い、生物全体の生命の尊厳が守られなければいけないものだと、彼らは考えている。そのためには行動に出ることも厭わないという。そんな生命の尊厳を守らない人間に対する怒りが、この作品には尋常でなくにじみ出ているのだ。その尋常でない怒りと津波のような爆音ノイズ。どれをとっても前作以上に素晴らしい作品だ。

2017/11/30

Quicksand (クイックサンド) 『Interiors (インテリア)』

InteriorsInteriors
Quicksand

Imports 2017-11-09
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じつに22年ぶりとなる3作目。90年代を代表するポスト・ハードコア・バンドで、ニューヨーク・ハードコアの重鎮としても知られ、2作を発表して瞬く間に解散。活動期間が短く、正直この先アルバムを発表するとは思っていなかったが、ここにきてまさかの再結成。

個人的にウォルター・シュレイフェルズが結成したバンドのなかでで一番好きなのはクイックサンド。その理由は独特な世界を持っているから。その世界観とは、シュールレアリスムのような奇怪なものや幻想に価値を見出すアンビバレンスな美しさ。まるでクレパスの底で瞑想しているような暗く深い孤独な静謐。聴くものに落ち着きとまどろみと恍惚を与えてくれる秩序と混乱が入り乱れた幻想的なサウンド。そんな世界観がぼくは好きだった。

そして発表された今作では、まさにぼくが求めていたクイックサンドが帰ってきたという内容の作品。過去のイメージが鮮烈すぎるバンドほど、期待外れに終わるケースがあるが、彼らに限ってはそんなかとはなかった。

そのサウンドだが、1作目(『Slip(スリップ)』)のエコー&ザ・バニーメンをハードコアに解釈したサウンドに、2作目(Manic Compression『マニックコンプレッション』)のノイズギターと、トリッキーでサイケデリックなテクニカルなギターサウンドをたして2で割ったような内容。1作目と2作目のいい部分を合わせた作品なのだ。サイケデリックなギターの揺らめき、穏やかさと厳かさ、微睡みと恍惚など、メロディーとノイズと低音と高音が高速のスイッチのように入れ替わるサウンド。彼らはまったく変わっていない。ここにはまさにぼくが求めていたクイックサンドの理想のサウンドがあるのだ。個人的には今年のベスト10に確実に入ってくる作品だ。

«Anti Flag(アンタイ・フラッグ)  『American Fall (アメリカン・フォール)』

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