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9mm Parabellum Bullet 『VAMPIRE』

VAMPIREVAMPIRE
9mm Parabellum Bullet

EMI MUSIC JAPAN(TO)(M) 2008-10-15
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 9ミリ・パラブレム・バレットは、新しいロックスタイルを提示したバンドだ。たとえば80年を象徴するラウドロックといえば、スラッシュメタルと呼ばれたメタリカ。メロディックでテクニカルなギターソロと2ビートのドラムで世の中を席巻した。90年代は、パンテラに代表される重厚なギターのリフと、怒号のデスヴォイスが主流となったパワーメタルの時代。そして00年以降はコンヴァージに代表される変拍子のギターフレーズが複雑に入り混じったカオティック・ハードコアの時代である。そんなカオスをよりポップにメロディアスにアレンジし、9ミリはいち早く日本で提示したバンドだ。

 今作もエモ、パンク、カオティック・ハードコアなどのフレーズが、高度な演奏技術によってカオスと化したサウンドに変わりはない。ただ爆発力や勢いがあった前作と比べると、まとまりや聴きやすさ、完成度を重視している。もしかしたらすさまじいライブ演奏を、いまの段階では音源に還元できないという判断があったのかもしれない。だから荒削な音よりも、スムーズに聴かせるポップさを、今回は重視している。衝動や勢い、爆発力を求める人と、聞きやすさを求める人との間に賛否両論が起こっているが、ぼくはこの変化を好意的に受け止めている。

 その理由として特に成長を見せた、CGで切り貼りされた映画のワンシーンを切り取ったような、現実ではありえない不思議な光景の歌詞。そのなかでもとくにこのバンドを象徴しているのが8曲目のFaustだ。こんな一節がある。<吠えることを忘れた犬、巣に戻れない蜂の群れ、本能を忘れて迷い続けている。構わないよ、変わらないよ、どっちにしても、同じくらい苦しいものさ。>そこには、大きな喪失がある。だが希望や本能を失った悲惨な現実に対する怒りや憎しみといった感情はない。あるのはその状況を受け入れた戸惑いと諦観だ。たとえ本能を失わなかったとしても、たどり着く結果は同じで、迷いや苦しさから、逃れられない。同じ場所を、ぐるぐると回り続けているような徒労に似た悲しい気持ち。先の見えた未来に対する自己憐憫や苦しさ。そんな静かで穏やかカタストロフを、9ミリは表現している。だが彼らは答えを探すためにただ前へ進んでいく、信念も理由もないまま、閉ざされた世界からの抜け出すために。

 あらゆる情報があふれ、絶対的価値観や正義のゆらいだ現代。そんな時代のなかでやりたいことを見つけられず、先の見えた未来に絶望している若者が急増しているという。そんな複雑で混沌とした想いを、カオティックなサウンドと歌詞で9ミリは表現した。現代の若者の苦悩を代弁している音楽といえるだろう。

       バンドホームページ

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