プロフィール

  •    宮本 一高         (みやもと かずたか)
                                        音楽ライターを目指しているものです。EAT MAGAZINEやDOLLなどで執筆をしておりました。おもにエモ、ハードコア、スクリーモ、メロディックパンクを中心に取り上げております。自分が感動した音楽を、積極的に紹介していきたいと思いますので、よろしくお願いします。 

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2009年1月

2009/01/30

EYES SET TO KILL/アイズ・セット・トゥー・キル『リーチ』

ReachReach
Eyes Set to Kill

Universal Japan 2008-02-19
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 暗く美しく透明で、悲しみと絶望に彩られた世界。これもまたスクリーモの新しい形。  2作目となる今作は、攻撃的なメタルコアに、繊細で神経質なメロディーが絡むスタイルに変わりはない。変わったところといえば、女性ボーカルが代わり、メタルの要素も少し薄れたところか。脆さと哀しみを含んだ透明な歌声の女性と、悲痛な叫び声の男性がシンガロングするボーカルには、まるで自分の周りにガラスの壁を一枚貼られたような孤独感が漂っている。歌詞も届かぬ想いや、願いが叶いそうで叶わないといった内容が多く、希望を打ち砕かれた絶望が漂っている。まるでスティーヴン・キングの小説のような、神秘的な霊の世界と、隣人の恐怖を描いた世界観のようだ。アメリカンポップからの影響が強く、感情むき出しのスクリーモはこのバンドだけ。

aie/アイエ『BOX』

ボックスボックス
aie

Pヴァイン・レコード 2008-12-26
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 結成から2年。柏出身のエモーショナルバンドが、満を持してのデビュー作を発表した。サウンドの根幹を成しているのは、ジョーボックスやプロミスリングあたりに通じる、音の壁のようなノイズギターと、ミネラルの影響を感じるセンシブなメロディーギター。そしてレモンヘッズのようなアダルティックで気だるさの残るボーカルスタイル。ときにナイーブな繊細さをギターに紡ぎ、エモーショナルな激情をギターにかき鳴らす。静と動のふり幅が広いが、エモの特有の内向的ないじけはない。悲しみや苦労を乗り越えたさきで鳴らされている、カラッとした大人の味わいがある。変拍子を使った独特のリフや、和太鼓や管楽器のような高音で厳かなシンセの音などを取り入れている。絶望的なほど曇った空から、希望の一筋の光が差し込めるようなドラマテックな展開が気持ちいい。

                バンドホームページ

2009/01/18

Jack's Mannequin/ジャックス・マネキン『THE GLASS PASSENGER』

グラス・パッセンジャーグラス・パッセンジャー
ジャックス・マネキン

Warner Music Japan =music= 2008-10-01
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 ジャックス・マネキンの2ndアルバムを聴いた。各雑誌でも語られているどおり、白血病という病が、彼の音楽に精神的な意味で影響を及ぼしたことに間違いはない。だがぼくはこの作品を聴いていちばん驚かされたのは、生きる喜びを綴った歌詞よりも、楽曲の多彩さやサウンドコンセプトの変化にある。

 今作では、ジャズからエレクトロニクスポップ、ニューソウルなどのオーソドックスなスタイルから、ダッシュボードコンフェショナルなどのインディーロックまで、幅広い音楽からの影響がうかがえる。いままでピアノとボーカルが中心だったサウンドは、曲の雰囲気によって、音が後ろへ下がったり前へ出たりと押し引きがされている。それに合わせて歌い方も、感情を抑制したり、ときには熱く歌い上げ、穏やかに囁いたり様々だ。パンキッシュなギターと激しいピアノが特徴的だったデビューバンド、サムシングコーポレートや、その路線の延長上にある前作と比べると、ピアノは穏やかで気品に満ち、ギターやキーボード、コーラスなど、幾重にも音が重ねられ、すべての音がバンドアンサンブルを重視して作られている。

 おそらくその変化の理由は、闘病生活という、つらく孤独な戦いの日々が、アンドリューの内面と音楽に劇的な変化をもたらしたと考えられる。入院中という、もてあました時間のなかで、いろんな音楽を聴く機会や、前作の反省点を、じっくりと考えるだけの余裕があったのだろう。そのなかで自分のエゴを全面に出しすぎたことが悪いことだと判断し、他のメンバーの長所を積極的に取り入れ、次作に反映させようと思ったに違いない。その結果、単調で勢いのみだった前作までと比べると、多彩な楽器と、幅広いジャンルの音楽を取り入れた、奥深いポップサウンドへと変化を遂げたのだ。

 じっくりと推敲を重ねられたこの格段に聴きやすくなったポップサウンドこそが、ジャックス・マネキンがミュージシャンとして、格段に成長した証なのだ。それがこのアルバムの一番のよさではないか。

9mm Parabellum Bullet 『VAMPIRE』

VAMPIREVAMPIRE
9mm Parabellum Bullet

EMI MUSIC JAPAN(TO)(M) 2008-10-15
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 9ミリ・パラブレム・バレットは、新しいロックスタイルを提示したバンドだ。たとえば80年を象徴するラウドロックといえば、スラッシュメタルと呼ばれたメタリカ。メロディックでテクニカルなギターソロと2ビートのドラムで世の中を席巻した。90年代は、パンテラに代表される重厚なギターのリフと、怒号のデスヴォイスが主流となったパワーメタルの時代。そして00年以降はコンヴァージに代表される変拍子のギターフレーズが複雑に入り混じったカオティック・ハードコアの時代である。そんなカオスをよりポップにメロディアスにアレンジし、9ミリはいち早く日本で提示したバンドだ。

 今作もエモ、パンク、カオティック・ハードコアなどのフレーズが、高度な演奏技術によってカオスと化したサウンドに変わりはない。ただ爆発力や勢いがあった前作と比べると、まとまりや聴きやすさ、完成度を重視している。もしかしたらすさまじいライブ演奏を、いまの段階では音源に還元できないという判断があったのかもしれない。だから荒削な音よりも、スムーズに聴かせるポップさを、今回は重視している。衝動や勢い、爆発力を求める人と、聞きやすさを求める人との間に賛否両論が起こっているが、ぼくはこの変化を好意的に受け止めている。

 その理由として特に成長を見せた、CGで切り貼りされた映画のワンシーンを切り取ったような、現実ではありえない不思議な光景の歌詞。そのなかでもとくにこのバンドを象徴しているのが8曲目のFaustだ。こんな一節がある。<吠えることを忘れた犬、巣に戻れない蜂の群れ、本能を忘れて迷い続けている。構わないよ、変わらないよ、どっちにしても、同じくらい苦しいものさ。>そこには、大きな喪失がある。だが希望や本能を失った悲惨な現実に対する怒りや憎しみといった感情はない。あるのはその状況を受け入れた戸惑いと諦観だ。たとえ本能を失わなかったとしても、たどり着く結果は同じで、迷いや苦しさから、逃れられない。同じ場所を、ぐるぐると回り続けているような徒労に似た悲しい気持ち。先の見えた未来に対する自己憐憫や苦しさ。そんな静かで穏やかカタストロフを、9ミリは表現している。だが彼らは答えを探すためにただ前へ進んでいく、信念も理由もないまま、閉ざされた世界からの抜け出すために。

 あらゆる情報があふれ、絶対的価値観や正義のゆらいだ現代。そんな時代のなかでやりたいことを見つけられず、先の見えた未来に絶望している若者が急増しているという。そんな複雑で混沌とした想いを、カオティックなサウンドと歌詞で9ミリは表現した。現代の若者の苦悩を代弁している音楽といえるだろう。

       バンドホームページ

2009/01/16

BRAHMAN/ブラフマン『THE THIRD ANTINOMY』

LIVE&DOCUMENTS DVD「THE THIRD ANTINOMY」LIVE&DOCUMENTS DVD「THE THIRD ANTINOMY」

トイズファクトリー 2008-11-12
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 11月に発売したブラフマンのDVD『THE THIRD ANTINOMY』は、全国41ヵ所を巡った“アンチノミーツアー”を克明に追ったドキュメンタリーだ。全体的にシリアスで重苦しい内容で、冒頭から、幕を下げるタイミングを間違え、ライヴが失敗に終わるシーンから始まる。ツアー中、ベースのマコトが、機材に頭をぶつけて救急車に運ばれたり、ボーカルのトシローは、喉がつぶれて血を出すなど、あらゆる災難がバンドに襲い掛かってくる。だが彼らはけっして逃げない。失敗に終わったライヴを謙虚に受け止め、怪我人がでる過酷な状況でも、誰一人リタイアすることなくツアーを続けていく。  ハイスタに代表されるエアジャム世代と呼ばれ、若者に絶大な支持を得ているブラフマン。その彼らの音楽性を形容する言葉は“静と動”。静の字はアジアンティックな繊細なメロディーだが、動の字は紛れもなくハードコアサウンドからの影響だ。だがそのサウンドは従来のハードコアからすれば異端だ。しかも売れている事実もあって、従来のハードコアファンからは、アイドルバンドと思われ敬遠されがちである。だが100人規模の小さなライヴハウスでも、けっして手を抜くことなく、全身全霊を傾けたパフォーマンスで、極限までに研ぎ澄まされた演奏をしている。毎回楽屋や路上で倒れ、完全燃焼している彼らの姿や、小さなライヴハウスへの異常なこだわり、困難に立ち向かっていくバンドスタンスでも分かるとおり、まさしくハードコアそのものなのだ。どんな試練にも立ち向かい、プライドの高さゆえ隠したくなるような恥ずかしい自分をさらけ出し、困難や弱い自分と逃げず向き合っていく。それこそブラフマンが掲げるハードコア精神といえるだろう。その信念が、彼らをすさまじいライヴへと駆り立て、緊迫した雰囲気を作り出している要因なのだ。  DVDのなかでトシローが「バンドで鳴らしたいのは音ではなく生き様」や「楽なほうと苦しいほうの道が二つあったら、苦しいほうに意味がある。そこから得られるものが大きいから」と、発言していた。その言葉どおり、彼らは修行僧のように、ただひたすら高みを目指している。苦難を乗り越えた先にある最良の瞬間を目指して。彼らはまだ目指している境地には達していないようだ。

      バンドホームページ

LAST DAYS OF APRIL/ラスト・ディズ・オブ・エイプリル『ベスト・オブ・LDOA』

ベスト・オブ・LDOA(期間限定プレミア盤)(DVD付)ベスト・オブ・LDOA(期間限定プレミア盤)(DVD付)
ラスト・デイズ・オブ・エイプリル

インペリアルレコード 2008-01-23
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 エンブレイムなどのエモに影響を受け音楽活動を始め、アメリカン・オルタナティヴなどの要素を加えた音楽性へと幅を広げていったスウェーデンのエモ・バンドの、結成10年を記念して発売されたベスト盤。初期のレアな曲から、シングル・カットされた代表曲が、年代順にまとめられている。

 年代を追ってあらためて聴くと、このバンドの音楽性がつねに変化してきたことがわかる。ノイジーなディストーション・ギターと、光の粒のようなシンセの音の組み合わせで、ダーティだが美しいサウンドを展開する「エンジェル・ユース」。シンセのオーバーダブなどの余分な音を排除し、シンプルなギター・アレンジを中心にミニマムなサウンドで、静謐や寂寥感を演出した「アセンド・トゥー・ザ・スターズ」。ポップで軽快なリズム・ギターを中心に素朴なアレンジで、喪失感を表現する「イフ・ユー・ルーズ・イット」。練られ選び抜かれたギター・アレンジで、極限まで音が研ぎ澄まされて、いわばローファイからハイファイに変わった「マイト・アズ・ウェル・リブ」……と、アルバムごとにいろんな音楽性にチャレンジしてきた。

 だが、自分のやりたい音楽をとことん追求する熱意や、ギター・アレンジやメロディーの断片から感じ取ることの出来る神経質なほどの繊細さ、切なさは、全曲を通して変わっていない。悲しみを乗り越え強く生きようとする姿勢には、沈む夕日を見てわけもなく切なくなるような、そんなセンチメンタリズムが漂っている。彼らは、サウンドが変化することでむしろ、感じやすくナイーヴな、変わらない自分でいられたのだ。か細く繊細だった彼らも、挫折や悲しみを経験することによって、成長し、強くなった。10年の成長の過程が、垣間見れる作品だ。

2009/01/15

COPELAND/コープランド『YOU ARE MY SUNSHINE』

マイ・サンシャインマイ・サンシャイン
コープランド

EMI MUSIC JAPAN(TO)(M) 2009-01-14
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 日本ではビューティフル・エモと呼ばれ、その第一人者であるコープランドは、新しいロックの形を提示したバンドだ。発祥はアメリカであるこのシーンの特徴は、イギリスのコールドプレイやトラヴィスなどに影響を受けた音楽性を有している。たいていのバンドが敬虔なクリスチャンであり、インディーで活動をしている。なかでもコープランドは、厳かなピアノと清冽なギターで、クリスチャンの美しい世界観を表現したバンドだ。
エモの影響が強くクリスマスのような神秘的な雰囲気に満ちた1st、氷細工のように冷たく綺麗なギターサウンドが中心の2nd、メロディーの中心がギターとピアノによって交互に入れ替わる、彼らの個性を確立した3rdと、アルバムごとにつねに変化を遂げてきたが、美しいサウンドということでは終始一貫している。

 新作となる4作目では、前作のサウンド路線を踏襲している。だが楽曲がより後ろへ下がり、ボーカルが際立つ音作りがなされている。ファルセットやディレイをかけたボーカルや、女性ボーカルとの掛け合いなど、随所に細かい変化が見られる。ボーカルを中心にしたサウンドに変化することによって、あらゆる感情が浮き彫りになるようになった。

 アルバムを支配しているのは、精神的な重苦しさだ。1stのような神秘的で心が浄化されるような清らかさもなければ、2ndのような過去の過ちへの懺悔や改悛、温もりにくるまれた優しさもない。あるのはボタン雪が降り積もる真冬の草原で、一人たたずんでいるときのような孤独と寂寥だ。そこには世間に刃向かうことのできない弱者の心理がある。まるで被害者の悲惨さと心の美しさを、サウンドに投影しているかのようだ。その自分ととことん向き合ったシリアスさが、コンプレックスを輝かせ、免罪化しているスミスとの違いだろう。

 ロックとは本来、ノイジーなギターで、理不尽な暴力を振るう強者に対して、不満を持った弱い立場のものが、反発する音楽であった。だがコープランドは、清冽なギターで、反抗する勇気や体力を持たず、いじめや疎外にあっている人たちに、同情や慰めといった形で、救いの手を差し伸べた。コンプレックスや不満を抱えているのは、反抗心を持った人だけではない。虐げられたものたちのロックもあるのだ。

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