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スライス『イフ・ウィー・コールド・オンリー・シー・アス・ナウ』

If We Could Only See Us Now
If We Could Only See Us NowThrice

2005-03-29
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 CDとDVDの2枚からなる4作目。DVDのほうは、結成から現在までの活動を振り返り、印象に残るライブや、それぞれの担当する楽器のこだわりをメンバー全員が語った、バイオグラフィー的な内容。たいするCDのほうは、前作で入れられなかった新曲や、アコーステックバージョンにアレンジされた曲などをいれたアウトテイク的な内容。ここでは、いままでいろんなリフやメロディーの情報が圧縮ファイルのように詰められ、緻密で複雑だった曲が、素朴でミニマムに。アコースティックギター1本で、音や曲のよさだけで深みを追求している。そのほかにも冷たいメロディーだけの水面をたゆたうような緩やかな曲もある。スライスらしさはなく、すべてが実験性に飛んでいる。あくまでも素材のよさを求めているのが理解できる。おそらくこの作品を発表した意味は、今まで追及してきたサウンドに、一区切りをつけたかったのだろう。だからバイオグラフィー的な内容のDVDをつけ、新たな一歩を踏み出したかったのではないか。
 だがこのアルバムには、思慮的で内省世界に入り込んでしまっているような暗さが漂っている。迷走している雰囲気がないのが唯一の救い。

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スライス『ザ・アーティスト・イン・ザ・アンビュランス』

Artist in the AmbulanceArtist in the Ambulance
Thrice

Island 2003-07-22
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 メタルコアから、プログレよりに変化した3枚目。メジャーデビュー作。前作で確立したサウンドフォーマットこそ変わりがないが、そこに暗いインテリジェンスと叙情的な美しさが加わり、芸術的な域にサウンドを高めた。地中深くから、悪魔を召喚するようなうねり声を上げるようなデス声に、巨大なハンマーで鋼鉄を平たく打ちつけるような重いメタルのリフ。冷ややかで甘美なプログレッシヴなギターのメロディー。強烈な被害者意識や憎悪、悲しみを感じる重く暗く透明で美しい世界観。まるで魔界の暗い沼地をイメージさせる世界だ。最新のメタルの情報がみっちりと詰まっている。サウンド形態こと違えど、同期のユーズドなんかと同じ世界観を確立している。スクリーモの違った角度からの回答といえる作品だろう。
 だが強気に前ヘ押し進んでいく気迫と、触れたらヒリヒリするような緊迫感がなくなった。その代わりに、弱さと強さ、か弱さと凶暴さがくるくる入れ替わるアンビバレンスな2面性を強く押し出している。この辺が評価の分かれ目となるところだ。だがミュージシャンとして確実に技術力は上がり、前作を超えるアルバムを作ろうとしている意欲には、なみならぬ思いを感じる。バンドとして確実に成長を感じる作品だ。

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スライス『ザ・イリュージョン・オブ・セフティー』

The Illusion of SafetyThe Illusion of Safety
Thrice

Sub City Records 2002-02-05
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 まぎれもなく最高傑作。性急な2ビートに、スラッシュメタルやパワーメタルなどのカタルシスのつぼを押さえたギターフレーズがくるくると入れ替わる展開。多種多様なバンドの影響を伺えるギターフレーズを、1曲に凝縮し、切り貼りしていくスタイルを確立したのは、このバンドが最初。ほんの0.01秒でも誤差が生じてしまえば、すべてが狂ってしまうバンドアンサンブルを、正確に緻密にこなしていく演奏力。その情報量と音のまとまりがすごいし、熱量もいささかも落ちていない。まるで綺麗なパス回しと組織でぐずしていくサッカーのようなエレガントさ。アイコンタクトだけで、すべてを共有し、理解し合えるチームワークがすごい。メンバー全員が心を通わせあい、ひとつの方向に情熱を燃やしているのが理解できる。
 この2作目では、前作の路線を踏襲、深化させ、独自のオリジナルティーを確立した作品。このあと、このスタイルのフォロアーが、雨後の竹の子のように増産した。そういった意味でも真の名盤といえる作品だろう。

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スライス/アイデンティティー・クライシス

Identity CrisisIdentity Crisis
Thrice

Universal Ireland 2001-03-06
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 01年に発売されたデビュー作。スクリーモの先駆者のひとつとして世間から認識されている彼らだが、じつはスクリーモではない。簡潔に言ってしまえば、メタルとハードコアの折衷スタイルである。そういったスタイルのバンドのことを俗にメタルコアと呼ぶが、スライスの場合、あくまでもハードコアからの影響が強い。息苦しいほど切迫した勢いの2ビートのドラムや、けたたましく吼えるボーカルからは、マイナースレットやシック・オブ・イット・オールなどの、精神面でのハードコアからの影響をふんだんに感じ取ることが出来る。そこに合わさる重くザクザク刻むリフや、テクニカルなギターは、メタル。この時点ではまだギターのテクニックが稚拙でメタルを消化し切れておらず、ハードコア色が強い。だがそこには戸惑い逡巡といった心の弱さはまったくない。周りの人をなぎ倒しながら前へ進んでいく荒々しい暴力性と勢いに満ちている。ストイックだ。
 次作でメタルとハードコアの調和が取れ、彼ら独自のスタイルを確立していくわけだが、個人的にはこの精神的な重さがすごく好きだ。

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