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ケント

KentKent
Kent

RCA 2006-12-18
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 ぼくにとってベスト・オブ・スウェーデンは、このバンド。星屑に散りばめられた夜空に、静かに雪が針葉樹林に降り積もる北欧ならではの情景。そんなスウェーデンの大自然が思い浮かぶバンドは、ケントをおいてほかにない。
 
95年に発表されたデビュー作は、オーセンティックなギターロック。だが、イギリスやアメリカのロックではありえないサウンドだ。スウェーデン語で歌われている歌詞や、音のトーンが下がっていくボーカル、薄暗く寂しげでキーの高いキーボード、凍てついたギターのメロディー。そこからはスウェーデン人の情緒が生々しく伝わってくる。
 録音状態も冬の寒気によってギターの音が震えるような音色で、吐く息が白く、空気が凍っている寒々としたスタジオで収録されたのがありありと伝わってくる。そのあたりがスウェーデンでしかありえない独特なサウンドなのだ。
 
 全体的に哀愁が漂っている。だがそこには我慢強さと熱意にも満ちている。それがきっとスウェーデン人の情緒なのだろう。ぼくはこの哀愁が好きだ。

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THE MATCHES 『A BAND IN HOPE』

ア・バンド・イン・ホープア・バンド・イン・ホープ
マッチズ

ソニー・ミュージックジャパンインターナショナル 2008-03-19
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 08年に発表された3作目。今作では、前作よりもヴァラエティー豊かなサウンドに仕上がっている。スタンダードなメロディックパンクの曲から、ホラーからガレージ、クラシカルな曲や“いとしのレイラ”を髣髴させるギターのリフなどもある。9人のプロデューサを起用した前作に続き、今作では6人がプロデュース。そのおかげなのか、音楽性の方向もバラバラで、幅広い作品に広がった。でも、肝心のクレイジーさが影を潜めた印象をうける。感情を込めて丁寧に歌っている曲が増え、テンションが下がりまじめになった。ミュージシャンとしては、感情の表現の幅も増え、格段に音楽性の幅が広がった作品だが、不真面目さが薄れてしまったのはちょっと残念だ。

 今年に入り解散を発表。彼らは悪ふざけに飽きてしまったのだろうか。

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THE MATCHES『DACOMPOSAR』

ディコンポウザーディコンポウザー
マッチズ

ソニー・ミュージックジャパンインターナショナル 2006-09-13
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 クレイジーさにさらに拍車がかかった06年に発売された2枚目。アルバムタイトルの『ディコンポウザー』って名前からしてすごい。意味は台所の流し台の横にあるゴミを捨てる容器。寝る間を惜しんで一生懸命作ったアルバムなのに、そんなタイトルをつけるなんて。やはり彼らはクレイジーだ。

 今作では、クランプスにロケット・ザ・クリプトを足して2で割ったような変態ガレージロックを、ポップで楽しいメロディックに流し込んだ。しかもプロデューサーを9人に起用。そのせいなのか、カッティングギターやフレーズはワンパターンなのに、不思議と似通った曲がない。それでいてアルバムがしっかりとまとまっている。そこにはどんな有名なプロデューサーがどの曲をプロデュースしようと、俺たちのサウンドに変わらないといった悪意を感じる。ワルツを悪ぶさげしたような曲もあり、シリアスさやセンチメンタルリズムを、バカバカしくパロディー化している。悪ふざけだけが極端に突き抜けている。

 おそらくこの作品を聴いて徹底的に彼らを忌み嫌うか、ゲラゲラ笑ってとことん好きになるかのどちらかだろう。それほどアクの強い作品だ。もちろんぼくは後者だ。

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ザ・マッチズ『E VON DAHL KILLED THE LOCALS』

E. Von Dahl Killed the LocalsE. Von Dahl Killed the Locals
The Matches

Golf 2004-05-11
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 彼らほどコテコテのアメリカ人と思えるミュージシャンはほかにいない。日本人のような情緒や、繊細な感受性や、きめ細かさがない。陰と陽の2面性もない。なにをやるにもハイテンションでデフォルメされている。大げさで一方向に突き抜けている。

 03年に発表されたデビュー作は、明るく楽しくポップなメロディックパンク。ヒップホップの歌いまわしやギターの使い方からは、ゼブラヘッドやブリング182の影響を感じ、まだ先駆者たちの影響から抜け切れていない印象を受ける。だがハイテンションでまじめさがまったくないボーカルの歌い方からは、彼らならではのクレイジーさがうかがえる。真に壊れだすのは次の作品から。

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スライス『ベガーズ』

BeggarsBeggars
Thrice

Vagrant Records 2009-09-15
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 もはやハードコアやメタルからの影響はない。異次元へ飛躍してしまったスライスの8作目。今作は前作“地の章”のサウンドアプローチを、さらに推し進めている。いうならホット・ウォーター・ミュージックやジミー・イート・ワールドが途中で放棄したサウンドスタイルに、スライス独自のアイデアをとりこんだ。ホット・ウォーター・ミュージックの分厚いギターサウンドや、ドラッグ患者のような病的な男くささを極力削ぎ落とし、逆に一定のリズムでループするベースやリズムギターをさらに強調している。

 <ポーン>と、もの悲しく響くギターの反復でメロディーを構築。そこには黄色い枯葉が舞い散る秋景色のような憂愁さと、思慮深い切なさがある。そしてソウルからの影響を感じさせるボーカル歌いまわしが加わり、70年代のようなノスタルジックな雰囲気が漂っている。
 
 ジミー・イート・ワールドの『クラリティー』以降、ロックサウンドとしての進化が止まってしまったエモを、古きよき物を加えることによって、さらにネクストレベルとヘと押し上げた。インディーロック界に、新しいスタイルを提示した。

 個人的には、怖さを知りながら困難に立ち向かっていくような気迫と熱さと荒々しさがみなぎった初期2枚が最高傑作という気持ちは変わらない。だが、強い意志が揺らぐときにみせる切なさや憂鬱さに満ちたこの作品も好きだ。

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THRICE 『THE ALCHEMY INDEX  Vol.Ⅲ&Ⅳ 』

ジ・アルケミー・インデッIII&IVジ・アルケミー・インデッIII&IV
スライス

インディーズ・メーカー 2008-04-16
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 古代のギリシア哲学、地、水、風、火の4代元素をテーマにしたコンセプトアルバム第二弾。7作目は、風の章と地の章からなる2枚組み。“風の章”は、モグワイやバトルズなどのポストロックやマスロックなどのサウンドアプローチに、極力音数を減らした素朴で平素なそっけないサウンドが魅力。9.11のテロで空から火炎に包まれたビルが降ってくる恐怖や、太陽めがけて飛んでいくギリシャ神話イカロスの翼など、頂点へ目指していく人間やアメリカ国家の凋落や驕り、傲慢などをテーマに掲げている。
 ポロンと爪弾くメロディーギターに、寂寥感に満ちたキーボードの音が絡むサウンドは、独特の静けさに満ちている。そして気だるく憂鬱なトーンのボーカルの歌声。そこにはキャンプファイヤで揺らめく炎と漆黒の暗闇のなかで静かに淡々と物語を語るときような、厳かな静寂さがあり、教訓を静かに語り伝えられるような気分になる。

 たいする“地(地球)の章”は、アコースティックギターに、寂しげなピアノが絡む展開。ボブ・ディランなどのフォークからも影響を感じるが、ここでは07年に発表されたボーカル、ダスティン・ケンスルーのアコースティックソロをより進化させている。歌詞も権力を手中に治めた人間ほど愛を知らないとか、ライオンに襲われる人間といった内容で、大地や自然の脅威、大規模な人口を有する都市の人間の動きのなかでは、個人はあがなうことが出来ないし、無力だということをテーマにしている。
 変拍子を使った変則ハードコアバンドFRODUSのアコースティック・カヴァーもあり、“いとしのレイラ”のような70年代の匂いを感じる曲もあれば、アルゼンチン民謡っぽい曲もある。ここでもじつに新しいサウンドを展開している。

 4作を通じて、人類の犯した過ちや愚かさについてテーマにしている。スライスは本来ハードコアコミュニティーの出身のバンドだ。大々的にメタルを取り入れたからメタルコアと呼ばれるシーンに属していた。むかしから戦争批判やアイデンティティーのクライシスといったシリアスな問題を取り上げ、真正面から向き合ってきたバンドなのだ。そういった意味ではアティテュードに揺らぎはないし、ハードコアスピリットも失われていない。職人のようにひとつの技術を追求するまじめさに変わりはない。だから地、水、風、火を音で表現しようとする方向にサウンドが向かって行ったのもなんとなく理解できる。ひとつのアートとして捉えるのなら、けっして悪い作品ではない。

 でもこのサウンドの変わりようは、むかしからのファンを置いてきぼりにしている。まるでむかし仲のよかった友達が、彼女が出来て急に大人になったときのような、寂しさを感じる。ああ、スライスよ、あなたはどこまで遠くに行ってしまうのか。

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THRICE 『THE ALCHEMY INDEX  Vol.Ⅰ&Ⅱ 』

ジ・アルケミー・インデックス VOLS.I&IIジ・アルケミー・インデックス VOLS.I&II
スライス

インディーズ・メーカー 2007-12-05
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 古代のギリシア哲学、地、水、風、火の4代元素をテーマにしたコンセプトアルバム第一弾。6作目は、水の章と火の章からなる2枚組み。彼らのなかにある水と火のイメージを、ギターメロディーやリフ、スクリーモヴォイス、効果音にのせ、曲に書いたそうだ。“火の章”では、前作『ヴィーズー』で確立したサウンド路線を、さらに研磨し、深化を追及している。戦争の爆撃や破壊で発生する地獄の業火がコンセプト。燃え上がる激しい爆音ギターのリフと、こみ上げる怒りややるせなさをスクリーモヴォイスにのせている。警告音のようなメロディーや、ざらついたノイズのピアノの音が、戦争という理不尽な暴力によって破壊された荒れ果てた荒野を想起させる。怒りや悲しみに満ちた作品だ。

 たいする“水の章”では、深遠で漆黒な大海原がコンセプト。穏やかで暗いトーンのキーボードを中心に、リヴァーヴの利いたボーカルが子守唄のように安らぎに満ちた歌声で歌う展開。広大な海を前に、恐竜時代の繁栄の思い出や、戦争に明け暮れる人間のちっぽけさを歌っている。終始たゆたうようなバラード曲で、そこにはポストロック的やアンビエントからの影響も伺える。極力無駄な音を排除し、音の空間から海をイメージさせるサウンドつくりが展開されている。いままでのスライスにはなかったタイプの曲たちだ。火ではサウンドを進化させ、水では異なるアプローチを展開。そういった意味では、新境地を開いている。

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