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KENT『B-SIDOR 95-00』

B-Sidor 95-00B-Sidor 95-00
Kent

RCA 2006-06-22
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 95年から00年までに発表されたシングルのB面を集めた裏ベスト集。00年に発表された5枚目。ディスク1が『ハグネスタ・ヒル』と『イソラ』のころをまとめた内容で、ディスク2が『ヴェルゲンセン』と『ケント』のころをまとめた内容。ディスク1では、新曲2曲を含む、静謐で穏やかなバラード曲が大半をしめている。たいするディスク2では、アコースティックの素朴な曲から、ギターロックナンバー、シンセなどを導入した曲など、若干実験性に富んだ曲がある。
 
 それにしても、このアルバムのクオリティーの高さには驚かされる。どの曲もオリジナルアルバム以上に清冽で透明で綺麗。しかもロマンティックな曲ばかり。捨て曲が一曲もない。いかにこのバンドが、ロマンティックな曲を作るソングライティングに優れた才能を持っているのか理解できる。オリジナルアルバムでは、あえて耳障りなアクの強いメロディーの曲を入れている。そのあたりに、このバンドがアルバムの流れ(物語性)を重視していることが理解できる。まるで塩を振ってスイカの甘みが引き立つように。

 そのほかに目立ったところでは、ディスク2に“ヴェルゲンセン”という2枚目のタイトル曲が収められている。この曲をB面に回すあたりに、おそらく、曲作りを進めていくうちに“ヴェルゲンセン”よりもいい曲が出来たから、アルバムから外すことになったのではないか。ある程度アルバムのコンセプトや方向性が決まっていたなかで、タイトル曲という自信のある曲を外し、ほかの曲と入れ替えたあたりに、一切の妥協なく、徹底的に練りに練ってアルバムを作っているのが伺える。

 全体的にインパクトの強いメロディーの曲がなく、綺麗なメロディーがスムーズに流れていくように進んでいく。だから印象に残る曲は意外と少ない。だがケントのなかで一番好きなアルバムが『ハグネスタ・ヒル』のぼくとしては、このアルバムは同じくらい好きだ。それほどクオリティーは高い。ジャケットが物語るように、北欧の美しい世界観が、一番反映されたアルバムだ。

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ケント『ヴァペン&アミュニション』

Vapen & AmmunitionVapen & Ammunition
Kent

BMG International 2003-03-17
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 前作よりもバラードが増え、メロディーの中心がギターからピアノ、キーボードに変わった02年発表の6作目。この作品からスウェーデン市場一本に絞ったためか、全体を通じて暗い曲が多い。だが7曲目以降、厳しい冬が終わりを告げ、雪解けする暖かな春へと向かえるように、徐々に穏やかにほのかに明るい曲が増えていく。考え悩んでいるような思慮的な暗さから、徐々に問題が氷解し、解決していくような展開だ。アルバム全体の流れで考えれば、イギリスやアメリカのアーティストではない独特な展開といえるだろう。

 今作ではR&B調のリズムを中心にした曲や、音数を減らし空間を活かした曲、スウェーデン語で歌われる独特なコーラスの曲も増えた。口笛でメロディーを構成する3曲目では、07年にブレイクしたPETER BJORN AND JOHNに多大な影響を与えているのが理解できる。

 個人的には綺麗なメロディー重視した前作好きだ。だがこの作品の魅力は、一度聴いたら忘れられない独特なメロディーと、暗い憂鬱さにあると思う。そういった意味では前作よりもインパクトが強い。スウェーデン人らしい作品といえる。

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ケント『ハグネスタ・ヒル』~英語ヴァージョン~

ハグネスタ・ヒルハグネスタ・ヒル
ケント

アリスタジャパン 2000-10-25
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 00年に発表された4作目の英語ヴァージョン。おそらく本人たちにも強い思い入れがあるこの作品だったのだろう。だからなるべく歌詞の内容を変えたくなかったのではないか。でもそれが裏目に出た。英語の歌い方がどこか不自然だ。トーンの上げ下げに違和感があり、注意深く歌っているためか、心の叫びが聞き取れない。メロディーにボーカルがマッチしていない。

 おそらく英語の歌詞がはまっていたら、カーディガンズほどでないにしろ、イギリス、アメリカをにぎわせていた作品になったのからもしれない。それだけこの作品には、全米英にはないオリジナルティーにあふれている。いい作品だけにもったいない。

 なお英語ヴァージョンでは大幅に曲が入れ替えられており、本国版の名曲“ETT TIDSFÖRDRIV ATT DÖ FÖR”などがはずされている。とくに8曲目以降の後半からアコースティックナンバーやカラッとしたロックナンバーなどに差し替えられ、カラッと明るい作品に印象を変えている。とくにアメリカ音楽シーンを意識しているようにも思える。

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ケント『ハグネスタ・ヒル』~スウェーデン語ヴァージョン~

Hagnesta HillHagnesta Hill
Kent

RCA 2000-07-24
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 まぎれもなく最高傑作。このアルバムで北欧の幻想的な美しい世界観を、見事に封じ込めることに成功。99年発売の4作目は、前作のバラード中心のサウンド路線をさらに推し進めた作品。荒々しかったノイズーギターは、さらに透明にメロディーに磨きがかかり、すべてにおいて深化を遂げた。

 このアルバムの魅力はメロディーの美しさ。静謐で清冽で神秘的なメロディーからは、いろいろな情景がよぎる。たとえば、針葉樹林に雪が降り積もる神秘的な夜だったり、オーロラが舞う星空に散りばめられた夜空など、すべてが北欧の大自然をイメージさせる。幻想的で綺麗な情景だ。だがけっして癒しやアンビエントな作品ではない。そこにこめられた想いは、すべて控えめで優しく切ない。まるで過酷で極寒の冬という状況のなかで感じるようなささやかな悦びだ。厳しさや辛さが前提としてあり、その枠のなかに悦びや楽しさなどが内包されている。閉ざされた環境が、作り手の純粋な人間性を反映させている。とてもつなくロマンティックだし、感動する作品だ。

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ケント『イソラ』~英語ヴァージョン~

IsolaIsola
Kent

Sony/BMG 1998-09-15
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 98年発表の3作目の英語盤。このころから世界市場を意識しだした。曲数は1曲だけ増えたが、アレンジはほぼ同じ。若干テンポの違う曲もある。英語で丁寧歌うことを心がけたためなのか、このアルバム特有の薄暗い世界観が若干損なっている印象を受ける。やはりスウェーデン語のほうがはまっているし、感情がこもっているように思われる。だが新しいことに挑んだということでは意義のある作品だ。

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ケント『イソラ』~スウェーデン語ヴァージョン~

IsolaIsola
Kent

Sony/BMG 1998-04-28
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 ゆったりとしたバラード曲のみの収録となった97年発表の3作目。自分の激情を歌ったエモーショナルな初期衝動は薄れ、北欧の美しさを表現した作品。バラード曲はギター中心のサウンドで、ヴァーヴやトラヴィスなどのビューティフルロックに呼応した。スコットランドの断崖絶壁の大自然やどんよりと曇った空から一筋の光が立ち込めるようなイングランドの空模様に対するスウェーデンからの回答といえる内容。前作よりも滑らかにゆったりと丁寧に歌っているボーカルが印象的で、アコースティックギターを取り入れた曲から、ピアノ中心の曲など、音のバラエティーも増えている。

 全体的に気だるさと憂鬱さに被われ暗い作品だが、最後で一筋の光が立ち込めるような新しい生命の息吹を感じる最後の曲で、このアルバムの印象ががらっと変わる。そこには、過酷な冬のつらさを乗り越え、春の暖かさを迎えたときのような到達感があり、一連の物語性がある。

 前作よりもゆったりとした曲が増えたが、そこには様式美だけではない暗い感情を伝えようとする気持ちがあり、個人的には好きな作品。

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ケント『ヴェルクリゲン』

VerkligenVerkligen
Kent

RCA 2006-12-18
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 96年に発表に発表された2nd。前作のブリット・ポップ路線を踏襲しながらも、静かなバラード曲などの新機軸も増え、メリハリのある作品に仕上がった。バラード曲はニルヴァーナーや中期ソニックユースの影響が強いが、けっしてヘヴィーな音ではない。サウンドフォーマットを踏襲しながらも、かぎりなくポップに仕上がっている。とくに印象的なバラードが6曲目と7曲目。音数の少ないギターのメロディーで構成された曲だが、前者は秋空のような深い憂愁と切なさに満ち、後者はしとしとと降るぼたん雪のような寂しさと寂寥感にあふれている。両者とも深い悲しみはなく、ぽっと明るい焚き火のような穏やかで控えめなやさしさに満ちている。

 この先以降エモーショナルな曲が減り、キーボードなどを全面に取り入れ、ビューティフルなサウンドを極める方向に向かっていくわけだが、初期衝動を感じるのは、前作とあわせ、この2枚だけ。

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