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コープランド『ドレス・アップ・アンド・イン・ライン』

Dressed Up & In LineDressed Up & In Line
Copeland

TMG 2007-11-20
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 07年発表のアウトテイク集。トゥース&ネイルへの移籍が決まり、前レーベルであるミリシア・グループ時代のなかなか手にはいりづらいEPの曲や未発表曲、レア・トラックを集めた作品だ。

 古いところとではパシフィコやペイルとのスプリットの曲も収録されている。この作品を聴けば、原曲はピアノ作っている曲と、アコースティックギター1本で歌っている曲の2パターンがあることが理解できる。

 アウトテイク集だからこったアレンジがなく、すべてシンプル。それにしても原曲がこんなにも暗いとは思わなかった。後期の曲になるにつれて、低いトーンで歌われ、暗くなっている。コープランドの音楽には、弱者の強烈な被害者意識を感じるが、ここでもそんな暗い憂鬱さを含んでいる。

 アルバムほどの完成度の高く、彼らの特長である美しさもさほどないが、曲を製作した時点でのリアルな感情が、生々しく伝わってくる作品だ。

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コープランド『ノウ・ナッシング・スタイズ・ザ・セイム』

Know Nothing Stays the SameKnow Nothing Stays the Same
Copeland

Militia 2004-08-10
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 04年発表のEP。当時2作目を製作するためレコーディングに入っており、待ち焦がれているファンの期待に応えるために発表された作品だという。5曲入りで、すべてがカヴァー曲。カヴァーしているアーティストは、スティーヴィー・ワンダーから、ビリージョエル、フィルコリンズなどの大物ボーカルミュージシャン。

 ギターやピアノのアレンジは完璧にコープランドのサウンド。原曲のよさを残さず、どの曲もコープランドならではの美しいサウンドに消化している。どのミュージシャンも歌声に魅力のある人たちばかりだが、そのボーカルに負けていない。あらためてボーカルの歌声の才能を感じる。

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COPELAND『EAT,SLEEP,REPEAT』

イート,スリープ,リピート(DVD付)イート,スリープ,リピート(DVD付)
コープランド

HOWLING BULL Marketing 2006-10-25
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 06年発表の3枚目。コープランドの音楽キャリアとして頂点に達した作品。1枚目のクリスチャンメロディーと、2枚目の無機質で冷たいメロディーを持つギターロック路線を合わせた。ピアノとギターのメロディーフレーズが交互に入れ替わる作品となった。

 まず曲作りの工程は、骨組みとなる原曲を作り、ワンフレーズごとに、ピアノ、キーボード、ギターのなかから、一番綺麗な音を選び制作されたという。単に音を肉付けしたのではなく、隙間を埋める余分な音を削ぎ落とした。シンプルな構成でありながらも、複雑な音の色彩をみせている。 

 キラキラ光るギターのアルペシオや、憂鬱さを含んだ透明で繊細なボーカル、厳かなピアノが、孤独や悲哀、不安や淋しさを表現し、緩やかで穏やかな旋律にのせ、美しいハーモニーを奏でている。前作の心が清められるような懺悔や悔悛といった想いも、今作では全体的に暗く憂鬱な曲が多い。その理由に今作では眠れない夜や、愛や信頼に対する不安といった内容がテーマになっているようだ。

 楽しい時期は一瞬にして過ぎ去り、やがて訪れる悲しみや苦痛。そんな心の奥底に潜むダークサイドに焦点をあて、悔悛や試練といった救済の言葉を投げかけている。聴き終えた後に感じ取れることの出来る優しさ。敬虔なクリスチャンとだけあって、その言葉から感じ取ることの出来る良心や教訓には深く重みがある。

 コープランドの音楽には、誰もいない部屋で、ひとりおもちゃで遊んでいるときのような孤独と寂寥がどこか漂っている。そしてその孤独と寂寥には、世の中の不満や怒りにたいして、攻撃的に外へぶちまけることの出来ない、若者の気持ちを代弁している音楽ともいえるだろう。言いたいことも言えず、内へ溜め込む内向的でか弱い人たちへ、美しさと穏やかな優しさで救いの手を差し伸べた音楽なのだ。

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COPELAND『IN MOTION』

イン・モーションイン・モーション
コープランド

HOWLING BULL Entertainmen 2005-03-30
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 ギターメロディーを前面に出した05年発表の2枚目。ここではギターロックな曲と、ピアノナンバーが交互に収録されている。静かで落ち着いた雰囲気の強かった前作に比べると、はげしくロックしている曲もあれば、ピアノとボーカルだけで進む安らぎに満ちた曲もある。前作の清楚なムードとはまた違った、まろやかで至福感あふれる味わい深さがある作品だ。とくにその優しくもまろやかな雰囲気を作り出しているのは、透明で美しい歌声のボーカル。とくに歌声のファルセットはこのバンドの最大の魅力だ。そこには花を愛でる男子の優しさやか弱さを感じる。弱さゆえに虐げられた者しか感じることのできない悲しみや孤独だ。それが女々しい印象を全体にあたえているが、自分自身の弱さを赤裸々にされたような気持ちにさせられる。

 趣向性が分かれる作品だと思うが、個人的にはその弱者の心理に共感できるし、なによりシリアスで、氷のように冷たい独特な美しさがいい。

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COPELAND『Beneath Medicine Tree』

ベニス・メディスン・ツリーベニス・メディスン・ツリー
コープランド

HOWLING BULL Entertainmen 2006-04-05
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 紛れもなく最高傑作。かれらも結局、バンド活動を通じて1枚目の初期衝動とイノセントを超えることが出来なかった。03年に発表されたデビュー作は、20歳前後にしか感じることの出来ない純粋性を、真空パックのように閉じ込めた作品だ。

 彼らのその初期衝動とイノセントとは、クリスチャン世界の清冽で綺麗な世界観。華やかなライトに飾られたクリスマスツリーのようにキラキラ光るギター、神聖な雰囲気が漂ったピアノは、クリスチャン音楽からの影響が強い。憂鬱さを含んだ透明なボーカルからは、改悛の想いや、清楚で心が浄化されるような安らぎが漂っている。

 まだこの時点ではコールドプレイなどのイギリスビューティフルロックやジミー・イート・ワールドの影響化を抜け切れていない。だがこの作品を聴くと、優しい思いになれるし、自分が犯してきた過ちを素直に反省しようとさえ思う。過去の後悔を水に流して、癒された気持ちにさえなる。こういう気持ちは、コールドプレイはもとより、エモ界隈でも、いままでこんな気持ちにさせてくれる作品はなかった。そういった意味では新境地を開いた作品といえるだろう。

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コープランド&パシフィコ『スプリットEP』

Split EpSplit Ep

2003-08-19
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 01年に発表されたコープランドとパシフィコのスピリット。このころのコープランドはまだオーセンティックギターロックで、パシフィコもアメリカ中部の広大なロック。自分たちしさといえば、コープランドはファルセットのボーカル、パシフィコは甲高い声のボーカルか。両バンドとも活動を始めて間もないころに発表された作品で、バンドのカヴァーから抜け出し、ようやく自分たちの曲を作り始めたころだ。自分たちらしさが発揮されるのは、次の作品から。

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デイヴ・メリロ『トーク・イズ・チープ』

Talk Is CheapTalk Is Cheap
Dave Melillo

Drive Thru 2006-06-13
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 06年発表のデビュー作。近年、エレクトロニクスポップやハードロックなどの幅広いジャンルの契約が目立つドライブ・スルー・レコーズだが、アコースティックを奏でる異色の新人が登場。アコースティックな曲とメロディックパンクが交互に収録されている編成だが、骨組みだけのシンプルなサウンドで、余分なアレンジを加えていないため、その声の魅力や、感情がよりダイレクトに伝わってくる。とくにアコースティックの柔らかな響きとピアノの厳かな音が織り成すハーモニーは、優しくも切なく、青春の面影がどこか漂っている。このモラトリアムな雰囲気が、すごく懐かしくも新鮮な気持ちになれる。

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i Policia!:Tribute to the Police

ポリシア-ア・トリビュート・トゥ・ザ・ポリスポリシア-ア・トリビュート・トゥ・ザ・ポリス

HOWLING BULL Entertainmen 2006-07-26
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 かつてホワイトレゲェーと呼ばれたポリスのトリビュート。ポリスの魅力といえば、レゲェー独特のリズム感を、白人特有の批評眼に置き換え、アカデミックな暗さで、メロディーを際立たせたところにある。このトリビュートでは、どのバンドもポリスの影響を、残滓程度に留めている。フォール・アウト・ボーイは知的で冷めたポリスの曲が、熱身を帯びているし、モーション・シティー・サウンド・トラックはムーヴシンセを巧みに利用したカヴァーをしている。そしてコープランドは、闇を浄化するような清らかさで、クリーンにカヴァーしている。なお日本盤のボーナストラックは、オーシャンレーンとブティットソンによるカヴァー。両バンドとも持ち前の美しさを残しつつ、ポリスの暗さを見事に表現している。

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TV/TV『something to get excited about』

サムシング・トゥ・ゲット・エキサイテッド・アバウトサムシング・トゥ・ゲット・エキサイテッド・アバウト
Tv/Tv

INYA FACE 2009-07-11
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 これは斬新なアイデアだ。80年代のファンクギターに、エレクトロを加味した青春エモ。メインストリームへの反抗や、流行ものを侮蔑した痛快な歌詞。NY出身のデビュー作は、EPに新曲6曲を加えた日本企画盤。目から火がでるようなテンションの高いボーカル、体が反り返るような激しいリズムのファンクギター、ジョークと真剣さの紙一重をいくチアリーダーの笛とコーラス。どれをとっても楽しく爽快。まるで雲ひとつない青空のような明るさだ。エモのトレンドであるデジタル音を、あえて抑えて、ロックの肉体性を全面に打ち出した。そのひねくれた姿勢がエモい。

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MATCHBOOK ROMANCE『VOICE』

ヴォイシズヴォイシズ
マッチブック・ロマンス

ソニー・ミュージックジャパンインターナショナル 2006-02-15
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 劇的に変わった05年発表の2枚目。ここでは冷たいメロディーをさらに強化し、知的な暗い方向に向かっている。いうならスライスの『ヴィズー』をさらに突き詰めた作品といえる。もはやメロディックパンクの面影はない。ハードロックやプログレなどの無機質なメロディーを突き詰めた。独特な世界観をもったサウンドだ。
そのメロディーは、中世の社交場を思わせるような華やかクラシカルな美しさがある。都会的なロマンティズムを、ブルジョア的な豪華さで、さらに深化させた作品といえる。

 全体的に華やかで美しいサウンドだ。でもなんだろう。華やかさの奥にある息苦しくも憂鬱でもの悲しい気分は。歌詞も本当の言葉が暗示として表現されていて、真意は隠されているようだ。実際、封入されている白黒のプラスティックシートをアートワークの一部にかざしてみると、隠されている言葉が浮かび上がる仕組みになっている。
おそらく彼らは、華やかに虚飾されたベールよって隠された残虐さや欲情や、プライドによって邪魔され言えなかった本音など、2面性のあるそういった気持ちを、このアルバムで表現したかったのではないか。そういった意味では前作よりも確実に深い作品になっている。
 
 なお7年3月を最後に、彼らは無期限の活動休止に入った。個人的にはさらなる深みを追求してほしかった。『ヴォイス』あまりにもいい作品だっただけに、休止するにはあまりにも惜しい。

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マッチブック・ロマンス/モーション・シティー・サウンドトラック『スプリット』

Matchbook Romance/Motion City SoundtrackMatchbook Romance/Motion City Soundtrack

Epitaph 2004-09-07
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 04年に発表されたモーション・トラック・サウンドシティーとのスプリット。カッコ悪くても不器用な生き方が魅力のMCSと、おしゃれな都会的ロマンスを売りにしているMBR。ある意味、対極の位置にあるアティチュードを掲げているバンドたちによるスプリットだ。

 ここでは両者ともに新曲1曲と、過去の曲をアコースティックギターでアレンジしている。MBRは、ビル郡に囲まれたような都会的で殺伐としたアレンジ。対するMCSは、素朴で牧歌的な雰囲気が漂っている。アコースティックギターといえど、両者ともにこったギターアレンジをしている作品だ。

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マッチブック・ロマンス『ストーリーズ・アンド・アリバイズ』

Stories and AlibisStories and Alibis
Matchbook Romance

Epitaph 2003-09-22
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 大人のメロディックパンクという新境地を開いた03年発表のデビュー作。まさに最高傑作といえる作品。彼らもまた初期衝動がすべてのバンドだろう。バンドというのは大抵、衝動(勢いが)がすべてのバンドと、技術(円熟味)が増して味わい深く進化(深化)の2つに分かれる。彼らの初期衝動とは、切ないロマンティズムだ。

 マッチブック・ロマンスというバンド名が示すように、このバンドの魅力は映画のセリフから採ったような歌詞と、メロディーフレーズがある。歌詞は“星は出ていないけど、ぼくたち二人のどちらも空を見上げたりしない”や“ぼくは今夜みたいな夜を100万夜も過ごすのさ”といった、彼女に対する一途な想い綴った内容が並ぶ。まるおしゃれなバーで交わす会話のようなロマンティックな雰囲気が漂っている。彼らの出身地であるNYの摩天楼ながらのラブロマンス。青少年の若さを売りにしているメロディックパンク界では、異色の作品といえるだろう。

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マッチブック・ロマンス『ウエスト・フォー・ウィッシュニング』

 

West for WishingWest for Wishing
Matchbook Romance

Epitaph 2003-04-08
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 03年発表のデビューEP。ここではまだテイキン・バック・サンディーの影響が強いスクリーモを展開している。だがテイキン・バック・サンディーよりも、メロディックパンク色がさらに濃い。たとえばユーズドが特異な美意識や強烈被害者意識を持ったスクリーモとするなら、彼らはまるで夕日に向かって叫びたくなる、青春衝動のようなスクリーム(叫び)だ。メロディックパンクのギターを前面に出しているから、カラッと明るい作品に仕上げっている。彼らの本領が発揮されるのは次の作品から。

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ワッチアウト! ゼアーズ・ゴーストズ『ゴースト・タウン』

Ghost TownGhost Town
Watchout! Theres Ghosts

TRIPLE VISION entertainment 2009-06-10
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 これは面白い。触れたら壊れそうなほど繊細で透明で美声が、ピッチの上がっていくドラムマシーンによって、ハイテンションへと変わっていくエクスタシー。ミラーボールのように舞う妖艶なエレクトロミュージックの音の快楽。元A SKYLIT DRIVEのJordanが結成したW!TGのデヴュー作は、METORO STATIONやCASH CASHなどで活気づくデジタルエモシーンのなかでも、ひときわ異彩な個性を放っている。90年代のユーロビートとスクリーモを融合するなんて、彼らしか思いつかないアイデアだ。サウンドには難解さはなく、ポップで聴きやすいもの魅力のひとつだ。

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BROADWAY『KINGDOMS』

キングダムズキングダムズ
ブロードウェイ

TRIPLE VISION ENTERTAINME 2009-11-04
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 まさに次世代のスクリーモといえるバンド。叙情コアやプログレなどを加えたサウンドで、彼らしかありえないオリジナルティーを確立した。繊細で透明なトーンのギターのメロディーとボーカルの歌声に、切迫した性急なドラムのビートと苦痛の叫び声のようなスクリーモヴォイスが絡み合うことによって、高みに向かって感情がドライブしていく。そのサウンドは胸が締め付けられるほど息苦しく、激しく切ない。まるで氷細工のような脆く儚い美しさがある。CAVE INの新世代ハードロック路線を、また別の角度からアプローチしたともいえる。間違いなく今年話題となる作品だろう。

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ダッシュボード・コンフェッショナル『アレター・ザ・エンディング』

Alter the EndingAlter the Ending
Dashboard Confessional

Vagrant 2009-11-10
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 09年発表の6枚目。ここでは隙間なく音を詰め込んだロックサウンドを展開。相変わらずミディアムテンポのリズム感と、練りにねったメロディーフレーズに、変わりがない。新しさといえば、リヴァーヴのかかったボーカルと、デジタルサウンドやピアノ、キーボードを導入したことくらいか。

 ダッシュボード・コンフェッショナルはけっしてジミー・イート・ワールドのように、自分たちにしかない独特なメロディーを持ったバンドではない。サウンド的にも違ったジャンルから音楽性を取り入れるということが少ない。彼らしかない個性をいえば、クリス・ギャラハーの、透明でありながらも、熱身を帯び、力のこもった歌声にあるといえるだろう。彼の歌声を聴いただけでダッシュボード・コンフェッショナルと分かる。それほど説得力のあるボーカルなのだ。
今作では前作で覚えた押し引きのあるボーカルスタイルと、実験的に奏でられた多彩なギターフレーズが、集大成的にまとめられている。とくにボーカルは、いろいろな歌い方をしているし、余分な力が抜け、確実にうまくなっている。

 ミニマムよりもマキシマムといった完璧性を求めていた彼らだが、ここで目指していた音楽性が、完成したかのように思える。それほど完璧な形で構築され、隙がない。いままで発表した作品のなかで、一番完成度の高い作品だ。

 なお初回限定の青盤のほうは2枚組みで、このアルバムのアコースティックヴァージョンが収録されている。

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ダッシュボード・コンフェッショナル『ザ・シェイド・オブ・ポイズン・ツリーズ』

The Shade of Poison TreesThe Shade of Poison Trees
Dashboard Confessional

Vagrant 2007-10-02
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 07年発表の5枚目。ここでは原点回帰のアコースティックサウンドを展開している。とはいっても、いままでのフォーク/アコースティック路線とは根本的に違う。ワン・ライン・ドローウィングやピンバック、スライスのボーカル、ダスティン・ケンスルーらによって開拓されたインディー・アコースティックだ。そのジャンルの特徴である手作り感と、実験性にあふれている。だからさまざまなタイプの曲がある。チープなキーボードの音が素朴で安らぎに満ちた雰囲気を醸しだしている曲もあれば、ピッチの速い曲もある。アルペシオのようにパラパラと奏で、ときにはカッティングを駆使したアコースティックギターがあり、アレンジのバラエティーが豊富で実験的。まさにアコースティックの更なる可能性を追求した作品だ。
 
 歌い方も特徴的で、ときには優しくささやき、声を震わせて歌い、熱のこもった声など、曲の雰囲気にあわせいろいろと使い分けている。前作のような激しさこそないが、落ち込んでいる人を勇気づけられるような明るさに満ちている。ある種の虚無感をワン・ライン・ドローウィングがインディーアコースティックで表現したなら、彼らは、爽やかな明るさで励ましに満ちたファイトソングを表現したといえるだろう。

 個人的にはいままでのアコースティックアルバムで一番好きな作品だ。前作までは、悔しさや悲しさといった激しい感情を、全面に出していた。ここでは一歩さがり、冷静に状況をみつめている。無謀な若さだけで突っ走るのではなく、大人の落ち着きがある。

 この作品で、ひどく落ち込み、傷心な自分といったナイーブさと純粋性は失われてしまったのかもしれない。高鳴る感情を全面に出した初期衝動もない。だが物事を冷静にみつめられるようになったぶん、音楽性の幅も広がり、いろんな感情を表現できるようになった。しかもけっして枯れた円熟味はない。情熱を保持しながらも大人の階段を上っていくクリスの音楽は、いい方向に向かっている。

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