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FAR『LISTENING GAME』

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 このアルバムについて語る前に、まずエモーショナル・ハードコアシーンについて説明をしたい。87年に元マイナー・スレットのイワン・マッケイが、エンブレスというバンドを始めた。激しく歌ったサウンドが、ハードコアとは異なっていたため、ファンからエモーショナル・ハードコアと呼ばれた。それが始まりである。エモーショナル・ハードコアとは、外へ向かって攻撃的なアメリカン・ハードコアとは違い、内省的で内に溜め込んだ鬱屈を吐き出す音楽でもあった。ライヴで喧嘩や絶えなかった暴力的なアメリカン・ハードコアシーンとは違い、エモーショナルハードコアは、喧嘩の弱い、うじうじしたやつがやる音楽で、内省的というイメージがあった。観客と共有を断絶したライヴは、やはり従来のハードコアとは異なっていた。

 ファーもエモ/ポスト・ハードコアシーンから出てきたバンドである。ボーカル、ジョナ・マトランガは、触れたら崩れそうなほどか弱く、繊細でナイーブ。他人とのコミュニケーションを断絶したような孤独をもっていた。

 92年発表のデビュー作は、ユースクルーやフガジなどの影響が強いエモ/ポスト・ハードコア・サウンド。だがこの時点でもうすでに彼らのオリジナルティーを発揮している。

 ノイズギターが静と動のアップダウンするのがこのシーン特徴だが、何より彼らの魅力の静の部分にある。そこには穏やかな静寂と、漆黒の闇に包まれた部屋で、ひとりに幽霊におびえるような、寂しさに満ちた孤独が漂っている。ジョナの細い糸のようにかすれて切れてしまいそうな、か弱いボーカル。エコー&ザ・バーニンメンのような、月の明かりに照らされゆらめく水面のようなギター。どれをとってもほかのエモ/ポストコアバンドとは、彼らは異質なものを持っていた。

 アルバムを重ねるごとにさらにか弱くなっていくが、この時点では、まだハードコアの力強さがある。個人的にはかなり好きな作品だ。

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