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ファー 『ウォーター・アンド・ソルーションズ』

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Far

Immortal 2004-06-22
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 圧倒的にヴァラエティーが豊富な作品に仕上がった98年発表の4作目。ここでは、うねるような重いグルーヴや憂鬱さこそ薄れたが、圧倒的なオリジナルティーを放っている。心地よい低音のベースのリフから、ざくざく刻むギターのリフ、メロコアっぽい曲もあれば、傷口をなでるような優しい叙情的な曲もある。ハードコアに多彩なアレンジを取り入れたおかげで、ハードコアバンドに多い、同じキーの似かよった曲が続く現象は1曲としてない。それが最高傑作といわれるゆえんだろう。

 だが全体的にバランスが悪い印象を受ける。とくに前半。エッジの利いたハードコアナンバーの迫力に、弱々しさが特徴なジョナーのボーカルが負けている。うってかわって8曲目以降の後半は、スマッシュキング・パンプキンズの影響が強い叙情的なナンバーが続く。こちらは悲哀に満ちた子供の暗く沈んだ声のようなボーカルが、生き生きとしている。

 おそらく激しい曲にジョナーの声が合わなかった理由は、ギターのショーンと音楽の方向性がずれてしまっているせいではないか。個人的には、ギターのショーンがハードコアを趣向としていて、ジョナーが叙情的な曲を突き詰めたかったように思える。のちにジョナーが「このアルバムの構成にほれぼれしていた。これ以上の作品を作れないと思った」と発言しているが、激しさ、アレンジ、脆さ、オリジナルティーのバランスが、全作品を通じて一番とれていると本人たちは思っているようだ。

 個人的にはバランスが悪いように思えるが、本人たちにとっては、そのバランスの悪いボーカルは個性であり、どちらに偏ることなく両者の個性が反映され、妥協点ぎりぎりの作品だったのだ。
この後12年近く活動を休止するわけだが、その間、伝説とバンドといわれた。ポスコア史上に名を残した名盤であることに間違いはない。

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ファー 『ティン・キャンス・ウィズ・ストリングス・トゥー・ユー』

Tin Cans With Strings to YouTin Cans With Strings to You
Far

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 前作よりもさらに重くヘヴィーに仕上がった96年発表の3作目。ここではもはやネオサイケからの影響やジョナの弱々しさは感じられない。静寂で重く暗い深淵な世界を極めようとしている。重く太いギターのリフ。漆黒の海で漂うようにゆったりとしたリズムのドラム。地の底からうねりを上げるベース。ジョナの力強い歌声。音の厚みが増し、演奏技術が格段に向上している。

 今作では“静と動”の“動”を極めようとしているように思える。基盤となっているのはシック・オブ・イット・オール以降のハードコア。そこにスローテンポのリズムと、うねるようなグルーヴを加えた。個人的には前作のほうが好きだが、彼らとしてはこの作品が自信作であったのではないか。その証拠に“GIRL”という曲を重く深淵なアレンジで録り直している。全作品を通して一番ヘヴィーな作品だ。

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FAR  『QUICK』

Far__quick_2


 94年に発表された2作目。ここではより重く激しく進化している。おそらく彼らのやりたかったこととは、ネオサイケデリックから耽美性やメロディックな要素を取り除き、より暗く荒々しくサウンドを作りたかったのだろう。ネオサイケデリックを取り入れただけに終わった前作と比べると、ここではその意図が明確になされている。闇に包まれた広い空間に、シリアスさを紡ぐ神経質なギター。怖さにおびえるジョナの弱々しい声。そこには、憂鬱で暗く緊迫したムードをはらみながら、不穏で弱々しい感情を表現している。

 激しさのなかにある、厳かな穏やかさと暗さ。後年デフトーンズがさらにノイジーなサウンドで、その路線をさらに強化し、オリジナルティーを確立したが、彼らのほうが先駆者であった。

 彼らの最高傑作は4作目といわれているが、個人的にはこの作品が一番好きだ。

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FAR『LISTENING GAME』

Far__listening_game_4


 このアルバムについて語る前に、まずエモーショナル・ハードコアシーンについて説明をしたい。87年に元マイナー・スレットのイワン・マッケイが、エンブレスというバンドを始めた。激しく歌ったサウンドが、ハードコアとは異なっていたため、ファンからエモーショナル・ハードコアと呼ばれた。それが始まりである。エモーショナル・ハードコアとは、外へ向かって攻撃的なアメリカン・ハードコアとは違い、内省的で内に溜め込んだ鬱屈を吐き出す音楽でもあった。ライヴで喧嘩や絶えなかった暴力的なアメリカン・ハードコアシーンとは違い、エモーショナルハードコアは、喧嘩の弱い、うじうじしたやつがやる音楽で、内省的というイメージがあった。観客と共有を断絶したライヴは、やはり従来のハードコアとは異なっていた。

 ファーもエモ/ポスト・ハードコアシーンから出てきたバンドである。ボーカル、ジョナ・マトランガは、触れたら崩れそうなほどか弱く、繊細でナイーブ。他人とのコミュニケーションを断絶したような孤独をもっていた。

 92年発表のデビュー作は、ユースクルーやフガジなどの影響が強いエモ/ポスト・ハードコア・サウンド。だがこの時点でもうすでに彼らのオリジナルティーを発揮している。

 ノイズギターが静と動のアップダウンするのがこのシーン特徴だが、何より彼らの魅力の静の部分にある。そこには穏やかな静寂と、漆黒の闇に包まれた部屋で、ひとりに幽霊におびえるような、寂しさに満ちた孤独が漂っている。ジョナの細い糸のようにかすれて切れてしまいそうな、か弱いボーカル。エコー&ザ・バーニンメンのような、月の明かりに照らされゆらめく水面のようなギター。どれをとってもほかのエモ/ポストコアバンドとは、彼らは異質なものを持っていた。

 アルバムを重ねるごとにさらにか弱くなっていくが、この時点では、まだハードコアの力強さがある。個人的にはかなり好きな作品だ。

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