« 2010年9月 | トップページ | 2010年11月 »

ウォルター・シュレイフェルズ 『アン・オープン・レター・トゥ・ザ・シーン』

An Open Letter to the SceneAn Open Letter to the Scene
Walter Schreifels

Big Scary Monsters 2010-04-26
売り上げランキング : 252004

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

 10年に発売されたソロ名義のフルアルバム。ここでは前EPの延長上にあるアコースティックアルバムだが、ラフミックスだった前作よりも完成度は高い。しかもカヴァー曲がなく、すべてオリジナルの曲だ。アメリカ中部の牧歌的なフォークソングから、ボブ・ディランのような曲など、ヴァラエティーが豊富で、ウォルターらしい、ギターフレーズをいろいろといじった曲もある。

 アメリカでは往年のボーカリストがこういった形のソロアルバムを発表する機会が多いが、系譜的にも、それらのアーティストと同じ感覚でやっている。バッドレリジョンのボーカル、グレッグ・グラフィンや、ジョナ・マトランガ名義のソロ、スライスのボーカル、ダスティン・ケンスルーなどのように、自らのルーツを、再確認することが目的としたソロなのだ。

 それにしてもこの日常的で平素感が漂った世界にはビックリさせられる。クイックサンドとライバル・スクールズでは暗く内省的な世界を追及していたウォルターが、ここでは社交的で明るいサウンドを展開している。歌詞も友人や恋人などの第三者が登場し、恋人との別れや友人の死というウォルターの身近に起こった実際の出来事が語られている。とくに10曲目のOpen Letter To The Sceneでは、先日他界したNYスキンズ・ハードコアの第一人者WARZONEのレイビーズへのレクリエムが歌われている。かれが残した言葉<戦いを忘れるな!ストリートを忘れるな!セルアウトをするな!>を引用して歌われるこの曲は、ウォルターの実直な気持ちが語られている。悲しみよりもライバルを失ったことへの虚しさが漂ったこの曲は、レイビーズの功績をたたえ、ハードコア精神をいまでもリスペクトしているウォルターの心境が窺える。レイビーズが音楽業界に残した功績を胸に、セルアウトすることなくいい音楽を作っていこうとするウォルターの決意のようにも思える。

 明るいサウンドといってもけっして楽観さはない。悲しみよりも、人生への虚しさがこのアルバムを支配している。ウォルターの人生観が顕著に現れたアルバムなのだ。ウォルター好きなら、これを聴いてグッと来ない奴はいないだろう。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

WALTER SCHREIFELS/ウォルターシュレイフェルズ 『SAVE THE SAVEABLES/セイヴ・ザ・セイブレス』

081


元ライバル・スクールズのボーカリスト、ウォルター・シュレイフェルズの09年に発表された初のソロEP。6曲すべてアコースティックナンバーで、そのうち5曲はカバー曲だ。内容も元ゴリラ・ビツケッツのボーカルCIVからアグノスティック・フロント、ゴリラビスケッツ、クイックサンドなど、往年のNYハードコアや自身の過去バンドのカヴァーしている。
ハードコアをカヴァーしているからといって、ここには激しさや攻撃性はない。あるのはアコースティック特有の牧歌的な雰囲気だ。あくまでも遊びや趣味的な要素の強い作品だが、ウォルターの歌声の魅力が詰まっている作品ともいえる。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

RIVAL SCHOOLS 『UNITED BY FATE』

ユナイテッド・バイ・フェイトユナイテッド・バイ・フェイト
ライバル・スクールズ

ユニバーサル インターナショナル 2002-06-05
売り上げランキング : 150076

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

 01年に発表されたライバルスクールズの1St。デビュー作にしてラストとなった作品。前バンドのゴリラビツケッツやクイックサンドと違い、ここではハードコアサウンドを全面に出していない。メロディーやギターフレーズを中心としたオルタナティヴロックを展開している。レイジ・アゲンインスト・ザ・マシーンからエコー&ザ・バニーメン、ネオアコなどにインスピレーションを受けたギターフレーズを、暗く内省的に咀嚼し吐き出したのがライバルスクールズの特徴だ。

 中心メンバーであるウォルターは、NYハードコアというマニアックで特定のシーンを意識したバンドではなく、オルタナティヴなロックがやりたくて、このバンドが結成されたようだ。だからもっと幅広い層をターゲットとしている。
そのためサウンドは上記2バンドよりも、メロディアスで軽く、ハードコアの重さや荒々しさといった要素はあまりない。前EPよりもさらにギターフレーズを厳選し、こだわりぬいたサウンドだ。ギターフレーズにこだわっているからといって、決して散漫な印象はない。アルバム全体を支配している空気は、寒さで一人凍えているような惨めな孤独と悲しみが満ちた想い。そこにはどんよりと曇ったNYの灰色の空をイメージさせる雰囲気が漂っている。

 個人的には、クイックサンドの重く暗く殺伐とした雰囲気が好きだが、このバンドの軽やかな雰囲気もいい。なによりウォルターのギターフレーズに対するこだわりや実験性、新しいサウンドを追及する意欲などは評価できる。
ちなみに06年には再活動をし、09年には復活ライヴも展開された。だがいまのところ再結成アルバムを発表する予定はないようだ。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

RIVAL SCHOOLS UNITED BY ONELINEDRAWING

Rival Schools United By OnelinedrawingRival Schools United By Onelinedrawing
Rival Schools & Onelinedrawing

Some Records 2001-07-24
売り上げランキング : 450352

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

 01年に発表されたライバル・スクールズとワンラインドローウィングのスプリットEP。これがライバルスクールズのデビュー作になり、ワンラインドローウィングは4枚目のEPとなる。

 ここでは両バンドともハードコアからの影響を感じさせない。ワンラインドローウィングは、ハードコアの重さをなくし、叙情性を加味したオルタナティヴ・ロックな曲で、ファーの延長上にあるサウンドを展開している。ライバルスクールズは、アコースティックナンバーから、ポストロック、ソニックユースの要素を加えたオルタナ・ロック。それぞれに実験的な要素の強い作品だ。

 両バンドともチープな録音で音が悪いが、それが幸いしてか平素でシュールな雰囲気を全体が覆っている。なによりこの作品が面白いのは、両バンドとも、この先、真逆な方向にサウンド路線が進んでいくことだ。ワンラインドローウィングは、アコースティックを追求していくし、ライバル・スクールズは、アコースティックやポストロック、カントリーといった要素よりも、ギターを追求していく。おそらくこの作品が、両者に与えた刺激は大きかったのではないか。この後の作品には両者が互いにあたえた影響を感じ取ることが出来る。
完成度は決して高くないが聴く価値のある面白い作品だ。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

クイックサンド 『マニック・コンプレッション』

Manic CompressionManic Compression
Quicksand

Fontana Island 1995-02-28
売り上げランキング : 173651

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

 ノイズギターを全面に出した95年発表の2作目。前作の穏やかで暗いサウンド比べると、ここでは荒々しいノイズに満ちたギターサウンドを展開している。当時のNYハードコアは、ヒップホップを加えたドッグ・イート・ドッグ、メタルをハードコアに加えたバイオハザード、ハードコアの荒々しさをより強固に硬質に進化させたシック・オブ・イット・オール、クリシュリナ教をハードコアに取り入れたシェルターなど、ハードコアにプラスアルファーを加え、自由度を求めたバンドがシーンを席巻していた。クイックサンドもそんなシーンに呼応し、彼らとはまた違ったアプローチからポストコアを確立している。

 彼らがこのアルバムで構築した世界観とは、ビートルズの“カム・ドゥ・ギャザー”を、ハードコアにアレンジした暗さと荒々しさ。変則的なリズムのベースやドラムと、左右に音が分かれるノイズギターや、2コード、3コードのギターの組み合わせで、病的な世界観を確立。まるで対人関係で悩んでいる精神病患者が幻覚を見るような、自省と内省にあふれている。

 それにしてもギターコードのヴァラエティーがすごい。警告音のように張り詰める音のギターや、切迫感に満ちたギターのカッティングなど、まるで映画のサウンドトラックのような音と、自らがカッコいい思うギターフレーズを、これでもかというぐらいに詰め込んでいる。ギタリスト、ウォルターの趣味が爆発している。
オリジナルティーもあるし、前作と甲乙付けがたいほどいい作品だ。なによりこのアルバムのイメージをさらに広げるMelinda Beckジャケットのアートワークがすばらしい。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

クイックサンド 『スリップ』

SlipSlip
Quicksand

Fontana Island 1993-02-09
売り上げランキング : 232627

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

 まぎれもなく最高傑作。93年に発表された1枚目のフルアルバム。前作に確立したハードコアにストップ&ゴーや、ベースや変則的なドラムのリズムをブレンドしたサウンド路線を、さらに練り上げ、磨きをかけた。技巧的で実験性が顕著に目立った前作と比べると、ここではしっかりとした世界観を確立している。

 このバンドもFARと同様に、エコー&ザ・バニーメンの暗く妖艶な美しさを、ハードコアに落としたバンドだ。だが、FARとは違い叙情性や美しさ、か弱さといった要素がまったくない。

 そこにあるのは地の底で静かに瞑想をしているような暗い落ち着き。絶望に悶え苦しむようなハードコア特有の負のエナジーはない。絶望や切迫感をすべて受け入れ苦痛に身をゆだねているような冷静さが支配しているのだ。

 こんな世界観は、いまも当時もクイックサンドにしかありえない。オルタナティヴの自由な空気が、NYの淀んだ空気と合わさって結晶化した奇跡の一枚。まさに傑作といえるだろう。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

« 2010年9月 | トップページ | 2010年11月 »