プロフィール

  •    宮本 一高         (みやもと かずたか)
                                        音楽ライターを目指しているものです。EAT MAGAZINEやDOLLなどで執筆をしておりました。おもにエモ、ハードコア、スクリーモ、メロディックパンクを中心に取り上げております。自分が感動した音楽を、積極的に紹介していきたいと思いますので、よろしくお願いします。 

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2010年11月

2010/11/29

ダグ・ナスティー 『ウィグ・アウト・アット・デンコズ』

Wig Out at DenkosWig Out at Denkos
Dag Nasty

Dischord 2002-06-24
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ボーカルがデイヴ・スマイリーからピーター・カートナーに代わり、メロディーに切なさが帯びた2枚目。ここではハードコアよりも、パンクやアメリカンロック的な要素が強い。カートナーのボーカルも、スマイリーのようなエネルギッシュさはなく、暗い翳りがある。サウンド自体、炭酸が抜けたようにどこか活気がない。強いてよさをあげるなら、さらに強調された湿り気のあるメロディーくらいか。そこにはやりきれない気持ちと切なさが漂っている。

この後、よりハードロック化した3枚目のアルバムを発表して解散するわけだが、この時点ではまだパンクだ。

ダグ・ナスティー 『キャン・アイ・セイ』

Can I SayCan I Say
Dag Nasty

Dischord 2002-05-28
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 元マイナースレットのベース、ブライアン・ベイカー(このバンドではギターを担当)と、2代目ボーカルにして元DYSのボーカル、デイヴ・スマイリーによって結成された86年発表された1St。D.Cで結成されたハードコアバンドだが、エモの先駆者であることに間違いはない。

 基本的にはジャームスなどのハードコアをベースに、ギターメロディーをぶち込んだサウンド。すべてが2分台のタイトに引き締まった演奏で、デイヴ・スマイリーのボーカルは熱くエモーショナルで気合が入っている。まるで直線的に陽が昇っていくように、エネルギッシュな活力。聴けば聴くほど元気が出る。

 当時のUSハードコアシーンは、マイナー・スレットやブラッグ・フラッグなどの第一世代が次々と解散し、シーンは第二世代へと向かっていた。新たな個性を模索するバンドが多いなか、いまだにマッチョで極悪、過度の暴力といったヴァイオレンスな雰囲気が支配していた。そんなハードコアシーンのなかで、短パンにパーカーというごく普通の学生が着るファッションで、暴力的なシーンとは一線を画した。

 ごく普通の若者が、熱くエモーショナルにハードコアをやり、メロディーを加えた。それが彼らのオリジナルティーであり、エモの先駆者といわれる所以だろう。

 H2Oや7セコンズなどの後続のバンドたちにも多大な影響をあたえた。ハードコアの歴史に残る名盤のひとつだ。

2010/11/24

THE GASLIGHT ANTHEM 『アメリカン・スラング』

American SlangAmerican Slang
ザ・ガスライト・アンセム

Bullion 2010-06-16
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 10年に発表された3作目。アルバムを製作する当初、09年の夏までに新曲を完成させようと考えていたが、なにもアイデアが浮かばず、相当悩んだという。それほど難航したアルバムなのだ。

 今作は3枚目にあたる作品で、クラッシュの『ロンドン・コーリング』をヒントに、製作されたそうだ。パンク界から見れば『ロンドン・コーリング』は、パンクへのこだわりを捨て、自らが影響を受けた音楽を素直に出した作品と言われている。信念を捨て、ファンが望むものよりも自分たちがやりたいサウンドを追求した結果、賛否両論を巻き起こした作品だ。

 だが彼らなりの『ロンドン・コーリング』の解釈は、自分たちのルーツを素直に出そう、そして音楽を楽しもうという姿勢で作られたに違いない。だからなのか、今作ではエモの繊細なメロディーからの影響はまったくない。クラッシュのシンプルなパンクをベースに、トム・ウェイツや初期のクラプトン、ローリング・ストーンズなどのブリティッシュ・ブルースのメロディーを加え、ギターコード中心のシンプルな作品に仕上がっている。前作は、00年代のエモに50‘Sサウンドを加え、古きよき新しさを目指したが、今作では自分たちの好きなメロディーを取り入れ、やりたいサウンドをやるといった意識で作られている。

 そしてボーカルはソウルなどの伸びのある歌い方が加わり、飛躍的に成長した。前作の純朴さや泣きメロはなく、開き直ったように明るくなり、力強さが増している。まるで労働者や貧困層に、<ここで負けるな!立ち上がれ>といった具合に気持ちを鼓舞している。まさにタイトルの『アメリカン・スラング』そのものだ。

 そもそも『アメリカン・スラング』とは、アメリカン・ドリームのダークサイトを意味している造語だ。今作のテーマは、アメリカン・ドリームに破れたルーザーに焦点を当てている。アメリカ人の多くは栄光をつかむために成長し、生きるために必死になって働く。アメリカ人の誰もが夢をつかむチャンスがある。だがすべての人々に平等にチャンスが与えられているわけでもなく、誰もが必ずしも成功するわけではない。夢に敗れるものもいれば、運に見放され、成功から転落し、不幸な顛末を迎えるものもいる。貧しい環境に育ち恵まれない境遇から這い上がれない人もいる。幸福の形は似通っているけど、不幸の形は多種多様だ。ここで登場する人物は、そんな不幸形を背負った人たちだ。すべてを失い挫折を経験した人たちに、逆境からもう一度立ち上がれと喚起している。そこには孤独や悲しみのかけらは微塵もない。あるのは人生のリセットボタンを押したときのような、すがすがしい気分と、立ち向かっていく強い意志だけだ。

 自分たちのサウンドをとことん楽しもうとする姿勢と、逆境から這い上がっていこうとする歌詞は、開き直った明るさがあるところで、共通している。一躍その名を有名にした前作を超えるというプレッシャーから開放された結果、この境地に達したのだろう。良い境遇に置かれているにしろ、彼らの気分もまた、開き直りを求めていたし、逆境から這い上がりたかったのだ。前作の素朴な熱さとはまたべつの、垢抜けた気分の今作もいい作品だ。

2010/11/13

THE GASLIGHT ANTHEM 『THE '59 SOUND』

The ’59 SoundThe ’59 Sound
ザ・ガスライト・アンセム

インディペンデントレーベル 2009-03-04
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 08年に発表された2作目。個人的にこのアルバムが一番好き。サウンドフォーマットこそ、前作と比べさほど大きな変化はないが、確実に深化を遂げ、情緒の詰まった作品に仕上がっている。

 今作では、初期ジミー・イート・ワールドのような繊細なメロディーが特徴のエモと、ソーシャル・ディストーション系のルーズで荒々しいパンクを中心に、繊細で疾走感あるサウンドを奏でている。

 とくに2曲目の疾走感。ブルース・スプリングティーンの『明日なき暴走』のようなやるせない気分を抱えながら、走り抜ける労働者の悲しさがある。そこには強がった男の弱い一面や、戦い続けて疲弊した労働者の姿があり、先のみえた将来への絶望や、自己の行動に対する無力さや切なさが漂っている。

 なにかの文章で音楽ライターの山口智男さんが古きよきアメリカの郷愁を表現したサウンドだと書いてあったが、その通り、チャールズ・ディスケンスの小説を引用した歌詞には、<62年の歌を口ずさむ>、<59年代の歌が流れてくる>、<55年式のリンカーン>などのキーワードが出てくる。

 そこにはまるで大自然にあふれた地方都市が開発され自然が失われてしまったときのような喪失感と、楽しかった思い出を振り返るときに感じる一抹の寂しさが漂っている。楽しかった日々や、失われてしまった光景はもう二度と戻らないのだ。そんなときに感じる寂寥とした思いだ。そんなアメリカの憧憬をガスライト・アンセムは描こうとしている。

 この男臭く切ない繊細でイノセントなサウンドを聴いて感動しないやつは、ロックを聴かないほうがいいだろう。

2010/11/07

ザ ガスライト アンセム 『セニョール アンド ザ クイーン』

Senor & The QueenSenor & The Queen
Gaslight Anthem

Sabot Productions 2008-03-11
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07年に発表された4曲入りのEP。ここではこったギターアレンジはなく、荒々しいコードのパンキッシュなサウンドが展開されている。
それにしてもアルバムジャケットもさることながら、歌詞も50、60年代を相当に意識している。2曲目ではエルビス・プレスリーへの憧れについて歌っているし、4曲目のタイトルは“ブルージーンズ&ホワイトTシャツ”と付けられている。この曲はワーキングクラスの日常を歌っているが、一見するとジェームス・ティーンが主人公のようにも思える。
古きよきアメリカへの郷愁と、むかしのヒーローたちへの憧れの想いが交錯している。
つぶやくようにぼそぼそと歌うボーカルも健在。シンプルなサウンド構成がダイレクトに心にしみてくる、いい作品だ。

2010/11/06

ザ ガスライト アンセム  『シンク オア スイム』

Sink Or SwimSink Or Swim
Gaslight Anthem

Xoxo 2007-07-09
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 07年に発表されたニュージャージー出身のガスライト・アンセムのデビュー作。日本ではフォークパンクの第一人者として語られているが、実際アメリカでは、バウシング・ソウルズやアゲインスト・ミーなどと同様の、ストリートパンクに属するバンドだろう。ただしこのバンドの特徴は、上記のバンドたちと違い、カッコたるオリジナルティーを持っている。

 とくにギター。小気味よい旋律と繊細な泣きメロからは、50、60年代のブルースやオールディーズロックと、フガジなどのエモーショナルハードコアからの影響が窺える。それだけとってしまえばどこにでもあるサウンドだが、彼らの魅力はなんといってもボーカルにある。

 とくに歌い方と旋律。歌い方はまさにブルースプリングティーンそのもの。そこには労働者の純朴さと力強い男臭さを感じ取ることが出来る。それが繊細で憂いに満ちたサウンドと合い交えて、思いの丈を打ち付けるように小気味よいリズムに刻んでいる。

 彼らのサウンドは、けっしてパンクのように破壊的でもなければ攻撃的ではない。あるのは労働者が富裕層や政府に対する疑問と矛盾。<なぜ俺はこんなに一生懸命に働いているのに、貧しいのか?俺の周りはなぜ不幸に満ちているのか?>といった具合に、境遇に対して疑問をぶつけている。そして悲しみに満ちている。

 ガスライトアンセムの個性とは、労働者の心境を代弁したサウンドだ。だが彼らの特徴はそれだけではない。50、60年代のノスタルジーサウンドとブルーススプリングティーンのボーカルスタイルをパンクの荒々しさと融合したサウンドなのだ。古さと新しさが混ざったサウンドは、どこか懐かしくもいままでなかった新しいケミストリーを生み出している。カッコいいサウンドだ。

2010/11/04

ウォーキング コンサート 『ラン・トゥー・ボーン』

Run to Be BornRun to Be Born
Walking Concert

Some Records 2004-09-07
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 04年に発表されたウォルターの新バンドのデビュー作。ここでは爽やかなギターロックを展開している。
相変わらずギターフレーズのこだりは半端ではない。アコースティックの軽やかな音から、ニューヨークパンクのようなフレーズ、ガレージぽいサウンドなど、実験的でインディーなサウンドだ。

 ひとことで言えば、都会的でお洒落。知的でクールなサウンドで、感情が極端な方向に偏ることがない。楽しさや寂しさ、美しい光景に浸るといった感情があっても、知性よって制御されている印象を受ける。

 個人的には好きな作品だが、ヘヴィーなサウンドを追及してきたウォルターの過去の実績から比べると、あまりにもかけ離れすぎているために、話題にならなかったようだ。売れるものを作ろうとする意識はなく、ウォルターが好きなものだけを詰め込んでいる印象を受ける。趣味が爆発している作品だ。

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