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オーシャンレーン 『アーバン ソネット』

Urban SonnetUrban Sonnet
OCEANLANE

ハウリング・ブル・エンター 2010-12-08
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 まるで鬱蒼と茂る森を歩いているような深い静寂と、冬の青く透き通った空を眺めているような悲しみ。脆くも儚い叙事詩。ギリシャ美術のような芸術的で美しい作品。

 通産5枚目にして完成度の高い作品を提示したオーシャンレーン。いままでビューティフルバンドという呼び名で語られてきたが、今作では明らかにその範疇を超えている。3作目のロック路線に、いままでとは違ったビューティフルな要素をふんだんに盛り込んだ、集大成的な内容だ。

 今作では都市生活に潜む悲哀がテーマになっているそうだ。だからなのか、どこか他人と透明な壁一枚はさんだような孤独や疎外感といった感情を感じる。オーシャンレーンの特徴である透き通ったような脆くも儚い美しさこそ変わらない。だが、優雅なピアノと清冽なギターが織り成すハーモニーや、くるくるとメロディーが入れ替わるギターフレーズにいたるまで、都会の煩雑さのように複雑に入り組んでいる。シンプルなメロディーが持ち味だった前作と比べると、大きく変化した。とくに7曲目の『フォーリング・ダウン』。嗚咽した感情が上がっていくサビのコーラスからいきなり静寂なキーボードに流れ込む展開は、意外性に富んでいるし、8曲目の『バトルグランド』では、まるで人が死を悔やむかのような厳かな雰囲気の悲しみがある。そして最後の『クライアーズ・オブ・ザ・ウルヴァース』では、混乱した頭のなかのようにサイケデリックで、意外な展開で終わる。どの曲もギターフレーズやメロディーにとことんこだわり、アレンジ違えば曲調も違う。歌い方にいたるまで、すべてを変えている。00年以降のUSインディーズを徹底的に分析し取り入れ、いままで日本にはなかったメロディーを追求した。その情報量がハンパじゃない。それほど曲が練られているし、完成度がものすごく高いマニアックな作品だ。

 話は変わるが、ぼくは現在のインディーバンドに、ネガティヴな印象を抱いている。その理由はインディーでしか出せないサウンドを追求しているバンドがあまりにも少ないからだ。むかしはインディーからメジャーに移籍するのが夢だった。ダイヤの原石みたいなバンドは、メジャーに買収されていった。なかにはインディーズ時代よりもとがった音を追求するバンドもいれば、メジャー用に音がソフィスケートされ、ポップになったバンドもいる。メジャー移籍こそ、有名になるための手段だった時代があった。

 その流れが変わったきっかけはハイスタがメジャーからインディーへ移籍してから。DIY精神が流行り、メジャーへセルアウトするのではなくしっかりと自分の主張を持ち、インディーで活動することがカッコいいという風潮が生まれた。先駆者のハイスタは良い。だがその後、雨後の竹の子のように増殖したメロディックパンクのフォロアーたちがこだわるインディーズ精神というものに、ぼくはある種の嫌悪感を抱いていた。

 インディーからメジャーへ移籍するが、決して悪いことだと思っていない。オリジナルティーを持ったいいバンドはインディーだろうが、メジャーだろうが、周りから評価される。むしろメジャーに移籍して敏腕プロデューサーの手によって、そのバンドが光り輝くなら、メジャーへ移籍したほうがいいとさえ思っている。

 ここで言いたいのは、メジャーの選別から落ちたB級バンドたちが、「メジャーはクソだ、俺たちはDIY精神にこだわる」や「俺たちはセルアウトしない」など、自己欺瞞に満ちた発言をしているという事実だ。自分たちの才能のなさをインディー精神へのこだわりでごまかし、才能あるバンドかのように装っている。それがいように腹が立つ。こういったバンドたちがインディーの質をさげ、さらに悪い状況を生み出している。

 そんななか、オーシャンは究極のインディーポップを追求した。おそらくこの作品をメジャーレーベルから出せば、難解さは取っ払われ、解りやすく手直しをされていただろう。芸術的で複雑な世界観は損なわれていたはずだ。このマニアックで実験的なサウンドは、インディーでしか作りだすことが出来ない。それこそがオーシャンがインディーで出す意味であり、メジャーでは奏でることの出来ない究極のアンダーグランドポップなのだ。ノー天気にハッピーなラブソングばかりを歌っている3コードのロックしか能がない、ほかのインディーバンドたちとは明かにレベルが違う。複雑な実験性と暗く美しいポップさに富んだ真のインディーポップだ。

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ヒット・ザ・ライツ  『スキップ・スクール・スタート・ファイツ』

Skip School Start FightsSkip School Start Fights
Hit the Lights

Triple Crown 2008-07-08
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ボーカルがコリンからニック・トンプソンに代わり、08年に発表された2作目。やはりボーカルが代わったため、曲全体の雰囲気も変わった印象を受ける。素のままの姿をさらけ出すのが魅力だったコリンとは違い、ニックの声は優しくもなめらか。まるでモーションシティー・サウンド・トラックのジャスティンような歌いかたで、思いやりと慈しみにあふれている。

持ち前のリズムに重点を置いたミドルテンポな曲も、ピアノやデジタルな要素も加わり、パワーアップ。青春コーラスやシンガロングなどを、ギターのリフでメロディーを構築したアメリカンポップスな要素をメロディックパンクにうまい具合にブレンドしている。

歌詞は相変わらず恋愛やファッションに流されず自分を持てといった内容ばかりだが、別れや失敗といったネガティヴ要素も、ほんのちょっとちりばめられている。どうやらいろいろと苦労を経験したようだ。

そこには粗削りな若さよりも、落ち着いた大人の雰囲気が漂っている。まるでどんより曇った空が徐々に晴れていくような控えめな明るさ。それがなんとも心地よい作品。

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ヒット・ザ・ライツ 『ディス・イズ・ア・スティック・アップ...ドント・メイク・イット・ア・マーダー』

This Is a Stick Up: Don't Make It a MurderThis Is a Stick Up: Don't Make It a Murder
Hit The Lights

Triple Crown 2006-04-11
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オハイオ州出身のメロディック・パンク・バンドのデビュー作。06年発表。基本的にはブリンク182の変則メロディーと、ニューファウンドグローリーの骨太なギターコードを合わせたようなサウンド。リズム感が強く、骨太でパワフルで、脳天気に明るい。この界隈のバンドたちと同様、彼らの歌詞も恋愛や自分についてなど、どこにでもある日常がテーマになっている。

彼らのよさは、ファッションやトレンドを否定し、日和見主義者を批判する姿勢と、潔さにある。「俺たちはオリジナルティーを追及しているバンドではない。他人にどう思われようが、ただ好きな音楽をただやっているだけ」という歌詞は、自分を正直にさらけ出しているし、太い芯があるバンドだということがわかる。メロディックパンクが本当に好きなんだなという姿勢がすごく伝わってくるし、なんとも爽快なバイブを放っている。

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ダグ・ナスティー  『マイノリティー・オブ・ワン』

Minority of OneMinority of One
Dag Nasty

Revelation 2002-08-20
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 13年間の沈黙を破って02年に発表された4作目。これがすごくいい作品なのである。デイヴが戻り、初期のような扇情的なサウンドを展開。デイヴのボーカルは相変わらず力強くエネルギッシュ。緩んだところがまったくない。すぱっと簡潔なメロディーフレーズと分厚いギターコードの絡みは絶品。脳天気に明るいサウンドというわけではないが、ネガティヴな要素は微塵も感じられない。

 それにしても何なのだろうこのポジティヴなパワーは。メンバーみんな40才を超え、ブライアンもバットレリジョンで経験を積み、デイヴもオールやダウン・バイ・ローといった歴戦のバンドで修羅場をくぐり、挫折も悲しみを経験し、バンドのいい部分や悪い部分も見てきたオヤジたちなはず。それなのにいまだ純粋な初期衝動を保ち続けている。

 おそらくその理由は、ひさびさに再会した友人たちが、軟弱なサウンドが多いガキたちに、オッサンのすごさを見せ付けてやろうという心意気で意気投合したのではないか。その懐かしさと情熱が強烈なパワーを産んだのだ。そうでなければネガティブな要素をこの世から消滅させるようにハンマーで粉々にするポジティヴなパワーの説明がつかない。

 一度きりの再結成だが、このアルバムには、過去の栄光にすがるのはまっぴらだし、悲しみや悲哀にくれるのもクソだといった想いが息づいている。けっして金ために活動したのではないという心意気も窺える。アルバムの最後に収録されているジェネレーションXの”100パンクス”も挑発的でいい。すごくいい作品だ。

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