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SOCIAL DISTORTION  『Sex,Love and Rock'n' Roll』

セックス・ラヴ・アンド・ロックン・ロールセックス・ラヴ・アンド・ロックン・ロール
ソーシャル・ディストーション

ソニー・ミュージックジャパンインターナショナル 2004-12-01
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 04年に発表された6作目。前作からじつに8年もの月日が経っている。その間ネスのソロアルバムも発表されたが、これだけリリースが長引いた理由は、ギタリストのデニスが亡くなったからだ。ネスの幼馴染にして、高校時代をともにすごした仲。最初にソーシャル・ディストーションを結成しようと声をかけた大親友でもあるのだ。本来はソロアルバム発表後、すぐにソーシャルディストーションの新作に取り掛かる予定だったそうだ。突然起こったハプニングによって、ネスは悲しみに明け暮れ、しばらくのあいだ立ち直れなかったという。

 そんなデニスの死を乗り越え発表されたアルバムは、前作と同じ路線のローリングストーンズやラモーンズをベースにしたパンクサウンド。だが前作の重い暗さとはうって変わって、カラっと明るいサウンドに仕上がっている。爽やかでポジティヴなエナジーに満ち、じっくり聴かせるロマンティックなバラードが多い。全作品のなかで、いちばんポップな作品に仕上がっている。

 だがそこには悩みが吹っ切れたときのような明るさと、決意がある。とくにデニスについて歌った3曲目の“ドンド・テイク・ミー・グランデット”では、ビール片手にデニスと線路を歩きながら語り合った話や、ケンカをしたことなど、楽しかった思い出を延々と語っている。本来ならデニスが死んで悲しいはずだ。だが悲しみについては、全くていいほど触れていない。

 あえて悲しい歌を歌わなかった理由は、デニスの死というネガティヴな状況を、前向きに捉え、バンドで表現していこうと考えたからだ。後述のインタビューでネスは、こう発言している。デニスが死んだとき、ソーシャル・ディストーションを解散して、ソロ活動に専念しようと思った。でも仮にデニスの代わりに俺が死んでいたとするなら、彼にバンドを続けてほしいと思った。だからデニスの名誉のために、バンドを続けようとネスは考え直したそうだ。結局、悲しみにいつまでも浸っていては生きていけない。だからその痛みと悲しみをありったけ受け入れ、デニスの存在を胸に刻み込み、いつまでも忘れず生きていくしかない。

 個人的にはこの作品がソーシャル・ディストーションの最高傑作だと思う。なぜなら悲しみを乗り越え、その先にある感情を表現しているからだ。ぼくが感動したのは、この作品でデニスの死に対して悲しみはいっさい語られてないところ。本来なら、切ないメロディーで、悲しみについて歌ったほうが、ファンの理解と感動を生むのかもしれない。だがあえて悲しみを語らず、明るく前向きな気持ちになることによって、より深い感情を獲得している。

 人生経験の浅いぼくは、立ち直れないくらいの絶望的な悲しみを味わったことがない。100%ネスの気持ちを理解したといったら、ウソになる。だがそんなぼくでも、親友が死んだときの心境を想像できる。一番大切な人が死ぬということは、結局のところ、その人と楽しかった思い出があるから悲しく感じるのだろう。親友の死を受け入れるということは、痛みや悲しみといった感情を抱くことではない。自分の人生を有意義なものにしてくれたその人と、出会えてよかったと思うことが大切なのだ。だから悲しむより、楽しかった思い出を心に刻み込み、その存在を忘れないことが、本当の意味での供養になるのだろう。

 安っぽいペシミズムが乱売されている音楽業界で、悲しみよりも、楽しかった思い出をリアルに語るネスの言動は、信用できるし、感動できる。ネスの誠意に満ちた人柄が伝わってくるのだ。まさに学ぶべきところが多いリアル・パンクだ。これを聴いて感動できないやつは、本当の意味での悲しさを理解できない哀れな人だ。

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