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ザ・ゲット・アップ・キッズ 『サムシング・トゥ・ライト・ホーム・アバウト』

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Get Up Kids

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 99年に発表された2作目。最高傑作。十代から二十代の始めまでにしか感じることのできない、やるせない気持ちや焦りと不安といった心情を完璧な形で切り取った。その年代にしか感じることの出来ない空気を封じ込めたアルバム。この作品でエモというジャンルを、彼らが確立した。

 そもそもエモとは、アンダーグランドミュージックのいちジャンルだったエモーショナル・ハードコアから発展した音楽だ。バイオレンスなオリジナル・ハードコアと比べると、どちらかといえば喧嘩が弱く内向的な文学青年に支持されてきた。

 だがエモになると、不良にも優等生にもなりきれない若者が抱えるコンプレックスを代弁する音楽へと変貌を遂げた。クロブチのメガネに冴えないルックス。運動神経が良い訳でもなければ、頭がいいわけでもない。暴力的に立ち向かうこともできなければ、イジイジした一面もある。ルックスも優れているわけでもない。その冴えない若者のアイコン的存在といえばウィーザーだ。なにも取柄のない若者に窓口を開いた。

 だがウィーザーは、サウンド的にエモーショナルハードコアとの接点がない。そのアティチュードがエモと結びつくきっかけを作ったバンドだが、歌詞にもボーカルにもエモーショナル(激情)がない。エモの先駆者的存在であることに間違いはないが、彼らはエモではないのだ。

 エモといえばゲット・アップ・キッズと言われる由縁は、エモーショナル・ハードコアのサウンドスタイルや激情をというアティチュードを確実に受け継いでいるから。ジョーボックスやフガジなどのエモーショナル・ハードコアの伝統に、メロディックパンクのポップな要素を加え、メインストリーム受けする音楽に作り替えた。アティチュードもウィーザーのから発展させ、ビバリーヒルズ青春白書のような、ごく普通の若者が感じる憂鬱や不安を代弁している。叫び声と叙情的なメロディーに変えて。

 この作品でテーマに挙げているのは、恋愛と自分たちが住んでいるカンザスシティーという街について。退屈な田舎で感じる閉塞感と上京意識、彼女に対する不信や別れについて歌っている。そこにあるのは、誰もぼくの気持ちを理解してくれないときに感じる寂しさと孤独、不満や苛立ち。そういったやるせない気持ちを激情と静寂がアップダウンするサウンドスタイルにのせ、叫んでいる。

 だれもが一度は経験する大人になるための壁。そういった空気と心情を甘酸っぱいメロディーにのせ、見事なまでに閉じ込めている。青春とはときとして悩み苦しむものなのだ。

 いまだにこのアルバムを聴くと、ぼくは当時の感情や感覚、空気やフィーリングが、見事なまでに蘇ってくる。聴くたびに懐かしさと、新たな発見の新鮮さがこみ上げてくる。まるで永久凍土から溶け1万年前の姿を保持したマンモスのように。

 なお09年に発売10周年を記念して発売されたデラックスエディションでは、DVDとの2枚組みで、ダウンロードボーナストラックが7曲追加されている。


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