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THE GET UP KIDS 『ON A WIRE』

オン・ア・ワイアーオン・ア・ワイアー
ゲット・アップ・キッズ

ビクターエンタテインメント 2002-05-02
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 前作からじつに4年ぶりとなる02年発表の3作目。もはやエモーショナルな初期衝動や、少年時代の青々しさはなくなった。タテノリのパンクナンバーもない。あるのはバラードのようなスローな曲と、落ち着き払った大人の枯れた円熟味。インタビューで「キッズではもうない」という発言どおり、この作品で青春時代に終止符が打たれている。

 おそらくこれだけスローな曲が増えた理由のひとつは、似た作品を作りたくないという意識。そしてもうひとつはボーカル、マットのソロプロジェクト、ニューアムステルダムでの活動が影響しているのではないか。そこではスローテンポの牧歌的なアコースティックを展開している。今回トム・ペティのむかしのレコードを意識してレコーディングされたそうだが、随所にオールドミュージックぽさが現れている。ニューアムステルダムでのサウンドフォーマットをベースに、ブリットポップなどの要素や60年代アメリカのトラディショナルなメロディーを加えた。セピア色が似合うノスタルジックな作品に仕上がっている。

 そこにあるのは、まる枯れ葉で敷き詰められた街路樹を歩いている時のような憂愁。前作まであった、やるせなさや憤りといった感情はない。おそらく激しさから穏やかさに変化した理由は、ボーカルのマットと、ギターのジムの結婚が影響しているだろう。もはや少年時代の悩みはない。感情的に荒げることもなくなり、理解されない立場から、理解する立場へと変わった。彼らは大人になったのだ。その心境の変化が如実に現れている。

 個人的には、何をやっても満足できない未熟さや、やるせなさ、エモーショナルな初期衝動が彼らの魅力だと思っているが、小さな幸せや穏やかさに反転した、この作品もけっして悪くない。なぜならあいかわらずハッピーソングはないし、むしろ切なさや孤独は深まっているから。穏やかで小さな幸せこそあるが、内省的で悩んでいるといった感情は変わっていない。サウンドが大人っぽさに変化したといっても、彼らの本質にある切なさや憂いといった感情が失われていない。それがこの作品の魅力だ。


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