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Panic at the Disco 『PRETTY ODD』

プリティ。オッド。プリティ。オッド。
パニック・アット・ザ・ディスコ

Warner Music Japan =music= 2008-04-09
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08年発表の2作目。ディスコ・パンクから、70年初頭のブリティッシュ・ロックに変貌した作品。たてのノリの曲から、じっくり聴かせる曲へと、テンポも変わり、方向性が180度変わった。当時ぼくはこの作品を聴いて、正直戸惑った。彼らの魅力はディスコ・パンクにあると思っていたから。

このアルバムを作る当初、最初はミュージカル・アルバムを制作する予定だったそうだ。その時点ですでに6曲完成しており、このまま順調に進むと思われていた。だが途中でアルバムの方向性が違うと感じ、いったん破棄し、再度作り直した。だから今作が完成するまで、3年もの歳月がかかったのだ。そしてビートルズのアルバムで知られるアビー・ロードでレコーディングは行われた。しかもメンバー全員の意見を出し合いながら作った作品は、今回が初めてだという。

そのサウンドは、ビートルズの『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』や、ローリングストーンズの『サタニック・マジェスティーズ』などをベースにしたサイケでソフトな優しいロック。歌い方やオーケストラや吹奏楽などをからは、オールディーズの影響も感じる。3年もの歳月を経て、彼らの心境は、シニカルな怒りから、未来への希望や慈愛にあふれた優しさに変わったのだ。

サウンドが変化した理由は、あまりに多くのバンドが80~00年代のロックサウンドに影響を受け、表現しつくされているから。しかも彼らにとって、ローリング・ストーンズやビートルズ、クリーム、フーなどのむかしのロックは、ものすごく新鮮に映るそうだ。だから今回、60年代サウンドをやろうと思ったそうだ。それに合わせ心境も変化した理由は、1stのころは17,8歳の若くて多感な時期で、怒りに溢れていたそうだ。でも今作では前作が売れたことにより状況も変わり、ものすごくハッピーな状態にあったから、その心境がアルバムに自然に反映された結果がだという。

サウンドも心境も劇的に変化したが、古きよきノスタルジックなものが好きという部分では今作でも変わっていない。たしかに中世的なノスタルジックから、ラブ&ピース時代のサイケ調のノスタルジックに変化した。だが古きよきものを現代風によみがえらせるという意味では、前作も今作も共通しているのだ。それが彼らの個性であり、魅力でもあるのだ。

心境の変化に関して言えば、個人的には、ポジティヴに捉えている。売れ線を意識して意図的に変化をしたのではなく、いまの気持ちが正直に反映されている。素直で実直な人柄がリアルに伝わってくる。だから好感が持てる。この作品が彼らの最高傑作という意見をよく耳にする。ノスタルジーを現代風にアレンジされていて、いい作品だとも思う。だがこれは個人の好みとしか言いようがないが、ぼくとしてはパニック・アット・ザ・ディスコと名づけられたバンド名と同様に、ディスコでパニックになるほどの性急なビートと、いかがわしく、わけのわからないノスタルジーを彼らに求めていた。そういったスピード感とノリのよさが失われたのは残念だ。



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Panic! at the Disco/『A Fever You Can't Sweat Out』

フィーバーは止まらないフィーバーは止まらない
パニック!アット・ザ・ディスコ

ワーナーミュージック・ジャパン 2007-01-17
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05年発表のデビュー作。メロディック・パンク・シーンから現れたバンドだが、当時、彼らは新しかった。ライヴで人気が出たのではなく、自らの音源が気軽に試聴ができるソーシャルサイト、マイスペースから人気に火が点いたバントだからだ。自分のことはすべて自分でやったフガジや、カレッジ・ラジオのチャートから徐々に人気を獲得したR.E.Mに続き、新たな価値観を提示した。インターネット世代の新たなDIY精神を提示したバンドなのだ。

とはいっても、それだけで人気がでるわけではない。当時、マイスペースに音源をアップロードし、話題にならなかったバンドはたくさんいた。なのに彼らが人気がでた理由は、しっかりとした個性があったからだ。それはスカ・メロディックパンクに、スペイン音楽とディスコ・サウンドやポルカなどを加えたサウンドにある。

そこにはまるで中世のようなノスタルジーと、怪しい仮装パーティーのようないかがわしさと派手な華やかがある。まるで上流貴族の汚ない裏側のようだ。そしてその視点は、一貫してシニカル。軽快なスカのリズムにのせ、世間を嘲笑っているかのように冷めている。たとえば”機械が書いたロンドンが招いたお金の歌”の歌詞では、音楽評論家に向けて、<おそくらくやつらは、デジタルサウンドとスペイン音楽をスカ・パンクのリズムにくっ付けたくだらないバンドと、俺たちのことを評価するだろう>と歌ったり、この先起こるであろう未来を予見し、シニカルなメッセージを発している。

世の中くだならいことがたくさんあるけど、とことん嘲笑って、楽しく踊ろうぜ、という姿勢が素晴らしい。個人的には、彼らのなかで一番すきな作品。

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クロジュア・イン・モスコ 『ファースト・テンプル』

First Temple (Dig)First Temple (Dig)
Closure in Moscow

Equal Vision Records 2009-05-05
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09年発表のデビュー作。これはすばらしい。正直、ここまで化けるとは思わなかった。ひさびさにいい作品に巡り合った。

ぼくはパンクとメタルの境界線がないゼロ世代と呼ばれるバンドに、関心が持てなかった。だれだれのリフやフレーズを切り貼りしたようなばかりで、元ネタがばればれだったから。でもこの作品は違う。アジア音楽から、スラッシュ・メタル、アット・ザ・ドライブ・イン系のエモ、マーズ・ヴォルタ系のプログレ、メロディック・エモ、サイケ、マタドール、ソウル、ジャズ、ファンク、ダンスミュージックにいたるまで、いろんな要素が詰まっている。しかも一つひとつがめまぐるしく変化し、元ネタが何かわからない。まさにカオス。

そんな彼らのサウンドとは、ポストハードコアに分類されている。ものすごくおおざっぱに言うなら、ブラフマンや9ミリ・ パラブレム・バレットと同類項に属し、別の角度からアプローチをしたサウンドだ。

しかしは彼らしかありえない新しいサウンドを展開いる。アジア音楽のエキゾチックなメロディーを中心に、スラッシュ・メタルの性急なスピード、歪なファンクのリズムが渾然一体となったサウンドだ。そこあるのは、インド・エスニック音楽の、妖艶な美しさと死を連想させる不気味さ。神秘的なメロディーが穏やかな安らぎを紡ぎだし、性急なスピードのドラムとデジタル音が躁病的にせわしない焦燥感を煽っていく。そこにはまるでいかがわしい宗教のような狂気とやすらぎを感じる。信仰すれば来世での幸せが約束されるとじているような安堵感。その事実を第三者的な立場から見ることによって感じる狂気。死ぬことに対して恐怖心がなく、穏やかさややすらぎを求めて死んでいくような類の狂気だ。彼らは暴力的なサウンドと組み合わせることによって、その安らぎを意図的に狂気と悟るように歌っている。

その歪さは、ジャケットの蛾の絵からも感じ取ることができる。蛾は死後の世界へ魂を導く存在として信じられている文化があるそうだ。死後の世界へと旅立つ魂に、この世の真実を最後に伝える役目も担っている。そこには鱗粉を撒き散らしながら夜空を舞い、天国への道を作る毒蛾のように、華麗で甘美な毒々しい魅惑に満ちている。

エスニックな華麗さと焦燥感や激しさや狂気、歪さがめまぐるしく変化するカオティックなサウンドは、09年のベスト3に入る、すばらしい作品だ。


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クロジュア・イン・モスコ 『ザ・ペンアンス・アンド・ザ・パティエンス』

Penance & the PatiencePenance & the Patience
Closure in Moscow

2008-04-29
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オーストラリアのメルボルンから、ポストスクリーモバンドの、08年発表のデビューEP。

初期マーズ・ヴォルタをパンクサイドからアプローチとでもいうのか。でもそれだけじゃない。セイオシン以降のスクリーモや、サーカ・サヴァイヴのプログレの世界観を踏襲したパンクなどの要素も感じる。パンクやプログレ、スクリーモが混ざった亜種混合のサウンドなのだ。

サウンドフォーマットとはスクリーモ。だが、スクリームがない。それが彼らの特徴のひとつだが、なにより魅力的なのが、メタルからの影響がないところ。暗いトーンの脆さを感じる透明な美声のボーカル。感情の高ぶりを表現するスライドギター。その激しさを鎮めるように、穏やかに、そして諦観にぬりつぶされた絶望を待ってようなアンティーク調の不気味なシンセとピアノの音。まるで帝政ロシア末期のような、混沌とした暗い世界観だ。それは<モスクワの閉鎖>と名付けられたバンド名と、マルクス主義のような宗教を否定した歌詞からも感じとることができる。

たとえば、We Want Guaranteesでは、宗教について歌っている。そこでは、普遍的な真理を追究する人間の心を巧みに操り、利用しているのが宗教で、欺瞞を孕み、物事の真実を見極めるのは難しいと言っている。

まるで目に見えないものを否定し、物質主義こそが真実と唱え、宗教を禁止したマルクス主義のような考え方だ。

アンティーク調のノスタルジックと、スクリーモ、プログレとの融合。重く暗いサウンドある美しさ。これはヤミ付きになる。

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