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ミネラル 『ザ・コンプリート・コレクション』

The Complete CollectionThe Complete Collection
MINERAL

FABTONE RECORDS 2010-01-20
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 エモ創成期バンドのひとつであり、97年と98年に2枚のアルバムを発表して解散してしまったミネラルのコンプリートベスト。10年に最新のデジタルリマスタリングで、2枚のアルバムはもとより、ジミー・イート・ワールドとセンス・フィールドとのスプリット、シングルを含めた内容で発売された。

 96年当時、アメリカのアンダーグランドでは、エモと呼ばれる新しい音楽シーンができつつあり、サニーディ・リアル・エステイトやセンス・フィールド、アップルシード・キャストなどのバンドが、にわかに注目されていた。

 そのなかでもジミー・イート・ワールドやゲット・アップ・キッズといったバンドたちが、エモーショナル・ハードコアをよりソフィスケートにした大衆受けするサウンドを打ち出し、注目されるきっかけを作った。ミネラルはエモーショナル・ハードコアが、ポップ化する以前に現れたバンドなのだ。エモのジャンルの半分くらいを作ったバンドであると同時に、その功績は大きい。

 とくにデビュー作の『ザ・パワー・オブ・フォーリング』は、フガジやエンブレイスから発展したサウンドで、突風のようなうねりをあげるノイズギターと、心の傷を舐めるなだめるようやあやす癒す繊細なメロディーとのアップダウンで、エモというサウンドを確立した。そして、いまにも泣きそうなか弱い声のボーカルと、内省的な内容の歌詞が、それまでの喧嘩が絶えなく暴力的だったハードコアとは違い、内向的で暴力衝動を抱えた華奢な人たちにも窓口を開いた。新しい価値観を提示したのだ。サウンド形態もアティテュードもこの作品でエモの雛型を作ったといっても過言ではない。

 そしてこのベストでは2枚目にあたる2ndの『エンドセレーナディング』で、彼らは叙情的な部分を突き詰め、ポストロック的な方向に向かった。このあとメジャーデビューが約束されていたが、ポストロックを突き詰めたいメンバーとロックよりなサウンドをやりたかったメンバーとの間で軋轢が生じ、解散を余儀なくされた。そしてメジャーデビューすることなく伝説となった。

 いま改めて聴き直すと、中部ならではの広大な台地をイメージさせる奔放なギターと、センシブなメロディーとのアップダウンは、いまなお古びていない。心の傷をあやすような叙情的なメロディーが、自分のデリケートな感情を呼び起こす。泣きそうなほどか弱い繊細さは、まるでダメな自分をあやすような慰めだ。クリアーでより聴きやすくなったこともさることながら、いまなお色あせていない名盤だ。


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