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JIMMY EAT WORLD 『FUTURES』

フューチャーズフューチャーズ
ジミー・イート・ワールド

ユニバーサル インターナショナル 2004-10-13
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 04年に発表された5作目。前作『ブリート・アメリカン』が大ヒットしたせいなのか、今作の評価はいまいち芳しくない。とはある批評文では、<この作品でメジャーな大衆受けする音楽に変化した>といった批判さえある。だがそれはおおきな間違い。彼らはけっして変わってないし、これはいい作品。前作の延長上ある作品で、違いは感情が向かっている方向にある。

 そのサウンドは静と動のアップダウンがある力強いギターロック。サウンド・フォーマット自体は前作と変わらない。変わったといえばアンティーク調のメロディーを導入したこと。これによって、曲の雰囲気が変わった。そこから感じることができるのは、深まる秋のような切なさと憂愁。セピア色の写真のような、ノスタルジックで古きよき味わいがある。とくに声が裏返り張り裂けるような想いで歌う“ウォーク”では、恋愛の何もできない無力感情を歌い、続く“キル”では届かない想いの空しさや切なさを、いまにも泣きだしそうな歌声で歌っている。そして叙情的で穏やかな哀しみに満ちたバラードの“23”では、恋愛の別れで生じる後悔や孤独、心に受けた傷跡について、痛々しいまでのかすれ声で歌っている。傷ついたが、それでも前へ進んでいこうという姿勢がなんとも涙ぐましい。恋愛で生じる辛い想いを、様々な角度から歌った。哀しみと切なさに満ちた作品だ。

 ぼくが何よりこのアルバムを評価している理由は、同じ感情の作品を作らないところ。『クラリティー』では大人社会への疑問や葛藤を歌い、『ブリート・アメリカン』では、開き直った明るさを歌った。そして今作では哀しみや切なさを初めて歌った。アルバムごとにテーマを変え、同じ感情の作品は2度と作らない。自分たちなりのオリジナルティーを持って、ワンパターンにならない深い感情を表現できる。そういった意味では、すごいバンドなのだ。

 なおデラックスエディションでは、このアルバムのデモ・ヴァージョンと、ボーナストラックが6曲収録されている。

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JIMMY EAT WORLD 『BLEED AMERICAN』

ブリード・アメリカン(デラックス・エディション)ブリード・アメリカン(デラックス・エディション)
ジミー・イート・ワールド

ユニバーサル インターナショナル 2004-10-13
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 01年発表4作目。おそらくこのアルバムを最高傑作に挙げるひとは多いだろう。その理由は爽快でノリのいいから。前作『クラリティー』は実験的でいいアルバムだったが、悪い言い方をすれば、暗く大人しくノリが悪かった。それが今作では激しく爽快なギターロックで、より大衆受けする明るく楽しい作品に変化した。

 このアルバムが制作されるまで、前途多難だったようだ。前作『クラリティー』は、インディーロック界で、次にブレイクするミュージシャンとして話題になったが、大衆受けする作品でなかった。そのためレーベルのサポートを得られなかった。そんなジミー・イート・ワールドを無視するレーベルと交渉をしてくれないマネージャーにも煩わされ、事態は悪化の一途をたどった。満足がいく活動ができないのであれば、いっそうのことキャピタルレコードを離れ、マネージャーをクビにしたほうがよいのではないか。そんな決断に迫られた。結局、レーベルを離れ、マネージャーをクビにしたものの、まだ契約が残っていたため、ライブ活動も出来なかった。そんな状態が半年間続き、一時は解散まで考えたという。

 それでも熱心なファンの支えもあって、プロデューサーに後払いにしてもらい(ヒットしたお蔭で後日支払ったという)、自費でレコーディングに臨んだ。そんな紆余曲折を経て完成させたアルバムが『ブリート・アメリカン』だ。この作品は最後の一枚を発表するという決意でリリースされ、いい意味で開き直っている。前作の霧のなかを彷徨っているようなもやもやした憂いや戸惑いとは違い、スコーンと明るく一直線に突き抜けている。そこにはあれこれ悩んでもしかたないから、開き直ってやろうぜ、みたいなノリのよさがある。サウンドも凝った演出は一つもなく、明快で、爽快で野太く分かりやすいサウンドのギターロックだ。Aメロとコーラスを繰り返す変則的な“スウィートネス”や、軽快なアコースティックでAメロのみで進行していく“ユア・ハウス”など、ジミーイートワールドらしい個性もあるし、どれをとってもワクワクするポップチューンだ。前作の延長上にある曲もあるが、総じて明るく爽やかで迷いがない。まるで霧が晴れて、スコーンと日射しが突き抜けたような爽快さだ。

 その心境の変化には、これがラストになっても本望という開き直りと、前作『クラリティー』で自分たちのことを好きになって応援し続けてくれたファンへの誠意を感じる。とくに応援してくれたファンを喜ばせ、その期待に応えようという意識で『ブリード・アメリカン』作れたのではないか。ミュージシャンとは、たいてい自分がやりたいサウンドとファンが喜んでくれるサウンドとの狭間で葛藤するもの。だがここではインディーで確立したサウンドのなかで、どれだけポップで喜ばれるものを作れるか、そんな意識で作られている。だから静と動の変則的な組み合わせや、前作で確立したキラキラ光るメロディーなどの特長を活かし、その上で大衆に喜ばれるポップさを加味している。打算や戦略がない分、ジミー・イート・ワールドの代名詞である、純粋性を保つことができた。汚れ一つない純粋な透明性を、前向きな方向で明るくキラキラと輝かせることに成功したのだ。その輝きがこのアルバムの最大の魅力となっている。

 なお04年に再発されたデラックスエディションでは、その後に発表されたシングル、プロディジーのカヴァー、“ファイアー・スターター”やワムのカヴァー、“ラスト・クリスマス”などのレアトラックが収録されている。

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ジミー・イート・ワールド 『シングルス』

JIMMY EAT WORLDJIMMY EAT WORLD
ジミー・イート・ワールド

トイズファクトリー 2000-08-23
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 00年発表のシングル集。この作品には、過去に発表されたスピリット、シングルの曲が収録されている。

 まず年代順に表記すると、7曲目は日本盤のみの収録で現在廃盤となっている1stから。2と11曲目は95年に発表された7インチシングル。4曲目は95年エメリーとのスピリット。5曲目は95年クリスティー・フロント・ドライブのカヴァー。8曲目は地元アリゾナのウデン・ブルー・レコードから地元バンドを集めたコンピレーションアルバムに収録予定たっだ曲。このアルバムにて初収録。9と10曲目は96年に発表されたブルー・プリントとのスプリット。6と13曲目は97年に発表されたジェイジューンとのスプリット。14曲目はコンピレーションアルバム『リベイションズ・アンリミテッド・フェニックス97-99』に収められていた曲。12曲目はグレーファクトリーから発売されたソング・フォー・ザ・ブロークン・ハーデッドというコンピに収録された曲。ウェディング・プレゼンツのカヴァー。3曲目はニュー・レリジョンのカヴァー。そして1曲目は日本盤のみのボーナストラックで、のちに彼らの代表曲となる“スィートネス”を収録。

 初期の楽曲を集めたアウトテイク的な意味合いが強い作品だけに、オリジナルティーが希薄。だが年代順に追って改めて聞き直してみると、彼らの進化の歴史が垣間見れる。95年の結成当初はメロディックパンク。そこから始まりエンブレム系のがなり声のエモコアからブガジ系の静と動のアップダウンがあるエモコアへと進化してきた。

 あらためて言えることは、彼らはひとつの音楽性に固執していないということ。とくにポップなサウンドへのこだわりもなければ、ハードな曲を極めているわけでもない。心のおもむくままに曲を作っている。そのときどきに影響を受けた音楽を素直に取り入れていたのだ。


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ジミー・イート・ワールド/ジェベダイ 『スプリット』

SplitSplit
Jimmy Eat World Jebediah

Big Wheel Recreation 2000-08-31
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 00年に発表されたジミー・イート・ワールドとオーストラリアのオルタナバンド、ジェベダイとのスプリット。ジミー・イート・ワールドは、キラキラメロディーに重点を置いた曲と、その後発表される『ブリート・アメリカン』に通じるオーセンティックなロックナンバー。たいするはジェベダイは悲哀に満ちたギターポップで、気だるくクールに歌っている。

 このEPで注目すべきはジミー・イート・ワールド。ここでは静かな曲だけでなく、“静”と“動”のメリハリをつけている。とくに印象深いのは曲の構成。一番盛り上がるサビの部分に穏やかなメロディー取り入れ、意外性に飛んだ展開を見せている。前作よりも激しい曲が増え、ロックよりに進化した。ポップで曲のできもすばらしく、過去のロックスタイルと『クラリティー』の透明で美しい世界観を合わせた。新しいスタイルを提示した作品だ。


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JIMMY EAT WORLD 『Clarity』

クラリティクラリティ
ジミー・イート・ワールド

EMIミュージック・ジャパン 1999-06-09
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 99年発表の3作目。彼らの最高傑作。この作品でジミー・イート・ワールドはエモというジャンルを確立し、その後多大なフォロアーを生んだ。エモーショナル・ハードコアの特徴である“静”と“動”のアップダウン。その“静”の部分だけを濾過し、透明さを抽出したサウンド。メロディーは神秘的な雰囲気に満ち、クリスマスのイルミネーションのように穏やかで清らかにキラキラと光っている。当時これほどまでに透明で純粋なサウンドを展開しているバンドは彼ら以外あり得なかった。

 とくに印象的なのは、ギターとバイオリンとトライアングルが織り成すメロディー。静寂のなかに神秘的に響くトライアングルの金属音が水平線の広がる広大な大地で夜空の星々を見上げているようなロマンティックな気分にさせ、憤懣や呪詛を急速に洗い流してくれるように静かに穏やかに響くバイオリンの音色が心洗われるような癒しに満ちている。そしてキラキラと光るギターのメロディー。静寂な空間にライトの明滅のように静かに鳴り響くギターは、清らかな気持ちとやすらぎを与えてくれる。

 それにしてもこの透き通った純粋性はすごい。純粋さとは無知や無垢を内包し、悪い言い方をすれば、大人になりきれない幼稚さとも捉えがち。しかしその稚拙さこそ、この作品の最大の魅力だ。そこには、大人はなぜ僕たちを理解してくれないのだろうという疑問や困惑した思いや、キリストの誕生日を祝うような神聖な気持ちと静謐な雰囲気が漂っている。純粋さゆえの理解されない苦しみと、心がきれいな人間の清らかさと安らぎ。その純粋性が、この作品の魅力をより深いものとしている。

  同時期にエモと呼ばれたゲッド・アップ・キッズやプロミス・リングなどと比べると、この作品には、悲しみや憤り、怒りなどの共感するような情緒はないし、身を荒げるような激情もない。いうならエモーショナルではないのだ。それでも彼らはエモの先駆者として呼ばれている。その理由はエモーショナル・ハードコアから発展したサウンドだからだろう。この作品にもフガジからの流れを感じ取ることができる。だがこの大人しく、ひたすら美しさを追求しているサウンドは、当時アメリカインディーシーン全体を含め、誰もいなかった。そういった意味では、新しい形のインディーポップを提示した作品といえるだろう。


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