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JIMMY EAT WORLD 『BLEED AMERICAN』

ブリード・アメリカン(デラックス・エディション)ブリード・アメリカン(デラックス・エディション)
ジミー・イート・ワールド

ユニバーサル インターナショナル 2004-10-13
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 01年発表4作目。おそらくこのアルバムを最高傑作に挙げるひとは多いだろう。その理由は爽快でノリのいいから。前作『クラリティー』は実験的でいいアルバムだったが、悪い言い方をすれば、暗く大人しくノリが悪かった。それが今作では激しく爽快なギターロックで、より大衆受けする明るく楽しい作品に変化した。

 このアルバムが制作されるまで、前途多難だったようだ。前作『クラリティー』は、インディーロック界で、次にブレイクするミュージシャンとして話題になったが、大衆受けする作品でなかった。そのためレーベルのサポートを得られなかった。そんなジミー・イート・ワールドを無視するレーベルと交渉をしてくれないマネージャーにも煩わされ、事態は悪化の一途をたどった。満足がいく活動ができないのであれば、いっそうのことキャピタルレコードを離れ、マネージャーをクビにしたほうがよいのではないか。そんな決断に迫られた。結局、レーベルを離れ、マネージャーをクビにしたものの、まだ契約が残っていたため、ライブ活動も出来なかった。そんな状態が半年間続き、一時は解散まで考えたという。

 それでも熱心なファンの支えもあって、プロデューサーに後払いにしてもらい(ヒットしたお蔭で後日支払ったという)、自費でレコーディングに臨んだ。そんな紆余曲折を経て完成させたアルバムが『ブリート・アメリカン』だ。この作品は最後の一枚を発表するという決意でリリースされ、いい意味で開き直っている。前作の霧のなかを彷徨っているようなもやもやした憂いや戸惑いとは違い、スコーンと明るく一直線に突き抜けている。そこにはあれこれ悩んでもしかたないから、開き直ってやろうぜ、みたいなノリのよさがある。サウンドも凝った演出は一つもなく、明快で、爽快で野太く分かりやすいサウンドのギターロックだ。Aメロとコーラスを繰り返す変則的な“スウィートネス”や、軽快なアコースティックでAメロのみで進行していく“ユア・ハウス”など、ジミーイートワールドらしい個性もあるし、どれをとってもワクワクするポップチューンだ。前作の延長上にある曲もあるが、総じて明るく爽やかで迷いがない。まるで霧が晴れて、スコーンと日射しが突き抜けたような爽快さだ。

 その心境の変化には、これがラストになっても本望という開き直りと、前作『クラリティー』で自分たちのことを好きになって応援し続けてくれたファンへの誠意を感じる。とくに応援してくれたファンを喜ばせ、その期待に応えようという意識で『ブリード・アメリカン』作れたのではないか。ミュージシャンとは、たいてい自分がやりたいサウンドとファンが喜んでくれるサウンドとの狭間で葛藤するもの。だがここではインディーで確立したサウンドのなかで、どれだけポップで喜ばれるものを作れるか、そんな意識で作られている。だから静と動の変則的な組み合わせや、前作で確立したキラキラ光るメロディーなどの特長を活かし、その上で大衆に喜ばれるポップさを加味している。打算や戦略がない分、ジミー・イート・ワールドの代名詞である、純粋性を保つことができた。汚れ一つない純粋な透明性を、前向きな方向で明るくキラキラと輝かせることに成功したのだ。その輝きがこのアルバムの最大の魅力となっている。

 なお04年に再発されたデラックスエディションでは、その後に発表されたシングル、プロディジーのカヴァー、“ファイアー・スターター”やワムのカヴァー、“ラスト・クリスマス”などのレアトラックが収録されている。

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