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カディスフライ『...セット・セイル・ザ・プラリィー』

Set Sail the PrairieSet Sail the Prairie
Kaddisfly

Sub City Records 2007-03-06
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 よりプログレッシヴな方向に進化した07年発表の3枚目。前作よりもさらに実験的になった。今作ではポスト・コアに、プログレやジャズ、メタル・コアなどの要素を加え、さらにマニアックで複雑な作品に仕上がっている。とくにヘヴィーなサウンドと繊細なボーカルとメロディーとの絡みがすごい。

 今作は世界中を旅した旅行記で、その季節にその場所で感じた大自然と雰囲気がコンセプトになっている。何月何日にその土地で感じたことを歌詞にし、その雰囲気をサウンドに置き換えている。

 くわしく書くと、1曲目の"夏至"は、6月22日の出来事。2曲目の"キャンプ・ファイア"は、6月23日、メキシコのヌエボ・ラレドにて。3曲目の"波"は、7月12日、ジャマイカのキングストン。4曲目の"ハーバー"は、8月8日、トリニダード・トバゴのポート・オブ・スペインで。5曲目の"鳥"は、9月8日、ガボンのリヴールヴィル。6曲目の"雲"は、10月18日、イスラエルのエルサレム。7曲目の"帝国"は、11月5日、ロシアのモスクワ。8曲目の"冬至" は、12月21日、ノルウェイのトロムセー。9曲目の"雪"は、12月22日、アイスランドのレイキャピーク。10曲目の"レール"は、1月19日、カナダのケベック。11曲目の"シルクロード"は、2月27日、インドのデリ。12曲目の"マーキュリー"は、3月6日、中国の西安。13曲目の"時計じかけ"は、4月13日、中国の大同。14曲目の"森"は、5月1日、ロシアのクラスノヤルスク。

 これが本当にあった出来事なのか、空想の話なのか、 資料がないので正確なことは分からない。ただかなりの臨場感を持ったサウンドであることは確かだ。

 たとえば、“波”では、夏の青い海を眺めて切ない気持ちになるような軽やかで憂鬱さを含んだピアノが印象的。“鳥”は、シタールのようなトランシーなギターが、自分の存在がちっぽけに感じるような壮大な音を奏でている。8,9曲目は雪国ならではの幻想的なメロディーが魅力。“森”は、激しいギターのなかに中国的なメロディーが絡み、ささくれだった空気を急速に洗い流すような、やすらぎに満ちた世界を演出している。

 ときには陶酔するほど美しい光景を想像させるメロディーもあれば、争いが絶えない過酷な環境の土地で殺伐とした重厚なリフを奏でている曲もある。その土地の季節と雰囲気を、メロディーに置き換え表現している。そこには、過酷さ、切なさ、やすらぎ、か弱さ、冷たさなど、異国で感じる違和感や混乱がある。情緒不安定なほどの感情のゆれを表現したメロディーが、この作品の最大の魅力なのだ。

 ギターアレンジやメロディーが多彩な大自然をフィーチャーしたハード・コアだ。そういった意味では、中期レンチに近い。トランシーでラウドなエクスペリメンタル・ハードコアというべき、新しい形のハードコアをこの作品で提示した。ただ残念なのは日本での評価が低い点だ。個人的には07年のベスト3に入る作品だ。

 なお08年にkileの脱退を期に、現在は活動を休止している。残りのメンバーで結成されたウォーター&ボディーズが活動の中心なようだ。いま復帰が期待されるバンドなのだ。

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