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ジミー・イート・ワールド 『クラリティーライヴ』

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 『クラリティー』発売から10周年を記念して発表されたライヴ盤。09年に自身のウェブサイトから配信発売。09年7月に地元アリゾナのタンパペイで行われたライヴで、1曲を除いて全曲『クラリティー』から選曲。全曲、99年に発表された曲で、アルバムの曲順通りの演奏。99年当時を、忠実に再現している。

  『クラリティー』とは、オリジナルティーを確立したアルバムであり、特別な想いのある彼らの原点なのだ。実際『クラリティー』とそれ以降では、ライヴパフォーマンスがあまりにも違う。『ブリート・アメリカン』以降の彼らは、激しく楽しい爽快感あふれるパンクなライヴを展開している。『クラリティー』では、静謐で穏やかな世界観を追求していた。モッシュなんて起こることもなかったし、ジムがピアノにゆっくりと座り演奏する場面も見受けられた。スポットライトの薄明かりのなか、トライアルアングルの音だけが静かにこだまし、静寂に満ち、観るもの内面世界に引き付ける――じっくり聴かせるライブだったのだ。

 それが人気が出たことによって、ライヴパフォーマンスが180度変わった。その理由はおそらく、『ブリート・アメリカン』での成功と、グリーン・ディやブリンク182らと一緒にツアーをまわった経験が関係しているのだろう。パンクの楽しいライヴを展開している彼らと一緒にツアーすることによって、ライヴとはどうあるべきものなのか考えさせられたのかもしれない。もしくは彼らのファンが求めているものは、『ブリート・アメリカン』のスカっとするほど爽快で、楽しく激しいライヴだという事実に気づかされたのかもしれない。自分たちの理想とするライブの型が見つかったのか、それともファンの期待に応えようとする気持ちが強かったのか、理由は解らないが、当時いまのままではいけないと思い、変更を余儀なくされたのだろう。

 肝心のライヴだが、音源作品なので正確なことはわからないが、おそらく97年ごろと同じ雰囲気を再現したライヴだ。終始、神聖で透明感があふれる穏やかなライヴを展開している。彼らの代表曲である“ラッキー・デンヴァー・ミント”では、歌詞を変え、新たな感情が息吹きこまれている。“ア・サンディ”や“12 23 95”などいったバラードも、丁寧にやさしく穏やかに演奏され、アレンジの変更はなく、『クラリティー』の世界観を壊すことなく再現している。まるで過去のサウンドに閉じ込めた痛みや濁りのない気持ちを、ゆっくりと解凍し、深い内省に潜りながら過去の気持ちを呼び覚ましているような演奏だ。当時の記憶を蘇らせながら、穏やかでやさしく透明で濁りのない気持ちを思い起こし、失われた純粋さを取り戻しているように思えた。

 このライヴは典型的な過去の振り返りだ。だが何もかもが変わりすぎてしまった現在、過去の気持ちを取り戻す必要が彼らにあったのだろう。エモに影響を受けたインディーサウンドから、力強いアメリカンロック、フォークロック的なサウンドと変遷を重ねてきた彼らにとって、核にあったものはなんなのか、見失ってしまったいたのかもしれない。現在自分たちを個性からも離れすぎてしまっているサウンドを展開している。だから過去を振り返る必要に迫られたのだ。そうこの作品は、未来へ向けての原点回帰なのだ。

     オフィシャルサイト


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