プロフィール

  •    宮本 一高         (みやもと かずたか)
                                        音楽ライターを目指しているものです。EAT MAGAZINEやDOLLなどで執筆をしておりました。おもにエモ、ハードコア、スクリーモ、メロディックパンクを中心に取り上げております。自分が感動した音楽を、積極的に紹介していきたいと思いますので、よろしくお願いします。 

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2012年4月

2012/04/28

MY CHEMICAL ROMANCE 『THREE CHEERS FOR SWEET REVENGE』

スウィート・リベンジスウィート・リベンジ
マイ・ケミカル・ロマンス

ワーナーミュージック・ジャパン 2004-07-22
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 04年発表の2作目。最高傑作。この作品で、ホラー映画と漫画に影響をうけた黒装束の衣装と、ミスフィッツのゾンビメイクを合わせたヴィジュアルに、弾丸のような勢いのメロデックなサウンド、ラブロマンスや死にたいする考察をホラー映画の世界観で隠喩した歌詞を確立した。その三つの要素が高い次元で交わっているのが、この作品の特長なのだ。
 
今作もアイアン・メイデンのような勢いあるサウンドと荒々しいギターとメロディーをベースにしている。だがそこにメロディック・パンクや、ゴズの耽美なメロディー、ホラー映画の効果音やコーラスとスクリームなどの要素を加え、彼らならではのオリジナルティーを確立している。

 彼らの進歩はサウンドだけではない。歌詞も進化している。今作ではリベンジをテーマに、歌詞を作ったそうだ。だが個人的にはやはり“死”がこのアルバムの重要なキーワードになっているように思う。それが顕著なのが1曲目の“ヘレナ”。この曲は幼少のころから育てられた祖母の死に対するオマージュだそうだ。ジェラルド自身「大切な人を失う恐怖と祖母の最後に立ち会えなかった自己嫌悪から生まれた曲」と発言しているが、そこには悲しみを感じさせる内容はない。いつまでもそばにいる存在として語りかけている。もちろん彼らのなかには祖母は重要な存在で、悲しみを感じているのは確かだ。片腕をもがれるほどの苦しみを味わったに違いない。だがその辛さをあえて口にせず、屈折した表現で祖母への想いを歌詞にしている。<きみは誰かの心を傷つけるたび、どれほど最悪な喜びを得るだろう>といった内容で。その真意はいままで祖母に育てられたことへの感謝の気持ちと、思い出を胸に刻み込み、忘れないため、あえて苦言を呈しているのだ。その屈折した表現が、彼らならではの世界観なのだ。

 その屈折した表現の歌詞も最高だが、なによりこの作品の魅力は、体全身からすべてをふり絞って吐き出される尋常でないテンションの高さにある。まるでサウンドに人生のすべてを注ぎ込んでいるようなエモーショナルだ。彼らに言わせれば、精神的に安定しなかった時期らしいが、ここに収められている熱量は尋常ではないし、その全身全霊を注ぎ込んだサウンドには切迫した想いが詰まっている。その息苦しいほどの切迫感は、ダークで妖艶で美しい。甘美なロマンスを感じる。そんな奇跡の瞬間がここに収められている。 それがぼくがこの作品を愛してやまない理由なのだ。



2012/04/17

MY CHEMICAL ROMANCE 『I BROUGHT MY BULLETS,YOU BROUGHT ME YOUR LOVE』

アイ・ブロウト・ユー・マイ・ブリッツ、ユー・ブロウト・ミー・ユア・ラヴアイ・ブロウト・ユー・マイ・ブリッツ、ユー・ブロウト・ミー・ユア・ラヴ
マイ・ケミカル・ロマンス

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 02年に発表されたデビュー作。ニュージャージのエモパンクシーンから出発し、04年発表の『スウィート・リベンジ』で大ブレイクをはたした彼らだが、この時点ではまだ個性が確立されていない。ニュー・ジャージの伝説的なハードコア・バンド、ミスフィッツのながれをくむホラーメイクで、アイアン・メイデンに影響を受けた熱く勢いあるメタルに、エモの繊細でナイーブなメロディーを加えたサウンドを展開。『スウィート・リベンジ』と比べると、ヴィジュアル、歌詞、サウンドなど、すべての部分において荒削りで未熟さを感じる。だがあとに彼らの個性となる素地は固まっている。たとえば歌詞。“スカイラインズ・アンド・ターン・スタイルズ”では9.11で世界貿易センターに飛行機が突っ込んだときにボーカルのジェラルドは、その瞬間を目撃したそうだ。そのとき感じた内容を歌詞にしている。そこでは現実の世界とはかけ離れた不条理な惨劇を見たあとで、友達を失い、心が引き裂かれるような悲しみを感じ、自分は純粋さを取り戻せるのだろうかと訝りながらも、原因を作ってしまったアメリカ人の一人として罪悪感を感じている。あとに彼らの強固なイメージとコンセプトになる<死>というものが、ここではっきりと儚くイノセントなものであることが表現されている。このあとの作品でさらに歌詞に磨きがかかるわけだが、この内容だけでも、文学的な表現にすぐれているし、インテリジェンスと才能の片鱗を感じる。サウンド的にはまだスタイルが確立されていないが、捨て曲がないし、いい作品だ。



2012/04/05

プッシー・ライオット『ディス・トロイ』

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 ロシアのパンクバンド、プッシー・ライオットの06年に発表された公式デモ。どうやら彼女たちはまだ正式なアルバムをリリースしていないようだ。ここで発表された曲は無料ダウンロードが可能な曲だ。まず初めに彼女らの活動から。結成は04年。ギター&ボーカルのカテリーナとベースのアナスタシア、ドラムのルイサによってロシアでバンドは結成された。彼女らはLGBT(レズビアン・ゲイ・バイセクシャル・トランスジャンダー)の活動家で、アメリカのフェミニストパンクバンド、ビキニ・キルとRiot Grrrlに影響を受け、パンク・バンドをやろうと、結成されたという。原色に統一された露出度の高いワンピースと、銀行強盗が覆る目出し帽という強烈なインパクトのあるバンドコスチュームをまとって、バンド活動を始めた。

 そして今年の2月21日に大統領の再選を狙う反プーチン運動の一環として、ロシア正教の大聖堂で、反プーチンを歌ったゲリラライブを敢行したため、3月3日にメンバーが逮捕された。そして政治犯として7年の懲役の裁判がかけられているという。上記の理由で、現在活動が困難な状況にあり、ライヴ活動やリリースの予定が当分ないという。

 その06年に発表されたデモだが、アグレッシヴで扇情的な初期パンク。ノイズまみれのひしゃげた音で、演奏はけっしてうまいとはいえない。だがそこにこめられている社会に対する怒りや攻撃性は、尋常ではないエナジーを放っている。ワンコードを執拗に繰り返し暴力心を煽るギター。音域がずれ地響きのように響くベース。ヒステリックな叫びをあげる甲高い声女性ボーカル。そしてすべてロシア語で歌われているプーチン批判や女権獲得を歌った歌詞。そこには政治的な怒りを通り越した、狂気を感じる。けっしておしゃれとはいえない原色のワンピースに銀行強盗の目だし帽。一見コミカルな笑いを感じるが、そこには笑いを誘いながらも人を殺しているような感覚があり、恐怖を感じる。

 サウンドのインパクトといい、パフォーマンスとしても、日本で例えるならスターリンのように強烈なインパクトを感じる。だが、とことん嫌われることに徹したスターリンとは違い、笑いながら恐怖に陥れるは、彼女たちならではのもの。これはひさびさにパンクを感じるた。

                        こちらからダウンロードできます。



2012/04/02

ダイアクリティカル

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Diacritical

2007-05-08
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 タクワコア(イスラム教徒のハードコア)バンドの07年に発表されたデビュー作。政治的な発言が色濃い作品。ほかのタクワコアバンドと比べると、音が軽い印象を受ける。そこにはハードコアからの影響はなく、アラブのメロディーも少ない。アメリカンパンクの野太いギターロックをベースに、カントリーやブルース、ファンクなどを取り入れている。とくにファンクからの影響は強く、ドラムはタブラを使い、トライバルな要素が強い。野太いギターサウンドのほかに、シタールを使っているため、音は軽やか。まるでスライや60年代のロックを思い起こさせるサウンドだ。

 タクワコアバンドのなかで、アラブ問題に対して積極的なメッセージを一番放っているのは彼らだろう。ポリティカルなメッセージを掲げるバンドだが、パンクの荒々しさや暴力性とも無縁。怒りや闘争よりも、疑問や、その理由の追求、理想を求めるといった内容が多い。たとえば“ウォー・クライム”では、<企業の利益追求のため、すべてのお金と生命を盗んだ。病気は心に存在する。>といった内容を歌い、 “イグノレンス”では<なぜ私を憎む?や怒りを止めろ>と歌う。先進国という強者が一方的に地下資源を搾取する現状と、アラブという出自が生む差別や虐待を、アメリカ社会に疑問を投げかけている。いうなら自分たちを理解して欲しいという気持ちが先行している。

 そこには彼らなりのやさしさを感じることができるし、弱者の虐げられた立場も痛いほど伝わってくる。彼らはただみんなが笑顔で笑えるような、明るい未来を求めているだけなのだ。そういった意味ではけっして闘争的ではないし、パンクの暴力性もなく、まじめなバンドなのだ。

 パンク・ハードコアの荒々しさを求めている人には物足りない気もするが、実験的な音がちりばめられた、いい作品だ。

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