« 2012年6月 | トップページ | 2012年8月 »

フランク・ターナー 『ポエトリー・オブ・ザ・ディード』

Poetry of the Deed (Dig)Poetry of the Deed (Dig)
Frank Turner

Epitaph / Ada 2009-09-08
売り上げランキング : 300564

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

 09年に発表された3作目。前作までのアコースティック・ソロとはうって変わり、バンド編成に移行。バンドでの成功という夢を追いかけるために、再スタートを切ったと言えるのは、この作品から。今作ではドラム、ベース、ヴァイオリン、マンドリン、オルガンなどのメンバーが加わり、多彩なメロディーのあるサウンドに変化した。バンド編成になったため、曲調もバラエティー豊かになった。イギリスフォーク(ダンス)のメロディーに、8ビートのハイスピードなパンクを合わせた“トライ・ディス・アット・ホーム”から、やさぐれた音、エモーショナルでやさぐれた荒々しいアコースティックの“ダンズ・ソング”。シンプルなアコースティックの“トライ・ディス・アット・ホーム”、ピアノの美しいバラードの“フェスフル・サン”など、いろいろな曲が増え、じつに多彩。さわやかで情熱的な熱さを感じる。

 歌詞もこれまた熱い。“トライ・ディス・アット・ホーム”では、パンクロックが存在する真の意味は、短髪で細いジーンズを穿き、皮肉を言うことではなく―メディアが作り上げたイメージを棄て―自分を表現するものだ。パンクとは自分たちの生き方だ。それを貫けばバカ丸出しの英国のカントリー歌手よりはるかにカッコいいと、歌っている。また“ザ・ロード”では、束縛されることや一ヶ所にとどまることを怖れ、ライブで世界中を旅して、いろんな国の人との出会や衝動を追い求めて地平線を目指していると歌っている。相変わらず攻撃的で皮肉に満ちた毒を吐いているが、今作では情熱や衝動的な行動という内容の歌詞が目立つ。その歌詞がサウンドに有機的に結びついている。音楽を一途にやる情熱と衝動。それがアルバム全体に感じることのできる熱さの理由なのだ。そういった衝動を感じることができる意味でも、今作が再びスタートラインにたった作品といえるだろう。

 その皮肉と毒に満ちた歌詞もさることながら、イギリス伝統音楽にパンクサウンドに流し込んだ。アメリカのバンドにはないサウンドでオリジナルティーがあるし、まさにフォーク・パンクという出来だ。ただ全体的にバラードが多い印象を受ける。個人的には“トライ・ディス・アット・ホーム”や“ダンズ・ソング”みたいなパンクチューンの曲を増やして欲しかった。その2曲は、ロックの猥雑さもあり、勢いもあるし、熱い。なによりカッコいいし、パンクしている。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

フランク・ターナー 『ファースト・スリー・イヤーズ』

First Three YearsFirst Three Years
Frank Turner

Xtra Mile 2008-12-02
売り上げランキング : 569038

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

 08年に発表されたアウト・トラック集。アルバムタイトルはブラッグ・フラッグのアルバム『ザ・ファースト・フォー・イヤーズ』をもじって付けられたそうだ。ここではデビュー当初の作品から、現在手に入れることのできない貴重な音源が収められている。収録されている曲は、06年のデビューEP『キャンプファイヤー・パンクロック』から5曲。06年のルーベンとのスプリット『エクストラ・マイル・シングル・セッションズ』から1曲。同じく06年のジョナマトランガとのスプリットから2曲。07年の2枚目のEP『ザ・リアル・ダメージ』から4曲。2枚目のアルバム『ラヴ,イレ&ソングス』のボーナストラック3曲。ジョナマトランガとジェイコブ・ゴールデンらが参加したカヴァーしたアルバム『ザ・ソフトコア・ツアーCD』から2曲。未発表曲が3曲。iTunesのみのボーナストラックから1曲。計23曲が収録されている。

 個人的に気になったのはカヴァー曲。収録されているアーティストは、ジミー・デイビス、アバ、バッド・ブレインズ、ブラッグ・フラッグ、ザ・ポスタル・サービス、レモンヘッズ、前バンドのデッド・ミリオンズ。ジャンルでいえば、カントリーからポップスからUSハードコア、オルタナにいたるまで幅広い。どうやらサウンドのルーツをカヴァーしたのではなく、自分が好きなミュージシャンをカヴァーしたようだ。

 これらのバンドからは、サウンドの影響よりも、音楽に対する姿勢や、バンドの思想やアティテュード、歌詞の部分で多大な影響を受けたのではないか。たとえばブラッグ・フラッグやバッド・ブレインズからはパンクの反抗心を学び、ジミー・デイビスからは伝統音楽の大切さを学んだ。そしてアバからは普遍的なポップミュージックの楽しさ、ザ・ホスタル・サービスからは流行にとらわれない実験性を学んだということだろう。

 それにしてもイギリスのバンドのカヴァーがないところにはびっくりさせられた。皮肉さ所以なのか。その理由は分からないが、フランク・ターナなる人物をよく知りたい人にお勧めの作品だ。


| | コメント (0) | トラックバック (0)

フランク・ターナー 『ラヴイレ&ソング』

Love Ire & SongLove Ire & Song
Frank Turner

Epitaph / Ada 2009-07-21
売り上げランキング : 249584

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

 イギリスではフォークパンクと呼ばれているフランク・ターナの08年発表の2枚目。彼らの本領を発揮しだしたのは、この作品から。今作もアコースティックギターを中心に、イギリス伝統音楽を奏でている。そこにギターロックな曲やアラビアンな曲やパーカッションやピアノなどの楽器が加わり、1曲1曲が明確に違いの分かる、バラエティー豊かな作品に仕上がった。

 今作では、前作の落ち着いた雰囲気よりも、熱さやウェットな感情、エモーショナルを重視している。3曲目の“フォトセンセテス”は、フォーク・ダンス・パーティーのような緩やかな楽しい雰囲気で、4曲目の“サブディテュート”では振られた彼女へ悲しみが漂っている。6曲目の“ラヴイレ&ソングス”は熱く希望に満ちたすがすがしいが漂い、9曲目の“ロング・ライヴ・ザ・クイーン”は世の中のあわただしさと喧騒に満ちている。悲しみから歓び、情熱にいたるまで、じつに表情が豊かだ。

 英語力の乏しいぼくとしては、ストレートな感情を歌っているように思える。しかし、どうやら真意はまったく違うところにあるようだ。日本人には分かりづらいが、この作品は矛盾した感情をサウンドに結び付けている。歌詞は皮肉とアイロニカルに満ち、たとえば“フォトセンセテス”では、パンクを棄て、安定した生活を送っている友人への皮肉な気持ちを歌い、“サブディテュート”では相性の相違や冷めてしまった恋愛感情ではなく、たかが信じるイデオロギーの違いのためだけに分かれてしまった彼女への悔しさを歌っている。“ラヴイレ&ソングス”では、デモを弾圧する警察のことを批判し、希望を打ち砕かれたときの敗北感はアスピリン錠では鎮痛することができないと歌っている。

 そして特筆すべきなのが、“ロング・ライヴ・ザ・クイーン”だろう。そこでは乳がんに患い死亡した友人をテーマに取り上げている。歌詞の内容は、余命半年を告げられた彼女と半年間過ごし、忙しかった日々の思い出。たしかにそこには悲しみに満ちた感情はまったく存在しない。表面上はシャウトとして感情が高ぶっている。だが曲の最後に、祭りのような喧騒が終わり、ひとり部屋でぽつんといるような静けさと寂寥が漂っている。ああもう二度と彼女との騒がしかった日々は戻ってこない、自分が失ったものは計り知れなかったのだと、痛感させられるような喪失感だ。あえて悲しみという感情を隠しながらも、死というものに対する受け止め方を、別の角度からアプローチしている。

 そこにイギリス人らしいウィットの利いたブラックユーモアを感じるし、皮肉に満ちながも、実直でまっとうとした道徳観を持った彼の性格が生々しく伝わってくる。アコースティックという制約されたサウンドのなかでも、多彩なジャンルの音楽を取り入れているし、歌詞にもフランク・ターナーにしかありえないオリジナルティーがある。これはすばらしい作品だ。


| | コメント (0) | トラックバック (0)

フランク・ターナー 『スリープ・イズ・フォー・ザ・ウィーク』

Sleep Is for the WeekSleep Is for the Week
Frank Turner

Xtra Mile 2007-01-16
売り上げランキング : 531381

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

 イギリスの元スクリーモ系、エモーショナル・ハードコア・バンド、ミリオン・デッドのボーカル、フランク・ターナーのソロプロジェクト。07年発表のデビュー作。元エモーショナル・ハードコア・バンドのソロプロジェクトといえば、ファーを経てワンライン・ドローウィングを立ち上げたジョナ・マトランガや、ファーザ・シームス・フォーエバーからダッシュボード・コンフェッショナル移行したクリス・ギャラハーを思い浮かべる。この3バンドに共通しているのは、アコースティック・ギターを主体としたサウンド。だが3者ともに異なる音楽性と歌詞の世界を追及している。エモやメロディックパンクの旋律をアコースティックギターに置き換え、失恋を苦しさや悔しさを我慢して噛みしめるように歌うダッシュボード・コンフェッショナルに対して、ワンライン・ドローウィングは手作り感あふれるチープなサウンドで、空虚な世界を展開している。そしてフランク・ターナーの場合、怒りや皮肉や不安を交えた20代の労働者階級のごくありふれた若者の日常と自身の人生について歌っている。アコースティックギターというシンプルなサウンドに熱のこもった歌声をのせながら、ひたすら語っている。

 このデビュー作は、アコースティックギターを中心のサウンド。曲のベースになっているのは、アイリッシュ・フォークやスコティッシュ・トラッドなどのイギリス伝統音楽。そこには前バンドであるミリオン・デッドからの影響はない。前バンドにあった、弱々しい繊細さや激情、激しい衝動といった感情もない。あるのはミリオン・デッドでの挫折を経て再出発を図った現在の感情。そこには夢をかなえることができなかった挫折した感情を、しょせん人生とはそんなものさと、微笑している諦念にも似た感情がある。

 とくにぼくが感動したのは“ブラック・イン・ザ・ディ”の歌詞。ここではパンクが好きならば、誰もが一度はそんな思いをするだろうという気持ちを歌にしている。ブラッグ・フラッグとマイナースレットに出会い、怒りの捌け口を見つけ、パンクによって人生が変わり、俺は救われた。そしてパンクによって世の中を変えてやる。――といった内容だ。だがその物語の顛末は、なにも変えることができなかった。でも当時の楽しかった思い出や、パンクに出会ったときの熱い気持ちは今でも残っている。俺たちはいい時間をすごした。と、歌詞はそんな内容で締めくくられている。

 彼の人生に当てはめれば、世の中を変えてやるといった気持ちで始めたミリオン・デッドも、結局はうまくいかず、バンドの夢をあきらめた。だがパンクがいまでも好きで、その情熱が冷めず、新しいプロジェクトを立ち上げた。――ということだろう。

 深い挫折を経て、異なるサウンドで再出発を図った。フランク・ターナーの音楽人生の第二章を告げるアルバムだ。彼のパンクへの情熱はいまでも熱い。


| | コメント (0) | トラックバック (0)

QUIETDRIVE 『アップ・オア・ダウン』

Up or DownUp or Down
クワイエットドライブ

TWILIGHT RECORDS 2012-03-07
売り上げランキング : 26700

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

 11年発表の4作目。今作ではマット(ギター)とドール(ベース)が脱退し、代わりにウィル(ギター)とブライス(ベース)が加入。それが功を奏したのか、前作よりもいい作品に仕上がっている。相変わらず、夏を感じさせるメロディーは健在だが、ポップロックだった前作よりも、面白いサウンドに仕上がっている。その理由は変則的なリズムのギターロックが戻ってきたから。今作ではレゲェーやAORやダンス、アコースティックなどの要素を取り入れ、さらに奥深い夏を表現しているような印象を受ける。彼らは初期のころから一貫して、夏の海をイメージさせるメロディーを表現しているが、今作ではノー天気な真夏の太陽のような明るさというよりも、沈む夕日の美しさ。そこには寂寥感や黄昏がある。歌詞はほとんどが恋愛について。彼女への一途な想いが綴られている。彼女のことを想い続けているのに、報われない恋や、この場から去っていった彼女への寂しさ。それを沈む夕日の黄昏と重ね合わせている。その世界観がすばらしい。前作よりもろロックっぽい曲が増え、親しみの持てる作品だ。なお初期の名曲“ライズ・フロム・ザ・アッシュズ”と“テイク・ア・ドリンク”のニューヴァージョンを再録。それほど現メンバーでの手ごたえがあるのだ。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

« 2012年6月 | トップページ | 2012年8月 »