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サーカ・サヴァイブ  『バイオレント・ウェーヴス』

Digital_800

 12年に発表された4作目。今作ではメジャーレーベルのアトランティック・レコーズを離れ、どこのレーベルにも属さない完全自主制作の道を選んだ。前作『ブルー・スカイ・ノイズ』は、ビルボートでトップ11に入るほどのヒットを遂げた。さらなる人気を獲得し、固定したファン層が拡大した。レコーディング機器やCDを作る機材を自分たちでそろえる資金を調達することができた。そのため、メジャーレーベルを離れる決意にいたったのだろう。もはやメジャーの力を借りなくても、自主制作で利益を確保することが出来るし、サウンド路線を変更しろだのと、制約を受けることもない。それに自分たちで管理すれば、メジャーでは提供していないハイレゾ音源を安価でファンに提供することができる。だから完全自主制作の道を選んだのだろう。この新しいビジネスモデルの先駆者といえば、レディオヘッドやナイン・インチ・ネイルズなどがいる。その彼らが確立した新しいモデルが、インディーバンドまで徐々に普及し始めているのだ。

 そのサウンドは、静と動がアップダウンするエモ特有のサウンドに、ポスト・ロックやプログレなどの暗くアカデミックなメロディーにを加えたプログレッシヴ・エモ。前作のサウンド路線とあまり変わりはない。今作では精神が歪んでいくサイケデリックなシンセ音と、メランコリックなメロディーが加わった。バラード曲が増えた。とくに後半に進むにつれ、メランコリックな美しさは増していく。7曲目の“シンク・フォー・ザ・ミー・ホエン・ゼイ・サウンド”では、寂寥感を爪弾くように弾く穏やかで脆さを孕んだギターにサイケデリックなシンセ音が加わり、絶望に満ちた不穏な空気を演出している。そこでは失われた愛について歌っている。“ブラザー・ソング”では、素朴で哀しく美しいメロディーが、サイケデリックなシンセの音によっていびつに屈曲する終演を迎える。そこでは人間にはひとり一人違いがあり、怒りや悲しみ喜びなどを、共有できない悲しさを歌っている。そこに共通しているのは、被害者として優しさからくる悲しみ。触れたら消えてしまいそうな脆さと、弱者の虐げられた悲しみと美しさがある。

 アンソニー•グリーンのボーカルの透明で物憂げなボーカルと、透明で寂寥感に溢れるメロディーからは、まるで船縁から水底に沈んだ都市を俯瞰し、失われた無垢な楽園を覗きみているような切なさがある。水面の揺れのようにやさしく震えるメロディーは、幻想的で寂しげ。そこには良かったころを振り返っているような悲しい気分にさせられる。か弱いは脆さは、儚く透明な美しさをはらんでいる。この芸術性はすばらしい。

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ホット・ウォーター・ミュージック  『エクシャター』

ExisterExister
Hot Water Music

Rise Records 2012-05-15
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 じつに8年ぶりとなる12年発表の8作目。解散から現在にいたるまで、ラガンはリヴァイバル・ツアーやソロなどの活動をしていた。その影響が大きかったのだろう。今作ではR&Bをベースにしたシンプルなパンク・ロックを展開している。基本的には前作の延長上にあるブルースを中心としたサウンド。だが前作とは違い70年代ロックやパンクなどを取り入れ、現代のパンクとうまく融合させている。粗く雑味の効いたメロディーに、ブルース・スプリングティーンのようなしゃがれた歌声。終始がなりっぱなしでダミ声をあえて作っていた前作までと比べると、シンプルに歌っている。制御するところは制御し、熱い部分は熱くなる。あらゆるを力を振り絞って全身全霊を傾けるボーカルの歌声がいい。その感情の抑揚にあわせ、ギターも静かなセンチメンタルを紡ぎ、感情の抑揚とともにドライブしていく。

 その姿勢は歌詞にも顕著に表れている。たとえば、“ドラウン・イン・イット”では、<私たちはそのなかで溺死する/でもまだほんの少し希望がある>と歌い、“ドラッグ・マイ・ボディー”では、<私がいつ危険を冒したかについて、理解していなければいけなかった/自分自身をグシャグシャにして、壊れるか賭けをする/精神的なちょっとした振え、言葉の喪失、私は、もう人間的であるとほとんど感じていません>と壮絶なドラッグ体験について歌っている。暗喩と示唆に満ちた内容が多いが、そこには絶望にふちに立たされていながらも、必ず這い上がるといった強い意志を感じることができる。30を超え大人になった現在、彼らは過酷さを経験しているし、それを乗り越える術も知っている。

 サウンドにも歌詞にも、冷徹に現実を見極めそれでも立ち上がっていく意志の強さと、円熟した大人の怒りと叫びがある。それがこのアルバムの魅力なのだ。アルバムは終始ハイスピードと天象の高さでグイグイと押していく。そしてあっという間に終わる展開。全盛期のころの向こう見ずな攻撃性はないが、一点集中的なエナジーに満ち溢れている。これはまさに大人が聴くハード・コアだ。


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ホット・ウォーター・ミュージック  『ティル・ザ・ホイール・フォール・オフ』

Till the Wheels Fall OffTill the Wheels Fall Off
Hot Water Music

No Idea Records 2008-02-12
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 08年に発表された2枚目のコンピレーションアルバム。06年に解散したホット・ウォーターミュージックだが、ここでは解散前の過去の作品が収録されている。年代順に表記すると、99年発表の14枚目のEP『ムーンパイズ・フォー・ミスフィッツ』から3曲、コンピレーションアルバム『Twelve Ounces of Courage』からガーランド・ジェフリーズのカヴァーと、『Return of the Read Menace』から新曲、計2曲を収録、クラッシュのトリビュート『City Rockers: A Tribute to The Clash』から1曲、レザーフェイスとのスプリット『BYO Split Series Volume I』から3曲。00年発表のノー・アイディア・レコーズのオムニバス『No Idea 100: Redefiling Music』からブルース・スプリングティーンのカヴァーを1曲。01年発表のホープレス・レコーズのオムニバス『テイク・アクション』からミッドナイト・オイルのカヴァーを1曲、オムニバス『アルファ•マザーファッカー』からノルウェーのパンクバンド、Turbonegroのカヴァーを収録、副腎の持病を患った11歳の少年、ロレンツォ・オイルへの寄付が目的で発売されたチャリティーアルバム『Living Tomorrow Today: A Benefit for Ty Cambra』からワシントンDCのハードコアバンド、カバメント・リイシューのカヴァーを収録、『ア・ファイト・アンド・ア・クラッシュ』のヴァイナル盤のボーナストラックから1曲。02年発表のエピタフ・レコーズのオムニバス『パンク・オー・ラマ7』から1曲、アルカライン・トリオとのスプリットから4曲。04年発表のオムニバス『パンク・オー・ラマ9』から1曲、ブッシュ政権の転覆が目的で発売されたファット・レックコーズのオムニバス『ロック・アゲインスト・ブッシュVol.2』から1曲。05年発表の『パンク・オー・ラマ10』から1曲。そこに未発表曲が1曲加わり、計23曲が収録されている。

 曲の3分の2にあたる部分は、99年から01年にかけて制作されている。この時期彼らが発表したアルバムは、『ノー・ディヴィジョン』と『ア・ファイト・アンド・ア・クラッシュ』の2枚。彼らにとって全盛期に作られた曲たちなのだ。分厚いコードギターとメロディーギターが相克し、火花を散らす武骨で男くさく熱いサウンドを展開している。ただこの時期は、アルバム制作に全精力を注いでいたのだろう。彼らの魅力のひとつに複雑なメロディー・フレーズという個性があるが、ここではそんなに練られていない。シンプルで力強いパンク・ナンバーが目立つ。おそらくアルバムの選考からもれた、アウト・テイク的な曲を発表したのだろう。だがカヴァー曲を聴くと、パンク・ハードコアに対する一途な思いを持っていることが理解できる。スノッブでおちゃらけた大衆ポップスにまったく興味がないのだろう。アンダーグランド・ミュージックをこよなく愛している。そういった意味では、まじめに反社会的なことを考えている、まじめなバンドなのだろう。そのルーツにも共感が持てるし、ホット・ウォーター・ミュージックが好きな人には必須の作品だ。

 なお、このコンピレーションの制作で再びメンバーが顔を合わせたのがよかったのかもしれない。この作品の発売をきっかけに再結成をし、1月と2月にツアーを行った。以前のように1年に1枚を発表するほど、タイトな日程で活動はしていないが、緩やかな活動を開始した。

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HOT WATER MUSIC  『THE NEW WHAT NEXT』

ザ・ニュー・ホワット・ネクストザ・ニュー・ホワット・ネクスト
ホット・ウォーター・ミュージック

ソニー・ミュージックジャパンインターナショナル 2005-01-07
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 04年発表の7作目。前作のスピーディーでテクニカルなメロデックパンクから、R&Bをベースにしたシンプルなパンクに変化した。もはや彼らの個性である複雑なメロディーはない。シンガロングで掛け合うボーカルもなくなった。男臭いボーカルこそ健在だが、どこか落ち着いてしまった印象を受ける。そこには後ろ姿が寂しげな哀愁が漂っている。

 この変化の理由のひとつは、音楽趣向の変化にある。インタビューでジェイソンは、アルバム収録前、ジミー・クリフの『ザ・ヘッダー・ゼイ・カム』をよく聴いていたと、発言した。ジミー・クリフ自体、レゲエ・アーティストで、サウンドに直接の影響は感じられないが、メンバーの黒人音楽への傾斜が、バンドに対する情熱が薄れ始めている証ではないか。もはやエネルギッシュなパンクより、味わい深い枯れた円熟味のほうが好きなのだ。

 といってもそんなに悪いアルバムでもない。ギターはテクニックよも、ヴァラエティー豊かな音にこだわっており、ヴィヴィットで、感情移入しやすい。そこには、苦悩の叫びや、切なさや、諦観に彩られてた制御のきいた歌声の曲がある。表情豊かな作品なのだ。攻撃的な男臭い感情だけで押し通すのではなく、諦念や弱さやなど人間臭い表情を初めてみせた。感情的にグッとくるし、そういった意味ではいい作品だ。

 なおこの1年後には、チャック・ラガンが、アゲインスト・ミーのトム・ガベル、ルセロのベン・ニコルズ、妻のジル・ラガンらと、パンクバンドによる、アメリカルーツ音楽の精神に立ち返るフェスティバル、“リバイバル・ツアー”立ち上げた。そのプロジェクトと、ソロ活動に専念するため脱退を決意する。そして1年後の06年5月にホット・ウォーター・ミュージックは、解散を発表した。


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HOT WATER MUSIC  『Caution』

コーションコーション
ホット・ウォーター・ミュージック

ソニー・ミュージックジャパンインターナショナル 2002-11-20
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 02年に発表した6作目。『ノー・ディヴィジョン』から今作にかけてのホット・ウォータ・ミュージックは、本当にいいサウンドを展開している。今作も最高傑作といいたくなるほど、いい作品だ。

 前作で確立した複雑なアレンジと変則的なリズムのドラムのパンクロックを、今作でもベースにしている。だが前作と比べると、分厚いギターが薄れ、スピード感が増した。たとえるならハードコアのスピードに、テクニカルなメロディーを乗せている感じ。どうやらサポートギターとして参加している元ダグナスティー、現バッド・レリジョンのブライアン・ベイカーの存在が、サウンドに変化をあたえているようだ。ブライアン独特の冷たく透明で知性を感じるメロディーに、ホット・ウォーター・ミュージック特有のギャロピング・ギターが融合した。そこに性急なスピードのドラムと、尋常でないテンションの高いボーカル怒声が加わり、メロデック・パンクをネクストレベルへ進化させている。

 まるで息をつく間もなく次の曲が始まり、あっという間に終わっていく。その尋常でないテンションとテンポの速さには、苛立ちを急き立てるような焦燥感がある。それは歌詞にも顕著に表れている。たとえば“ワン・ステップ・トゥ・スリップ”では、〈控え目にすべてを手にするんだ、何も考えずにすべてのゴミを腐らせるために、崖っぷちから転げ落ちていく、俺はただ堕落していくだけさ〉と、投げやりで自暴自棄な気持ちをエスカレートさせている。また“アイ・ワズ・オン・ア・マウンテン”では、<注意しろ、お前が立っている地面も、足元から滑り落ちていくから>と、自分が築いたものが崩れさる危機感を切迫した思いで歌っている。その自暴自棄な苛立ちと切迫した危機感が、サウンドを加速させた原因なのだ。

 そして“ザ・センス”では、<むしろ子供たちから学んだほうがいい/彼らの世界を見たほうがよっぽどいい/年老いてくたびれたものじゃない>と、年寄りよりも子供のほうが学ぶことが多いと歌っている。そこには、すべてを壊し失ったあとに、新しい世代によるイノベーションが起きると予見したような内容だ。ぼくはそこに、次を担うのはしたの世代から学んだ俺たちなのだと、いわんばかりの主張が隠されているように思える。その根拠が、すべてを失ってもいいから、とにかく俺がやってやるぞという尋常でないテンションに表れているような気がしてならない。

メロディーを重視した作品のため、ポップになった。そのため男くさい暑苦しさ薄れ、爽やかになった印象さえある。古いファンからすれば、裏切りに写るのかもしれない。でもぼくはそうは思わない。なぜなら、研ぎ澄まされたメロディーと、この尋常でないテンションの高さが好きだから。

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ホット・ウォーター・ミュージック/アルカライン・トリオ  『スプリット』

SplitSplit
Alkaline Trio Hot Water Music

Jade Tree Records 2002-02-05
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 02年に発表されたアルカライン・トリオとのスプリット。その内容は、アルカライン・トリオが2曲の新曲とホット・ウォータ・ミュージックの“ルーフトップス”をカヴァー。たいするホット・ウォーター・ミュージックは、新曲2曲と、アルカライン・トリオの“レディオ”と“ブリーダー”の2曲をカヴァーしている。

アルカライン・トリオはTSOLの流れを汲むホラー色の強いメロディック・パンク。ここでは、ハスキーで甘い歌声を、暗く妖しげなメロディーに乗せ、相変わらず彼ららしいサウンドを展開している。ホット・ウォーター・ミュージックのカヴァーは原曲に忠実なアレンジをしている。

ホット・ウォーター・ミュージックは、前作路線の複雑なアレンジの曲から、アコースティックギターを取り入れた曲など、実験的な要素が目立つ。アルカライントリオのカヴァーでは、憂愁さを含んだメロディーと、制御の効いた歌声で、渋味のきいた円熟味を展開している。

 妖艶なアルカライントリオと男臭いホット・ウォーター・ミュージック。お互いにパンクをベースにしているバンドだが、アプローチが180度違う。だが両者ともカッコいい。メロディック・パンクの豊かな個性と奥深さを表したスプリットだ。

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HOT WATER MUSIC  『A Flight And Crash』

ア・フライト・アンド・ア・クラッシュア・フライト・アンド・ア・クラッシュ
ホット・ウォーター・ミュージック

エピックレコードジャパン 2001-07-18
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 01年発表の5作目。彼らの最高傑作はこの作品。大手インディーレーベルであるエピタフに移籍したことによって、気合いの入った作品に仕上がっている。

 今作ではとくにメロディーに力を入れている。テクニカルでトリッキーなギターから、サイケデリック調のメロディー、古いブルースなどを取り入れ、パンクロックに、より深みが増している。

 男臭さは保持しているが、メロディーに重点を置いているため、若干武骨さは薄れ、ポップになった印象をうける。だが、彼らの音楽スタイルの特徴である、曲によって使い分けるクリスとチャックの2人のボーカル、シンガロングスタイル、複雑なギターワーク、タイトなリズムセクション、激しさとメロディーなどのバランスが、高い位置で交差している。この作品で彼らの理想としているサウンドが完成したのだ。

 この作品が最高傑作の理由のひとつに、再び内省に目を向けている。エモ時代はサウンド的には未熟だったが、歌詞は独特の世界観を持っていた。ここでそのころの内面世界を突き詰めている。 たとえば3曲目の“ペーパー・シン”では<白い白い壁、病院/俺たちはみんな取るに足らない人間/紙のように薄っぺら/あやふやな状態で待っている/また答えひとつない日がやってくる>と、歌っている。そこでは自己の内面世界をひたすら凝視し続け、精神的探求を深め続けていった結果、病んだ精神状態にたどり着いた。すべての感情を虚無に塗り替える白い壁。感情を喪失する薬。まるでムンクの叫びのような隔絶した孤独な世界がある。

 そこにはいじけ淋しさなどの弱々しい感情はない。隔絶された世界でも、前へ前へと立ち向かっていく推進力がある。その姿勢は熱く男臭い。それがこの作品の魅力のひとつでもあるのだ。パンク界で孤高の輝きを放った素晴らしい作品だ。

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ホット・ウォーター・ミュージック  『ネヴァー・エンダー』

Never EnderNever Ender
Hot Water Music

No Idea Records 2007-09-25
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 01年に発表されたコンピレーションアルバム。いままで彼らがオムニバスに提供してきた曲や、シングルなどが、このアルバムに収録されている。なおメールオーダー限定の2枚組みも発売している。 ここに収録されている曲は、95年発表のデビューEP『プッシュ・フォー・コイン』から4曲。96年発表の『You Can Take the Boy Out of Brandenton 7"』から2曲。97年の発表の『Alachua 7』EPから2曲。98年発表のClairmelとのスプリット『Split with Clairmel 8.5』から2曲。98年発表のシックス・ゴーイング・オン・セブンとのスプリットから1曲。98年発表のスプリット『F State Revisited 7』から1曲。計12曲(2枚目は13曲)が収録されている。

  コンピレーション・アルバムは曲の寄せ集めだが、ここでは、取り直しなのではないかと思えるくらい、うまくまとまっている。新しい曲から古い曲へ進んでいく曲構成で、そこには古さは感じさせない。

 気持ち高ぶらせる扇動的なギター、激流をかきわけるようにグイグイと進んでいく曲展開。勢いと熱さが全体を貫いている。しかもコンピに提供した曲のほうに力を入れていたのかと訝ってしまうほど、音に迫力がある。

 前半は近年の複雑なアレンジを展開しているパンク・ロックの曲で占められているが、メタルっぽいメロディーやリフを取り入れ、新たな試みをしている。そして古いエモーショナルハードコアな曲では、分厚いギターと軽快なアコースティックのコントラストで、牧歌的で広大な世界観を演出している。実験的要素が強く、自分たちをアピールするため、気合い入った曲をコンピに提供しているのが理解できる。

 全体的に録音状態が悪く、音に深みがない印象を受けるが、武骨な男臭さが全面に出たいい作品だ。

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ホット・ウォーター・ミュージック  『ノー・ディヴィジョン』

No Division (Reis)No Division (Reis)
Hot Water Music

No Idea Records 2008-10-28
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 99年発表の4作目。前EPでパンク路線に変更した彼らだが、ここではさらに強化されている。シック・オブ・イット・オール系のハードコアから、シンガロング・スタイルのボーカル、カントリーのようなメロディー、トライバルなドラムにいたるまで、いろいろな要素を取り入れている。

 前作で彼らの歌詞は内省から外の世界へと変化を見せたが、ここではさらなる広がりを見せている。たとえば“フリー・レディオ・ゲインズビル”では、<権威を根絶するために、自身を嫌悪を高く保持する/完全な誓約(私たちの道は自由だ)/権利を望む少数の解放>と歌い、“アワ・ワン・ウエイ”では、<我々はいくつかのリアルな困難な時代を見てきた/海のどこかに巻き込まれて、海洋や嵐にさ迷ったとしても、我々自身の家に帰る道を見つける>と、比喩を交えながら、自分たちが過酷な状況を乗り切ってきたことを歌っている。過酷な状況でも自分の信念を貫くストイシズム。権威への反抗。苦悩を抱えた仲間へ送るファイトソング。その姿勢はまさに闘争的なパンクといえる。

 歌詞の内容に比例するようにサウンドも熱い。シンガロングするボーカルからは、猪木のようなビンタされ気合いを注入されるような活力を感じることができるし、カントリーのようなメロディーと小気味よく疾走していくスピード感からは、爽やかで牧歌的な開放感がある。前作までのうじうじとした迷いが吹っ切れ、スコーンとまっすぐに突き抜けている。

 この外へ向かっていくパンクサウンドからは、勇気とパワーをもらえる。新しく生まれ変わった彼らのすばらしい作品だ。

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レザーフェイス/ホット・ウォーター・ミュージック 『スプリット』

Byo Split Series #1 - SplitByo Split Series #1 - Split
Leatherface

Better Youth Org. 1999-04-20
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99年に発表されたレザーフェイスとのスプリット。この作品はホット・ウォーター・ミュージックにとって、転機となったのではないか。レザーフェイスは、初期パンクをベースにした荒々しいサウンドで、疾走感のなかにナイーブさが見え隠れしているのが魅力的。たいするホット・ウォーター・ミュージックは、豪快で力強いパンクロック。男臭く、気合の入った曲に仕上がっている。

レザーフェイスとホット・ウォーターミュージックの共通点といえば、男くさく、しゃがれた叫び声。繊細なレザーフェイスに比べると、ホット・ウォーター・ミュージックは豪快で図太い。アプローチが対称的なのが面白い。

だが、この作品を聴くと、影響を受けたのはホット・ウォーター・ミュージックのほうだろう。いままでの曲より、メロディーが磨かれ、彼らのクオリティーは格段に上がっている。真の意味でのエモーショナルで心にしみる音楽とはなにかを、彼らは学んだのではないか。

両者ともに自分たちを代表するいい曲を提供しているし、これはいい作品だ。



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ホット・ウォーター・ミュージック  『ムーンパイズ・フォー・ミスフィッツ』

Moonpies for MisfitsMoonpies for Misfits
Hot Water Music

No Idea Records 1999-07-19
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 よりメロディーに重点を置いた98年発表の14枚目のEP。基本的な部分こそ変わっていないが、エモーショナルハードコアではなくなり、パンクロックに変化した。だがけっしてバカでノー天気なメロディックパンクではない。ダグナスティーに近いストロングタイプのパンク。メロディーは力強く活力に満ち、男臭いボーカルの迫力をさらに際立たせている。スローテンポからミドルテンポに変わり、若干、スピード感が増した。そのため前作よりも、感情移入しやすい作品に仕上がっている。

 ぼくはこの変化を肯定的に受けとめている。その理由は、聴きやすい作品に仕上がっているから。なにより武骨な男臭さは変わってない。内省的で閉塞感が漂っていたエモーショナルハードコアのときよりも、スカッと歯切れがよく、爽快。ビートを叩きけるパンクのほうが、彼らのアティテュードもマッチしている。
 
 これは新たな幕開けを告げる作品だ。


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HOT WATER MUSIC  『FOREVER AND COUNTING』

フォーエヴァー・アンド・カウンティングフォーエヴァー・アンド・カウンティング
ホット・ウォーター・ミュージック・バンド

バンダイ・ミュージックエンタテインメント 1999-06-05
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 97年に発表された3作目。フガジに影響を受けたエモーショナル・ハードコアというサウンドフォーマットや、武骨な男臭さは変わらない。だが前作よりも、アレンジは複雑になり、メロディーを重視した作品に仕上がった。たとえば“トランスロケーション”では、扇情的なメロディーと繊細なメロディーを組み合わせ、“スリー・サマー・ストロング”では、アラブのようなメロディーを取り入れている。また“マン・ザ・チェンジ”では警告音のような独特なメロディーを展開。前作よりも、アレンジが練られているのが理解できる。彼らなりに欠点を見つけ、ブラッシュアップしているのだ。彼らはサウンドを極めるため、欠点を受け入れ修正し、自己鍛錬しているバンドなのだ。

 今作では前作の内面世界から抜け出し、外へ向かっている。歌詞のテーマは正義と忍耐。たとえば“ベター・シンス”では、<塞いだ心の中に真実を受け入れることで、考えに変化が現れる/弱点や困惑の中でけっして危機が去ることはない>と歌い、“ポジション”では<時には沈むこともあるけど、戦士のように固い意志とともに勇者のように立ち上がる/みんなと同じように成長したいと思う>と歌っている。また“ウエスタン・グレイス”では、<俺たちを受け入れたくれた人に感謝する、面倒を見て、励まして、希望をあたえてくれた/俺たちは一人じゃないと確信させてくれた。いままでのことは断ち切って、再び進んでいこう/これはレッスン、だから険しい道も進む>と歌っている。

 そこでは、いままで自分は弱者で、心を閉ざしていたことを素直に認めている。そんな自分を受け入れ、外の世界へ心を開こうとしているが、困難にぶつかっている。でも自分が正しいと信じる道を進むには、苦難を受け入れ、忍耐が必要だと、締めくくっている。困難を経験することで乗り越え、対処方を覚える。そして自分が成長する。彼らにとって正義と忍耐とは、塞ぎこみ内面的な考えで結論付けることが悪で、苦痛に耐えながら、自分が信じる正しい道を突き進むのが正義だと、ここでは言っている。そんな内容を、哲学的な語り口で歌っているのだ。

 全体的にメロディーに重点を置きすぎて、やや迫力に欠けた部分もあるが、リリック面も含め、前作よりも確実に成長している。そう彼らの魅力は、困難にぶつかっていくアグレッシヴさと、ものごとを極めるようなストイックさがあるのだ。その姿勢が男くさくて、カッコいい。

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