ホット・ウォーター・ミュージック 『エクシャター』
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じつに8年ぶりとなる12年発表の8作目。解散から現在にいたるまで、ラガンはリヴァイバル・ツアーやソロなどの活動をしていた。その影響が大きかったのだろう。今作ではR&Bをベースにしたシンプルなパンク・ロックを展開している。基本的には前作の延長上にあるブルースを中心としたサウンド。だが前作とは違い70年代ロックやパンクなどを取り入れ、現代のパンクとうまく融合させている。粗く雑味の効いたメロディーに、ブルース・スプリングティーンのようなしゃがれた歌声。終始がなりっぱなしでダミ声をあえて作っていた前作までと比べると、シンプルに歌っている。制御するところは制御し、熱い部分は熱くなる。あらゆるを力を振り絞って全身全霊を傾けるボーカルの歌声がいい。その感情の抑揚にあわせ、ギターも静かなセンチメンタルを紡ぎ、感情の抑揚とともにドライブしていく。
その姿勢は歌詞にも顕著に表れている。たとえば、“ドラウン・イン・イット”では、<私たちはそのなかで溺死する/でもまだほんの少し希望がある>と歌い、“ドラッグ・マイ・ボディー”では、<私がいつ危険を冒したかについて、理解していなければいけなかった/自分自身をグシャグシャにして、壊れるか賭けをする/精神的なちょっとした振え、言葉の喪失、私は、もう人間的であるとほとんど感じていません>と壮絶なドラッグ体験について歌っている。暗喩と示唆に満ちた内容が多いが、そこには絶望にふちに立たされていながらも、必ず這い上がるといった強い意志を感じることができる。30を超え大人になった現在、彼らは過酷さを経験しているし、それを乗り越える術も知っている。
サウンドにも歌詞にも、冷徹に現実を見極めそれでも立ち上がっていく意志の強さと、円熟した大人の怒りと叫びがある。それがこのアルバムの魅力なのだ。アルバムは終始ハイスピードと天象の高さでグイグイと押していく。そしてあっという間に終わる展開。全盛期のころの向こう見ずな攻撃性はないが、一点集中的なエナジーに満ち溢れている。これはまさに大人が聴くハード・コアだ。
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