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dredg 『エル・シエロ』

El cieloEl cielo
Dredg

Interscope Records 2002-10-08
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 02年に発表された2作目。軽やかな儚さや脆さが魅力だった前作と比べると、トランシーで神秘的な方向に変化した。荒々しさや激しさこそ増しているが、骨太さはなくなっている。今作ではアジア音楽やゴアトランスなどの要素を取り入れている。そこにソニックユースのようなノイジーな壁のギターや、不気味な子守唄のように妖しげなボーカルの歌声、シンプルなピアノの曲、オーロラのように波打つ不穏なシンセなどが切り貼りされ、何の脈略もなく連鎖的に続いていく。今作も前作と同様、インストゥルメンタルの曲とボーカルを乗せた曲が交互に進む展開だ。

 今作では1曲目のブラシストロークのイントロが11目で繰り返されている。そこでは始まりが同じで内容が悪夢へと変わる睡眠中に見る夢のように、心地よいやすらぎが無力な絶望へと変わっていく。ドロドロとした暗さがある。この変化の理由はコンセプトにある。今作ではシュルレアリズムの画家サルバトール・ダリの『目覚めの直前、柘榴のまわりを一匹の蜜蜂が飛んで生じた夢』がコンセプトになっている。この絵はフロイトの『精神分析入門』からイスパイヤーされて描かれ、目覚めの原因となる瞬間的な出来事によって、一連の長い筋をもった夢が生じる、というフロイトの発見をヴィジュアル化した作品だ。

 例えば5曲目の“△”では、幸運のなかの静けさという象徴的な出来事があって、そこに海岸での爆発が起き墓の隣に花が咲き、赤ちゃんが生まれ、私たちは砂漠でペンギンのように生きていくと、不条理な出来事が連鎖的に結びついていく。歌詞は、実際に金縛りや悪夢にうなされている人々が、彼らに送った手紙から直接引用している。実際の体験に基づいた内容なのだ。

 そこにあるのは後味の悪さ。まるで心地よい安らぎを奪われ、地獄に突き落とされるような恐怖と苦しみがある。先に幸福を経験している分だけ、苦しみも倍増して感じる。しこりが残る後味の悪い映画を見たときのような憂鬱な気分になる。

 だがこの作品のすばらしさは、二律背反のアプローチのしかたにある。ほとんどのバンドが静と動といった極端な表現しか出来ないなか、彼らは明るさから暗さが重なり、連鎖しさらに重くなっていくといった唯一無二の表現方法を獲得している。そういった意味で、サウンドも歌詞も彼らしかありえないオリジナルティーが今作もあるのだ。これもすばらしい作品だ。

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dredg 『ライトモチーフ』

LeitmotifLeitmotif
Dredg

Interscope Records 2001-09-11
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 98年に発表されたカルフォルニア出身のインディー・ロックバンドのデビュー作。ひさびさに自分の音楽知識をなさを再認識させられるような、独特なサウンドを展開しているバンドにあった。サウンドのベースになっているのは、初期レモンヘッズやダイナソーjrに代表されるノイジーなオルタナティヴ・ロック。そこに軽やかで浮遊感のあるポストロックや、エモーショナル・ハードコア、サイケや東欧調のメロディーに、ジャズの要素を加え、奇抜なメロディーで、彼らならではのオリジナルティー溢れるサウンドを展開している。

 アメリカではエクスペリメンタルロック、アートロック、プログレなどと呼ばれ、よくTOOLが引き合いにだされている。だがそのサウンドは180度異なる。まず暗く重いメタルの要素が彼らにはない。共通項といえば、知的で幾何学的な難解さをもつアートな世界観くらいか。 彼らのまたジョー・オブ・アークのように、少数派しか受け入れずらいサウンドを展開している。

 このアルバムは、イントロと歌ものが交互に続き、コンセプトアルバムらしく、曲の特定の部分と、人物、場所などを関連付け、ミュージカル風に仕上げているらしい。たとえば、舞い散る桜のような儚いメロディーの“クロスウィンドウ・メヌエット”から、孤独で静謐なアコースティックの“トラバース・スルー・ザ・アークティック・コールド・ウィー・サーチ・フォー・ザ・スピリット・オブ・ユタ”と続いていく流れでは、北国の過酷な冬をフィーチャーしたイントロを奏で、<北極の終わりまで横断する。私たちはユタの精神を探索するために>という言葉がキーワードになっている。シャーマンが呪文のような触れたら崩れてしまいそうな儚く弱々しいコーラスと、寂しさと孤独に満ちた繊細で軽やかなギターメロディーがある。そこでは大自然という偉大な力の前で感じる人間の脆さや弱さと、祈りや精神世界という神秘な力をサウンドで表現している。それが彼ら独特のサウンドの正体なのだ。


 独特な音のメロディーを、ロックのなかに実験的に取り入れ、サウンドの奇抜さや、不細工のなかに美を見出そうとしている。けっして一般受けするサウンドではないが、個人的には、ひさびさに〇〇っぽいと感じない、彼らしか奏でていない独特なサウンドを展開しているバンドに出会った。そういった意味でも評価できるし、これはすばらしい作品だ。

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オフ

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Vice 2012-05-08
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 12年発表の2作目。前作と同じく、ラモーンズをベースにしたハードコアに、激しく始まりあっという間に終わるファウストな展開に変わりはない。すべての曲が1分台で、基本的には前作と変わっていない。変化があるとすれば、メロディーの熟味をまし、ギターソロの曲が増えたということだけか。だがそこに技術的な進歩を感じることが出来る。アルバム全体ワンフレーズを執拗に繰る返す展開で、繰り返すことによって、ギター扇情的に攻撃しろと煽っている。そこにギターソロなどを加えることによって、曲の違いを際立たせている。なかでも意外性に富んでいるのは“キング・コング・バゲイド”。静かなメロディーのイントロで始まり、感情を煽るギターソロが展開され、不気味なジャングルの騒音で終わる。1分37秒の中に、複雑な要素を詰め込んでいる。アルバム全体を通してこれほど練られた展開の曲はこの1曲しかない。それほどインパクトが強い曲だ。荒削りなサウンドにギターのアレンジを加える技術を習得したのだ。そういった確実に成長している。

 歌詞は相変わらず<サノバビッチ>など汚い言葉を吐きながら、メディア批判などをし、むしゃくしゃした気持ちをサウンドにぶつけている。まるでホラー映画、『チャイルドプレイ』に似た、コメディー感覚と狂気を感じることが出来る。アメリカ的な匂いの強い作品だ。

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