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dredg 『チョックス&ミスター・スキュージー』

Chuckles & Mr. SqueezyChuckles & Mr. Squeezy
Dredg

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 11年発表の5作目。劇的に変わった作品。今作ではビューティフル・ロックやプログレ、ギターロックの要素がなくなり、デジタルを全面に出した。『チョックス&ミスター・スキュージー』(ほくそ笑むミスター・スキューズィ氏)と名付けられた今作は、サウンド・コンセプトから制作方法にいたるまで、今までの作品と手法が異なっている。 曲を完成させるまでのプロセスも、メンバーが集まってジャムセッションをするのではなく、電子メールをつかって肉付けをし、完成させていった。そのやり取りだけでじつに8ヶ月の期間を要したという。そこで完成させた曲を、ピップ・ホップのDJシャドウや、ロック・バンドのゴリラズ、カサビアンなどのプロデューサーで知られるダン・ザ・オートメータの手によって、デジタルに味付けされていった。

 今作ではプログレや透明な美しさ、ギターサウンドこそなくなったが、端々に古きよきアメリカのサウンドを取り入れている。たとえば“アナザー・トライブ”ではダンスホールを取り入れ、“ザ・オーナメント”ではオールディーズのようなトランペットを取り入れた曲だ。そしてバーズの影響が強い爽やかで前向きな希望にあふれた“サン・ゴーズ・ダウン”などがある。そこに打ち込み系のデジタルな要素を加え現代風にアレンジした。曲の根幹のにある部分はあまり変わっていない印象を受けたが、デジタルを導入したため、ガラリと変わった。しかも、今作は前作までと違い、歌詞にもサウンドにもコンセプトがないようだ。ボーカルのギャビンの個人的な経験を歌詞にしている。

 とくに力を入れているのが、恐怖とも笑いとも取れる奇妙なお面のヴィジュアル・コンセプト。そのお面に象徴されるように、歌詞にもアイロニーや冷笑的な皮肉に満ちている。たとえば“アポン・リターニング”では、<あなたの気分を良くするのなら、私は嘘をつくことができます>と歌い、自分の本性を隠しピエロを演じている。“サムバディー・イズ・ラフィン”では<誰かがどこかで笑っている。多くの人々が答えを捜している>と、真剣に答えを捜すことへ無意味さに嘲笑が込められている。そして“ザ・フォート・オブ・ルーディング・ユー”では<今日は新しい日、苦痛を片付けた>と歌い、抱えていた心の痛みを片付けたことによって、将来が明るく希望が持てるものになったと言っている。いままでの超常現象や神秘的な内容が、現実的な日常の、屈折した内面に変わった。人間の深層心理や裏側に隠れている陰の部分を表現した作品といえるだろう。そういった意味では、いままでのシュルレアリスム的な、抽象的な世界観と異なっているし、新境地を開いた作品といえるだろう。

 しかしそこには彼らの個性である神秘的でサイケデリックな美しさがない。新しい試みを追求するあまり、デジタルを取り入れ、彼ら本来のよさを失ってしまった。それがこの作品の失敗の原因だ。だが個人的には不気味に笑っているミスター・スキュージーというキャラクターは好きだ。これがビューティフルなサウンドを有機的に結びついてくれれば、いい作品に仕上がったのではないか。そう思えてならない。

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