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ダウン・バイ・ロウ 『500マイルズ』

500 Miles500 Miles
Down By Law

Out of Step
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パンクロックアカデミーからのシングル・カット。“500マイルズ”の原曲は、スコットランドのフォーク/ガレージ・ロックバンドのザ・プロクレイマーズのカヴァー曲。自分たちのオリジナルティーソングではなく、この曲をシングルカットするということは、よほど気に入っているのだろう。事実インタビューでは、カヴァーをするときは、「ものすごく好きな曲か嫌いな曲のどちらかしか選ばない」。と、語っていた。もちろんこの曲は前者。スローテンポからいきなり激しくなっていくアレンジや、原曲のよさを忠実に守ろうとする姿勢から、ものすごく愛着のある曲だということが理解できる。ダウン・バイ・ロウ風のパンクアレンジが施されていて、激しくも熱く爽やかに仕上がっている。

そして“アット・ホーム・イン・ウエストランド”は『ブルー』から選曲でライヴ録音。“ダウン・ザ・ドレイン”はデビュー作からで、これもライヴ録音。そして“アット・ホーム・イン・ウエストランド”と“ダウン・ザ・ドレイン”は、新ギタリストのサム・ウイリアムズⅢによる、勢いとスピード感が増した新しいアレンジが施されている。

カヴァー曲をシングルカットするあたり、パンクバンド所以のひねくれた一面がうかがえる。

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DOWN BY LAW 『punkrockacademyfightsong』

パンクロックアカデミーファイトパンクロックアカデミーファイト
ダウン・バイ・ロウ

エピックレコードジャパン 1995-01-02
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 94年発表の3作目。DYSとダグ・ナスティーと数々の伝説のバンドを渡り歩いてきたデイヴだが、ボーカリストとしての個性を確立し、ダウン・バイ・ロウというバンドのサウンド的な部分でのオリジナルティーを確立したのは、この作品から。このアルバムを制作する前――クビなのか、価値観の不一致だったのか定かではないが――ギターのクリスとベースのEdが脱退した。代りにギターのサム・ウイリアムズⅢと、ベースのジョン・ディマンブロが加入。そのメンバーチェンジが功を奏し、オリジナルティー溢れるサウンドを確立した。

 ここで確立したオリジナルティーとは、メロディックでエネルギッシュな荒々しいギターサウンド。そこに躍動感に満ちたテンションの高いドラムと、水のように透明で熱さを含んだメロディーボーカルが加わる。挑戦的で派手で明るくエネルギッシュで熱いサウンドだ。そこには躁病的なエネルギッシュさに、朝日のように、気持ちが高揚していく、活力がある。ザ・ジ・ャムの『ギフト』を意識したジャケットのように、サウンドも初期パンクからの影響が強い。ザ・ジャムもさることながら、ジェネレーションXなどからの影響を感じる。だがしっかりと、西海岸の雲ひとつない青空を想起させるカラッと明るいサウンドに、アメリカナイズされている。ほかにもドラムのハンターがボーカルを採る曲もあれば、テンポを落としグルーヴを重視したギターアレンジの曲、30秒で終わるファストな曲、コード進行が躁病のようにエネルギッシュで速いノイズギターが魅力な曲もあり、バラエティーに富んでいる。自分たちのサウンドに手ごたえを感じていたのだろう。だから19曲も収録されている。

 それにしても歌詞には、パンクという言葉が目立つ。曲のタイトルにパンクと付く曲が“パンク・ウォン”と“パンク・アズ・ファック”と、2曲ある。そこにはパンクに対する尋常でないこだわりが伺える。“パンク・ウォン”では<自分の信念にすがって生きている>と歌い、<ドラミン・デイヴ、ハンター・アップ>では<ディスコのミラーボールを破壊しやる>と歌い、“ヘアカット”では、<パール・ジャムのクローンだらけ、汚い髪を切ってしまえ>と、チャラチャラしたスノップなものや、流行の音楽を否定している。彼らにとってパンクとは、生き方や信念を貫くものであり、けっして流行に左右されないものだと歌っている。そのこだわりが、ランシドやグリーン・ディのような貧困層出のパンクではなく、スノッブや流行を否定した典型的な中間層のパンクスタイルだ。だから音楽で金銭的に豊かになろう意識より、自分たちが気に入らないことを素直にぶちまけ意識のほうが強く感じられる。

 デイヴ・スマイリーのキャリアのなかでは、DYSとダグ・ナスティーのほうがこのバンドよりもフォーカスされるが、彼独特のボーカルスタイルを確立したのは、間違いなくこの作品だ。それほど話題にならなかった作品だが、このバンドにしかないパンク・スタイルがあるし、パンクを貫いている。

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ダウン・バイ・ロウ 『パンキー・ブリュスター』

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94年発表の2枚目のEP。もともとはドイツのメロディック・パンクバンド、ジャイガンダーとの93年にスプリットで発表された作品だが、その後3曲入りのEPとして発表された。

その内容だが、“パンキー・ブリュスター”は、扇情的なギターのリフが特徴的な曲で、“イエロー・ラット・バスタード”は、のちのダウン・バイ・ロウのオリジナルティーにつながるメロディーを重視した曲。“リボルバー”は、光と陰のコントラストが魅力的な曲で、オルタナの元祖、ミッション・オブ・バーマのカヴァー。全体的に音はこもっているし、録音状態はよくない。だがこの作品には、ボーカルスタイルやメロディーが、理想とするサウンドに徐々に固まりつつある印象を受ける。ただのコピーバンドから脱却を図っている。次作で彼らは飛躍的な成長を遂げるが、その進化の過程にある作品だ。

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DOWN BY LAW 『DC Guns』

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93年発表の3曲入りEP。内容は新曲の“DC Guns”、ポリスのカヴァー“ネクスト・トゥ・ユー”、ボブ・マーリーのカヴァー“ゲット・アップ・スタンド・アップ”の3曲。“DC Guns”は、ギターテクニックを駆使したパンクナンバーで、“ネクスト・トゥ・ユー”は元気のよいパンクアレンジがされている。そして“ゲット・アップ・スタンド・アップ”は、遊びの要素が強いレゲェーカヴァー。それにしても3曲に共通しているのは、メロディーが強いボーカルのインパクト。この作品からボーカルスタイルを確立した。

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DOWN BY LAW 『BLUE』

ブルーブルー
ダウン・バイ・ロウ

エピックレコードジャパン 1995-04-01
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 92年発表の2作目。自分たちのオリジナルティーを確立するため、まだ試行錯誤が続いている段階の作品。前作のダグ・ナスティーっぽさは薄れ、スピーディーでテクニカルなメロディック・ギターなどを導入している。初期オール~後期ディッセンデンスに影響を受けたメロディーや、ジャームスのような曲、ラモーンズ直系のパンクな曲、スローテンポの3コードのシンプルな曲、いろいろな要素を取り入れている。“ターン・アウェイ”では、ドラムのデイヴ・ナズと交互に歌い、“ファイナリー・ヒア”ではベースのEDが歌っている。いろんなことにチャレンジしているのだ。ヴァラエティーが豊富というより、いろんなタイプの曲を演奏し、手探りで自分たちの個性を探っているように感じる。それがこの作品を中途半端な印象を与えているし、作品全体的にキャッチーな親しみやすさを感じることができない。

 でも歌詞は、“ブレイク・ザ・ウォールズ”では <壁を築くんじゃない。壁を壊せ!>と歌い、“アット・ホーム・イン・ザ・ウェイストランド”では、<ブッシュ(シニア)が言っていた千束の光ってやつを見ることがきるのだろうか?政治家どもの話はどうも信用できない>と歌っている。ときには自分の弱さと闘い、理不尽な政治と戦っている。相変わらずパンクしている。それがこの作品の魅力といえるだろう。

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DOWN BY LAW

ダウン・バイ・ロウダウン・バイ・ロウ
ダウン・バイ・ロウ

エピックレコードジャパン 1995-05-21
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 DYS、ダグ・ナスティー、オールと、数々の伝説のバンドを歩んできたデイヴ・スマイリーの新バンド。91年に発表されたデビュー作。そもそもダグ・ナスティーを解散し、新バンドのダウンバイローを結成した理由は、デイヴがカルフォルニアに引っ越ししたからだ。東海岸に住んでいるメンバーと頻繁に会うことが出来なくなったため、新バンドを結成したのだ。けっしてメンバーの仲たがいでダグ・ナスティーを解散したわけではないのだ。

 そんな経緯で発表されたデビュー作は、明るく爽やかなメロディック・パンク。メロディック・パンクが、まだパンク精神を持っていたころの作品だ。サウンド自体はダグ・ナスティーのデビュー作を模倣している。だがブライアン・ベイカーというすぐれたギタリストがいないため、メロディーの突き抜けたが中途半端。クリアーなメロディーに雑身が混じっている。

 でもデイヴのガッツに満ちたボーカルは、相変わらず変わっていない。彼らのサウンドにコントラストとかアンビバレンス、アイロニーといった感情はない。終始エネルギッシュで汗臭く突き抜けていく。“ライト・オア・ロング”では<答えはきっとあるはずだけど、探し続ければ見つかるのだろうか>と歌い、“ザ・トゥルース”では<自分を苦しめることはないだろう、その気になれば自分を変えられるはず>と歌っている。そこには迷い苦しんでいるが、それでも熱く前向きに人生を生きている姿勢がある。彼らのパンクとは、人生賛歌とガッツにあふれたエネルギッシュな姿勢といえるだろう。

 この時点ではバンドを組みたい気持ちが先行していて、サウンドコンセプトが具体的に決まっていなかったように思える。それでもバンドを組みたいという衝動だけで突っ走っている。いかにもデイヴらしい作品だ。


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New Found Glory 『Radiosurgery』

レディオサージュリーレディオサージュリー
ニュー・ファウンド・グローリー

SMJ 2011-10-05
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 11年発表の7作目。前作の原点回帰の延長上にある作品。今作も同じくギター、ベース、ドラムのシンプルな構成。微妙な変化だが、変わったところといえば、ギターサウンド。前作の重く叩きつけるようなギターから、バリバリと音が歪むギターに変わった。

 今作のテーマは<ポップ・パンクス・ノット・デッド>。30年前にハードコア・バンドのクラスが<パンク・イズ・デッド>に反発して、同じくハードコア・バンドのエクスプロイデッドが言った<パンクス・ノット・デッド>に由来する。おそらく彼らが<ポップ・パンクス・ノット・デッド>と発言した理由は、エクスプロイデッドと同じ心境だったからだろう。ブリンク182やサム41、シンプル・プランといった大御所たちは、解散せず、いまでも活動を続けている。だが、ここ数年メロディック・パンクの勢いがなくなってきた。とくにモーション・シティー・サウンドトラック以降、デジタル化が顕著になった。バンド編成のシンプルなメロディック・パンクを展開している新人といえば、オール・タイム・ローくらいしか育っていない。もはやメロディック・パンクは、飽きられた感がある。資本家による富の搾取が始まった昨今、ノー天気で明るく楽しくサウンドは、時代にそぐわなくなってきたのだ。

 そんな時代だからこそ、<ポップ・パンクス・ノット・デッド>というアティテュードを打ち立てたのだ。その精神とは、太陽が照りつける青い空のようなサウンドと、ノー天気に明るく楽しくやっていこうという姿勢。彼らは、時代錯誤といわれようが、パンクではないと言われようが、その姿勢を貫こうと決意したのだ。今作ではいままでになく開き直っている。たとえば、“ アンセム・フォー・ザ・ アンウオンテッド”では、恋愛のどきどき感について歌い、“ドリル・イット・イン・マイ・ブレイン”では、彼女の心変わりを愛おしく感じゆるしてしまう瞬間を歌っている。そして “アイム・ノット・ザ・ワン”では彼女に告白するドキドキする気持ちについて歌っている。総じて日常的で楽しかった彼女との出来事を歌詞にしている。そこには悲しみのかけらは微塵もない。ドキドキする気持ちと毎日がバラ色のような楽しさしかない。そこには、意地や皮肉やこだわりは感じられない。ただ楽しきゃいいさという自然体で音楽を楽しんでいる姿勢がある。全作品のなかで一番明るく楽しいサウンドを展開している作品だ。

 今作のメロディーは、初期パンクや初期ゼブラヘッドからの影響を感じる。いつもどおり、ドスンと響く重いギターのリフと、力強いリズムは健在で、すべてをメロディーの側に引っ張ってくるボーカルのハスキーで甘い歌声は相変わらず、すごい。ブリンク182やサム41が、軒並みシリアスな方向に向かっていったのに対し、彼らは、ノー天気で楽しいという姿勢を貫き通した。メロディック・パンクの魅力が詰まった作品だ。


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ブリンク182 『ドッグス・イーティング・ドッグス EP』

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 12年に発表された5曲入りのEP。公式サイト限定で発売された作品で、初回限定版には、『ナーディ』、『ナイス』「サンタズ』の3種類のラップ・パッケージがあり、それぞれTシャツ、フードフリース、限定ポスター、クリスマスカードなどの特典が付いた。具体的に説明すると『サンタズ』では、アーティストのブランドン・ハートによるポスター、ブリンク 182のホリデイTシャツ、ラッピング・ペーパー、ホリデイ・カードの4つの特典。『ナイス』では、ブリンク 182の2012ホリデイ・フード・フリース、ラッピング・ペーパー、ホリデイ・カードが付いた。『ナーディ』では、ブランドン・ハートによるポスター、ブリンク 182のホリデイTシャツ、ホリデイ・カードが特典。それそれに11月26日月曜日までに予約すると、バンドのサインがプリント。

 肝心のその内容だが、前作『ネイバーフッズ』の世界観を踏襲したサウンドで、ブリンク182独特のメロディーに変わりはない。だが5曲とも方向性の違うヴァラエティー豊かな曲に仕上がっている。“ホエン・アイ・ワズ・ヤング”では、トンネルの中をくぐり抜けるようなワクワク感あるデジタルサウンドで、“ボクシング・ディ”では、アフタヌーンティーを楽しみながらまどろんでいるようなアコースティックの曲。ベースにあるパンキッシュなサウンドにデジタルなどの要素を肉付けしてよりパワーアップしている。との曲もキャッチーで極上なポップ。楽しい気分にさせてくれる作品だ。

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BLINK182 『Neighborhoods』

ネイバーフッズネイバーフッズ
blink-182

ユニバーサル インターナショナル 2011-09-28
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 05年に無期活動休止を発表から、じつに6年ぶりとなる新作。11年に発表された6作目。オリジナル・メンバーの3人でのバンド再始動を発表されたのが4年前。オフィシャルサイトで「僕らは本当に戻ったんだ。現在、スタジオで新作のレコーディングをしていて、ツアーも計画している。17年間の活動での友情を新たにしたんだ」と再始動を高らかに発表された。レコーディングから2年が経ち、ようやくの発表。新作の発売までずいぶん待たされた。そもそも活動を休止した理由は、所属レーベルのオーナーがトムの脱退を共謀したからだそうだ。ボーカルのトムはAngel And Airwavesを組み、ドラムのトラヴィスと、マークは、新たなバンド+44を組み、別の活動を行っていた。それが2年前、オフィシャルサイトにてトムがお互いの誤解をとき、和解したと発表された。

 そんな紆余曲折を経て発表された今作は確実に深化を遂げている。2曲目の”Native”は、『Enema of the state』で確立したBlink182らしいメロディーの曲で、”Up All Night” はAngel And Airwaves 風の曲で、”Hearts All Gone”はダークで+44チック。そして10曲目の”This is Home”は、前作の『Blink182』延長上にあるシンセを導入した曲である。つまり過去をいい部分だけをよせあつめ、総まとめした。そして別バンドで活動していた音楽性が加わったことで、新たな個性を確立した。前作よりもさらにパワーアップしている。いままでの明るくハッピーな曲だけでなく、暗い陰りが加わったため、より深みが増した。だから過去のどの作品よりも、人間味が伝わってくる。この再結成は、けっして金や過去栄光にすがる再結成ではない。だからほかの再結成バンドのような停滞がない。いい作品だ。

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ジョーブレイカー 『チェスターフィールド・キング EP』

Chesterfield King [Analog]Chesterfield King [Analog]
Jawbreaker

Blackball Records 2012-12-11
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 92年に発表された5曲入りEPのリマスター盤。12年に発売から20年を記念してヴァイナル限定で発売。あとに発売された2作目の『ビバーク』のCD盤にすべての曲が収録された。この作品を聴くと『ビバーク』は、曲順が悪く、それが全体のバランスを崩していたことが理解できる。その理由は、『ビバーク』は、全体的に長くダラダラとした印象があるからだ。この作品を聴くと、ジョーブレイカーとは、ノイジーだが、簡潔でスカッとした爽快感があるバンド、というのが似合っているのが理解できる。典型的な短期集中型のバンドなのだ。この作品からノイジーなギターを前面に出すようになったわけだが、悪い印象はない。ミドルテンポのナンバーで構成されたこの作品は、ドロドロと重苦しく聴こえた『ビバーク』と比べると、ずいぶんと気楽な感じに聴こえる。その違いは、 『ビバーク』では、エモよりの内省的でゆっくりした曲も収録されているが、『チェスターフィールド・キング 』EPでは、パンクナンバーだけを集めている。だから曲の印象が違うように感じるのだ。いま思えば、この作品と『ビバーク』は、分けるべきだったのではないか。それほどこの作品には彼らの魅力が詰まっている。

なおヴァイナル盤には、レーベルのホームページににアクセスすると、本曲がダウンロードできるパスワード付き。

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ジョーブレイカー 『ビバーク』

BivouacBivouac
Jawbreaker

Blackball Records 2012-12-11
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 92年に発表された2作目のリマスター盤。12年に『チェスターフィールド・キング 12』のオリジナル・スタジオ・セッションから2曲のボーナス・トラックが加えられ発売された。前作と比べると、劇的な変化を遂げている。もはやメロディック・パンクの面影はなく、分厚いギターノイズを中心としたエモーショナル・ハードコアに変貌を遂げた。カラッとした明るさと爽快なスピード感もなくなり、終始重苦しい空気が支配している。ボーカルも、エモーショナル・ハードコア・バンドに多いがなり声スタイルに変わった。

 ジョーブレイカーの活動とは、大まかにメロディックパンク期とエモーショナル・ハードコア期の2期に分かれる。この作品は、メロディック・パンクからエモーショナル・ハードコア期に移行する過渡期に発表された作品だ。メンバーも、ニューヨークの大学を卒業して、カルフォルニアに戻ってきた時期だった。いうなら子供から大人への階段を登る時期であり、初めて経験すること、成長の過程で生じる障害、将来への不安や希望などの、初体験のトラブルやチャレンジに対するプレッシャーなど、いろんな感情を抱えていた時期でもあったのだ。その混沌とした思いがサウンド面、精神面、歌詞面の、すべてに反映されている。

 今作ではそんな精神状態が色濃く反映されている。たとえば“チェスターフィールド・キング”では、初デートや初体験のときに感じる想いを赤裸々に書き、また“P.S ニュー・ヨーク・イズ・バーニング”“ビバーク”では、当時ニューヨークに住んでいたときの孤独でうつ病気味な心境を赤裸々に語っている。不安や孤独、憂鬱さに苛まれながら大人になっていく過程を描いている。学生時代の辛かった心境が理解できる。

 そしてサウンド面でも、その重苦しさは反映されている。前作のようなメロディック・パンクな曲も何曲かあるが、分厚いノイズギターによって、ドロドロした内面世界のような暗さを感じる。からっと爽やかな本来のよさが失われた。新しい試みが多いため、纏まっていない印象を受ける。とくにボーカルのがなり声には苦しみを感じることが出来る。どうやら意図的にボーカル・スタイルを変えたのではなく、当時、喉にポリープがあり、それが原因でがなり声になったそうだ。

 サウンドを暗く重苦しいものにしている原因は、彼らの精神状態にあった。彼らにとって青春時代とは、暗く苦しいものだったのだ。そんな瞬間を、見事にアルバムで封じ込めている。その重苦しさと、アレンジ面でのオリジナルティーの希薄さがこのアルバムを評価の低いものにしているが、彼らの気持ちも痛いほど理解できる。ぼくの青春時代は、クリスマスに豪華なホテルを予約して彼女と一晩を過ごすというのが、テレビが伝えた定番だった。当時、彼女もお金もなく、友達の少ないぼくは、華やかさとは無縁の生活を送っていた。呪詛の思いでテレビを見ていたことをいまでも思い出す。この作品を聴くと当時の心境を思い出す。今作の欠点を修正し、スコーンと突き抜けた次作のほうが確かにいい作品だが、このほろ苦さは、好感が持てる。重苦しい苦労を過程を感じるいい作品だ。

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ジョーブレイカー 『アンファン』

UnfunUnfun
Jawbreaker

Blackball Records 2010-03-30
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 90年発表されたデビュー作の、10年に発売されたリマスター盤。ジョーブレイカーとは、エモという言葉が定着していない時期にデビューしたバンドで、フガジやライツ・オブ・スプリングなどのバンドと同様に、エモの創世記のバンドのひとつとして活躍したバンドだ。メンバーの出身が、ボーカル兼ギターのブレイクシュワルツェンバッハとベースのアダムが幼馴染でサンタモニカ育ち。お互いニューヨークの大学に進み、そこでバンドを結成。のにちにロサンゼルスに帰ってくる。そんな彼らの個性とは、西海岸のカラッとした明るさの裏側にある暗く陰鬱な一面。カラッと爽快な小気味よいビートにあるちょっと暗い一面。明るさと陰の部分が魅力なバンドだ。

 デビュー作である今作では、ディッセンデンスを発展させたメロディック・パンク。テクニカルで高みに向かって感情を高揚させていくギターや、ハードコアのギタースタイルをポップに変更させた音楽センスや、「アイ・アイ・アー」と歌うのどかなコーラスには、彼らにしかありえない独特なセンスを感じる。エモーショナルなサウンドだが、けっして汗臭くない。カラッとした爽快感が、そこにはある。しかも西海岸独特の、明るさを消し去っている理由は、歌詞にある。“Seethruskin”では反人種差別について歌い、“ソフトコア”では反ポルノについて歌っている。健全な道徳観を持ったパンクだ。だが、そこにやや自己嫌悪気味に人間不信な一面もある。たとえば日本語で不完全という意味である“インコンプリート”では、自分が好きなものが周りから嫌われていることについて歌い、日本語で根性なしといういみの“ガットレス”では、おびえた気持ちに支配されている自分への自己嫌悪を歌っている。いくぶん自傷的でシニカルな傾向にあるが、自分の弱さをさらけ出している。人間味あふれるが魅力なバンドといえるだろう。

 当時のパンク・ハードコア・シーンはマッチョでバイオレンスのバンドが主流で、同時期のグランジやオルタナティヴバンドは、内向的な方向に進んでいた。そんな彼らの、<けんかの弱いごく普通の若者によるパンク>というのは、けっして世間受けしなかったし、異質だった。アティチュードの部分でエモの先駆者といえるバンドだし、いま聴いても古びていない作品だ。

 なおリマスター盤には、ノイズを消したクリアーな仕上がりで、89年に発表されたEP『ウワック&ブライト』から3曲と“ビジー”のリマスターヴァージョンが追加している。


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