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ジョーブレイカー 『ビバーク』

BivouacBivouac
Jawbreaker

Blackball Records 2012-12-11
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 92年に発表された2作目のリマスター盤。12年に『チェスターフィールド・キング 12』のオリジナル・スタジオ・セッションから2曲のボーナス・トラックが加えられ発売された。前作と比べると、劇的な変化を遂げている。もはやメロディック・パンクの面影はなく、分厚いギターノイズを中心としたエモーショナル・ハードコアに変貌を遂げた。カラッとした明るさと爽快なスピード感もなくなり、終始重苦しい空気が支配している。ボーカルも、エモーショナル・ハードコア・バンドに多いがなり声スタイルに変わった。

 ジョーブレイカーの活動とは、大まかにメロディックパンク期とエモーショナル・ハードコア期の2期に分かれる。この作品は、メロディック・パンクからエモーショナル・ハードコア期に移行する過渡期に発表された作品だ。メンバーも、ニューヨークの大学を卒業して、カルフォルニアに戻ってきた時期だった。いうなら子供から大人への階段を登る時期であり、初めて経験すること、成長の過程で生じる障害、将来への不安や希望などの、初体験のトラブルやチャレンジに対するプレッシャーなど、いろんな感情を抱えていた時期でもあったのだ。その混沌とした思いがサウンド面、精神面、歌詞面の、すべてに反映されている。

 今作ではそんな精神状態が色濃く反映されている。たとえば“チェスターフィールド・キング”では、初デートや初体験のときに感じる想いを赤裸々に書き、また“P.S ニュー・ヨーク・イズ・バーニング”“ビバーク”では、当時ニューヨークに住んでいたときの孤独でうつ病気味な心境を赤裸々に語っている。不安や孤独、憂鬱さに苛まれながら大人になっていく過程を描いている。学生時代の辛かった心境が理解できる。

 そしてサウンド面でも、その重苦しさは反映されている。前作のようなメロディック・パンクな曲も何曲かあるが、分厚いノイズギターによって、ドロドロした内面世界のような暗さを感じる。からっと爽やかな本来のよさが失われた。新しい試みが多いため、纏まっていない印象を受ける。とくにボーカルのがなり声には苦しみを感じることが出来る。どうやら意図的にボーカル・スタイルを変えたのではなく、当時、喉にポリープがあり、それが原因でがなり声になったそうだ。

 サウンドを暗く重苦しいものにしている原因は、彼らの精神状態にあった。彼らにとって青春時代とは、暗く苦しいものだったのだ。そんな瞬間を、見事にアルバムで封じ込めている。その重苦しさと、アレンジ面でのオリジナルティーの希薄さがこのアルバムを評価の低いものにしているが、彼らの気持ちも痛いほど理解できる。ぼくの青春時代は、クリスマスに豪華なホテルを予約して彼女と一晩を過ごすというのが、テレビが伝えた定番だった。当時、彼女もお金もなく、友達の少ないぼくは、華やかさとは無縁の生活を送っていた。呪詛の思いでテレビを見ていたことをいまでも思い出す。この作品を聴くと当時の心境を思い出す。今作の欠点を修正し、スコーンと突き抜けた次作のほうが確かにいい作品だが、このほろ苦さは、好感が持てる。重苦しい苦労を過程を感じるいい作品だ。

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