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ダウン・バイ・ロウ 『チャンピオンズ・アット・ハート』

Champions at HeartChampions at Heart
Down By Law

Dc-Jam 2012-08-14
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 12年に発表された8作目。じつに9年ぶりとなる作品。03年に発表された前作『ウインドウォードタイドサンドウェイウォードセイルズ』のあと彼らは休止活動を宣言した。08年にデイヴとギタリストのサムが活動を再開し、徐々に曲を作り始めた。そして4年間に制作した16曲を、フロリダのBlasting Roomにてレコーディング。ザ・ビル・ステーブンソンによりミックスされ、最終的にロサンジェルスのD.O.B.サウンド・スタジオにてDerek O'Brien(Social Distortion, Adolescents)がマスタリングを担当し、仕上げられた。

 4年という歳月をかけ制作された今作は、熱く男くさい作品に仕上がっている。ギターは3作目の『パンクロックアカデミーファイトソング』のように、分厚いノイズギターと8ビートのミドルテンポが特徴だ。ロックンロールをベースにしたパンクな曲で始まり、そこに力強く男くさいOiコーラスの曲が加わり、開き直ったような爽やかで明るい展開で終わる。変わったところではマンドリンを取り入れたアイリッシュトラッドの5曲目などがあるが、全体的にパワフルで勢いを重視した内容だ。

 今作ではまるで自分の人生を総括している内容で、団結がテーマになっている。ステップ1と題された“パンクロック・ユナイデッド”では、パンクバンドを始めたことによって、アメリカ国内はもとより世界中のいろいろな都市やにライヴをするために訪れることができた。ライヴをすることによって衝撃や感動など普通の生活では得ることのできない経験をすることが出来たと歌っている。それが第一の経験。そしてステップ2にあたる“ミスフィッツ・ユナイデッド”(環境にうまく適用できない人たちの団結)では、流れに逆らって泳ぐとか、自分の話す言葉が誰にも通じない孤独な気持ちを、比喩を使いながら少数派の痛切な気持ちを歌っている。そしてステップ3の最終章である“ウォーリアーズ・ユナイデッド”では、少数派の気持ちをさらに発展させ、内にこもるのではなく、外に向かって戦っていくことの重要性を歌っている。自分が本来持っている権利を勝ち取るために。

 全体を要約すると、パンクという少数派が聴く音楽に出会い、そこでいろいろな人たちと知り合った。そこには同じ気持ちで、同じ怒りを持った世界中の少数派の仲間がいた。世界中のパンクスが団結し、庶民層を戦争に借り出す国家や、税金逃れをする既得権益層に(富裕層)戦うことが出来れば、世の中をいい方向に変えることができるのではないか。そんな青臭い理想論で結論付けている。

 この作品の正当な評価を下すなら、前作に次ぐいい作品で8作中4番目だろう。この気持ちを表現しなければいけないある意味使命感のようなテンションの高さはないが、熱さと男くささは全作品中一番で、なにかを残そうという意識でこの作品を作られている。その意識がぼくを感動させた。その意識とは理想論に近いパンク思想だ。隣国ともめることでナショナリズム思想を高ぶらせ不況のはけ口を他国に押し付けている昨今、その隙に富裕層は団結し、グローバルスタンダードやらで富を独占している。世界中の庶民層はますます貧困にあえぐばかりだ。そんなときこそ世界中の庶民層が団結し、富裕層と戦っていくべきではないのか。パンクというコスモポリタン思想が、ナショナリズム思想を排除し、パンクの旗の下、団結する。そして既得権益層に立ち向かっていく。そんな青臭いパンク思想がすばらしいと思った。

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ダウン・バイ・ロウ 『ウインドウォードタイドサンドウェイウォードセイルズ』

WindwardtidesandwaywardsailsWindwardtidesandwaywardsails
Down By Law

Golf 2003-06-16
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 03年に発表された7作目。じつに4年ぶりとなる作品。これがよく出来ている。『オール・スクラッチド・アップ!』以来の快作といえるのではないか。爆発のようなスピードで勢いよく駆け抜けるドラム。捲くし立てるように歌うハイテンションなボーカル。若干テクニカルの要素が加わったメロディーギター。熱血で気合の入ったダウン・バイ・ロウが戻ってきた。

 今作ではカラッと爽やかなメロディック・パンクから、初期パンクをベースにしたサウンドに変わった。とくにギターは扇情的で、攻撃性を重視している。“プット・ザ・ブーツ・イン”では、ガッツを叩きつけるような男くさいOiコーラスが印象的で、“コンヴァルテッド”は、ハードコアパンクな曲で、うねりをあげるギターと、荒々しい攻撃性が魅力だ。そのほかにもAC/DCのカヴァーの“アイ・ワナ・ビー・イン”やモッズのようなメロディーの“キックダウン”など、変わった曲もある。個人的にすきな曲は、“8th And Main”。牧歌的なアメリカンロックをベースにした曲で、かすれた歌声で、別れの切なさを歌う。胸にしみる曲だ。

 歌詞は、一部ジョー・ストラマーへのオマージュがあるようだが、人生訓や政治問題について歌った内容は、基本的には変わっていない。そのクラッシュへのオマージュは“キャピタル・ライオット”。そこでは、“ホワイト・ライオット”からのインスピレーションを受けている。白人による暴動を、国会議事堂で可決される富裕層を優遇する法律への暴動に置き換え、歌っている。人生訓を歌った内容は<我々が選んだ方法の人生を生きるつもり、我々は負けるために生まれてきている場合でも>と、自らの生き様を歌った“プット・ザ・ブーツ・イン”。“スーパーヒーロー・ウオンテッド”では、スーパーヒーローに憧れ、裏の顔を知り、失望しながらも、心の中で次世代のスターを求めている。誰もが経験する曲君を歌っている。そして“ジョニー・ロー”では、正義を振りかざし横暴な態度の警官への批判を述べている。生きることへの意味や反社会的な内容は相変わらすパンクしている。パンクとは生き方というデイブ節は健在なのだ。

 今作は4年ぶりに発表された作品だ。この長い歳月が、もう一度バンドを見つめなおす時間に当てられていたのだろう。ここには前作のような自分の趣味だけ突っ走るようなエゴが感じられない。ファンの望むようなファストで、ストレスを発散するような、スカッとするパンクナンバーがある。歌詞にもどこか失望や挫折の経験が漂っていて、一皮向けた印象を受ける。相手の気持ちを考えるようになった印象を受ける。それでいて自分の伝えたいことや、やりたいサウンド、ファンの求めているものとのバランスが取れている。ただの原点回帰ではなく、しっかりと成長の後が感じられる作品なのだ。


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ダウン・バイ・ロウ 『パンクロックデイズ:ベスト・オブ・ダウン・バイ・ロウ』

Punkrockdays: Best of DblPunkrockdays: Best of Dbl
Down By Law

Epitaph / Ada 2002-04-10
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 02年に発表されたベストアルバム。ここで収録されている曲は、デビュー作から5作目までのエピタフ・レコーズから発売されたアルバムから厳選。ゴーカート・レコーズに移籍した6作目からは、レーベルの違いからか、ここでは1曲も選曲されていない。

 収録されている内訳は、デビュー作の『ダウン・バイ・ロウ』から2曲、2作目の『ブルー』から1曲、3作目の『パンクロックアカデミーファイトソング』から7曲、4作目の『オール・スクラッチ・アップ』から6曲、5作目の『ラスト・オブ・シャープシュ』から2曲、未収録曲はケルティックサウンドをギターに取り入れたビック・カントリーのカヴァー。合わせて19曲が収録されている。

 ベスト盤といえば、シングルの寄せ集めやコンセプトが違いすぎるアルバムから収録しているため、まとまっていない作品が多い。だがここでは新しく発表したアルバムのように、よくまとまっている。しかもライヴのような展開で、ハイテンションで始まり、後味がスカットする爽快な終わり方をする。彼らの最高傑作として名高い『オール・スクラッチド・アップ』と『パンクロックアカデミーファイトソング』から集中的に多くの曲が収録されている。そのため、3作目と4作目の魅了が同時に味わえるし、彼らのインパクトの強い、いい曲がすべて収められている。この一枚で彼らのメロディック・パンクバンドとしての魅力がすべて集約されているといっても過言ではないだろう。それほどベストな曲が漏れなく収録されているし、全体のバランスが取れている。もし、初めて彼らを聴く人に勧めるなら、ぼくはこの作品を選ぶだろう。それほどバランスの取れたベスト盤なのだ。

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DOWN BY LAW 『FLY THE FLAG』

フライ・ザ・フラッグフライ・ザ・フラッグ
ダウン・バイ・ロウ

ビクターエンタテインメント 1999-10-21
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 99年に発表された6作目。イギリス空軍を意識したマークや、ベスパに乗ったジャケットを見てわかるとおり、さらにモッズに傾倒している。“フライ・ザ・フラッグ”や“プロミシング”は、前々作のようなスピーディーで爽快なパンクな曲であるが、それは最初の2曲だけ。あとは“ナッシング・グッド・オン・ザ・レディオ”や“マン・オン・ナイト”などの、ジャムのようなモッズな曲と、昔のイギリス・ロックな曲がある。変わったところでは、スコティッシュトラッドの“ブレイクアウト”や、日本盤のみのボーナストラックに収録されている“ワイルド・ローヴァー”と“オール・フォー・ミー・クロック”では、カントリーを展開している ベテランバンドになると、ルーツ回帰の傾向にあるが、彼らも同じく古きよき音楽を追求している。でも追求しているのは、円熟味や味わい深さではない。若者のファッションや過去のブームを追求している。そういった意味では、デイヴ・スマイリーの趣味が大爆発している作品だ。

とはいっても歌詞は相変わらずパンクしている。今作では自由がテーマになっているようだ。ここでいう自由とは、闘争によって勝ち取るものだと歌っている。“フライ・ザ・フラッグ”では、<残忍な仕打ちを受け、思い知らされたけど、俺は生き残ってやる>と自らの自由について歌い、“ナッシング・グッド・オン・ザ・レディオ”では、<バック・ストリート・ボーイズやボーイズⅡメンなどの、あんなクソみたいな曲は二度と聴きたくない>と、ラジオのミュージック番組を批判し、いいものはいい悪いものは悪いと表現の自由について歌っている。そして“ブレイクアウト”では、<スコットランド、アイルランド、ウエールズは解放されなくてはいけないと、>独立国家の紛争について、弱者を支持する立場で歌っている。社会情勢から、自分の内面、世間に対して反抗的で、アンダーグラウンド志向にいたるまで、あらゆる形の自由が提示されている。

 全盛期の魅力だったスピーディーで爽快なダウン・バイ・ロウのサウンドが失われてしまったのは残念だが、世間に対して反抗的で、熱血漢でガッツに満ち溢れているパンクスピリットは失われていない。そのパンクスピリッとがなによりもこの作品の魅力だろう。

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ダウン・バイ・ロウ 『ラスト・オブ・シャープシュ』

Last of the SharpshootersLast of the Sharpshooters
Down By Law

Epitaph / Ada 1997-08-28
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 97年発表の5作目。この時期はアイデアが泉のように溢れた時期だった。だから前作から1年という短いスパンの間に、これだけの数の曲が作れたのだろう。重く荒々しいギターサウンドと、ジェロ・ビアフラを取り入れたボーカルスタイルは、前作と変わらない。だがいわゆるメロディック・パンクな曲は少なくなり、ロックをベースにしている。全体的に精神的な勢いとスピーディーな曲はなくなり、じっくり聞かせるミドルテンポの曲が増えた。しかもコテコテのアメリカンサウンドから、イギリス・ロックに変貌。狭い範囲ではあるが、違ったジャンルの音楽に手を出している。そういった意味では、バラエティーに富んだ作品に仕上がっている。

 その音楽的なバラエティーの豊かさを説明すると、“コール・トゥ・アームズ”では、ザ・ジャムのようなモッズを取り入れ、“ゲット・アウト”では、クラッシュのような初期パンクを展開している。“アーバン・ナパーム”はレゲェーな曲。“ノー・ワン・ゲッツ・アウェイ”はゴズのような曲である。“ノー・イコライザー”のようにダグ・ナスティーに近いサウンドの曲もあるが、総じてモッズ系のロックから、レゲェー、ゴズなどニューウェーヴと、イギリスのロックに傾倒している。

 イギリス音楽を嗜好している反面、歌詞は反アングロサクソン的な内容が多い。“USA・トゥディ”ではアメリカが仕掛ける戦争を非難し、“アーバン・ナパーム”では黒人と白人の不毛な争いにやるせなさを感じている。“ゲットアウト”では、北アイルランドへ侵略したアングロサクソンを標的に、非難している。前作までの、身近な日常で起こったイライラした感情をぶちまけている内容から、世界情勢に目を向け、もっと考えた上で、批判の言葉を述べている。日常的な出来事が世界へと、視野が広がった。そういった意味では、落ち着いたサウンドを含め、大人になった印象を受ける。

 今作は初期衝動よりも、サウンドへのこだわりを見せたミュージシャンを趣向を作品だ。その音楽に対するバラエティーの豊かさを求めたため、初期衝動と爽快な楽しさは薄れた。じっくり考えさすような感情が支配し、全体的に落ち着いてしまった印象を受けた。彼らの本来のよさである熱血漢な衝動と青空のような爽快さがなくなってしまったのは残念だ。ただ、アングロサクソンが作ったモッズをベースにしたロックへの羨望と、搾取を続けてきたアングロサクソンへの怒りからは、矛盾を感じ、そのひねくれた感じがなんともパンクらしさを感じた。

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DOWN BY LAW 『All Scratched up!』

オール・スクラッチド・アップ!オール・スクラッチド・アップ!
ダウン・バイ・ロウ

エピックレコードジャパン 1996-03-28
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 96年発表の4作目。彼らの最高傑作はこの作品。ギターは弾丸のような勢いのギターコードが飛び散る爽快な汗のようなメロディーに変わっていくギタースタイルを確立させ、ボーカルもジェロ・ビアフラのような早口で捲くし立てるような歌い方を、デイヴ・スマイリーの力強い歌声に取り入れ、オリジナルなボーカル・スタイルを完成させた。パンク以外のアメリカ民謡や早口のハードコアなどの歌い回しを取り入れている。それが彼らしかありえない独特のスタイルのメロディック・パンクを確立した要因なのだ。

 今作では前作とはまた違ったスタイルのメロディック・パンクを展開している。前作の3コード、8ビートのメロディック・パンクから、スピーディーなハードコアを取り入れ、さらに爽快でスピード感の増したサウンドに仕上がった。サウンドもさることながら、とくにコーラスワークがすばらしい。“チープ・スリル”では、ささやくようなコーラスを取り入れ、“トゥルー・ビリーバース”は、コーラスのみで曲を完成させている。そして“グルーサム・ゲイリー”では、海兵隊のようなコーラスなどがある。そのバラエティーにあふれるコーラスには、みんなが肩を組んで盛り上がるようなノリのよさがある。気持ちを高揚させ、元気をあたえてくれるコーラスだ。そこには怯えて立ち止まっていた自分の背中をドンと押すような、爽快な活力がある。青空のような爽やかなメロディーと、勢いにあふれたガッツと気合。それがこの作品の魅力なのだ。

 社会批判やパンクのあり方について語った歌詞も健在だが、今作ではもっとパーソナルな内容が目立つ。たとえば“オール・アメリカン”では、16歳のころマイナースレットに出会いパンクに目覚め、いまではスケボーを楽しんでいると歌い、“グルーサム・ゲイリー”では、ゲイリーといういじめっ子が、警察に捕まり周りに嫌われいく話について歌っている。“ケヴィンズ・ソング”では、強者イスラエルによって攻撃されるパレスチナの悲惨な現状や、IRAに加わり殺された知人へのやり切れない思いや、国家のために戦争に行き戦うことへのばかばかしさを歌っている。自分の感じたことや実際にあった出来事を歌詞にしている。相変わらずデイヴ節は健在で、サウンドに劣らず血を滾らすような内容だ。

 なおLP盤は、2枚組みで、6曲多く収録されている。なかにはフェイス・トゥ・フェイスやサムマイムなどが参加したコンピレーション『ウエストxノース―サウス 』に収録された名曲、“ダグパンク”が入っている。CD盤にはLP未収録の9とゴーストトラックの2曲が追加されている。

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