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ダウン・バイ・ロウ 『ラスト・オブ・シャープシュ』

Last of the SharpshootersLast of the Sharpshooters
Down By Law

Epitaph / Ada 1997-08-28
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 97年発表の5作目。この時期はアイデアが泉のように溢れた時期だった。だから前作から1年という短いスパンの間に、これだけの数の曲が作れたのだろう。重く荒々しいギターサウンドと、ジェロ・ビアフラを取り入れたボーカルスタイルは、前作と変わらない。だがいわゆるメロディック・パンクな曲は少なくなり、ロックをベースにしている。全体的に精神的な勢いとスピーディーな曲はなくなり、じっくり聞かせるミドルテンポの曲が増えた。しかもコテコテのアメリカンサウンドから、イギリス・ロックに変貌。狭い範囲ではあるが、違ったジャンルの音楽に手を出している。そういった意味では、バラエティーに富んだ作品に仕上がっている。

 その音楽的なバラエティーの豊かさを説明すると、“コール・トゥ・アームズ”では、ザ・ジャムのようなモッズを取り入れ、“ゲット・アウト”では、クラッシュのような初期パンクを展開している。“アーバン・ナパーム”はレゲェーな曲。“ノー・ワン・ゲッツ・アウェイ”はゴズのような曲である。“ノー・イコライザー”のようにダグ・ナスティーに近いサウンドの曲もあるが、総じてモッズ系のロックから、レゲェー、ゴズなどニューウェーヴと、イギリスのロックに傾倒している。

 イギリス音楽を嗜好している反面、歌詞は反アングロサクソン的な内容が多い。“USA・トゥディ”ではアメリカが仕掛ける戦争を非難し、“アーバン・ナパーム”では黒人と白人の不毛な争いにやるせなさを感じている。“ゲットアウト”では、北アイルランドへ侵略したアングロサクソンを標的に、非難している。前作までの、身近な日常で起こったイライラした感情をぶちまけている内容から、世界情勢に目を向け、もっと考えた上で、批判の言葉を述べている。日常的な出来事が世界へと、視野が広がった。そういった意味では、落ち着いたサウンドを含め、大人になった印象を受ける。

 今作は初期衝動よりも、サウンドへのこだわりを見せたミュージシャンを趣向を作品だ。その音楽に対するバラエティーの豊かさを求めたため、初期衝動と爽快な楽しさは薄れた。じっくり考えさすような感情が支配し、全体的に落ち着いてしまった印象を受けた。彼らの本来のよさである熱血漢な衝動と青空のような爽快さがなくなってしまったのは残念だ。ただ、アングロサクソンが作ったモッズをベースにしたロックへの羨望と、搾取を続けてきたアングロサクソンへの怒りからは、矛盾を感じ、そのひねくれた感じがなんともパンクらしさを感じた。

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