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フェイス・トゥ・フェイス  『スリーコード・アンド・ア・ハーフ・トゥルース』

Three Chords & a Half TruthThree Chords & a Half Truth
Face to Face

Rise Records 2013-04-09
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 13年に発表された7作目。じつに2年ぶりとなる作品。前作と前々作の間が9年空いているのに、今作は2年という短いスパンで発表された理由は、彼らの制作意欲が高まっているからだろう。全盛期である『ビック・チョイス』のころのような切ない疾走感にあふれたパンクな曲こそないが、彼らの歩んできた人生を振り返りながら、そこで得た教訓などを語っている。枯れた円熟味のが加わった、味わい深い作品だ。

 今作では、80年代のニューウェーブよりのロックを中心に、スローテンポな曲が増えた。彼らの特徴であるブルートのようないかついボーカルスタイルこそ健在だが、乾いた響きのノイズギターの曲は減り、4ビートのゆっくりしたリズムを中心に、スカのようなリズムのカッティング・ギターや、掛け合いのコーラスなどを取り入れ、リズムを重視したサウンドに変化した。

 なかでも個人的に好きな曲は“ライト・アズ・レイン”。この曲はアルバム『フェイス・トゥ・フェイス』にある名曲、“ブラインド”の続編といえるブルージーな内容で、心にしみる名曲だ。カラッとサバサバした切なさが魅力だった“ブラインド”と比べると、人生が望んだ方向にうまく進まなかった結末について、これが当たり前なんだと、諦観に彩られた人生の厳しさと寂しさを“ライト・アズ・レイン”では歌っている。そもそも“ライト・アズ・レイン”の意味とは、イギリスでは晴れの日よりも雨の日が多いため、雨が降るほうがかえって正常な天気なんだという意味のことわざだ。陰鬱な気持ちにさせる灰色の空を、正常な天気と言い切るイギリス人らしいブラック・ユーモアを含んだことわざだ。だが雨の日よりも晴れの日のほうが圧倒的に多く、青く突き抜けた空が印象的のカルフォルニア在住の彼らがこの言葉を使ったということは、うまくいかないことのほうが珍しいのに、それを正常と捉えている。そこには多分に屈折した皮肉な意味を含んでいる。

 そしてタイトル曲である“スリーコード・アンド・ア・ハーフ・トゥルース” (3コードと半分の真実)では、まさしくそのタイトルどおり、パンクを通じていままで彼らを慕ってくれたファンについて歌っている。<私が歌う内容には矛盾がある。~あなたは私の歌にたびたび失望した。しかしあなたは、(パンクを通じて)自分自身を見つけた。答えが間違っていても それはあなた欠陥ではない。あなたは私たちの音楽を選んだ。愚かなために。>とファンを突き放したような内容を歌っている。直訳するといささか、卑屈に満ちてファンを嫌っているように思えるが、深読みするとパンクという音楽は愚か者のための音楽で、その言葉を鵜呑みにしたお前が悪いと、言っているようだ。でもそこにはファンが自分たちを慕ってくれたことへの感謝の気持ちを感じるし、俺たちの言葉を信じて行動しても、けっして君たちに負があるわけでもない、といっているようにも思える。

 彼らはパンクと出会い、泣きじゃくるような疾走感あふれる切なさから、悲しみ、自暴自棄へと、その時々に素直に感じた心境を、サウンドに反映させ表現してきた。自分たちのやりたいサウンドを貫き、顰蹙を買い、ファンの数が大幅に減った経験もある。ここではそんなプロセスを経てたどり着いた境地について語っている。その境地とは、人生とは自分の思い通りには行かない。でも半分は満足した人生を送れるということ。そこにはある種の諦めや、開き直った気持ちがある。けっして悲しみや後悔にくれることなく、諦めや開き直りがあったから、自分の人生がハッピーで至福感にあふれていたと振り返られると、彼らの現在の心境を、アルバムを通じて語っている。

 彼らの魅力であった切なく疾走感あふれるパンクな曲はない。そういった意味では、今作もけっして往年のファンの期待を応えたとはいいがたい。でも彼らは自分たちに素直だ。彼らの今の心境が如実に反映されている。だからやりたくない曲はやらないし、やりたい曲は積極的にやる。その素直さが先にあげた“ライト・アズ・レイン”や“スリーコード・アンド・ア・ハーフ・トゥルース”といった名曲を生んだことは確かだ。それがいい部分でも悪い部分でもある。彼らの切実な心境を語った意味ではいい作品であることは間違いない。

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