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シャイ・ハルード 『ザット・ウィズィム・ブラッドⅢ・テンパード』

That Within Blood Ill TemperedThat Within Blood Ill Tempered
Shai Hulud

Revelation 2003-05-20
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 03年に発表された2作目。彼らの個性を確立したのは、この作品。ヘヴィーで重いサウンドだった前作と比べると、ハンマーのように重いリフは裏に引きこもり、メロディーが前面に出ている。絶叫ボーカルと、冷たいメロディーが絡む、新しいスタイルのニュー・スクール・ハードコアを確立した。当時スクリーモが流行っていたが、彼らのサウンドは、けっしてスクリーモではない。シャイ・ハルードのサウンドは、スクリーム(叫び)があるし、冷たいメロディーもある。だからスクリーモと近い部分がある。でもスクリーモではない理由はボーカルの叫び声は、アース・クライシスから発展したインの踏み方で、虐げられたか弱い人間の叫び声というよりも、マッチョな人間が外へ向けて戦っていく闘争心とガッツのあるハードコアをベースにしているからだ。エモにハードロックの要素を融合し、か弱い人間の叫びという精神性のスクリーモとは、アティテュードもサウンドも違うのだ。これは新しいスタイルのニュー・スクール・ハードコアといえるだろう。ちなみにアメリカではメロディック・メタルコアとして語られているそうだ。

 今作では、やはり前EPでのカヴァー経験が大いに活かされている。たとえばヘヴィーで重いサウンドにメロディーを乗せるというアイデアは、バッド・レリジョンやNOFXからインスピレーションを受けているし、“ビーイング・エグゼンプラリー”と“ディス・ソング:フォー・ザ・トゥルー・アンド・パッショネイト・ラヴァーズ・オブ・ミュージック”では、ネガティヴ・アプローチのファスト・コアから影響を受けたスピード感をベースにしている。ニュースクール・ハードコア、メロディック・ハードコア、ファスト・コア、などが混ざり合ったサウンドに、エモーショナルハードコアの静と動のアップダウンや、カオティック・ハードコアの複雑にフレーズが入れ替わる展開、プログレの芸術主義的なメロディーなどを加え、より昇華させている。それが今作で確立した個性なのだ。

 ここで表現してる彼らの世界観とは、人生との闘い。日本語で“その他の動機と美徳の軽蔑”と名付けられた“スコーンフル・オブ・ザ・モティヴ・アンド・ヴァチュー・オブ・アザーズ”では、憎しみは人々に受け入れられるものではなく、慈悲と正反対の作用を及ぼすと歌い、“自分が忘れても構わないと思っても、許されないものがある”と名付けられた“ウィリング・ワンセルフ・トゥ・フォゲット・ワット・キャンノット・アザーワイズ・ビー・フォーギブン”では、楽しかった日々は忘れ去られていくが、痛みや傷痕はけっして消えることがない。傷痕は一生消えないが、痛みを伴わない人生からは、学ぶべきことがないと、辛い経験から得られる代償について歌っている。“2つと20の不幸”と名付けられた“トゥー・アンド・トゥエンティー・ミスフォーチューンズ”では、すべての人々は、ネガティヴな一面を持っている、それは人間が敗北主義的な態度が、自らを不幸にする運命の作成している。ネガティヴな妄想や考えで現実の自分が不幸になった。不幸になった事を恨み後悔する。そして不幸のスパイラルに陥り、無限の不幸地獄から抜け出せない。苦しみに、終わりがなく、2つのネガティヴな考えが、20の不幸を生むと、歌っている。

 そこにあるのは、善悪がはっきりした道徳観をベースにした人生訓。憎しみや憎悪を悪魔と捉え、そういう考えを持っていると、いい人生を送れないと結論付けている。メンバーのなかには、ストレート・エッヂやクリスチャンを信仰している人もいて、バンドに宗教や思想は持ち込まない語っているが、個人的なクリスチャンの道徳観が色濃く出ているように思える。いづれにしろ、怒りや憎悪を悪魔と捉え、自分の人生をかけて戦っていく姿勢は、ハードコアそのものだ。

 この強い意志を感じる熱いサウンドからは、過酷な現実に立ち向かっていく闘争心を与えてくれ、気合が注入される。いい作品だ。



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