プロフィール

  •    宮本 一高         (みやもと かずたか)
                                        音楽ライターを目指しているものです。EAT MAGAZINEやDOLLなどで執筆をしておりました。おもにエモ、ハードコア、スクリーモ、メロディックパンクを中心に取り上げております。自分が感動した音楽を、積極的に紹介していきたいと思いますので、よろしくお願いします。 

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2013年8月

2013/08/31

ザ・ストーリー・ソー・ファー  『アンダー・ソイル&ダート』

Under Soil & DirtUnder Soil & Dirt
Story So Far

Pure Noise 2011-06-27
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 サンフランシスコはイースト・ベイ出身の、メロディック・パンク・バンドの11年に発表されたデビュー作。このバンドの特長は、メロディックパンクの伝統を受け継ぎ、先人たちのサウンドを総括しているところにある。しかもほかのジャンルからの影響は皆無で、メロディック・パンク以外は聴いた事がない思われる。メロディックパンクをとことん追求し、純粋培養したサウンドだ。

 やはりこのジャンルでは先駆者にあたるブリンク182からの影響が強く、そこに青春コーラスやシンガロング・ボーカルを加えている。そこには中期テイキング・バック・サンディからの影響を感じ、ハンマーを振り下ろすような重いリフからは、ニュー・ファンド・グローリーの影響を感じる。断片的に鳴り響くキラキラ・メロディーからは、スターティング・ラインの影響を感じ取る事ができる。メロディック・パンクを徹底的に研究しているのだ。各バンドの良いとだけを取り入れたハイブリットなサウンドだ。

 メロディック・パンクでブレイクしたバンドとは、切ないポップソングをメロディック・パンク化したオール・タイム・ローや、R&Bなどの黒人音楽を消化したフォール・アウト・ボーイなど、他所からのジャンルをうまい事メロディック・パンクの消化したバンドが売れている。

 そういった意味ではさほど目新しいサウンドもったバンドではないが、その世界観がすばらしい。その世界観とは、人生のすばらしさを歌った人生賛歌。キラキラ光るメロディーからは希望に満ち溢れた純粋さを感じる事ができるし、少年のあどけなさが残る熱い歌声のボーカルからは、辛い事があってもへこたれず頑張りぬくガッツを感じる事ができる。カラッと明るくポジティブで人生のすばらしさを歌っている。まさに西海岸の伝統の明るさを受け継ぐ次世代のメロディック・パンク・バンドなのだ。

2013/08/23

Various Artists 『Ground Zero』

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 13年発売の14バンドが参加しているニューヨーク・ハードコア・バンドによるコンピレーションアルバム。収録されているバンドは、ラ・ミスマ、デフォミティ、ノマド、グースバンプス、ブラック・ブート、プットライダ、アナサーズィ、マドラー、サッド・ボーイズ、ブルトガング、クレイジー・スピリット、パディッション、ダーン・オブ・ヒューマンズ、ハンク・ワード&ザ・ ハマーヘッズの14バンドが収録されている。

 このなかで僕が知っているバンドはひとつもなかった。しかもこの作品を聴くまで、ニューヨークには、主流派とは別のハードコアシーンが存在していることすら知らなかった。なによりそのサウンドに驚かされた。個人的な印象としては、ニューヨーク・ハードコアとは、アース・クライシスやヘイトブリードに影響を受けたバンドが、ニューヨークのニュースクール・ハードコアの主流で、都会の洗練された不良の匂いがするマッチョで闘争的なバンドがひしめいているシーンだと思っていた。サウンドもデス声や、アグノスティック・フロントからシック・オブ・イット・オールへと受け継がれ、アース・クライシスへと継承されてきた重厚なギターのリフが中心だと思っていた。

 でもそれは大きな勘違いだった。この作品を聴くと、ここに収録されているバンドでヘイトブリードやアース・クライシスに影響を受けているバンドはまったく存在しない。影響を感じるのはイギリス初期パンクとハードコア。なかにはアタリ・ティーエイジ・ライオットのようなブレイクビーツばりのノイズを垂れ流しているバンドもいる。でも収録されているほとんどのバンドが、カオスUKのようなノイズ・コアなどに影響を受けたバンドばかり。どのバンドもバリバリ響くノイズギターが特長的だ。そのなかでもとくに印象的なのが、女性のヒステリックな金切り声で歌うラ・ミスマや爆撃機のようなノイズ垂れ流しのグースバンプス、野太いベース静かな暴力を表現しているマドラーなどだ。どのバンドも尖り歪みまくっている。日本語で、奇形、隔離されたインディアンの住居、腐敗、殺人など名付けられたバンド名からも分かるように、彼らはメインストリームから隔離され、腐臭と腐敗にまみれたバンドたちの集まりだということが理解できる。すべてのバンドが暴力的で悪意に満ちている。でもそれがカッコいい。

 アース・クライシスたちのシーンが地上とするなら、トラッシュ・トークやAl-Thawaraなどの黒人やムスリムたちによるハードコアシーンはちょっと離れた海中。そして『グランドゼロ』に収録されているバンドたちは、深海に属しているといえるだろう。世間から隔絶され、独自に進化を遂げたバンドたち。名声や金のためにやっていないから、自分たちの好きな過激なサウンドを追求している。まさしくニューヨークの陰の部分を象徴し、さらに暗闇、アンダーグランド中のアンダーグランドのバンドたちなのだ。これはすごい作品だ。

2013/08/19

TRANSPLANTS 『IN A WARZONE』

イン・ア・ウォーゾーンイン・ア・ウォーゾーン
トランスプランツ

SMJ 2013-06-25
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 13年に発表された3作目。今作も過去2作と同じ、ハードコアにヒップホップなどを加えたサウンド。ヒップホップを
全面に出した前作と比べると、今作ではノイズギターが全面に出たパンク・サウンドを展開している。個人的には1stの次に好きな作品。理由はヒップホップの要素が薄れたからだ。ロックサウンドから離れてしまった感のあった前作よりも、今作ではパンクしている。 たとえば“イン・ア・ウォーゾーン”は、ノイズコアのようなサウンドを展開し、“シー・イット・トゥ・ビリーヴ・イット”はラモーンズの1stのような古典的なロックロールをベースにしたノイズギターなサウンド。“カム・アラウンド”はアコースティックギターを中心としたレゲェーの曲。“サムシングス・ディファレント”はヒップホップなサウンドだが、ヒップホップの歌い方を取り入れた曲もあるが、総じてギターを中心としたロック・サウンドを展開している。

 このサウンドはランシドでも作れるのではないかという意見も少なからず目にした。だが、けっしてランシドでは作れないサウンドを展開している。その理由は、サウンドの中心が、あくまでもトラヴィスにあるからだ。ブラストビートの連射されるトラヴィスのテクニックは相変わらず凄いが、ヒップホップは彼の趣味が反映されている 。ギターは、クラッシュの影響が強いランシドと比べると、ノイズギターやヒップホップはトランスプランツ独特のもの。ランシドとは異なるアプローチのパンク・サウンドを展開しているのだ。

 今作では、新しいサウンドを追求しているという意味では、実験性が薄れている。新鮮味も欠けているかもしれない。だがサウンドにはカタルシスがあり、熱くもありながらも明るく爽やか。彼らの魅力が存分に発揮されている作品なのだ。

2013/08/14

TRANSPLANTS 『HAUNTED CITTIES』

ホーンテッド・シティーズホーンテッド・シティーズ
トランスプランツ

ワーナーミュージック・ジャパン 2005-08-24
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 05年発表の2作目。この年にアルバムを発表した理由は、04年にランシドの休止活動があったから。ギタリストのラーズもこの年の暮れにはソロプロジェクトを立ち上げ、アルバムを発表した。そしてブリンク182も04年に解散を宣言した。ティムもトラヴィスもバンド活動をしていなかったので、トランスプランツに活動を専念する事ができたのだ。

 そんな経緯で発表された今作だが、基本的には前作と同じハードコアをベースにしたデジタル・ハードコア。前作の延長上にあるサウンドだ。そこにレゲェなどが加わり音楽性が幅広くなった。今作ではヒップホップに力を入れている。ゲストにヒューストン出身のラッパー、ポール・ウォールを招聘し、本格的なヒップホップを取り入れている。ただちょっと残念だったのが、パンクの曲とレゲェ、ヒップホップな曲が分離しているところ。個人的には“ノット・トゥデイ”や“アメリカン・ガンズ”、“マッドネス”などのノイジーなギターを中心としたパンクな曲は好きだ。だが“ワット・アイ・キャント・デスクライド”、“ドゥームスデイ”、“キラフォニア”などは、パンクとヒップホップの融合というより、ヒップホップやレゲェを全面に出している。パンク激しさやカタルシス、爽快感こそ薄れたが、南の島でバカンスを楽しんでいるような、まったりとした開放感がアルバム全体を支配している。聴いて世の中に立ち向かっていくような熱い気持ちになれる曲こそ減ったが、気持ちをリフレッシュさせるような開放感を求めている人にお勧めの作品。

2013/08/13

TRANSPLANTS

トランスプランツトランスプランツ
トランスプランツ

ソニー・ミュージックジャパンインターナショナル 2002-10-09
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 ランシドのティム・アームストロングと、ブリンク182のドラヴィス・バーカー、スキンヘッド・ロブによる結成されたトランスプランツの02年発表のデビュー作。ティム、トラヴィス、両者ともサイドプロジェクトという事だけあって、ここでは好き放題にやっている。そのサウンドは、ハードコアをベースにしたデジタル・ハードコア・サウンド。ハードコアに、インダストリアルからノイズ、ヒップホップやメタルなどの、いろいろな要素を詰め込んでいる。

 ハードコアを基盤としたサウンドだけあって、基本的にはノイジーでうるさいサウンドだ。メロディーやポップな要素は一切見当たらない。実験的で攻撃的なパンクなサウンドを展開している。だがノイズの隙間を軽快に駆け抜けるヒップホップのピアノはムーディでおしゃれ。そしてティムのカラッと爽やかなボーカルと、トラヴィスのスカッシュを叩くようなドラムテクニックが、ノイジーでうるさいサウンドを、西海岸特有のポップな爽やかさに変貌させている。ダーティーなパンクサウンドを、おしゃれでポップで明るく爽やかに聴かせるティムとトラヴィスのキャラクター。それがこのバンドの魅力なのだ。

 このノイジーなサウンドは、おしゃれでカッコいい。怒りの要素はないが、なによりパンクしている。すごくいいアルバムだ。

2013/08/09

Rival Schools 『FOUND』/ライバル・スクールズ 『ファウンド』

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 13年にダウンロードとヴァイナルのみ発売された3?作目。本来なら、03年から04年かけて2作目として発表する予定だった作品だという。ところが録音したはずのマスターテープが紛失してしまい、しかも追い討ちをかけるようにバンド自体が解散してしまった。ところが11年に復帰作を発表。アルバム製作の過程においてマスターテープが見つかったという。そして失われたアルバムを発表するにいたった。そのアルバムは、見つけたという意味の“ファウンド”と名付けられた。

 そんな紆余曲折を経て発表された今作は、1作目の延長上にあるオルタナティブ・ロック・サウンド。基本的にはウォルターの個性である変則的なリフやトリッキーなギターサウンドを、さらに追求している。ここではさらにギターのエフェクトにこだわり、ワームをかけた歪んだ音やスピーカーの裏側で鳴らされているような音などがあり、そしてスピーカーから出される音が左右交互に入れ替わるなど、いろいろな試みをしている。今作でも相変わらず、一回聴けばウォルターのギターサウンドだと識別できるような個性を放っている。

 個人的にはとても好きな作品。ライバルスクールズの最高傑作として選んでもいいくらい、非常にクオリティーが高い。その理由はウォルターのギタリストとしての個性が遺憾なく発揮されているからだ。11年に発表した復帰作では、インストなどの別の要素からの影響が窺え、ウォルターの特徴的なギターが失われてしまった。この作品では、ウォルターらしさの上に、自分がやりたい実験性をちゃんと消化している。CDで発表しないのか、もったいないと思うくらい、いい出来の作品だ。

 なお11曲目の“ホワイ・キャント・アイ・タッチ・イット”はバズコックスのカヴァーだ。

2013/08/05

リトックス  『YPLL』

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Retox

Epitaph 2013-05-05
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 大手インディーレーベルであるエピタフに移籍し、発表された13年発表の2作目。今作もファスト・コアを中心としたサウンドであることに変わりはない。だが前作よりもギターアレンジさらに詰め込み、カオスな展開になっている。今作で衝動を重視した前作よりも、ギターテクニックにこだわっている。そこにはサイケデリックなメロディーから、不安な気分にさせてくれる警告音のようなギター、重くノイジーな2コードのリフなどの多彩なアレンジを取り入れている。そこに土石流のようなドラミングなどを詰め込んだ。1分半という短い時間のなかで、ギターアレンジや、ドラムのピッチがめまぐるしく変化していく。前作の倍近くいろいろな要素を詰め込んでいる。まさにカオティック・ファスト・コアなサウンドといえるだろう。

 確かに今作では衝動よりも、めまぐるしく変化するアレンジの凝った演奏を重視している。ギターテクニックに力を入れている分、前作よりも音の迫力が薄れた感じを受けるが、毛をむしる前の鳥の生肉をそのまま食べるジャケットさながらの、マッドな衝動は失われていない。今作もいい作品。サウンド面では前作よりも確実に進化している。

2013/08/01

RETOX 『UGLY ANIMALS』

UGLY ANIMALS (アグリー・アニマルズ)UGLY ANIMALS (アグリー・アニマルズ)
RETOX (リトックス)

Ipecac Japan 2011-08-23
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 11年に発表されたデビューアルバム。今作も前作同様にギターサウンドを中心とした1分台の曲ばかりのファスト・コア。そこにメロディーギターが加わり、ノイズギター音の厚みが増している。例えるなら、ロカストの速さとサムガールの挑発的なギターを合わせた作品だ。

 試験的な印象が強かった前EPと比べると格段に音はまとまり、オリジナルティーが確立されている。たとえば分厚いノイズギターは、吐しゃ物を吐き出すような不快な音の塊で、それがめちゃくちゃな手数のドラムビートに乗せ、土石流のように押し寄せてくる。まさしくファスト・カオティック・コアといえるような内容だ。

 技術的にはD-ビートやブラストビートもあり、カッティックギターからノイズギター、ブラッドブラザーズのポストコアや、デッドケネディーズのようなロカビリーを取り入れたハードコアなどが、吐き出した嘔吐物のように、いろんな文様を描きながら異臭を放っている。カオティックでアグレッシブで攻撃的で不快な音。どこにもない新しいハードコアを展開しているし、これはすごい作品だ。

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