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トイッチング・タングス  『イン・ラヴ・ゼア・イズ・ノー・ロウ』

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イン・ラブ・ゼア・イズ・ノー・ロー
トイッチング・タングス

インディーズ・メーカー 2013-08-21
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 13年に発表された2作目。まぎれもなく最高傑作。前EPのメタル化とはうって変わり、ここではハードコア色がさらに強くなっている。個人的にはこの作品を彼らの最高傑作に上げたい。その理由は、静謐の使い方がすばらしいから。

前作にも書いたが、彼らの魅力とはハードコアに、静謐感を融合させたところにある。その静謐とは、葬式のような死者の霊を慰める、深い沈黙。そして静謐の奥には、やりきれない気持ちを抑えるような地底で煮えたぎるマグマのような暴力衝動がある。今作では、死に対する価値観が、さらにヴァラエティーに富んでいる。確実に深化を遂げている。

 たとえば、2曲目の“アイズ・アジャスト”では、息を殺すような緊迫感を紡ぐようなギターのメロディーで始まり、重たく濃厚なギターノイズのリフからブラストビートに流れ込む展開。そこには蛙が蛇に睨まれ、死を覚悟するような緊迫感がある。

 7曲目の“デパーチャー”では、悲しみや無念さといった想いを歌うボーカルに、オリエンタルなギターが絡む展開。軽快なギターとボーカルのみ 自然や運命という大いなる自然の力の前では自分が無力で 逆らうことのできない運命や力の存在に、この世の無常さを歌っているかのようだ。 虚無のような静謐だ。

 9曲目の“フリジット”は、ノイズギターと疲弊しきった歌声で構成される展開。そこには友人の死に立ち会ったときの深い絶望と悲しみがあり、運命に抗うことのできない無力感を感じ、生きることに疲弊しきった歌声が特徴的だ。

 死者を慰めるような深い沈黙、死を覚悟する緊迫感、虚無感を感じる静けさなど、多種多様の静謐があるのだ。それでいて、死神が迎えにくるような死に対する独特な価値観で統一されている。それが最高傑作である所以なのだ。個人的には今年のハードコアベスト10に入る傑作。

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トイッチング・タングス  『プリーチャー・マン』

Preacher Man [Analog]Preacher Man [Analog]
Twitching Tongues

Revelation 2013-08-27
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 12年に発表された3曲入りのEP。1曲目の“プリーチャー・マン”は、ポストハードコアな曲で、②の“フィード・ユア・ダディーズ”はブラストビートを中心としたグラインド・コアな曲。③の“アット・ザ・ギャローズ・エンド”はスェーデンのドゥームメタルバンド、「キャンドルマス」のカヴァー。前作よりもさらにメタル化が進んでいる。

 このEPでは、ずいぶんと成長の跡が感じられる。とくに顕著なのが“プリーチャー・マン”。葬式の厳かな鐘の音で始まり、緊張と静謐をつむぐアコースティックから、激しさのなかに落ち着いた雰囲気を内包したドゥームへと変化していく展開の曲だ。ここではアコースティックからドゥームに変わっていくギターもさることながら、ゆったりとしたリズムからブラストビートに変速していくドラム、絞首台に1歩、1歩、近づいていくような緊迫した空気を紡ぐベースの音など、いろいろなジャンルのサウンドが融合している。

 前作までは、ギター、ドラム、ベースなどの楽器は、ひとつの音楽からの影響をうけていた。そのひとフレーズを、組み合わせるという手法で曲を作っていた。それがこの曲ではドラム、ギター、ベース、ボーカルなどの個々の楽器は、べつ音楽から影響を受けている。個々の楽器が主張しながらも、ひとつにまとまっている。そのグルーヴ感がいい。それが技術的な成長の証なのだ。

 キリスト教への背徳の匂いがぷんぷんするジャケットからも分かるとおり、世界観は今作も前作を踏襲している。彼らのよさを失わず、成長の跡を感じる作品なのだ。

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トイッチング・タングス  『スリープ・ゼアピー』

Sleep TherapySleep Therapy
Twitching Tongues

I Scream Records 2012-03-25
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 11年発表のデビューアルバム。前作のマッド・ボールやリヴィング・ウィットネスからの影響から抜け出し、オリジナルティーを確立した作品。EPから“インサイン・アンド・インヒューマニー”と“ヴァレンタリー・コンファインメント”の2曲が収録され、現時点で彼らの音楽性が集約された作品だ。

 これがじつにいい作品に仕上がっている。基本的には、グルーヴ感あふれるスローテンポのハードコアで、メタルからの影響が強い重厚なリフを中心としたヘヴィーなサウンド。そこに絶望に満ちた静謐を緊迫感でつむぐアコースティックギターや、ブラストビート、土の匂いのする猥雑なカウボーイ・ロックや、コーンの影響を感じる精神が病んだ歌い方などを取り入れ、バラエティー豊かな作品に仕上がっている。そしてこのアルバムのハイライトというべきは、8曲目の“アーム・イン・アルマゲドン・パート1”。ここでは、厳かなピアノの不気味な静けさのサウンドを展開。そこにはまるで死者の無念を沈めるうな深い内省の鎮魂歌がある。歌詞の内容は、死ぬことへの願望と祈り。そこにはすべてをあきらめ、絶望し、死にたいと願っている姿があるのだ。

 死神が眠る美女の後ろに立つジャケットと、睡眠治療と名付けられたタイトルが示す通り、今作のテーマは、死に対する切望と、眠る事によって意識を失い仮死状態になることへの憧れ。そこには死に憧れる病んだ精神世界があるのだ。

 前作の死神という世界観をベースに、そこからさらに死生観を掘り下げている。すばらしい作品である事に間違いはないが、だがここまでくるともはやハードコアではない。その理由は、ハードコア特有の攻撃性や、闘争心がないからだ。これは死の匂いが漂う新型のヘヴィーロックといえるだろう。

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twitching tongues 『Insane and Inhumane』/トイッチング・タングス『インセイン・&・インヒューマネ』

Ttii

 10年ロサンゼルスで結成されたニュースクール・ハードコア・バンドの、11年に発表されたデビューEP。これが面白いサウンドを展開している。マッド・ボールやオンリー・リヴィング・ウィットネスなどのニューヨークやボストン・ハードコアから影響を受けたサウンドを中心に、そこに息が詰まるような緊張と静謐をつむぐアコースティックギターや、変則的なリズムのリフなどを織り交ぜ、彼らしかありえないハードコアを展開している。

 マッド・ボールをさらに発展させたオリジナルティーあふれるサウンドもさることながら、彼らの魅力はその世界観にある。ギャングで不良のハードコアという部分では、マッドボールのアティチュードと共通している。しかしマッドボールよりもさらに死について突き詰めている。その世界観は、ダークでシリアス。まるで死神が迎えに来るような妖艶な雰囲気に満ちている。

 変則的なリズムを刻むギターのリフやスローテンポを重視しているサウンドからは、まだマッドボールの影響を抜け切れていない。彼らの真価を発揮するのは次の作品から。

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ザ・ストーリー・ソー・ファー  『ワット・ユー・ドント・シー』

What You Don't SeeWhat You Don't See
Story So Far

Pure Noise 2013-02-24
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 13年に発表された2作目。メロディック・パンクという基本的な部分では変わりはない。変わった部分といえば、前作よりもキラキラ・メロディーが減り、重いギターのリフと、ボーカルの力強さが増したところか。そのほかの部分ではさほど変化がない。

 それにしても前作では人生のすばらしさを歌ったキラキラした純粋さが魅力であったが、今作では、もっと立ち向かう姿勢が強化されている。相変わらず熱血漢な熱い感情が中心だが、今作ではそこに、大人の魅力を加えている。たとえば“ザ・グラス”ではギターメロディーに力を入れている曲だが、そこにシンガロング・スタイル・ボーカルを取り入れる事によって、熱さのなかにある揺らめくような大人の感情を表現している。明るく前向きな部分をボーカルの熱さが表現し、メロディーが後ろ向きの陰の部分をみごとに表現している。その組み合わせが絶妙で感情の奥深さを表現しているのだ。この作品の魅力は、表現に陰りという大人の部分を取り入れたところだ。彼らの成長を感じる作品だ。


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