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セイヴス・ザ・デイ  『イン・レヴァリー』

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Saves the Day

Dreamworks 2003-09-15
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 03年発表の4作目。前作『ステイ・ホワット・ユー・アー』は、大手インディーレーベル、ヴェイグランドに移籍をはたし、キャリアをステップ・アップさせた作品だった。そして今作では、前作の好セールスが手伝って、ドリームワークスというメジャーレーベルに移籍を果たした。飛躍した前作よりも、さらにキャリアがステップ・アップしたのだ。 たいていのミュージシャンは、メジャー移籍という大きな決断をしたとき、最高傑作の近い、いい作品を作るアーティストが多い。その決断が、大きなプレッシャーとなり、傑作を生むのだ。岐路に立たされたときアーティストは、2種類に分かれる。自分たちの演りたいサウンドを貫き、前作よりも、へヴィーに過激に変化しするパターン。そしてさらにファン層を獲得するため、よりポップに進化するバンドもいる。自分のやりたいサウンドがファンの求めるものを無視して過激に貫くか、迎合するかのどっちかだ。

  彼らが選んだ道は、メジャー化。ここにはメロディック・パンクはない。恋愛のドキドキする感情もない。あるのはトラヴィスや後期スマッシング・パンプキンズなどに影響を受けた、ミディアムテンポ、ビューティフル系のオルタナティヴ・ロック。音楽性そのものが180度、変化したのだ。

 ここではビューティフル・エモの先駆けとなる、美しくも儚いサウンドを展開している。たとえば“エニィホエアー・ウィズ・ユー”では、ノイジーなギターがカッコいい、アメリカン・ギターポップ・サウンドを展開している。“ワット・ウェント・ロング”では、メランコリー神経質なメロディーとコーラスが特徴的で、心の痛みを優しくなでるような歌声が印象的だ。“ドライヴィング・イン・ザ・ダーク”では、秋の木枯らしのような寒々としたシンセの音と、秋の落ち葉と古いアンティークな家具を感じさせるメロディーが、物憂げで繊細な作り物のようで、とてもすばらしい。“エニィホエアー・ウィズ・ユー”から“ドライヴィング・イン・ザ・ダーク”へと続く流れが絶妙で、すばらしい。聴くものに深い感動を与えてくれるのだ。そしてとくにすばらしいのが、コンリーの歌声。鼻声を利かせ、まろやかに柔らかく弱々しく優しい。それがアルバムの中心となり、メランコリーで儚く、美しく、優しさと悲しみに満ちた世界観をより際立たせている。コンリーは後日のインタビューで人生で一番ダークな時期に作った作品だと振り返っている。メジャー移籍というプレッシャーと辛い気持ちが、最高傑作を生んだのだ。

 日本ではこの作品に対する評価が高い。このサウンドをベースにバンド活動をしている日本のエモ系ビューティフル・バンドも存在したりする。彼らの最高傑作として高い評価を得ている。それほど、すばらしい作品なのだ。だがアメリカでは評判が悪い。その理由は、メロディック・パンクを捨て、ノリの悪いオルタナティヴ・サウンドに変化したからだ。彼らは商業主義に走ったとさえ、評価されている。セイヴス・ザ・ディというバンドイメージである、学生時代の恋愛のドキドキする気持ちを捨て、悲しみに満ちたサウンドに変化した。その繊細でメランコリックな悲しみが、アメリカ人には受け入れられなかったようだ。

 だが果たして本当に商業主義に走ったのだろうか?ぼくはそうは思わない。たしかに彼らはメロディック・パンクを捨て、恋愛のドキドキする気持ちを表現することをやめた。過去の彼らのサウンドとアティチュードとは決別をした作品だが、はたしてそれが悪いことなのだろうか?このメランコリックで美しく優しさに満ちた悲しみは、聴くものに感動を与えてくれる。それがポップ・ソングであったとしても、決して悪いことではないのではないか。大切なのは良い作品なのか否か。正直言えば、前作までは、――ボーカルと湿ったメロディーが特徴的だとはいえ――それほど、オリジナルティーにあふれた作品ではなかった。ここまで感動することもなかったし、美しいと感じることもなかった。それが今作ではその評価を得ている。それ自体、決して悪いことではないのではないか。たしかに彼らのキャリアのなかでは、異作といえる作品だが、すばらしい傑作だ。

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