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SAVES THE DAY 

Saves the DaySaves the Day
Saves the Day

Equal Vision Records 2013-09-22
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13年発表の8作目。前作は<自分探し>という壮大なテーマのもと、自分たちの伝えたい感情を、サウンドで表現していた。セイヴス・ザ・ディというバンドを一言でまとめるなら、子供から大人になる過程を、感情論や教訓、導き出した答えなどの歌詞を交え、サウンドに仮託し伝えていたバンドである。いうなら自分たちの伝えたい気持ちが先行していたバンドであったのだ。

いままで表現してきた感情とは、学生時代の恋愛のドキドキ感から、ノー天気な明るさ。3作前からは、自分探しという壮大なテーマがあった。孤独と怒りを経て、反省と後悔をし、怒りや悲しみ、恥辱を、あるがままに受け入れた。受け入れたことによって、愛を手に入れることだできた。それが自分探しで得た答えだった。前作で自分探しの答えが見つかったためなのか、今作では、自分を表現したいという欲求よりも、音へのこだわりに目覚めている。

新たなスタートを切った今作では、ビューティフルなサウンドに徹底的なこだわりを見せている。サウンドの基盤となっているのは、サニーディ・リアル・エステイトやザ・スミスのようなビューティフル系のエモとギターポップ。なかにはバラードもある。とくに美しさを感じるのは、“ビヨンド・オール・オブ・タイム”と“エイント・ノー・カインド・オブ・ラヴ”。エイント・ノー・カインド・オブ・ラヴ”では、曲の最後を閉めくるるイントロが、舞い散る桜のような儚さと切ないさを感じるメロディーが印象的。そして“ビヨンド・オール・オブ・タイム”では、夏の日の真っ赤な夕日の美しさを連想させるメロディーがあり、真夏のけだるさや倦怠感といった陰の部分がある。コリンの透明な美声も、柔らかく穏やかに歌われていて、丁寧に作りこまれている。全体的に幻想的で明るいメロディーの曲が多いが、その2曲に代表されるように、けっして明るさ一辺倒の表面的なメロディーではない。その奥の部分に黄昏や刹那的な儚さといった陰の部分を感じる。そこには、楽しかった日々が刹那のように通り過ぎて、すべてが幻だったかのような印象を受ける。

 いままで彼らが表現してきた感情と比べると、明るさの裏に落ち着いた感情があったり、華やかさのあとに訪れる淡く儚い感情などの、2面的な部分ある。今まで怒りや悲しみなどの直情を歌っていた彼らからすると、この奥深さには、表現力の進歩や人間的な成長のあとを感じる。

 2面以上ある奥深い表現と、ビューティフルなサウンドに対するこだわり、その2つの要素が、今までの作品とは違った印象を与えている要因であり、バンドが新しく生まれ変わった理由なのだ。だからこの作品のタイトルに、自らのバンド名を冠したのだろう。それほど、すべての面でリニューアルされている。

 今まで彼らには、一貫して満たされない想いがあった。それもなくなり、感情論として達観した印象を受ける。だからアティテュードからサウンドのこだわりにシフトしたのだろう。といっても、音楽への情熱は少しも薄れていない。すぐに消え忘れさられてしまうような、桜が舞い散る淡く儚い美しさはすばらしい。これはこれでいい作品だ。

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SAVES THE DAY 『DAYBREAK』

デイブレイクデイブレイク
セイヴス・ザ・デイ

ビクターエンタテインメント 2011-09-06
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 11年発表の7作目。自分探し第3弾。最終章となる今作のテーマは、受け入れること。当初、この作品は08年に発表予定であった。だがレーベルの移籍やメンバーチェンジなどのトラブルが生じてしまい、発表が3年延びてしまった。

 とくにメンバーチェンジは深刻で、10年間在籍をし、ギターメロディーを担当していたデヴィットを含め、クリス以外のメンバーはすべて代わった。一度作った作品を、新たなメンバーで、再度、録り直したそうだ。一見ものすごいトラブルがあったように思われるが、クリス自身、このメンバーチェンジを前向きに捉えている。その理由は、前メンバーでのレコーディングが、しっくりこなかったから。メロディック・パンクなギターが持ち味のデヴィットとは違い、新メンバー、アランのギターセンスは、インディーロックやオルタナに影響を受けたサウンド。ギターセンスが違う新しいメンバーが加入したことによって、新鮮さをもたらし、理想のサウンドに仕上がったという。2年前にリリースしていたら、こんなにいいアルバムにはならなかったと、クリスは後日のインタビューで語っている。メンバーチェンジとレーベル移籍というトラブルが、アルバムに熟成期間を与えてくれたのだ。

 そんなプロセスを経て完成した今作は、『イン・レヴァリー』の延長上にあるナイーヴな悲しみに満ちたオルタナティヴなサウンド。そこにグリーンディの『アメリカン・イデオット』のようなパンクオペラや、フランメコギターや、オルタナティヴな実験的なメロディーなど、新しい要素が加わった。“ディレンジド&デスペレイト”では、警告音のようなメロディーを導入し、今までにない新しい展開で、新メンバーであるアランの個性が遺憾なく発揮されている。

 歌詞は、彼女と別れや、再会、そしてよりを戻すという順番で、曲は展開していく。まず始めの1曲目のパンクオペラの“デイブレイク”では、これまでの3部作を総括した内容で、彼女が去って心にぽっかりと開いた心の空白と苦しみをアルコールで紛らわしている。そこから心を掻き乱されるような苦しみを経て、時間がたつにつれ、傷口をなでるような落ち着きと優しさを取り戻し、悲しみを受け入れ、立ち直っていくという、物語を展開している。

 そしてアルバム後半の8曲目の“リヴィング・ウィズアウト・ラヴ”では<俺たちは道に迷っている。引き裂かれ、褒め称え、批判する>と、彼女と別れた時期は、自分を見失っていたと、結論付けている。苦難を乗り越え、自分の気持ちが天気が晴れたような、清々しさとともに、劇的な結末を迎えていく。

 今作のテーマである、受け入れることとは、苦しみや孤独などのすべてを自らの中に受け入れることだなのだ。そして第1章の怒りと、第2章の反省と後悔を経て手に入れたものとは、愛だったのだ。愛とは隙の延長上にあるものではなく、相手のいやな部分や欠点も受け入れること。達観した感情のことなのだ。この3部作の自分探しの答えとは、愛にあったのだ。

 彼らが探していた答えが見つかったという影響もあると思うが、アルバムの後半では特に晴れ晴れとした感情があり、今まで彼らにあった満たされない思いが解消されている。挫折や苦難を経て、彼らが大人になった姿がある。それがこの作品の魅力なのだ。

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セイヴス・ザ・デイ  『アンダー・ザ・ボーズ』

Under the Boards + DVDUnder the Boards + DVD
Saves the Day

Vagrant 2007-11-05
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 07年発表の6作目。自分探し第2弾。今作のテーマは、反省と後悔。前作は孤独と怒りといった感情を、初期パンクサウンドに叩きつけ、自分の内面を見つめ直していた。今作では、ミディアムテンポのメロディック・パンクがひさびさに復活している。

 今作では、メロディックパンク中心のサウンドだが、そのほかにもバラードや、スミスのようなギターポップな曲、エモーショナル・ハードコアのような静寂と激しさがアップダウンしていく曲など、バラエティーに富んだサウンドを展開している。メロディック・パンクな曲の“ゲット・ファックド・アップ”では、健やかなアメリカン・ポップからの影響がうかがえる。メロディック・パンクの3作目と比べると、リフレインするコーラスやメロディーなどの新しい要素が加わっている。その部分に彼らがどのようにステップアップしてきたのか成長の軌跡が伺える。

 そしてこのアルバムでとくに印象深いのがバラード。“ロンリー・ナイツ”は、素朴なピアノのバラードで、アルバムジャケットのように、夜空を見上げ、自分の悩みがちっぽけに思えてしまうような広大な世界がある。また“ステイ”は、牧歌的なフォークギターを中心としたバラード。自然をフィーチャーしたアンビエントな要素を加え、インティーロックを展開している。ドロドロとした怨情を激しいノイズギターに叩きつけている“ウォウ”と“ターニング・オーバー・イン・マイ・トゥーム”では、エモーショナル・ハードコアのような展開で、激情から静けさに包まれた落ち着いた感情へトーンダウンしていく。いままでにないノイジーで実験的なサウンドを展開している。サウンド的には今作では、いろんなことに挑戦している。それが今作の特徴だ。

 歌詞も前向きな曲から、悲哀や慈悲など、多彩な感情を表現している。“アンダー・ザ・ボーズ”では<真意とは逆の邪悪な言葉を口走り、嫌われいく自分を殺してしまいたい>と、自己嫌悪な気持ちについて歌い、“ゲット・ファックド・アップ”では、<この星がみんな僕の心に舞い降りてくるのを、窓越しに見つめた日々は遠い昔になってしまった>と、彼女との楽しかった思い出について歌っている。“バイ・バイ・ベイビー”では、<バイバイベイビー、この愛ではダメなんだ>と、恋愛の終焉について歌っている。ドロドロとした内面の怨情や、孤独で惨めな気持ち、自嘲、やさしさ、慈しみ、思いやりなど、前向きな感情から負のネガティブな感情まで、じつに多彩でバラバラ。いろんな感情を感じながらも、すべて反省と後悔で統一されている。弱さも、汚らしさも、いやらしさもさらけ出した、人間味が溢れた作品といえるだろう。

 だが、いろんなことにチャレンジしすぎて、まとまっていない印象を受けた。感情のベクトルもいろんな方向に向かっているため、情念が定まっていない印象を受けた。個人的には悲しみなら悲しみだけ、怒りなら怒りだけど、一方向の感情で統一された、前作と前々作のような作品を作って欲しかった。そのほうが勢いも出たし、よかったのではないかと思う。だが、この作品の魅力は、現状に満足せず、新しいことにチャレンジしていく姿勢だ。なぜなら彼らの作品には全作品を通して、一貫して満たされない思いがあった。それがいままで精神的な部分だとぼくは思っていたが、ここではその思いが音楽の完成度に対して満足していないようにも感じに思えた。それがセイヴス・ザ・ディというバンドを、現在でも続けているモチベーションになっているのかもしれないとも感じた。そういった意味では、彼らの本質を垣間見れた作品ではないか。

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セイヴス・ザ・デイ  『サウンド・ジ・アラーム』

Sound the AlarmSound the Alarm
Saves the Day

Vagrant Records 2006-04-10
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 06年発表の5作目。前作『イン・レヴァリー』は(個人的には最高傑作だと思うが)、メロディック・パンクを捨て、ギターロックに路線を変更した作品だった。なぜいままであれほど拘りを持っていたメロディック・パンクを捨て、路線変更したのか、いまいちその理由が、よく分からなかった。

 その気持ちは、彼らも同じであったようだ。後日のインタビューで彼らが語っているように、メジャー移籍という過度なプレッシャーのため、自分たちは何をやりたいのか、どういった感情を表現したいのかと、プレッシャーと混乱のなかで、本来の自分を見失っていたようだ。それに加え、この時期クリスは、プライベートでも彼女との破局を迎え、精神状態が最悪だったという。2つの不幸が重なり、完全に自分自身を見失っていたという。おそらくガラスのように繊細でナイーブな悲しみという心境が、あの作品を作らせたのだろう。

 そして、今作では3枚続くアルバムの共通テーマに、自分探しを選んだそうだ。その第一部となる今作では、孤独と怒りにスポットを当てている。ここでも最悪な精神状態のまま、アルバムは制作している。今作では原点回帰のメロディック・パンクなサウンドだ。とはいっても、メロディック・パンクのようなポップさは、まったくない。あるのは初期パンクやニューウェーヴからの影響を感じる荒々しいサウンド。激しい怒りを叩きつけるような荒々しいコードギター。苛立ちを加速し疾走していくドラムのビート。ブンブンうねりを上げるベースの低音。ダークでヘヴィーな色彩を帯びたギターメロディー。やさしくも苦痛さを感じるメロディックな歌声。そこには苛立ちや焦り、自暴自棄といった感情が、アルバム全体を支配している。

 “ジ・エンド”(終わり)では、<まさに生き地獄、終焉に対面するときが来た>と歌い、屈辱と陵辱いった感情に対し、逃げず立ち向かおうとしている。“ディズィースト”(病的な)では、<何かがおかしい、疲れているのに眠れない~自分がいつ死ぬのかと考える>と、精神が病んだ自分の心境を歌っている。そこにはもがき苦しみながらも、回復することのない絶望や無力さがある。“ダイイング・ディ”(死ぬ日)では、<すべてのものを道すがらで失ってきた~もう一度チャンスが欲しいだけ~無駄な人生は昨日生き返った>と歌っている。そこには、すべてを失い、絶望のふちに立たされた自分がいる。過去に築いてきたものを捨て、また新しくゼロから始めようとしている。心は傷つき疲弊しながらも。

 全体的に外へ向けた怒りというよりも、自分自身の内面に対する葛藤が多い。心の救済を求めて、だれも助けてくれず自暴自棄に陥った姿だ。その抗うことのできない絶望に陥っている姿は、痛々しくも息苦しい。

 個人的には前作の次に好きな作品だ。その理由は、この尋常でない切迫感に満ちたエモーショナルが、すばらしいいいから。なにより、ヘヴィーでダークなメロディーとギターコードの混ざり具合は、全作品中、最高の完成度ではないか。メロディーの完成度と精神性が、高い位置で交錯している。人間、ハッピーな心境よりも、不幸な状況のほうがいい作品を作れる。それを証明した作品だ。

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