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セイヴス・ザ・デイ  『サウンド・ジ・アラーム』

Sound the AlarmSound the Alarm
Saves the Day

Vagrant Records 2006-04-10
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 06年発表の5作目。前作『イン・レヴァリー』は(個人的には最高傑作だと思うが)、メロディック・パンクを捨て、ギターロックに路線を変更した作品だった。なぜいままであれほど拘りを持っていたメロディック・パンクを捨て、路線変更したのか、いまいちその理由が、よく分からなかった。

 その気持ちは、彼らも同じであったようだ。後日のインタビューで彼らが語っているように、メジャー移籍という過度なプレッシャーのため、自分たちは何をやりたいのか、どういった感情を表現したいのかと、プレッシャーと混乱のなかで、本来の自分を見失っていたようだ。それに加え、この時期クリスは、プライベートでも彼女との破局を迎え、精神状態が最悪だったという。2つの不幸が重なり、完全に自分自身を見失っていたという。おそらくガラスのように繊細でナイーブな悲しみという心境が、あの作品を作らせたのだろう。

 そして、今作では3枚続くアルバムの共通テーマに、自分探しを選んだそうだ。その第一部となる今作では、孤独と怒りにスポットを当てている。ここでも最悪な精神状態のまま、アルバムは制作している。今作では原点回帰のメロディック・パンクなサウンドだ。とはいっても、メロディック・パンクのようなポップさは、まったくない。あるのは初期パンクやニューウェーヴからの影響を感じる荒々しいサウンド。激しい怒りを叩きつけるような荒々しいコードギター。苛立ちを加速し疾走していくドラムのビート。ブンブンうねりを上げるベースの低音。ダークでヘヴィーな色彩を帯びたギターメロディー。やさしくも苦痛さを感じるメロディックな歌声。そこには苛立ちや焦り、自暴自棄といった感情が、アルバム全体を支配している。

 “ジ・エンド”(終わり)では、<まさに生き地獄、終焉に対面するときが来た>と歌い、屈辱と陵辱いった感情に対し、逃げず立ち向かおうとしている。“ディズィースト”(病的な)では、<何かがおかしい、疲れているのに眠れない~自分がいつ死ぬのかと考える>と、精神が病んだ自分の心境を歌っている。そこにはもがき苦しみながらも、回復することのない絶望や無力さがある。“ダイイング・ディ”(死ぬ日)では、<すべてのものを道すがらで失ってきた~もう一度チャンスが欲しいだけ~無駄な人生は昨日生き返った>と歌っている。そこには、すべてを失い、絶望のふちに立たされた自分がいる。過去に築いてきたものを捨て、また新しくゼロから始めようとしている。心は傷つき疲弊しながらも。

 全体的に外へ向けた怒りというよりも、自分自身の内面に対する葛藤が多い。心の救済を求めて、だれも助けてくれず自暴自棄に陥った姿だ。その抗うことのできない絶望に陥っている姿は、痛々しくも息苦しい。

 個人的には前作の次に好きな作品だ。その理由は、この尋常でない切迫感に満ちたエモーショナルが、すばらしいいいから。なにより、ヘヴィーでダークなメロディーとギターコードの混ざり具合は、全作品中、最高の完成度ではないか。メロディーの完成度と精神性が、高い位置で交錯している。人間、ハッピーな心境よりも、不幸な状況のほうがいい作品を作れる。それを証明した作品だ。

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