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ア・デイ・トゥ・リメンバー  『ホームシック』

Homesick (Bonus Dvd) (Reis) (Dlx)Homesick (Bonus Dvd) (Reis) (Dlx)
A Day To Remember

Victory Records 2009-10-04
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 09年に発表された3作目。彼らの最高傑作はこの作品。メタルコアをメロディック化した前作よりも、さらにポップに進化し、飛躍を遂げた。今作ではニュー・ファウンド・グローリーのチャドがプロデュースしたことによって、今までの作品とは異なるアイデアが盛り込まれている。そのアイデアとは、メロディック・パンクにデスメタルの要素を取り入れたサウンド。今作ではより進化した部分に、サウンド・フォーマットの違いにある。前作まではスクリーモをベースにしたサウンドで、メロディー側にキラキラ・メロディーや映画音楽からのメロディーなどを取り入れ、ほかのバンドとの違いを見せていた。いうならスクリーモの静(メロディック・パート)と動(スクリームなどの激しいパート)のアップダウンを繰り返すサウンド・フォーマットの、メロディー側を改築したサウンドだったのだ。

 それが今作では、メロディック・パンクをベースにし、そこにメタルコアのリフやデス声などを取り入れている。とくに歌メロの部分では、メロディック・パンクやニューウェーヴからの影響を色濃く感じる。サウンドのベースにしているのは、フォール・アウト・ボーイやニュー・ファウンド・グロリー系のメロディック・パンク。とくに“ハヴ・フェイス・イン・ミー”の星空のような神秘的で暗く陰りのあるメロディーでは、フォール・アウト・ボーイからの影響を感じるし、“nj・レギオン・アイス・ティー ”では、青空のような明るいメロディーと重厚なリフや青春コーラスからは、ニュー・ファウンド・グローリーの影響を感じる。

 そしてそのなかでもこのアルバムのハイライトというべき“ホームシック”では、熱く激しいデス声のサビから始まり、切なく繊細なメロディーへと流れていく展開。そこには、激情に身を任せたケンカを経て、失っていく家族の崩壊を歌っている。怒りや憎しみすれ違いを経て失ってしまった家族に対する後悔や楽しかったころ振り返り、栄華を失う儚さなどが今作のテーマになっているようだ。

 ここではスクリーモ・バンドに多い静と動とのアップダウンや、強さと弱さや醜さと美しさといった二律背反や対比といったサウンドや感情はここにはない。感情が一番あがってくるサビの部分にデスの咆哮やときには美しいメロディーを持ってくることによって、ナイーブさや、悩みなどの悶え、儚さや寂しさといった感情をさらに強調している。いうなら甘いものに塩を振り、甘さをさらに際立たせるような手法だ。メタルコアやデスメタルなどの激しさや重厚さなどを、デフォルメされた感情として表現し、すべてをポップ側に引き寄せている。それが今作でア・ディ・トゥ・リメンバーが確立した個性なのだ。

 ヘヴィーなパートを入れてもポップに聴かせる手法は、日本のバンドでたとえるなら初期9ミリ・パラグラム・バレットによく似ている。彼らはJポップをベースに、カオティック・コアやブレイクビーツなどのヘヴィーなサウンドを取り入れている。もちろん9ミリとはサウンド自体の影響や方向性、表現している世界観や感情もまったく異なるが、ヘヴィーなサウンドをポップに聴かせるセンスは似ているところを個人的には感じる。

 だが切迫感や疾走していくスピーディー感、エモーショナルな衝動がないため、9ミリのようなテンションの高さはないのが欠点だが、メタルコアのパンク化という新たの個性を確立したのは事実。怒りや憎しみから悲しみや寂寥に変化していく展開がすばらしい作品だ。

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ア・デイ・トゥ・リメンバー  『フォー・ゾウズ・フー・ハヴ・ハート』

For Those Who Have Heart (W/Dvd) (Reis)For Those Who Have Heart (W/Dvd) (Reis)
A Day To Remember

Victory Records 2008-02-18
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 07年に発表された2作目。メタルコアのメロディック化という個性を確立したのはこの作品から。基本路線であるスクリーモやメタルコアに、メロディック・パンクを加えたサウンドに変わりはない。今作ではメロディー側にメロディック・パンクからの影響がさらに強くなり、よりポップで聴きやすいサウンドに深化した。映画音楽からの影響こそ薄れたが、メタルコアのポップ化がさらに進んでいる。

 今作ではメタルコアのポップ・パンク化という彼らの個性が遺憾なく発揮されている。たとえば“スピーク・オブ・ザ・デビル”では、スピーディーで爽やかなメロディック・パンクに地獄のうめき声のようなデス声が絡む展開で、疾走感のなかに切なさが漂い、デス声とともに切ない感情が行き場のない怒りへと変わっていく。“モニュメント”では、ジミー・イート・ワールドのような野太いギターとキラキラメロディーを中心に、そこにデスメタルのデス声や重いリフ、メロディック・パンクの青春コーラスが絡み、明るさや、暗さ、純粋さがめまぐるしく変わる展開で、まさに情緒不安定を表しているような混沌がある。

 いままでニュー・スクール・ハードコアやスクリーモ、絶叫や怒声にメロディーを取り入れたバンドは数多くいた。だから厳密な意味で言えば彼らは先駆者ではない。だがそのバンドたちと違い、ア・ディ・トゥ・リメンバーが、この作品で2万部を売り上げ、人気が出た理由は、そのサウンドに引き込まれるような聴きやすさにある。

 彼らのメロディーは透明で爽やかではあるが、総じてシリアスで切なく憂鬱で暗い。そして性急に疾走していく切ないメロディーと怒りの感情を叩きつけるデス声と重厚なリフとの融合には、切なさから前へ突き進むような熱い感情へと変わる瞬間を表現している。サビの部分がヘヴィーに変わっても、メロディーがしっかりしているから、不快さは残らない。むしろヘヴィーな部分が、心の深い感情を表現してさえいる。それが彼らが魅力であり、人気の理由なのだ。

 彼らのサウンドは、ハードコアにメロディーを載せたバッド・レリジョンに発想が近い。ぼくは彼らの才能をかなり評価している。

 なお08年に発売された再リリース盤には、DVDと、デビュー作の“ハートレス”と“ユー・ショウド・ハブ・キルド~”が再録され、ケリー・クラークソンのカヴァー“シンス・U・ビー・ゴーン”と“ホワイ・ウォーク・オン・ウォーター~”の2曲の追加ボーナス・トラックが加えられた。商売目的に発表されたこの作品が、のちにヴィクトリー・レコーズと遺恨を残すきっかけとなるわけだが。

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ア・デイ・トゥ・リメンバー  『アンド・ゼア・ネイム・ワズ・トゥリーズン』

& Their Name Was Treason& Their Name Was Treason
A Day To Remember

Indianola Records 2005-05-09
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 フロリダ出身のメタルコア/メロディック・パンク・バンドの05年に発表されたデビュー作。アメリカではメタルコアにポップ・パンクを融合したバンドとして語られているが、彼らの功績とは、メタルコアのポップパンク化。このデビュー作では、まだメロディック・デスメタルやスクリーモから発展したサウンドを展開している。メロディーには、アイアン・メイデンやヴァンヘイレン、映画音楽からの影響がうかがえる。いうならスクリーモやメロディック・デスメタルに、映画音楽などポップの要素を加えたバンドだ。

 今作はそれほどオリジナルティーあふれた作品ではないが、彼らならではの個性がうかがえる。その個性とは、アクション映画の死を意識したワンシーンのような緊迫した空気とクールな世界。“イントロ”では、映画のワンシーンのようなボーカルの台詞が厳かな緊迫感をつむぎだし、<あなたを信じながらも、嘘を探した>と、疑心暗鬼に陥っている自分の心情について歌っている。スクリーム(叫び)が痛々しい“ハートレス”では、<私は内側からダメージを受けている~私は壊れた>と、傷つきささくれ立った心情風景を描いている。

 ここで歌われているのは、内面世界と外の世界とのギャップと乖離。自分の気持ちを理解してもらえないことへのもどかしさ。裏切りによる悲しみなどが、まるでラブコメのように、ロマンチックに彩られた世界がある。思慮的で憂いと暗さに満ちたピアノの音とスクリームとの組み合わせはとてもクールでカッコいい。オリジナルティーが希薄に感じる部分もあるが、聴きやすい作品に仕上がっている。

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