プロフィール

  •    宮本 一高         (みやもと かずたか)
                                        音楽ライターを目指しているものです。EAT MAGAZINEやDOLLなどで執筆をしておりました。おもにエモ、ハードコア、スクリーモ、メロディックパンクを中心に取り上げております。自分が感動した音楽を、積極的に紹介していきたいと思いますので、よろしくお願いします。 

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2014年3月

2014/03/28

Letlive (レットライヴ)  『Fake History (フェイク・ヒストリー)』

Fake HistoryFake History
Letlive

Epitaph / Ada 2011-04-11
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 10年発表の2作目。彼らのオリジナルティーを確立し、人気を獲得したのはこの作品から。今作を発表するまでじつに5年の歳月を要した。その間、リード・ボーカルのバトラーと、バッキング・ボーカルのジェイ・ジョンソンを残し、すべてのメンバーが入れ替わった。過去をすべて捨て、ゼロから再出発を図った作品でもあるのだ。

 今作では前作のデリンジャー・エスケープ・プランやザ・ユーズドなどに影響を受けたカオティック・ハードコアやスクリーモ・サウンドから、リフューズドやダウンセットをベースにしたポスト・ハードコアに変化した。いろいろなフレーズを切り貼りしたサウンド・フォーマットの部分では、あまり変わっていない。だが前作とは、まったく異なるサウンドを展開している。その理由はマッチョでストロングタイプのハードコアに変貌を遂げているからだ。前作はとくにスクリーモからの影響が強く、ヒステリーに満ちた金切り声のスクリームには軟弱で弱々しさや華奢なイメージがあった。そんな前作と比べると、今作ではエモーショナルで力強く尋常でない熱量と情動がアルバムを支配し、過去2作のとは音の迫力そのものが違う。

 そのサウンドはリフューズドやダウンセットをベースにしたハードコアに、サルサのマラカスのリズム、マタドール・ギターを加えた新しいのスタイルのポスト・ハードコア。この作品と代表曲となるであろう“ハームレス・ジャズ”では、高いテンションを叩き付けたノイジーで扇情的なハードコアのギターと、ブラストビートが怒りを高揚させ、そしてクライマックスに達するサビの部分で、いきなり静けさに満ちたマタドール・ギターに変わる。そこには理性が吹き飛ぶような怒りから冷静さを取り戻し、死を覚悟した勇敢さに変わるような感覚がある。

 その尋常でない狂った勢いから、悲しみや孤独が漂う寂寥へと変わっていくサウンドには、まるで怒りから革命へとかわっていくチェ・ゲバラのような中南米独特の革命意識と、孤独と寂しさ、怒りと悲しみが漂っている。メンバーにアフリカン、アメリカン、メキシカン、アイリッシュといった人種で構成されているせいか、自らのルーツ音楽をゴチャマゼにして再構築する技術に長けている。コスモポリタンな感覚が、バンドに反映されていることが彼らの特徴のひとつである。もうひとつの特徴である彼らの出身地、ロサンゼルスという出自がそうさせるのか、精神的な部分では確実にレイジ・アゲインスト・ザ・マシーンやダウンセットなどの影響を色濃く感じる。その影響とは、マイノリティーならではの差別からくる怒りと政治不信。虐げられた環境を変えようとする怒りがトリガーとなり、革命意識へと変化しているのだ。

 サルサのリズムなどの中南米の要素を加えたハードコアは、彼らの出自やアイデンティティー、ルーツを再確認しながらも、彼らしかありえない独特なサウンドを展開している。そこには90年代にヒップホップの要素を加えたコーンや、変則的なリズムでザクザクと刻むギターのリフが特徴のレイジ・アゲインスト・ザ・マシーンに匹敵するオリジナルティーあふれるサウンドがあるのだ。なお1年後の4月にエピタフ・レコーズから作品を評価され、再リリースされた。

2014/03/12

Letlive (レットライヴ)  『Speak Like You Talk (スピーク・ライク・ユー・トーク)』

Speak Like You TalkSpeak Like You Talk
Letlive

CD Baby.Com/Indys 2007-12-25
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 05年発表のデビュー・アルバム。彼らの個性を確立したのはこの作品。自分たちの演りたいサウンドが固まっていなかったデビューEPでは、ヘルメットやザ・ユーズドなどのハードコアやスクリーモのフレーズを、ただ切り貼りしただけの作品だった。それが今作では、さらにいろいろなアイデアをぶち込み、カオティックなサウンドに変貌を遂げた。

 デビューEPから今作を発表するまで、2年もの歳月を要した。その理由は、12曲のベースとなる曲に、69曲分の断片的なフレーズやスクリーム、ギターアレンジや、スローテンポからブラストビートまでのドラムを、切り貼りし、組み合わせたからだ。気に入らない箇所があると、作っては壊し、壊しては作り変える。まるで壷を叩き割る陶芸家のように、試行錯誤を繰り返して、自分たちのスタイルを確立したのだ。その作業のため、作品を仕上げるのに、これだけの時間がかかったのだ。

 そんなプロセスを経て完成した今作は、カオティック・ハードコアな作品に仕上がっている。サウンドフォーマットのベースになっているのは、デリンジャー・エスケープ・プランや初期マーズ・ヴォルタのようないろいろなフレーズを切り貼りしたカオティックなサウンド。だがデリンジャー・エスケープ・プランやマーズ・ヴォルタとの一番の違いは、幅広いジャンルの音楽に影響を受けたバラエティーの豊かさと、静と動のふり幅の違いにある。

 たとえば1、2、3、4、9、11は、デリンジャー・エスケープ・プランのマシンガンのような断片的なリズムとリフと、シック・オブ・イット・オールのようなハードコアの歌いまわしをベースにしながらも、そこにスクリーモの絶叫と冷たいメロディー、映画のワンシーンから取り入れたメロディー、エクスメンタルロックなどをカオティックにぶち込んだ。彼らの音楽スタイルを代表する曲たちだ。とくにスクリーモに影響を受けた金切り声が特徴の叫び声には、怒りを感じることができる。スクリーモ特有の被害者の苦しみの叫びではなく、ヒステリーに満ちた怒りの叫びだ。自己嫌悪やうまくいかないことへの焦りと苛立ちなどもあるが、いろいろな種類の怒りがこのアルバムには混在している。“パンクス・ノット・デット,ジーザス・イズ”では、パンクスをつぶそうとするものへの反発心から来る体制側の人間への怒りであり、“スキン・ファック・メタル”では血の通っていない無機質で機械的な人間への憎悪がある。そのほかにも嫉妬からくる怒りもあり、ほとんどが他者に対する怒りの感情でしめられている。

 総じて怒りに満ちた作品だが、それ以外にも変わったバラードの曲がある。6は1965年2月14日に家を爆破された後に、フォード講堂でマルコムXが怒りの演説を行ったテープが収録され、8ではチープなインディーデジタル音と後期スマッシュ・パンプキンズから発展したメラコンコリックな曲。そして10はバトルズのマスロックに影響を受けた浮遊感あるスペイシーなイントロの曲だ。そこにあるのは、虐げられた人間による怒り革命の意識と、人間が交錯する雑踏のなかを自分を見失いさまよっているような孤独に満ちた感覚、疲弊とたそがれがある。怒りの隙間を埋める、一息入れるようなアルバムのアクセントになっている曲。だが、全体を通して表現しているのは不幸の側にある感情なのだ。

 サウンド面に関して言えば、テンポよく曲が進まず、若干まとまりが悪い部分があるが、当時のトレンドをすべてぶち込んでいる。サウンドのトレンドを取り入れながらも、表現している感情は、エモーショナル・ハードコアのような内省もなければスクリーモなどの軟弱な方向に向かっていない。世の中に戦っていく闘争心があるのだ。前世代的な精神性をベースにしつつ、サウンド面ではトレンドを取り入れている。彼ららしいスタイルは確立しつつあるが、この時点ではまだ、もう一回聴きたくなるようなサウンドの中毒性はない。音の迫力もない。それを確立するのは次作からだ。


2014/03/01

Letlive (レットライヴ) 『Exhaustion, Salt Water, and Everything in Between (エクハーション・ソルト・ウォーター&エヴリシング・イン・ビトイーン)』

Exhaustion Salt Water & Everything in BetweenExhaustion Salt Water & Everything in Between
Letlive

2007-12-25
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 ロサンゼルス出身のポスト・ハードコア・バンドの、03年に発表された8曲入りのデビューEP。00年から03年といえば前年にユーズドやテイキング・バック・サンディー、グラスジョーなどのスクリーモ・バンドが出世作を発表し、かたやキルスイッチ・エンゲージなどのメタルコア・バンドも出世作を発表した。スクリーモとメタルコアがハードコアの最先端のシーンとして盛り上がっていたのだ。エモから進化したスクリーモ、メタルとハードコアの折衷スタイルであるメタルコアと、大雑把に分けるとシーンはこの2つが主流になっていたのだ。

 そんなスクリーモとメタルコアがシーンを席巻している03年にデビューしたレットライヴ。彼らのサウンドとは、ヘルメットから発展を遂げたポスト・ハードコア。ヘルメットの変則的リズムの金属質なリフに、ハードロックのようなギターフレーズを加えたサウンドだ。この時点ではまだ、あどけなさが残る子供の声のようなボーカルと悲痛な叫び声には、ザ・ユースドあたりのスクリーモからの影響が強く、ボーカルとサウンドともにオリジナルティーはあまり感じられない。音の厚みがなく、まとまりが悪い印象も受ける。スクリーモという流行を意識したサウンドだった。だが屈強なハードコアに、まにも泣き出しそうな弱々しいボーカルが乗る不協和音には、暴力に裏打ちされた恐怖やおびえを感じることができる。加害者意識の強いハードコア、華奢で被害者意識の強いスクリーモとは一線を画す世界観を持っていたのだ。オリジナルティーを発揮していくのはこれから先になるが、彼らのルーツを知る上では貴重な作品といえるだろう。

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