プロフィール

  •    宮本 一高         (みやもと かずたか)
                                        音楽ライターを目指しているものです。EAT MAGAZINEやDOLLなどで執筆をしておりました。おもにエモ、ハードコア、スクリーモ、メロディックパンクを中心に取り上げております。自分が感動した音楽を、積極的に紹介していきたいと思いますので、よろしくお願いします。 

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2014年4月

2014/04/24

Gaslight Anthem (ガスライト・アンセム)  『THE B-SIDES (ザ・Bサイドズ)』

B-SidesB-Sides
Gaslight Anthem

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 14年1月に発表されたシングルのB面を集めたアウト・テイク集。B面の曲ということだけあって、当然、アルバムのように一貫した流れや、そのときの心情やエモーショナルを閉じ込めた曲は少ない。どちらかといえば本気というよりも、遊びや実験の要素が強い、肩の力を抜いたラフな内容だ。彼らのことが好きな人だけが買うマニア向けの作品といえるだろう。

 曲を説明すると、①はアルバム『アメリカン・スラング』のアイ・チューンズ専用のボーナス・トラック。②はシングル“オールド・ホワイト・リンカーン”のB面に収録された曲。③はシングル“59サウンド”のB面の曲でパールジャムのカヴァー。④はシングル“ステイ・ラッキー”のB面の曲で、ローリング・ストーンズのカヴァー。⑤はシングル“ザ・スピリット・オブ・ジャズ”のB面の曲でアコースティック・ヴァージョン。⑥はレーベルメイトでフロリダのインディー・ロック・バンド、フェイク・プロブレムスのカヴァーであり、同バンドと11年に発表されたスプリットに収録されていた曲。⑦はシングル“グレート・エクステイション”のB面の曲で、同曲のアコースティック・ヴァージョン。⑧はアルバム『アメリカン・スラング』のオーストラリア・エディションのボーナストラックで、カナダのエレクトロ・インディー・ロック・バンド、ライトニング・ダストのカヴァー。⑨はシングル“アメリカン・スラング”のB面に収録されていた曲で、同曲のアコースティック・ヴァージョン。⑩はシングル“ボクサー”のB面の曲で、同曲のアコースティック・ヴァージョン。⑪はアルバム『ザ・59・サウンド』のアイ・チューンズ専用のボーナストラックで、アメリカのソウル&ブルース・バンド、ロバート・ブラッドリーズ・ブラックウォーター・サプライズのカヴァー。

 総じてアコースティックの曲が多く、遊び感覚で曲を収録しているのは理解できるが、B面といっても捨て曲はない。むしろルーツがむき出しになっている。あらためてじっくりと聴いてみると、ボーカルの歌い方はブルース・スプリングティーンにそっくりだ。まるでブルース・スプリングティーンのアルバム『ネブラスカ』みたいな感触を受ける。そこから受ける感想は、寒さ凍える労働者のような悲惨さがある。いままで労働者階級であることを誇りに、ブルースやR&B、クラッシュ系のパンクをベースにしたサウンドを展開していたパンク・バンドはたくさんいた。だが彼らと決定的に違うのは、富裕層や理不尽な政治と戦っていく闘争心にある。ガスライト・アンセムの場合、富を搾取する金持ちたちの怒りより、なぜ自分たちは不況な境遇にあるのは、疑問に思っている。自分たちが生きていくことに精一杯で、怒りや憎しみを抱き、嫉妬する余裕すらない。そこに彼らの不器用な純朴な人柄が伝わってくる。ネイキッドな感情がむき出しなのは、この作品くらいだろう。そういった意味では価値のある作品だ。




2014/04/11

Letlive (レットライヴ)  『The Blackest Beautiful (ザ・ブラッケスト・ビューティフル)』

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 13年発表の3作目。彼らの最高傑作と呼ばれる作品。事実イギリスのハードコア、ヘヴィーロック系専門雑誌の『ロック・サウンド誌』にて、2013年のアルバム・オブ・ザ・イヤーに選ばれた。それほど世間的な評価の高い作品だ。

 前作はハードコアの延長上にあり、リフューズドなどの影響から抜けきれない作品であったが、今作ではどのバンドからも影響を感じさせない、彼らしかありえないオリジナルなサウンドに仕上がっている。サウンドのベースになっているのが、トライバルで呪術的なアフロ・ビートのリズム。前作のサルサのからさらにリズムを追求し、アフロビートにたどり着いた。そこに2ビートのハードコア、メタルコア、デジタル・ノイズ、メランコリーなメロディーギター、ドラマティックで絶望的な悲しみのクラッシクのキーボード、ソウル、ファンクなどを加えた。

 そしてこの作品をさらに複雑なものにしているのは、バラエティー豊かな歌い方のヴァリエーション。“バンジー(ゴースト・フェイム)”では息継ぎなく早口でまくし立てる歌い方で、“エンプティー・エルヴィス”ではマイナー・スレットのような核心だけを叫ぶ端的な歌い方。“ドリーマーズ・デディーズ”ではコーンのような悔しさと恐怖とが入り混じったおどろしい歌い方で、“ザット・フィアー・フィーバー”はR&Bのような歌い方を取り入れている。そして“ヴァージン・ダート”では映画音楽からの影響が強いバラード。全曲すべて違った歌い方をしている。その歌い方の違いを含め、ドラムやギター、ベースなどのすべてのパートにおいて、いろいろなジャンルの音楽が複雑に混ざり合っている。ここまでミクスチャー度が進むと、もはやハードコアではない。これはまさに最新型のヘヴィーロックといえるだろう。

 たいていのバンドはこれだけいろいろな要素を取り込むと、サウンドのまとまりを欠けてしまう。まとまりがないため、作品自体がとっ散らかった印象をあたえ、自分たちの個性が失われてしまう。自分たちはなにを演りたく、なにを表現したいのか、見失ってしまうケースが多々ある。だが彼らの場合、これだけ雑多性が進み、ハードコアからの影響が薄れたとしても、彼らの個性は失われていない。その理由はしっかりとした軸があるからだ。

 その軸となっている部分とは、怒り。一部絶望からくる深い悲しみと憤りのバラードがあるが、アルバム全体に貫かれているのは、尋常でないテンションの高さと、戦闘心や闘争心をかきたてる激しい怒りだ。今作のテーマは、巨額の富を得るため、低賃金で労働者を働かせ、富を搾取する企業の暴利や、人種差別と崩壊した家庭の虐待、新しい形の犯罪が起こる社会の病気など、支配者層や差別主義者への怒りがテーマになっている。

 その怒りが尋常でないテンションの高さと激しいエモーショナルを生み、アルバム全体を統一している。その統一感が、聴いていて闘争心をかきたて、熱い気持ちになれるのだ。それがこの作品のすばらしさだ。闘争心あふれるコンガのリズムと、扇情的なノイズギターと、激しいテンションのボーカル、サビの部分のメロディーの融合は、彼らしかありえない個性を確立しているし、まちがいなく2013年のベスト10に入ってくるいい作品だ。

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