プロフィール

  •    宮本 一高         (みやもと かずたか)
                                        音楽ライターを目指しているものです。EAT MAGAZINEやDOLLなどで執筆をしておりました。おもにエモ、ハードコア、スクリーモ、メロディックパンクを中心に取り上げております。自分が感動した音楽を、積極的に紹介していきたいと思いますので、よろしくお願いします。 

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2014年5月

2014/05/29

Chiodos  『Bone Palace Ballet』

ボーン・パレス・バレー:グランド・コーダボーン・パレス・バレー:グランド・コーダ
チオドス

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 メジャーデビューをはたし、07年に発表された2作目。彼らの最高傑作はこの作品。前作のクラッシクをベースにした華麗で上品なメロディーと、スクリーモ・サウンドを踏襲し、さらに深化させている。

 今作ではとくにクラッシクの要素がさらに濃くなった。前作はピアノを中心としたメロディーだったが、今作ではエレガントなバイオリンなどの楽器が加わり、サウンドにより深みが増している。“トゥ・バーズ・ストーンド・アット・ワンス”では、ショックな告白を聞くよな劇的でドラマティックなバイオリンの音色が切迫感を煽り、“ウィ・スワム・フロム・アルバトロス~”では、怒りに満ちたノイジーな激しさが静けさへと急激に変わり、穏やかで洒脱なピアノの音が物哀しいメロディを奏でる展開。総じてエレガントなメロディーのバラエティーが増えている。そしてスクリーモの激しさの部分では、“レキシントン”のようにスクリームがない曲もあれば、怒りの咆哮や、恐怖の叫びなど、新しい形のスクリームが加わっている。ギターもアレンジが多彩になり、“ア・レター・フロム・ジャネル”では、蜃気楼のようなようなリヴァーヴ・ギターなどがあり、スクリーモ一辺倒だった前作よりも、演奏力と技術力が飛躍的に成長しているのだ。

 アルバムも全体を通して物語のような構成になっており、ショックな告白を受けるような悲劇から始まり、“インテンシティー・イン・テン・シティーズ”ではピアノの音が川のせせらぎのように優雅に繊細にキラキラと光っている希望に満ちた展開へと進んでいく。そして“ジ・アンダーテイカーズ~”では再び、地の底に落ちたような激しい苦悩で幕は閉じられる。紆余曲折がある展開に作品は仕上がっている。

 アルバムを全体を取り巻くクラシックの上流階級のような華麗な世界観は、前作から変わっていない。ただシェイクスピアの小説からインスピレーションを受けた歌詞は、ビートジェネレーション詩人であり、酒と喧嘩と女が大好きだったハードボイルド作家、チャールズ・ブコウスキーからの影響に、今作は変わっている。アルバムタイトルは、彼の作品からとったそうだ。

 だがそこにはチャールズ・ブコウスキーような、猥雑でハードボイルドな世界観はない。上流階級の気品と華麗で優雅な華やかさに、アルバムの雰囲気は満ちている。だがその内側には、アルバムジャケットにある上流階級の優雅で華麗な舞踏会に踊るドクロと同じ世界観の、華やかさのダークサイドに潜む、精神の破綻と死の匂いがある。そこにまるで蜘蛛の糸を渡っているかのような、精神の限界のふちをギリギリで渡るかのような危うさと脆さを感じることができる。蜘蛛の糸とは正気で、少しでも負荷をかけると切れてしまう。切れた先にあるのは精神の破綻だ。そんな精神の脆さをこのアルバムでは感じることができる。しかもその脆さがエレガント輝きを放っている。それがこのアルバムの魅力だろう。雨後の竹の子のように、似たようなサウンドのバンドが大量発生しているスクリーモ界のなかで、歪な個性を放った作品なのだ。

2014/05/16

CHIODOS  『All's Well That Ends Well』

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チオドス

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 05年発表のデビュー作。スクリーモというジャンルでカテゴライズされているチオドスだが、スクリーモ界では第二世代のバンドに当たる。第一世代はザ・ユーズドやテイキング・バック・サンディー、サーズディなどで、綺麗で繊細なメロディーを持ち、エモーショナルがスクリームに変化したバンドたちだ。スクリーモというオリジナルなサウンドを確立し、先駆者として語られている。そんな彼らたちと比べると、チオドスは第二世代のバンドに当たる。その第二世代のバンドたちとは、確立されたスクリーモ・サウンドに、プラスアルファーの要素を加えたバンドたちだ。たとえばセイオシンは、美声とスクリームで美と醜の二律背反する要素をうまく融合させた。アンダーオースはカオティック・ハードコアをベースにスクリームを加え、そこにクリスチャンの思想とコーラスを加えた。そしてチオドスは、スクリーモというサウンド・フォーマットに、クラシックの要素を加えた。彼らも新しいスタイルのスクリーモを提示したバンドなのだ。

 そんなチオドスの世界観とは、シェイクスピアの小説やギリシャ神話のような世界観。そこには神の怒りを買い、天罰を受けるようなドラマティックな悲劇がある。優雅で上品に静かに響くピアノには、精神的に脆く崩れそうな悲しみが感じられ、心の破綻を表すかのような苦痛の絶叫が響き渡る。セイオシンやスカイリッド・ドライブのような二律背反や2面性とは違い、悲しみの告白から苦痛のスクリームへと感情が高ぶっていくスタイルだ。その脆く崩れそうな繊細さが、絶叫と交えた暴力的なサウンドが彼らの特徴で、ギリシャ神話のような芸術的な美しさが壊れていく瞬間こそ、彼らの描いている世界観なのだ。

 この作品の3年後に、ボーカルのクレイグ・オーウェンズが精神安定剤の大量摂取でオーバードースになり病院に運ばれるという事故が起きたが、その出来事がこのバンドのサウンドを象徴している出来事といえるだろう。それほと繊細で脆い精神の持ち主が、作品を作っていたのだ。

2014/05/02

Off! (オフ)  『Wasted Years (ウェスデッド・イヤーズ)』

Wasted YearsWasted Years
Off!

Vice 2014-04-07
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 14年に発表された。2作目。相変わらず前作と変わらないサウンドを展開している。ラモーンズから発展した分厚い音の3コード。8ビートのドラム。1分半のファストなハードコア。まるで居酒屋でクダを巻き叫ぶオッサンのテンションのようなボーカルと、キース・モリスの個性。どれをとってもまったく変わっていない。

 それよりもむしろアレンジの豊富さがすごい。ギターの音とボーカルの歌い方は、全曲一緒なため、下手したらすべて同じ曲に聴こえる。だが、1曲1曲細かいギターのディテールにこだわり、ギターコードのバリエーションの豊富なため、当たり前だが全曲違っている。それを16曲も作れるところがこのバンドのすごい部分だ。アルバム全体、勢いだけで突き抜けることだけを念頭に作られている。典型的なハードコアなアルバムといえるだろう。

 それにしても近年のキース・モリスの元気さはなんなのだろう。サークル・ジャグスで一緒にバンドを演っていたグレッグ・ヘトソンは、おそらく過酷なツアーを周ることが体力的に困難になったため、バッド・レリジョンを脱退した。のきなみ同世代の人たちが老いや体力を理由にバンド活動を辞めていく。キース・モリスは年齢に抗うように精力的にバンド活動を続けている。まるで30年近くくすぶり続けていた苛立ちを現代にぶつけるかのように。もしかしたらキース・モリスのパンクとは年齢に抗うことなのかもしれない。歳をとったから丸くなったとか、体力的に困難だとかそんな言い訳に唾を吐き捨てるような姿勢でバンド活動を続けている。

2014/05/01

Twin Forks (ツイン・フォークス)  『LP』

Twin ForksTwin Forks
Twin Forks

Dine Alone Records 2014-02-24
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 14年2月に発表されたデビューアルバム。昨年の発売されたデビューEPは、ダウンロードのみの販売であったが、デビューアルバムはCDで発売された。EPに引き続き、アメリカン・フォークやカウボーイ・カントリーなどの40年代から50年代のアメリカ白人のルーツ・ミュージックをコンセプトに、アコースティック・ギターが中心のサウンドを展開している。

 アルバムは全12曲で、うち5曲はEPからの曲。今回7曲の新曲が収録されている。前EPに収録された5曲は、ルーツ・ミュージックに忠実な演奏で、アップテンポで至福感に満ちた曲だった。ところが新曲では、スローテンポのバラードが多い。“デンジャー”はかすれた歌声で、“リーズンド・アンド・ラフィンド”ではキャンプファイヤーで歌われるような夜空を見ながら歌うバラードのような歌だ声。牧歌的で味わい深いフォークを展開しているのだ。新曲ではちょっと時代が新しくなり、60年代後半から70年代前半のフォーク・ソングにチャレンジしている。

 全曲、ルーツ・ミュージックに忠実なサウンドで、オリジナルティーこそ希薄だ。だがこのアルバムのなによりすばらしい部分は、クリスがこれまでになく多彩な表情を見せているところだ。たとえば“クロス・マイ・マインド”では豊作を祝うような祝祭的な楽しいムードで、“キス・ミー・ダーリング”では、好きな人に想いが届いて欲しいと願う愛らしさが伝わってくる。また“プランズ”では、悲しみと切なさに満ちている。これほど喜怒哀楽の表情を見せたのは初めてではないか。その多彩な感情が、クリスの歌声の魅力をさらに際立たせ、聴くものをその世界に引き込む。クリスの想いが素直に共感できるし、感動さえある。同じ気持ちになれる。それがこの作品の魅力なのだ。

 
 この作品は、クリス・ギャラハーのボーカリストとしての魅力と可能性を、さらに押し広げた作品といえるだろう。クリス・ギャラハーというソロ名義では、オルタナティヴ・ロックなどの自分が好きだった音楽という原点を見つめ直し、そのあと再結成したファーザ・シームス・フォーエバーでは、音楽を始めたときの初期衝動を取り戻した。そして今作ではアメリカ・ルーツミュージックを追求することによって、いろいろな歌い方と多彩な感情を獲得した。もはやダッシュボード・コンフェッショナルの初期ころに歌っていた女の子に振られたときの悔しさや悲しみといった感情を表現することはできない。女の子にフラれた当時の気持ち自体、失ってしまった純粋さや感情なのかもしれない。だが、ある意味それしかなっかた当時のころと比べると、圧倒的にヴァラエティーが広がっている。クリスの円熟とは、枯れや深みを表現するのではなく、貪欲にいろんなものを取り入れ多彩な表現を獲得している部分なのだ。いろいろな音楽を吸収することによって、クリス・ギャラハーの美声がさらに磨きがかかっている。そういった意味ではいい年の取り方をし、ミュージシャンとしていい方向に成長している。

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