プロフィール

  •    宮本 一高         (みやもと かずたか)
                                        音楽ライターを目指しているものです。EAT MAGAZINEやDOLLなどで執筆をしておりました。おもにエモ、ハードコア、スクリーモ、メロディックパンクを中心に取り上げております。自分が感動した音楽を、積極的に紹介していきたいと思いますので、よろしくお願いします。 

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2014年7月

2014/07/28

Fucked Up (ファックド・アップ)  『Couple Tracks: Singles 2002-2009 (コンパイル・トラックス シングルス2002~2009)』

Couple Tracks: Singles 2002-2009Couple Tracks: Singles 2002-2009
Fucked Up

Matador Records 2010-01-25
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 10年に発表された2枚組みのシングル集。04年に発売された『エピック・イン・ミニッツ』や09年のイギリス、ドイツ、ギリシャ、日本限定で発売された『シングル・コレクション』と比べると、かぶり曲がほとんどない。恐らく買う人をガッカリさせないため、前2作のシングル集と曲がかぶらないように考慮してあるのだろう。原点やハードコア色の強い曲を集めた前2作とは違い、今作は実験的な曲が多く、レアなトラックが収録されている。

 まずディスク1を説明すると、1は02年1月26日に発売された『NO PASARAN』のA面。2は06年2月5日に発表された『TRIUMPH OF LIFE 7』のB面。3と4は05年12月28日発売の『GENERATION』のA面とB面。5は05年発売の『DANGEROUSFUMES』のA面。6は06年2月5日発売の『TRIUMPH OF LIFE 7』のA面。7は06年発表の『Humos Peligrosos 7″』のB面。8は07年発表のハード・スキンとのスプリットから収録。9は07年発表の『Year of the Pig 12』のB面。10は07年発表の『David Christmas 7』のA面。11は09年発表の『No Epiphany 7』からファスト・バージョンを収録。12は未発表曲で08年に収録した“Crooked Head”のビデオ・バージョンを収録。計12曲が収録されている。

 そしてディスク2は、1は08年に発表された『Crooked Head 7』のB面。2は05年に発表された『Dangerous Fumes 7』のB面。3は06年に発表されたデビュー作『ヒッデン・ワールド』に収録された曲で、その曲のデモ・バージョン。4は06年に発表された『Shop Assistants 7』のB面。5は08年に発表された『Year of the Pig UK Edit 7』のB面に収録されたイギリスのギターポップ・バンド、アナザー・サニー・デイのカヴァー。6は06年に発表された『Shop Assistants 7』のA面。7は08年に発表された『Year of the Pig Japanese Edit 7』のB面。8は06年に発表された『Dolly Mixture 7』のB面。9は05年に発表された『Generation 7』のB面。10は08年に発表された2作目のアルバム『ケミストリー・オブ・コモン・ライフ』のデイトロッター・バージョン(レコーディング前の軽い生演奏をフリー音源として収録したバージョン)。11は06年発表の『Year of the Dog 12』に収録されたシングル・バージョン。12は06年に発表された『Dolly Mixture 7』のA面。13は06年に発表されたデビュー作『ヒッデン・ワールド』に収録された曲で、未発表のデイトロッター・バージョン。計13曲が収録されている。

 09年の『シングル・コレクション』は、ファストでハードコアな曲が中心だった。だが今作では実験的な曲が目立つ。たとえばディスク1の“フィックスド・レース”では、ラモーンズのようなバリバリと音の割れたギターコードが特徴で、“ブラック・ハッツ”では、曲間に1分近いイントロを挟みプログレのように長い展開だ。“ノー・エピファニー”は典型的なメロディックパンク。ディスク2の“アノラック・シティー”はネオサイケのメロディーで、“ムスタア・ルームタ”は、執拗にワンコードを繰り返すハードコア。“ディッド・カムズ・トゥ・ライフ”は、ファンクのカッティングギターと、残響の効いたボーカルが印象的。ハードコアでもノイズコアからクラスト・コア、ネオサイケにメロディック・パンク、ファンクなど、いろいろなことにチャレンジしている。

 おそらく彼らは、シングルのB面などで実験的な曲を作り、取捨選択をし、選んだ曲をさらにブラッシュアップさせ、ハードコアよりにアレンジを変更し、アルバムに収録していく。その過程を繰り返して、アルバムを制作していくのだろう。ここで収録されている曲は、そんな加工が施される前の原型となる曲なのだ。だから必然的に自由度が高い。この作品を聴くとハードコアを深く掘り下げるだけでなく、いろんなジャンルの音楽を聴いていることが理解できる。じつに探求熱心な人たちなのだ。ここではラフな気持ちで各自にいろいろなアレンジを楽しんでいる。その自由度がこの作品の魅力だ。

2014/07/25

Fucked Up (ファックド・アップ)  『Epics in Minutes (エピック・イン・ミニッツ)』

Epics in MinutesEpics in Minutes
Fucked Up

Deranged Records 2008-05-11
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 04年に発表されたシングル集。ファックド・アップの原点を収録した作品で、実質的な意味でデビューアルバムとなる。いまも昔も彼ららしさは失われていないが、まさしく初期衝動に溢れた作品といえる。

 その内容だが、1,2,6,9曲目は04年発表の『Litany』。3,4は03年発表の『Baiting The Public』。7は02年発表の『Police』。8は02年発表の『No Pasaran』。12は03年発表の『Dance of Death』。14~21は、02年の一番最初に発表された『デモテープ』から。そして5,10,11,13は未発表曲。5枚のシングルとデモテープ、未発表曲が4曲の、計21曲が収録されている。

 
 とくに“ベイティング・ザ・パブリック”は、3,4の2曲に分かれているが、06発表のデビュー作『ヒッデン・ワールド』では、この2曲が結合され、尺がやや長めに伸びている。

 肝心のサウンドだが、ど真ん中をいくハードコアサウンドで、怒りに満ちた初期衝動が印象的だ。とくにバンドを始めてころのライブを収録された『デモテープ』では、ゴリゴリのハードコアを通り越して、カオティックなサウンドを展開している。砂嵐のようなノイズのギターと、地獄の怨霊のようなデス声、マシンガンのようなドラムが印象的だ。まるでブルータル・トゥルースをそのままカヴァーしたようなサウンドだ。

 演奏の技術や自分たちにしかないオリジナルなサウンドを追求しているというよりも、とにかく自分たちの好きなバンドを模倣し、内面にたまった怒りを吐き出そうという意識が垣間見れる。それが彼らの初期衝動なのだ。この作品以降、いい意味は彼らはオリジナルティーを追求し始める。ここでは怒りを吐き出すという意識のみで作品が作られている。そんな純粋な彼らはこの作品でしか味わえない。そういった意味では貴重な作品なのだ。

2014/07/21

Fucked Up (ファックド・アップ)  『Singles Collection (シングル・コレクション)』

Hg251

 イギリス、ドイツ、ギリシャ、日本の4ヶ国で限定で発売され、現在、入手困難となっている8枚のEPをコンパイルし、09年に発売されたシングル集。このシングル集はたとえるならクラッシュの『シングルズ』やジーザス&メリーチェインの『21シングルズ』に匹敵する作品といえるだろう。その理由は、アルバムでは選考からもれた優れた曲が収録されているから。むしろアルバムより、このシングル集のほうが個人的には好きだ。そこにはアルバムでは伝えきれていない、ファックド・アップの魅力がすべて詰まっている。

 このシングル集に収録されている曲を説明すると、1と2は、02年7月22日に発売された『POLICE』。3と4は05年5月6日に発売された『BAITING THE PUBLIC』。5と6は02年1月26日に発売された『NO PASARAN』。7と8は03年8月9日に発売された『DANCE OF DEATH』。9から12は04年7月24日発売の『LITANY』。13~15は05年12月28日発売の『GENERATION』。16は『DANGEROUSFUMES』。17と18と19は06年2月5日発売の『TRIUMPH OF LIFE』。計8 枚のシングルが収録されている。

 いままで発表した2枚のアルバムは、ほとんどの曲が6分台で、展開が変わるのが彼らの特徴だった。だが、ここに収録されているのは(1曲を除いて)ほとんどが2分台のファストなハードコア。終始勢いよく、簡潔でノンストップに駆け抜けていく。相変わらずプルパワーで駆け抜けていく勢いと、ネガティヴ・アプローチの影響が濃い熱く気合の入ったボーカルを中心としたエナジフルなサウンドに変わりはない。だが曲が2分台のため、そこにスパッと簡潔で直截的な決断の速さ、終始、挑発し続けるような過激さが加わっている。

 とくに印象に残ったのは10曲目の“ワット・コールド・ハヴ・ビーン”と11曲目の“カラー・リムーバル”と13曲目の“ジェネレーション”。10は挑発し怒りを煽るような扇情的なギターのメロディーが印象的で、11はNOFXからの影響を感じる性急なベース・ラインが魅力な曲。13は、アラブのお祈りのようなコーラスをハードコアに取り入れ独特なサウンドを展開している。ほかにもサンディエゴシーンのようなガレージをベースにした1曲目のようなハードコア曲もある。彼らの個性である練れたギターアレンジや、いろんなハードコアを聞き込み、サウンドに取り入れている彼らの個性は失われていない。

 個人的にこの作品が一番好きな理由は、ハードコアな作品だからだ。ここには6分台という長い曲に、いろいろなアレンジや展開を持ち込んだ変形した形のポスト・ハードコアのような変化球はない。すべてが直球勝負のハードコアで、シンプルで簡潔で直截的。パワフルで息つく暇もなく矢継ぎ早に繰り出されるハードコアは、聴くものに元気や勇気や活力をあたえてくれる。その姿勢がすばらしい。やはり彼らの魅力はハードコアにあるのだ。

2014/07/13

Fucked Up (ファックド・アップ)  『Chemistry of Common Life (ケミストリー・オブ・コモン・ライフ)』

Chemistry of Common LifeChemistry of Common Life
Fucked Up

Matador Records 2008-10-20
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 大手インディーレーベル、マタドールに移籍し08年に発表された2作目。彼らの最高傑作と名高い作品。前作よりも格段に成長を遂げている。実際、NME、ニューヨーク•タイムズ、ミキサー、ピッチフォーク、オルタナティブプレスなどの雑誌や多くのような出版物から、多大な称賛を受けた。たとえるなら今作はレットライヴ同様、ハードコアからポスト・ハードコアへ進化させ、ハードコアを新世代のネクストレベルに上げた作品だ。

 だが同じハードコアをベースにしながらもアフロビートやサルサのマラカスのリズムなど南米音楽などをハードコアにぶち込んだレッドライヴとは、180度異なる音楽性を展開している。ファックド・アップの進化とはプログレ的な長めの曲をベースにシューゲイザー、フルート、オルガン、ホルンなどの楽器をハードコアにぶち込んだところ。基本的には前作同様、ネガティヴ・アプローチからの色濃い影響を感じるボーカルや、4分を超える長めの曲をベースにしている。そこにインダストリアルや上記の楽器を加えることによって、前作よりもさらにヴィヴィットに仕上がっている。ジャンルやフレーズを取り入れるというよりも、新しい音をサウンドフォーマットに加えているのだ。

 たとえば“ゴールデン・シール”では、日の出にたそがれるようなシュケイザーが中心のインストメンタルな曲で、いままでにない新しい曲で、“ノー・エピファニー”では、パワフルなハードコアに音程の外れたムーヴシンセを加えることによって、シリアスさを和らげている。実験的ながらも新しいことにチャレンジしているのだ。個人的に一番好きな曲は“サン・ザ・ファザー”。ここでは甲高い叫び声のボーカルを入れることによって、テンションが尋常でなく高まり闘争心をさらに煽っている。気持ちが高ぶる高揚感が最高だ。

 そしてアティテュードもマイノリティーという虐げられた弱者の悲しみや怒りが漂っているレットライブとは違い、ファックド・アップは、もっとパワフルでストロングだ。今作のテーマはドラッグと宗教の共通項と、人類誕生のなぞや、生命の誕生と死(および再生活)の起源について、知的で難解な内容をテーマにしている。“デイズ・オブ・ラスト”と“ノー・エピファニー”と“トゥワイス・ボーン”では、ドラッグと宗教の両者が共通するのは、心の癒しと安らぎだと語り、天の啓示や逃げ道にすがる行為を否定し、問題は自分の力で解決しろと言っている。人生とは弱い自分との戦いなのだと、DIY精神を説いている。

 また07年にはMTVカナダに出演した際には、ライブがエキサイトして器物破損という事故を起こした。ライブでは流血がざらと、まさにブラック・ブラッグばりの暴力的なライブパフォーマンスを展開している。知性と野獣という二律背反的な要素が同居しているのも、また彼らの魅力のひとつだ。

2014/07/08

Fucked Up (ファックド・アップ)  『Hidden World (ヒッデン・ワールド)』

Hidden WorldHidden World
Fucked Up

Jade Tree Records 2006-10-08
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 元ノー・ワーニングのメンバー、カナダの80'sボストン・ハードコア・スタイルのカリアー・スイサイドの元メンバー、ルインネイションの元メンバーらによって、結成されたカナダ、トロント出身のハードコア・バンドの06年に発表されたデビュー作。カナダのハードコア・バンドのオールスター的メンバーが集まり結成されたバンドで、結成はなんと01年。デビューアルバムを発表するまで、じつに5年もの歳月を要している。これだけ歳月がかかった理由は、シングル制作に熱心だったからだ。01年から06年までの間、じつに25枚のシングルを発表している。これだけシングルにこだわっていた理由は、おろらく自分たちのスタイルを模索していたからではないか。この5年間は、ライヴ活動を中心に、曲を作っては、シングルを発表し、その繰り返しだった。多くシングルを発表することによって、ハードコアを徹底的に研究し、ブラッシュアップを重ねてきた。そのプロセスを経て磨かれた曲だけが、今回、満を持して発表されたのだ。

 そんな曲折を経てデビュー作は、ファックド・アップならではのオリジナルなハードコアを確立している。とく彼らならではの個性を感じることができるのは、豊富なアイデアのギターフレーズと、6分を超える遠大な曲が多い部分にある。元来ハードコアというのは、短い曲で1分に満たない曲も多く長くても3分台前半までしかない。だがこのアルバムでは5分以上の曲が9曲ある。その6分近い曲のなかには、いろいろな組み合わせの曲が存在する。たとえば“インヴィジブル・リーダー”では、ガレージのやさぐれたギターから始まり、徐々にピッチが上がり、高揚感がクライマックスに進むにつれ、最後は警告音のようなメロディーに展開していく。いろいろな要素が複雑に混ざりストーリーのように展開している。サウンドのベースになっているのは、80年代のボストン・ハードコア。気合の入った怒声のボーカルからはネガティヴ・アプローチからの影響を色濃く感じ、人ごみをかき分けグイグイ進んでいくスピード感とギターコードには、スラップショットやラモーンズなどの影響を感じる。そこにディスチャージのような執拗に繰り返される2ビートや、ブラッグ・フラッグの闘争心を煽る扇情的なギター、エクスプロイテッドのスピード感、ガレージ、Oi、掛け合いボーカルなど、いろいろな要素を取り入れている。6分という長め曲のなかにハードコアの壮大な歴史が詰まっているのだ。まさにハードコアの既成概念を覆し、新しい形のハードコアを提示した作品いえるだろう。

 それ以外にもこのアルバムの魅力は、気合の入った掛け声と、熱いサウンドにある。アルバムは終始パワフルで全力で駆け抜けていく。そのエネルギッシュで暑苦しいサウンドの奥には、どこか健やかで爽快さ漂っている。そこにはNYハードコア・バンドのような不良性やマッチョイズムはない。緊張感やシリアスさもない。あるのは中産階級のごく普通の格好をした兄ちゃんたちの、ごく日常的なストレスと怒り。プロレスラーのようないかつい人間の破壊力があるのだ。歴史を紐解き過去から教訓を学ぶ、若干インテリジェンスな一面もある。鬱積した怒りのはけ口を求め、体を激しく動かすことで爽快感を手にしている。体育会系的な爽やかさがファックド・アップのアティテュードといえるだろう。

 彼らがこのサウンドに行き着き、オリジナルティーを獲得するまで、じつに5年という歳月がかかった。いままで相当膨大な量のハードコアのレコードを聴かなければ、このサウンドに行き着くことは不可能だったのだ。デビュー作ながらオリジナルティーを獲得している、すばらしい作品だ。


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