プロフィール

  •    宮本 一高         (みやもと かずたか)
                                        音楽ライターを目指しているものです。EAT MAGAZINEやDOLLなどで執筆をしておりました。おもにエモ、ハードコア、スクリーモ、メロディックパンクを中心に取り上げております。自分が感動した音楽を、積極的に紹介していきたいと思いますので、よろしくお願いします。 

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2014/08/05

fucked up 『David Comes to Life』

デヴィッド・カムズ・トゥ・ライフデヴィッド・カムズ・トゥ・ライフ
ファックト・アップ

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 11年発表の3作目。今作では前作までの6分強の長めの曲からさらに発展した、ロックオペラに挑戦している。

 物語は4章から構成されており、舞台は70年代から80年代にかけてのイギリス。主人公のデビットが、聞き役のオクタビオ・サン・ローランとの会話を中心に物語りは進んでいく。サッチャー政権によって苦しむ労働者の生活を描いている。

 第一章では<愛、そして悲劇が街を襲う>とタイトルが名付けられており、デビット・エリアーデというイギリスの電球工場で働く労働者が主人公。デビットとヴェロニカは活動家で、身を焦がすほどの熱烈な恋に落ちるという物語。

 第二章は<ヴェロニカを失い罪悪感と絶望に暮れるデビット>というタイトルが付けられている。内容は恋人同士であることに楽しんでいた2人だが、ある日賃金を搾取する工場に対して疑念を抱く。怒りに満ちたヴェロニカは抗議活動に出る。爆弾を作り工場を襲撃しようとする。しかし襲撃は失敗し、反対にヴェロニカが爆発に巻き込まれ死んでしまう。ヴェロニカを失ったデビットは悲しみに明け暮れ、ヴェロニカとの思い出に浸り、死への罪悪感に苛まれてしまう。

 第三章は<ヴェロニカの死の責任>というタイトル。ここで初めてオクタビオ・サン・ローランが登場し、自分の意見を述べる。なぜ彼女が死ななければいけなかったのか、その意味を考えろ。生き残ったものはヴェロニカの意思を受け継がなければいけない。デビットに今の落ちぶれた状況から立ち上がれと喚起する。だがオクタビオの説得を、自分を間違った方向に行動させようとしているのではないかと、デビットは穿った見方をする。デビットは誰も信用できなくなり、人間不信に陥っている。オクタビオは旧約聖書や逸話を持ち出し、デビットを説得する。

 第四章は<ヴィヴィアンからの暴露とヴェロニカの死の意味。オクタビオとヴィヴィアンの説得により、デビットは生まれ変わっていく>というタイトル。犯行現場にいたヴィヴィアンは、爆発の計画をしたリーダはオクタビオであったことを告げる。そしてオクタビオの告白が始まり、仕事の役割だった集団のリーダーであることの愚かさを認め、周囲に利用された人間であることと、工場に負けを認め、罪の意識に苛まれていると告げた。そしてヴィヴィアンによる、悲しみを乗り越えるためのデビットへの説得が始まる。そしてヴェロニカの生きられなかった人生や夢をデビットの心に刻み、立ち直っていく。

 サッチャー政権といえば、労働者階級にとって、悪政を強いた政治家として知られている。1年前に亡くなったとき、労働者階級出身のミュージシャンたちは、こぞってサッチャーの悪口を言っていた。今回のロックオペラもそんな時代背景がベースとなっており、政治や支配者階級への怒り根底にある。その根底にある憎しみから、デビットの熱愛や後悔、罪悪感、絶望から再生まで、細かい心情や感情の揺れ動きを見事に表現している。プロットも細かい設定にこだわった、まさにザ・キンクスの『ヴィレッジ・グリーン・プレザーヴェーション』に匹敵する壮大なロック・オペラだ。

 サウンドはパワフルなギターコードと、2コードの軽い音のメロディーを中心に、細部の設定にこだわった作りになっている。ここではグリーンディのようなメドレーはなく、あくまでキンクスのような作り。音に対するこだわりよりも、ボーカルのメッセージや心情をいかにうまく聞かせるかという作りになっている。たとえば第一章では、女性ボーカルとの掛け合いや鐘の音のように響くメロディーは、希望に満ち溢れている。そして第二章でスピードのピッチが上がり、ブンブンうねるベースがデビットの興奮状態を表現し、ボーカルの怒声も苦痛の慟哭に変わっている。第三章では心の揺れを表現しているサイケデリックなメロディーが印象的で、怒声も後悔の罪の告白のような痛々しさが帯びている。第四章は、第一章のときに戻ったような希望に満ち溢れた鐘のように響くメロディーが印象的。だがボーカルは苦難を乗り越え希望に向かって進んでいくような意志の強さを感じ取ることができる。若干、音が軽くなったような印象を受けるが、ロックオペラという古きよきものと、ハードコアという彼らの信念となしている音楽を組み合わせた。今までになかった新しい形のポスト・コアを提示したことに間違いない。

 だがやはりコンセプトが壮大なため、頭デッカチになっている印象を受ける。本来ハードコアとは、フラストレーションを吐き出すようなカタルシスや、聴いていて行動に出なければダメなんだという、熱い気持ちを駆り立てるようなサウンド的な魅力があった。思想とサウンドが一体化したとき尋常でないパワーが生まれた。だがここでは思想とロックオペラという新しい発想に重点を置きすぎているため、ハードコアの本来の魅力を失われている。やはり6分を超える遠大な曲をハードコアで表現すると、歯切れのよさや爽快感が失われている。新しいことにチャレンジしていく姿勢は評価できるが、やはり無理があると感じた作品だった。

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