プロフィール

  •    宮本 一高         (みやもと かずたか)
                                        音楽ライターを目指しているものです。EAT MAGAZINEやDOLLなどで執筆をしておりました。おもにエモ、ハードコア、スクリーモ、メロディックパンクを中心に取り上げております。自分が感動した音楽を、積極的に紹介していきたいと思いますので、よろしくお願いします。 

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2014年8月

2014/08/30

GREEN DAY 『Dos!』

ドス!ドス!
グリーン・デイ

ワーナーミュージック・ジャパン 2012-11-13
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 12年発表の10作目。3部作の第2部。各部ごとのテーマは、第1部の『ウノ!』が<原点回帰の青春時代>で、第2部の『ドス!』は<セックス、ドラッグ、ロックンロール>、3部作の『トレ!』が「パーティーの翌朝の自己反省」になっているそうだ。

 第2部である今作は、そのテーマどおりヘヴィーなロック・ナンバーがメインになっている。ここではギターメロディーに力を入れ、ロカビリーやガレージ、ヒップホップっぽい曲や、AC/DCのようなハードロックを、メロディック・パンクに融合している。たとえるなら『ニムロッド』にあった“ヒッチン・ア・ライド”のようなヘヴィーな曲を、バラエティー豊かに増やした感じだ。そして80年代のアメリカMTVのような派手なショウビジネスの世界観を構築している。長髪で豹柄と革パンが似合う、エロチックで派手でワイルドなロックを展開している。

 全作品のなかで、彼らのライヴパフォーマンスで観られるような素顔をさらけだしたのは、この作品のみではないか。ここにはノー天気で明るく無邪気でコミカルな、公的イメージのグリーンディがある。個人的には『ウノ!』のほうが好きだが、ハードで無邪気なグリーンディも悪くない。

2014/08/28

GREEN DAY 『Uno!』

ウノ!ウノ!
グリーン・デイ

ワーナーミュージック・ジャパン 2012-09-25
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 12年9月に発表された9作目。12年の2月にレコーディングされた3部作の第1作目。スペイン語で“1”という意味の『ウノ』というタイトルが付けられた今作は、原点回帰のメロディック・パンクを展開している。

 グリーンデイというバンドは大雑把に分けて3期からなる。第1期はメロディック・パンク期。ここに該当するのは、インディーでのデビュー作、『39/スムーズ』、『カープランク』、『ドゥーキー』、『インソムニアック』、『ニムロッド』の5枚。全作とも感情の方向性とは違え、総じてコードギターを中心としたパンキッシュなサウンドを展開している。そして第2期は、パンクギターを止めアコースティック・ギターを中心に、カントリーやバラードを展開した『ウォーニング』、ザ・フーやキンクスのロック・オペラをパンク風にアレンジしパンク・オペラという新たな個性を確立した『アメリカン・イデオット』と『21世紀のブレイクダウン』が第3期にあたる。

 これらの作品と比べてみると、シンプルなメロディック・パンクを基調としている今作は、第1期を意識した曲作りをしたことに間違いない。だがいままでグリーンデイは、他者とのコミニケーション不全や孤独や疎外感にあふれた『39/スムーズ』、『カープランク』や、未来への絶望を暗い内省に叩け付けた『ドゥーキー』、怒りと皮肉に満ちた『インソムニアック』と、自省的でありながらもカラッと開き直った明るさの『ニムロッド』と、1作品ごとに異なる感情を表現しながらも、ネガティヴな感情を追求していた。

 今作では、8ビートのシンプルなメロディック・パンクで、ラモーンズをさらにポップに明るくしたサウンドを展開している。インタビューで発言していたとおり、過去を振り返り原点回帰したサウンドを、現在の感性を加え、蘇らせている。その現在の感性とは、恋愛のドキドキ感や、箸が転げ落ちただけで楽しいと感じる胸が高鳴る想い。誰もが一度は経験するすばらしき楽しい日々の衝動だ。それが彼らのリアルタイムで表現したい感情なのだ。

 前作の『21世紀のブレイクダウン』は、彼らの魅力であるパンキッシュなサウンドが失われていて、正直、好きな作品ではなかった。ここでは本来彼らの魅力であるシンプルでパンキッシュなサウンドの彼らが戻ってきている。前作の頭でっかちな難解さも取り払われていて、シンプルに人生を楽しもうぜ、という姿勢が貫かれている。それが今作のすばらしいさなのだ。

2014/08/25

Cerebral Ballzy 『ジェイディッド &フェイデッド 』

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Cerebral Ballzy セレブラル・ボールジー

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 14年に発表された2作目。バッド・ブレインズと7セコンズから影響の受けたオールドスクールなハードコアをベースにしたサウンドこそ変わりはないが、前作よりも、過激に派手に進化している。

 すべての曲が2分台で躁病的なファストなハードコアであることは変わりはないが、今作では特にギターが変わった。バリバリと地響きのように響くノイジーなギターが中心で、前作よりも過激で尖ったサウンドを奏でている。全体的にシリアスな空気を紡ぎだすギターと、不協和音の限界にあるひしゃげたノイズギターを中心に、すばやく始まりすばやく終わる展開。サウンド自体あまり変化はないが、前作よりもギターのノイズ度が増したため、より過激になっている。

 全体的にあいかわらずタイトさや熱さ、パワフルさとは無縁。シリアスでありながら退廃的。自暴自棄気味の荒々しさが今作の特徴だ。サウンド的にはバッド・ブレインズや7セコンズの影響が強いが精神的な部分ではジャームスからのアメリカン・ハードコアの伝統をしっかりと受け継いでいる。

 クリーンで丁寧な演奏とは真逆の、不快なノイズとヤケ気味の演奏スタイルを貫いたことによって、前作よりも確実に進歩している。前作よりもいい作品に仕上げっている。サウンド自体もさることながら、精神的な意味でも、これぞハードコアという王道を貫いた作品だ。

2014/08/16

fucked up 『Glass Boys』

グラス・ボーイズグラス・ボーイズ
Fucked Up

ホステス 2014-06-24
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 14年に発表された4作目。前作のロック・オペラとはうって変わり、ここでは1stアルバムのような原点回帰なサウンドを展開している。今作では、シーン自体が硬直化し、無害なバンドたちばかりが増えた現在のパンクシーンを憂い、かつてすばらしかった過去のパンクシーンのような、活気を取り戻すことがテーマにしている。精神的な意味で言えば、ラブソングなどのハッピーソングを歌う、無害なバンドたちばかりが増えた現在のパンクシーンを痛烈に批判し、70年代のパンク・バンドのような、闘争的で有害なパンク・アティチュードを取り戻す、ということなのだろう。そのアティテュードが反映されているサウンド面では、かつてセックス・ピストルズのジョニー・ロットンが、「ロックは死んだ」と発言したことによって、古きスタイルのロックを解体し、今までになかった新しい形のロック・サウンドを提示したように、ロックを新しく生まれ変わらせることがテーマになっている。

 今作では前作で確立したハードコア・オペラを辞め、『ケミストリー・オブ・コモン・ライフ』で確立したサウンド・フォーマットに、60年代のサイケやREMなどメロディーを加え、色彩豊かな作品に仕上がっている。6分代の曲が中心だった前作よりも3分から4分台の曲が増え、時間が大幅に短縮されている。たとえば“サン・グラス”では、アコースティックと女性コーラスの軽快な音に、熱く気合の入ったボーカルの怒声を加えることによって、さわやかさと熱汗という相反する要素が混ざり合う奇妙なサウンドを展開している。“ワーム・チェンジ”では、ダグ・ナスティーのような元気なメロディーと60年代の暗く陰りのあるサイケデリックなメロディーに、ハードコアの分厚いサウンドを融合してミステリアスなサウンドを展開している。総じて木陰でまどろむのような明るいメロディーが中心で、そこに相反する熱さや気合などのボーカルが加わることのよって、二律背反を強調し、新しい形のハードコアのスタイルを提示している。

 だがボーカルの迫力こそ相変わらずだが、『ケミストリー・オブ・コモン・ライフ』とは違い、サウンドの前へ進んでいくような突破力や気合やパワーといった熱量がない。あるのは気だるさと休憩しているときのようなゆるさだ。爽やかさと熱汗のコントラストが、感情的に中途半端になっている。今作のテーマである、前衛的なパンクであろうとする姿勢が、返って逆効果を招いてしまった。演奏技術や新しいサウンドを追求するあまり、表現しようとしている感情が置き去りになってしまっている印象を受けた。サウンド的には新しい形のハードコアを提示したことは間違いないが、彼らの持ち味であるストロングなハードコアの突破力とパワーが失われてしまっているところが残念に思えた。

2014/08/05

fucked up 『David Comes to Life』

デヴィッド・カムズ・トゥ・ライフデヴィッド・カムズ・トゥ・ライフ
ファックト・アップ

SMJ 2012-06-26
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 11年発表の3作目。今作では前作までの6分強の長めの曲からさらに発展した、ロックオペラに挑戦している。

 物語は4章から構成されており、舞台は70年代から80年代にかけてのイギリス。主人公のデビットが、聞き役のオクタビオ・サン・ローランとの会話を中心に物語りは進んでいく。サッチャー政権によって苦しむ労働者の生活を描いている。

 第一章では<愛、そして悲劇が街を襲う>とタイトルが名付けられており、デビット・エリアーデというイギリスの電球工場で働く労働者が主人公。デビットとヴェロニカは活動家で、身を焦がすほどの熱烈な恋に落ちるという物語。

 第二章は<ヴェロニカを失い罪悪感と絶望に暮れるデビット>というタイトルが付けられている。内容は恋人同士であることに楽しんでいた2人だが、ある日賃金を搾取する工場に対して疑念を抱く。怒りに満ちたヴェロニカは抗議活動に出る。爆弾を作り工場を襲撃しようとする。しかし襲撃は失敗し、反対にヴェロニカが爆発に巻き込まれ死んでしまう。ヴェロニカを失ったデビットは悲しみに明け暮れ、ヴェロニカとの思い出に浸り、死への罪悪感に苛まれてしまう。

 第三章は<ヴェロニカの死の責任>というタイトル。ここで初めてオクタビオ・サン・ローランが登場し、自分の意見を述べる。なぜ彼女が死ななければいけなかったのか、その意味を考えろ。生き残ったものはヴェロニカの意思を受け継がなければいけない。デビットに今の落ちぶれた状況から立ち上がれと喚起する。だがオクタビオの説得を、自分を間違った方向に行動させようとしているのではないかと、デビットは穿った見方をする。デビットは誰も信用できなくなり、人間不信に陥っている。オクタビオは旧約聖書や逸話を持ち出し、デビットを説得する。

 第四章は<ヴィヴィアンからの暴露とヴェロニカの死の意味。オクタビオとヴィヴィアンの説得により、デビットは生まれ変わっていく>というタイトル。犯行現場にいたヴィヴィアンは、爆発の計画をしたリーダはオクタビオであったことを告げる。そしてオクタビオの告白が始まり、仕事の役割だった集団のリーダーであることの愚かさを認め、周囲に利用された人間であることと、工場に負けを認め、罪の意識に苛まれていると告げた。そしてヴィヴィアンによる、悲しみを乗り越えるためのデビットへの説得が始まる。そしてヴェロニカの生きられなかった人生や夢をデビットの心に刻み、立ち直っていく。

 サッチャー政権といえば、労働者階級にとって、悪政を強いた政治家として知られている。1年前に亡くなったとき、労働者階級出身のミュージシャンたちは、こぞってサッチャーの悪口を言っていた。今回のロックオペラもそんな時代背景がベースとなっており、政治や支配者階級への怒り根底にある。その根底にある憎しみから、デビットの熱愛や後悔、罪悪感、絶望から再生まで、細かい心情や感情の揺れ動きを見事に表現している。プロットも細かい設定にこだわった、まさにザ・キンクスの『ヴィレッジ・グリーン・プレザーヴェーション』に匹敵する壮大なロック・オペラだ。

 サウンドはパワフルなギターコードと、2コードの軽い音のメロディーを中心に、細部の設定にこだわった作りになっている。ここではグリーンディのようなメドレーはなく、あくまでキンクスのような作り。音に対するこだわりよりも、ボーカルのメッセージや心情をいかにうまく聞かせるかという作りになっている。たとえば第一章では、女性ボーカルとの掛け合いや鐘の音のように響くメロディーは、希望に満ち溢れている。そして第二章でスピードのピッチが上がり、ブンブンうねるベースがデビットの興奮状態を表現し、ボーカルの怒声も苦痛の慟哭に変わっている。第三章では心の揺れを表現しているサイケデリックなメロディーが印象的で、怒声も後悔の罪の告白のような痛々しさが帯びている。第四章は、第一章のときに戻ったような希望に満ち溢れた鐘のように響くメロディーが印象的。だがボーカルは苦難を乗り越え希望に向かって進んでいくような意志の強さを感じ取ることができる。若干、音が軽くなったような印象を受けるが、ロックオペラという古きよきものと、ハードコアという彼らの信念となしている音楽を組み合わせた。今までになかった新しい形のポスト・コアを提示したことに間違いない。

 だがやはりコンセプトが壮大なため、頭デッカチになっている印象を受ける。本来ハードコアとは、フラストレーションを吐き出すようなカタルシスや、聴いていて行動に出なければダメなんだという、熱い気持ちを駆り立てるようなサウンド的な魅力があった。思想とサウンドが一体化したとき尋常でないパワーが生まれた。だがここでは思想とロックオペラという新しい発想に重点を置きすぎているため、ハードコアの本来の魅力を失われている。やはり6分を超える遠大な曲をハードコアで表現すると、歯切れのよさや爽快感が失われている。新しいことにチャレンジしていく姿勢は評価できるが、やはり無理があると感じた作品だった。

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