プロフィール

  •    宮本 一高         (みやもと かずたか)
                                        音楽ライターを目指しているものです。EAT MAGAZINEやDOLLなどで執筆をしておりました。おもにエモ、ハードコア、スクリーモ、メロディックパンクを中心に取り上げております。自分が感動した音楽を、積極的に紹介していきたいと思いますので、よろしくお願いします。 

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2014年10月

2014/10/25

ISSUES 『ISSUES』

イシューズ
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インディーズレーベル 2014-02-18
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 14年に発表されたデビューアルバム。デビューEP発表から2年もの歳月がかかった理由は、メンバーが大幅に入れ替わったからだ。そもそもイシューズは、ウォウ、イズ・ミーというスクリーモ・バンドから脱退したタイラー・カーター、マイケル・ボン、コリー・フェリス、ベン・フェリス を中心に結成された。そして13年には、ベースのコリーとキーボードのベン、ドラムのケースが脱退。メンバーがいままで安定しなかったのだ。

 今作では、前作で確立したリンプ・ビスキッドのようなスクラッチを取り入れたニューメタルやエンターシカリなどのユーロビート、ヒップホップなどの要素をブレンドした、メロディック・デスメタル、もしくはスクリーモの進化系のサウンドをさらに極めた作品に仕上がっている。その深化とは、前作よりもさらに美しさが増しながらも、エキゾチックでミステリアスさが強調されている部にある。野獣の咆哮のようなデス声、暴力的に荒々しいギターのリフ、ミステリアスななヒップホップとユーロビートに、カオティックなスクラッチに、地獄の底で桃源郷の幻覚を見ているような高く美しい女性の歌声のようなボーカル。それらの要素が違和感なく一曲にまとめられている。美しさと醜さや、弱さと強さ、軽やかさと重たさなどの二律背反する要素が、さらに際立つようになりながらも、幻想的な美しくミステリアスなサウンドに仕上がっている。ニューメタルだとリンプビズキットの流れを踏襲しているし、メロデスだとインフレイムの影響をうえのでの進化だ。そしてそこにア・スカイリッド・ドライブの美と醜のアンビバレンスなスクリーモを加え、スペイシーで近未来的なミステリアスで幻想的な世界観に統一している。前世代的な要素をひとまとめにしたサウンドは、まさに10年代を代表するスクリーモ、メロディック・デスメタルの最新進化型といえるだろう。

 

2014/10/13

Issues (イシューズ)  『Black Diamonds (ブラック・ダイヤモンズ)』

Black DiamondsBlack Diamonds
Issues

Rise Records 2012-11-12
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 アトランタ出身のポストハードコア?バンドの12年に発表された6曲入りのデビューEP。オルタナプレスの未来を担うメタルコア・バンド10選の1位に選ばれた実力だけあって、現在、注目されているバンドでもある。

 個人的にはメタルコア・バンドというよりも、スクラッチなどのリンプ・ビスキッドのようなニューメタルやエンターシカリなどのユーロビート、ヒップホップなどの要素をブレンドし、発展させた、メロディック・デスメタルバンドの進化系だと捉えている。

 そのサウンドは、ユーロビートの近未来的でミステリアスなデジタル・サウンドに反響する美声と、荒廃した都市のような重厚でノイジーなギターのリフとデス声の、二律背反する要素がぶつかり合うサウンド。たいていの人ならば、ヘヴィーミュージックに対してうるさく不快な要素を追求した音楽だという印象を持っている人も多いと思うが、ここでは都会的でおしゃれなものとして処理している。それがこのバンドの魅力といえるだろう。まさに新世代を代表するいろいろな要素が混ざった新しい形のヘヴィーロックなのだ。

2014/10/10

Gaslight Anthem (ザ・ガスライト・アンセム)  『Get Hurt (ゲット・ハット)』

Get Hurt -Deluxe-Get Hurt -Deluxe-
Gaslight Anthem

Mercury 2014-08-11
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 14年に発表された5作目。前作『ハンドリトゥン』は、ファンク、ブルースにクラッシュ系のパンクロックを融合させた60年代の匂いがするパンクロックだった。その作品と比べると、今作ではバラードが多くアップテンポのパンクナンバーがなくなり、現代よりのサウンドで、静的な作品に仕上がっている。

 今作では<怪我>と名付けられたアルバムのタイトルどおり、心に負った傷をテーマにしている。ボーカルのブライアン・ファロンが、自身の体験した離婚の体験談をベースに、そのときの負った心の傷や痛みなどの感じた感情やエピソードなどを赤裸々に語っている。“ステイ・ヴィシャス”では、軽やかで切ないメロディーと淡々と不幸を語るような感情を制御した歌い方で、心の奥底にある悲しみを堪えている。“ゲット・ハット”は繊細でシリアスなメロディーが、全てが終わったときの絶望感が漂ってい、“セレクトド・ポエム”では失敗から学んだ姿勢があり、“ブレイク・ユア・ハート”はブルース・スプリングティーンの『ネブラスカ』に影響を受けた温かみのある素朴なバラードで、まるで遠くを眺めているような歌声で、傷口が癒え痛みを乗り越えたことによって、人間的な経験値が上がった。傷を負い、癒えていく過程を物語風に語っている。

 全体的にミドルテンポのバラードが多く、素朴でやさしく切ない美しいメロディーが魅力の作品だ。サウンド的にも新しいことにチャレンジしている。その新しさとはエモからの影響。今作ではエモの静の部分を突き詰めブルース・スプリングティーンの歌い方を混ぜた。彼らの魅力とはいままでブルースなどの60年代の古きよきアメリカ・サウンドに、ブルース・スプリングティーンとクラッシュ系のパンクをさせたサウンドにあった。60年代の要素がなくなり、サウンド的にも軟弱なイメージのあるエモを取り入れ、大幅に変わってしまった印象を受けるだろう。だが彼らの本質はまったく変わっていない。繊細で切ないメロディーを取り入れても、軟弱にならない理由は、男くさいボーカルにある。そこにあるのは高倉健のような無口で静かな朴訥さ。心の痛みを我慢強く耐えている不器用な男くさい姿があるのだ。彼らの本質はまったく変わっていないのだ。悲しみを我慢強く耐えている姿勢には共感できるし、今作も安定していいアルバムなのだ。

2014/10/07

アナーキー進化論   『グレッグ・グラフィン、スティーブ・オルソン』

370

アナーキー進化論アナーキー進化論
グレッグ グラフィン スティーヴ オルソン Greg Graffin

柏書房 2014-07
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 バッド・レリジョンのボーカルにして生物学の博士号でUCLA大学で生物学の講師を務めるのグレッグ・グラフィンと、サイエンスライターのスティーブ・オルソンによる共著。その内容は、バッド・レリジョンの結成から転換期などの印象に残ったエピソードと、グレッグが宗教を否定する理由、自身が研究する進化論について語られている。

 率直な感想をいえば、グレッグ・グラフィンという人物も相当変わっている。いままでバッド・レリジョンというバンドは、2ビートの性急なスピードのハードコアに、メロディックな要素を取り入れ、メロディック・ハードコアというサウンド・スタイルを確立した。ハードコアというジャンルのなかで、それがバッド・レリジョンの確立した個性であり、その一点のみが評価されているのだと思っていた。しかしこの本を読むと、パンクの主義や思想という部分でも、バッド・ブレインズやマイナースレット、クラス、コンフリクトなどに匹敵する個性を、バッド・レリジョンは有したバンドだということが理解できた。

 バッド・レリジョンのパンク・ハードコア思想とは、あらゆる権威を否定すること。バンド名(悪い宗教)が示すとおり、とくにキリスト教の権威に歯向かうことに主眼を置いているようだ。聖書にある神が人間を創造したという話には、ダーウィンの進化論という見地から、そこに根拠がないということで論理的に否定している。アメリカでは日本と違って人間は神によって作られたという話本気で信じている人間が多いようだ――その人たちが共和党政権を支えている。宗教を本気で信じている人たちに、偏狭的な考え方を捨て、もっと広い世界の視野と、知識の扉を開いて欲しいと思い、バンド活動を続けているそうだ。パンク権威に立ち向かっていく姿勢と生物学、反宗教的の3つの要素が合わさったのが、バッド・レリジョンならではのパンク思想なのだ。この本を読んで、歌詞だけでは伝え切れていない、グレッグの奥深い考えを改めて知ることができた。

 個人的にこの本でとくに面白かったのは、バッド・レリジョンが最も売れたアルバム『ストレンジャー・ザン・フィクション』のときのエピソードだ。このアルバムはメジャーデビュー作で、バッド・レリジョンのなかでもっとも、商業的に成功したアルバムだ。この時期バッド・レリジョンは、全世界にそのなか知れ渡るほど知名度を得ていた。いうなら人気の絶頂にあったのだ。この時期グレッグ・グラフィンは、人生のターニングポイントで、大きな決断をしたという。それは大学での研究を辞め、バンド活動に専念すること。バンドという浮き沈みが激しいリスキーな生活に、人生を賭けたのだ。そんな矢先に起きた2つの不幸。ひとつはサウンド面のすべてを担当していたブレッド・ガーヴィッツの脱退。そしてもうひとつは自身の離婚。これからバンドでがんばっていこうとプレッシャーと戦い希望に満ち溢れた時期に、大きな傷となる精神的なダメージを2つ受けたのだ。人気の絶頂にあった、2つの大きな不幸。この人も数奇な運命をたどる人なのだと思った。

 この本で語られている内容の半分以上は自然主義や進化論や生物学についてのことで、バッド・レリジョンというバンドにしか興味のない人にとっては、いささか退屈に思える。しかも難解で訳本ならではの読みづらい箇所が多々ある。もう少し欲を言えば、ジャームスやブラッグ・フラッグ80年代からグリーンディやオフスプリングの90年代のパンクシーンについての移り変わりや、ここのバンドについて、パンクシーンについてもっと語って欲しいと思えた。その理由はスイサイダル・テンデンシーズのエピーソードがあまりにも面白かったから。そのあたりが残念に思えた箇所だが、バッド・レリジョン奥深い思想やエピソードはとても面白かった。バッド・レリジョン・ファンだけでなく、アメリカン・ハードコア・ファンは絶対に読んだほうがいい。それほど価値のある内容だ。

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