プロフィール

  •    宮本 一高         (みやもと かずたか)
                                        音楽ライターを目指しているものです。EAT MAGAZINEやDOLLなどで執筆をしておりました。おもにエモ、ハードコア、スクリーモ、メロディックパンクを中心に取り上げております。自分が感動した音楽を、積極的に紹介していきたいと思いますので、よろしくお願いします。 

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2014/12/30

Against Me! (アゲインスト・ミー!)   『Transgender Dysphoria Blues (トランスジェンダー・ディスフォリア・ブルース)』


Transgender Dysphoria BluesTransgender Dysphoria Blues
Against Me!

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 14年発表の6作目。この作品が発表されたとき、ぼくは大いに戸惑った。正直、いまでもどう受け止めればいいのか分からない。それほどのぼくを混乱に陥れた作品なのだ。

 ボーカルにしてフロントマンであるトム・ガベルが、トランスジェンダー(自分の性別に違和感のある人-―ゲイとは違い女性と結婚もしているし子供もいる)であることを告白したのが2012年。そして自らの名前をローラ・ジェーン・グレースに改名。今後はホルモン注射を受け、生きていくことを発表した。

 そんなプロセスを経て発表された今作は、『トランスジェンダー・身体的違和感・ブルース』というタイトルが示すとおり、トランスジェンダー/セクシャルマイノリティをテーマに歌われている。 サウンド的には、前作同様メロディーとリズム&ブルースに重点を置いたメロディック・パンク・サウンドを展開している。とくに進化をしている部分を上げるのなら、エモのようなキラキラメロディーを取り入れてたところか。前作よりもメロディーは美しくなっている箇所もあるが、とくに女性っぽく軟弱になった変化は見られない。総じて前作のように男っぽいサウンドを展開している。英語の分からない日本人からすれば、見た目や歌詞、アティテュードの変化を知らなければ、彼らが大幅に変わったことが理解できないだろう。それほどサウンド的には変わっていないのだ。

 だがやはり歌詞は考えさせられるものがある。“トランスジェンダー・ディスフォリア・ブルース”では、<あなたが可愛い女の子を見るような眼差しで私を見てほしい。でもゲイである私にはそれはかなわない夢。そしてあなたと二人で、私が幼いころから楽しんできたサーフィンをしながら、一日を過ごしたい。>そこには男でありながら女心を持ち、ゲイであるゆえに常人には理解されない感情と、結ばれることのない愛について歌っている。そしてトランスジェンダーの真の気持ちを歌った“トゥルー・トランス・ソウル・レベル”。そこでは男で産まれたのなら男であるべきという考えや、母親や妻を裏切ってまで女性になっていいのかという罪悪感や倫理観への葛藤に悶え苦しみながらも、トランスジェンダーになることを決断した内容が書かれている。自身が抱える深刻な問題に逃げず正面から立ち向かっているのだ。

 もしバンドで生活していくことを第一義に考えるのなら、トランスジェンダーであることを隠して活動を続けていくほうが、人気も落ちないし、最良の選択だろう。だがそれを許さなかったのは、バンド活動を始めたきっかけになったのイギリスのアナーコ・パンク・バンド、クラスの多大な影響にあるからだろう。クラスの反社会的でサッチャー政権という巨大な政治機構に立ち向かっていく姿勢や、マイノリティーであるフェミニストを擁護する内容の歌詞に憧れているから、黒いTシャツとGパンという格好のパンク・バンドを始めたのだ。たとえ命が狙われ、少数はゆえに多数派から叩かれても、自分たちの信念を貫くクラスの姿勢に憧れているから、トム・ガベル自身も、人気が落ち、忌み嫌われると判っていてもトランスジェンダーであることを告白をしたのだ。そういった意味では、どんなことがあっても自分の信念を貫ける真のパンク・アティテュードをもったバンドだといえるだろう。

 だがヴィジュアル的に正直、ぼくの心を惹かれるカッコいい存在のロックではない。イカれている、猥雑、歪んでいるといった世間的に悪い意味で使われる言葉がいい意味で使われるロック特有の逆説もここには存在しない。髭の濃さなどの男っぽさを残しながら女装をするトム・ガベルを、常人と同じように気持ちの悪い目で見ている自分が存在する。正直カーボーイの猥雑で荒々しい男くさいサウンドと姿が好きだったので、トランスジェンダーの告白に裏切られた気持ちもどこかある。だがトランスジェンダーであるがゆえにけっして結ばれることのない恋愛感情と、差別への歌詞には胸が詰まるような悲しさと切なさを感じたのも事実だ。この作品で新しい見地を知ったのも事実だ。正直いまだにどのような評価をすれば分からず混乱している。いろいろな意味で考えさせられる作品だ。

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