プロフィール

  •    宮本 一高         (みやもと かずたか)
                                        音楽ライターを目指しているものです。EAT MAGAZINEやDOLLなどで執筆をしておりました。おもにエモ、ハードコア、スクリーモ、メロディックパンクを中心に取り上げております。自分が感動した音楽を、積極的に紹介していきたいと思いますので、よろしくお願いします。 

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2015年1月

2015/01/21

Copeland (コープランド)  『Ixora (イソラ)』

IxoraIxora
Copeland

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 2014年の再結成を経て発表された5作目。じつに6年振りとなる作品。コープランドといえば日本ではビューティフル・エモと呼ばれ、その名のとおり、氷細工のような、いまにも壊れそうなほど繊細で美しいサウンドを個性にしていたバンドである。

 そもそもコープランドが08年に解散を決めた理由は、前年に発表した『マイ・サンシャイン』のセールスが伸びず、アルバム制作でお金を使い果たし、メンバー全員が辞めていったからだそうだ。バンドを続けたくても財政的な理由で活動を続けることが困難になり、解散せざる得なかったようだ。ただ唯一救いだったのが、バンド活動でありがちなメンバー同士の音楽性のずれや、長く一緒にいることによって生じる人間関係の悪化などのトラブルではなかったことだ。人間関係による軋轢ではないから、バンドに対する情熱や、アルバム制作への意欲が、6年経っても薄れることはなかったのだろう。いや、むしろ情熱が高まっていったのではないか。だからアルバム制作のできる財力が整ったいま、再結成したのではないか。

 そんな曲折を経て発表された今作は、初期のころから一貫している氷細工のような美しい音を、今作でも追求している。だがやり残したことがたくさんあったのか、演奏の部分では前作よりもさらに技術が進化したサウンドを展開している。たとえば“デスジョインデッド”では、ピアノと電子音とヴァイオリンの絡みが陰鬱な深い森の中を彷徨っているようなアンサンブルをみせ、“アイ・キャン・メイク・ユー・フィール・ヤング・アゲイン”では、思慮深いギターの隙間を這うように神経質な電子音が鳴り響き、悲劇を告げられるようなエレクトロな音から暗く沈んだトーンのボーカルが悲しみを紡いでいく。ドラマチックで劇的にめまぐるしく変わる展開だ。初期2枚はギターのみの曲や、ピアノのみの曲、アカペラのみの曲など、シンプルなサウンドを展開していた。それが3作目の『イート、スリープ、リピート』でメインメロディーのパートをギターとピアノの2つの楽器が担当し、交互に入れ替わる展開を見せた。そして4作目の『マイ・サンシャイン』では、ボーカルにエフェクトをかけた曲などの新しいことにチャレンジした。そして今作では、さらに電子音やシンセ、鉄琴などの音を加え、複雑に構築されたエレクトロニカなサウンドを演奏。サウンドがめまぐるしく変わる展開を見せている。前作のサウンドフォーマットを踏襲し、そこにプラスアルファを加え、技術的な成長を遂げた。美しさを追求しながらも、いろいろな音が複雑に構築された今作は、彼らの目指していた技術的な頂点であり、サウンドの完成系といえるだろう。

 演奏技術の面では複雑に入り組んだ作品で、すばらしいと思う。だがそれにしても暗い。聴いていて絶望するような憂鬱で暗い気分になる。前作には人を恨んでいるような心の闇を感じたし、アルバムを重ねるごとにネガティヴな方向に向かっていっている気がする。ぼくのなかでコープランドの一番好きなアルバムはデビュー作の『ビニース・メディスン・トゥリー』だ。演奏技術的にはコールドプレイやジミー・イート・ワールドからの影響から抜けきれず未熟さを感じる作品だが、ここにはクリスチャンならではの透明で神秘的な世界感があった。厳かで華やかなライトに飾られたクリスマスツリーのようなキラキラ光る美しいサウンドには、聴いていて心が浄化されるような安らぎと清らかな気分にさせられた。子供のころに初めてクリスマスツリーを見たときのような、歓びに満ちた清らかな童心を蘇らせてくれた作品は、このアルバムが初めてだった。それほど神秘的な雰囲気に満ちていたし、日本人のぼくからすると、西洋文化の神秘さに対する憧れを強く感じた作品だった。だがアルバムを重ねるごとにその初期衝動がだんだんと薄れてきた。たしかに悲しみのスポットを当てたサード、皮肉がテーマだった『マイ・サンシャイン』、そして陰鬱な暗さをフォーカスした今作と、アルバムごとに感情が向かっているベクトルが違う。だが、アルバムを重ねるごとにネガティヴな要素が際立つようになって来た。もうちょっと明るい部分にスポットを当ててくれたら、すばらしい作品になったのではないかと思えた。サウンドはいいだけに少し残念に思えた。


2015/01/06

Fugazi (フガジ)   『First Demo (ファースト・デモ)』

First DemoFirst Demo
Fugazi

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 ポスト・ハードコアを代表するバンドで知られるフガジの14年に発表されたデモ集。88年にフガジを結成してインナイヤースタジオにて収録された初めてのデモ音源で、その内容は後の2枚のEPを合わせたデビュー作の『13ソングス』に収録された曲が3曲、2ndアルバム『リピーター』から4曲、01年に発表されたEP『ファニチャー』から1曲、89年にフガジが参加したコンピレーションアルバム『ステイト・オブ・ザ・ユニオン』から“イン・ディフェンス・オブ・ヒューマンズ”、02年にディスコード・レーベル創設20周年を記念して発売されたボックス・セットから“ザ・ワールド”、96年に来日したフガジのライブ音源でのちに1000枚日本限定で発売された『10/30/96 SAPPORO JAPAN COUNTERACTION』から“ターン・オフ・ユア・ガンズ”のデモ・ヴァージョンが計11曲が収録されている。

  あくまでもデモだけあって、全体的にラフな仕上がりだ。だからこの作品の最大の価値は、“イン・ディフェンス・オブ・ヒューマンズ”や“ザ・ワールド”などのレアトラックと、いままで日本限定のライヴCD、もしくはダウンロード音源でしか聴くことのできなかった“ターン・オフ・ユア・ガンズ”のレコーディング音源にあるだろう。だが細部まで目を配らせると、この作品の魅力はほか曲にもある。たとえば“ウェイティング・ルーム”では、ラフな感情で作られていて、今作ではあくまでもベースが中心に作られている。それが『13ソングス』では、ボーカルが奥に引っ込み、ギターアレンジが肉付けがされて、曲の深みが増している。そして何より面白いのは、フガジを結成して一番最初に収録されたデモなのに、作品としては一番最後の年に発表された“ファニチャー”だろう。約13年間寝かせ発表された曲だが、フガジは似通った作品を作らないバンドだし、アルバムを重ねるごとに、新しいエッセンスが加わえ、技術的に確実に進化をしている。だがここでは初期のギターのフレーズがループするよさを残しつつも、突如激しくなるパートの部分が洗練されたギターサウンドを肉付けした形に仕上がっている。初期の荒削りなよさと後期の技巧がうまいこと混ざり合っているのだ。

 上記のような初期と最終期がまざった珍しい曲もあるが、デモだけあってやはり全体的に完成度は低い。だがここではバンドを結成した当初の生々しい感情が詰まっている。とくにトリッキーで変則的なリズムと、力強く爪弾くギターアレンジには、どこにもないオリジナルなサウンドを作ってやろうとする気迫を感じ取ることができる。青春時代を真空パックに閉じ込めたような青々しいころの彼らが見える作品なのだ。


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