プロフィール

  •    宮本 一高         (みやもと かずたか)
                                        音楽ライターを目指しているものです。EAT MAGAZINEやDOLLなどで執筆をしておりました。おもにエモ、ハードコア、スクリーモ、メロディックパンクを中心に取り上げております。自分が感動した音楽を、積極的に紹介していきたいと思いますので、よろしくお願いします。 

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2015年7月

2015/07/13

Refused (リフューズド)   『Freedom (フリーダム)』


FreedomFreedom
Refused

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 15年7月に発売されたじつに17年ぶりとなる作品。2012年の再結成からワールドツアーを重ねて、よほどの手ごたえを感じたのだろう。一回限定の再結成ツアーが、アルバム発売までいたったのだから。あくまでも憶測だが、おそらく今作を発表した理由は、彼らの人気がスウェーデンだけに留まらず、全世界へと広がっていることに気付いたからではないか。日本でもそうだが、いままでおそらくアメリカでも伝説のバンドという、扱いだったのではないか。アメリカの大手インディーズメーカー、エピタフからの発売も手伝って、前作『シェイプ・オブ・パンク・トゥ・カム』は、それほど絶大なインパクトを残し、全世界へと普及した作品であったのだ。その実験的なサウンドは、安易な商業主義的な音楽とは一線を画し、一部の金持ちだけが暴利をむさぼる資本主義的な体制を徹底的に批判していた。たとえ周囲に評価されなくても、自分たちにしかありえないオリジナルティーを追求し、演りたいことを貫く。その実験性と攻撃的な闘争心にあふれたサウンドで、妥協を許さない信念に満ちたハードコア精神を貫いていた。その姿勢が神格化された要因だろう。

 あれから17年の歳月が経ち、発売された今作は、前作の切り貼りしたフレーズがめまぐるしくクルクル入れ替わるカオティックなサウンド・フォーマットを踏襲している。だが、別のアプローチから進化させているため、前作とはまったく異なるサウンドを展開している。とくに70年代のエレクトロ・ファンクのリズムや80年代のLAメタルやスラッシュメタルなどのフレーズが目立つ。“ドーキンス・キリスト”は甘く魅惑的な女性のボーカルの声で始まるが、全体の骨格を担っているスラッシュメタルのリフが、地獄の黙示録のような雰囲気を作っている。“オールド・フレンズ/ニュー・ウォー”は、エレクトロ・ファンクという現代的な音楽に、12モンキーズのドラッギーな要素を組み合わせ、現代風にアレンジしているが、リズムがファンクだけにどこか古さを感じる。“ウォー・オン・ザ・パレス”はホーンや土臭いバーボンロックのようなギターフレーズが、ゴージャスなロックサウンドをイメージさせる。総じてこのアルバムから感じる雰囲気は、豹柄の服と革パンをはいた、キャバレーや派手なネオン管のサインと結びついた80年代末のアメリカロックのようなゴージャスで派手で淫靡な雰囲気。あるのは80年代の古いものを蘇らせたノスタルジー。ここには、前作のよさであった、道なき道を切り開いていくようなフロンティアスピリッツや、まだ誰もなしとげていない未知なるサウンドに挑戦していく気迫がない。いまの時代性の音楽を自分たちのサウンドに取り入れたり、前作を超える作品を作ろうとする気概や、ハードコアをさらに進化させようとする意思なども感じられない。

 個人的な見解だが、おそらく本人たちもあまりにも神格化されすぎた前作を超える作品を作ることは不可能だと理解していたのだろう。だから、過去に発表したサウンドとは180°異なるジャンルの作品を発表するKYなアメリカアーティストのような自由さで、今回の現代のトレンドや過去の自分たちのサウンドを無視した作品を作ったのではないか。まさにタイトルどおり自由にやっている。まるで伝説と化した過去の評価を、自分たちで壊し、再構築している作品だ。そういった意味では、彼らのパンク精神は失われていないのだ。


2015/07/04

Refused (リフューズド)   『Shape of Punk to Come (シェイプ・オブ・パンク・トゥ・カム)』

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Refused

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 98年発表の3作目。これがラストアルバムとなる作品。このアルバムを発表後、彼らは解散を発表する。解散を決意したバンドの作品というのは、たいてい目指していたサウンドの方向性が臨界点を超えたため、いささか倦怠的なムードの漂っていることが多い。だがここには弛んだところは一切ないし、覇気もいささかも衰えていない。倦怠期を迎えたバンドの作品とは思えない、クオリティーの高い出来に仕上がっている。

 おそらくハードコア・バンドとしてのリフューズドは、前作が最高傑作だったのだろう。今作ではハードコアの荒々しいギターが減少している。だがらといってけっして悪い作品ではない。なぜなら前作で確立したボーン・アゲインストのカオティックな要素と、フガジの実験性あふれるフレーズを切り貼りしたサウンドを、さらに推し進めているから、確実に進化を遂げている。彼らの目指していたサウンドスタイルが完成したのは、今作といえるだろう。アルバム名はサックス奏者、オーネット・コールマンが59年に発表し、フリージャズという前衛的なサウンドを確立した作品『ザ・シェイプ・オブ・ジャズ・トゥ・カム』からをもじり、『シェイプ・オブ・パンク・トゥ・カム』と名付けた。そのアルバム名からは、前衛的なパンク・サウンドを確立したという自負と表明を感じることができる。

 前作でベースとなっていた荒々しいハードコアのギターサウンドこそ減少したが、車の音やインダストリアルな工場の音のSEや、フリージャズ、アコースティック、スカ、ノイズ、デジタルのフレーズが、カオティックにめまぐるしく入れ替わるサウンドを展開している。

 これだけいろいろな要素を詰め込むと音の整合性が難しく、消化不良に終わるケースも多々ある。だがこの作品がすばらしいのは、一つ一つのフレーズのかっこよさにある。ここで使われているフレーズは、美しいメロディーとは一線を画したどれもマイナーな音ばかり。たとえば“ニュー・ノイズ”では、時限爆弾のタイマーが刻々と時間を刻むような緊迫感を孕んだフレーズで、“リベラシオン・フィクンシー”では、壊れたラジオのノイズ音とスカのフレーズが静かに闘争心を煽る展開だ。どのフレーズも鋭利に尖りカッコいい音だ。フリージャズのパンク版とでもいうような前衛的なサウンドに、絶叫するボーカルや、緊迫感をはらんだ熱く魂をたぎらせるようなハードコアの衝動で、アルバム全体を統一している。激しい闘争心を感じるハードコアスピリッツと、前衛的な新しいサウンドを確立していく熱意が、奇跡的なグルーヴを生んだ。すばらしい作品なのだ。

 この後、彼らは解散をするわけだが、おそらく決意した理由は、この作品で彼らが目指していたサウンドが完成し、バンドとして演りたいことをやりつくしたからではないか。ここでは、燃え尽きる前の激しい火花が散る瞬間をアルバムに閉じ込めている。まさに奇跡的な瞬間を収めたアルバムでもあるのだ。

 なお10年に発売された2CD+DVDの3枚組みでは、ライヴCDと06年に発売されたDVD『リフューズド・アー・ファッキング・デッド』が収録されている。

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