プロフィール

  •    宮本 一高         (みやもと かずたか)
                                        音楽ライターを目指しているものです。EAT MAGAZINEやDOLLなどで執筆をしておりました。おもにエモ、ハードコア、スクリーモ、メロディックパンクを中心に取り上げております。自分が感動した音楽を、積極的に紹介していきたいと思いますので、よろしくお願いします。 

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2015年8月

2015/08/31

DESAPARECIDOS (デサパレシドス) 『READ MUSIC SPEAK SPANISH (リード・ミュージック/スピーク・スパニッシュ )』


リード・ミュージック/スピーク・スパニッシュリード・ミュージック/スピーク・スパニッシュ
デサパレシドス

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03年に発表されたアメリカ中西部ネブラスカ出身の5人組によるバンドのデビュー作。デサパレシドスとは、スペイン語で戦争によって殺害された「行方不明者」という意味で、ブライト・アイズとして知られるシンガー・ソングライター、コナー・オバーストと彼の幼馴染みのデンバー・ダリーを中心に結成されたバンドだ。ボーカル兼ギタリストであるコナー・オバーストといえば、このバンド以外にもうひとつ掛け持っている、ブライト・アイズのボーカリストとして有名だ。世間的に地位も名声も手にしているブライト・アイズ以外に、コナー・オバーストがこのバンドを始めたという理由には、おそらく真逆のベクトルのサウンドと感情を表現したかったからだろう。

その真逆のサウンドとは、ノイズギターをベースにしたエモーショナル・ハードコア。だがほかのエモバンドとはあきらかに異なるサウンドを展開している。ベースになっているのはペイヴメントやセバドーなどのローファイの影響を感じるノイズギター。意図的に質の悪い音響器具を使い、ノイズを増幅させ、そこに浮遊感あるスペイシーなメロディーを合わせた。そこから感じるのは、いままで自分が築いてきたものをハンマーで粉々にするような爽快な破壊衝動。本来エモとは、繊細で触れれば崩れそうなデリケートさを穏やかなメロディーフレーズに載せ、激しいギターと高鳴るドラムングと叫び声で激情を表現し、静と動の感情がアップダウンしていく展開の音楽。だがここではセンシブな感情や内向的な表現はまったくない。あるのは外へ向かってストレスを発散していくスカッとした爽快感だ。おそらく感情のベクトルが外へ発散へ向かっている理由は、ブライト・アイズでじめっと暗いアコースティックで、音数の少ないミニマムなサウンドを追求し、静的でダウナーな感情を表現しているからだろう。だから必然的にうるさくノイジーなサウンドで苛立ちを叫びたくなったのではないか。その理由がこのバンドを立ち上げた動機ではないだろう。

とはいってもほかのエモバンドとは違い、しっかりとした個性がある。音質が悪くとことんノイジーで叫び声を上げるサウンドは、いままでエモ・バンドにはなかったサウンドだし、感情のベクトルも外へ向かっているエモはなかった。なにより、繊細な美しさを追求するエモバンドとは真逆に、あえてダーティに不快を貫こうという姿勢もいい。個性があるエモバンドを10つ挙げるなら、間違えなくその中の一つに入ってくる作品だ。


2015/08/01

Bikini Kill (ビキニ・キル)  『The First Two Records (ザ・ファースト・トゥー・レコーズ)』


The First Two RecordsThe First Two Records
Bikini Kill

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 90年代を代表するライオット・ガールと呼ばれたフェミニスト運動のシーンの中心バンドであった、ビキニ・キルの94年にLPで発売された初期2枚のEP(S/T EP, Yeah Yeah Yeah)をカップリングし、2015年に再発された編集盤。

 具体的な内容を説明すると、1から6曲目までが、91年に発売されたセルフタイトルEPで、1から4曲目までは91年7月にフガジのイアン・マッケイによって録音された曲だ。5曲目は91年に制作されたデモで、6曲目は91年の4月4日にワシントンDCのサンクチュアリ劇場で演奏されたライヴを収録している。そして7から20曲目は93年に発表されたLP『Yeah Yeah Yeah』を収録。その内容はワシントンDCのセント・ステファンズで行われたライヴを収録している。

 7から13までは93年に発売されたLP盤からで、91年の12月27日にワシントンDCのセント・ステファンズで行われたライヴを収録。13から20は2014年に25周年を記念して発売された拡張版に収められていた曲で、うち4曲はワシントンDCの地下練習スペースで記録された曲で、そのほかの3曲はライヴ音源を収録している。

 あらためて聴いていると、彼女たちのサウンドとは、ラモーンズ直系のシンプルなパンク・ロック。録音状態が悪いせいか、そんなに荒々しさや迫力を感じない音作りだ。ジョーン・ジェットのようなはち切れんばかりの男勝りなロックや、パティー・スミスのスローテンポから急激にピッチが上がり、冷静なインテリジェンスから激昂に変わっていくような前衛的で文学性を前面に出したロック・サウンドと比べると、主だった個性がないのも特徴だ。

 強いて個性を挙げるのなら、ヒステリックで甲高い金切り声のボーカルくらいか。あとはいたって普通のパンク・ロックだ。だがこの普通という感覚が彼女たちにとっては重要な要素となる。なにせ彼女たちが求めていたことは、男性からすればいたって普通な権利だからだ。彼女たちが一貫して歌い主張してきたのは、女性の権利。女性であることによって会社での出世が絶たれたり、同じ学歴で同じ能力の男性より下の職業しかつけないアメリカ社会への不満。女性大統領が存在しない政治への不信。性差別をなくし男性優位社会へピリオドを打つ。ただ世の中に男女が平等であるべきことだけを求めていたのだ。だから彼女たちはいたって普通な女性であることを強調してきたため、ロックバンドという局面から見れば、そんなに注目されるほど際立った個性のある存在に映らなかった。ごく普通の女性らしい格好と、特徴のないシンプルなパンク・ロックという二つの要素が彼女たちの評価を希薄なものにしてしまったのだろう。それがライオット・ガールというシーンをメディアがあまり取り上げてくれなかった理由ではないか。

 だがライオット・ガールというシーンと彼女たちのフェミニスト思想を全面に掲げたパンク・ロックは、マイナー・スレットのストレート・エッヂや、バッド・ブレインズのポジティヴ・メンタル・アティテュードに匹敵するパンク思想であることは間違いない。思想の面を評価すれば、隠れた名盤なのだ。

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